2019年12月11日水曜日

蘭方医・宇津木新吾⑩ 無愧

蘭方医・宇津木新吾⑩ 無愧 小杉健治
 松江藩お抱え医師を辞めた新吾は、牢屋医師を務めることになった。仕事は新吾の抱く理想の医療とはかけ離れたものだった。
 拷問を受けるが一貫して無実を主張する男・佐吉がいた。質屋の主人を殺し、二十両を奪った犯人として捕まっていた。仕事を代わってもらいながら事件を調べる。
 人食い紀三郎という血も涙もないといわれる冷血な盗人を捕まえる現場に居合わせた新吾は紀三郎を投げ飛ばし捕まえる。紀三郎は病気だった。このままでは市中引き回しになる前に病気で死ぬとおもった新吾は、紀三郎に手術を受けさし罪を償うようにするために働き掛ける。紀三郎は佐吉は無実だと言い、新吾の調べを応援してくれる。
 佐吉が犯人で無い証しが見付けられないが、調べは進んだ。奉行所は佐吉を拷問し自白を取ったことで、間違いを認めず早く死罪にしようとしていたが、奉行の一言で新吾の調べを聞き、真犯人を調べることになった。質屋の若旦那と妾、妾の兄が捕まった。娘夫婦に子が無く、実の娘が亡くなり、養子の若旦那には妾がいる。若旦那を帰し、次女の次男を跡継ぎにしようとしていた主人を殺し、若旦那が店を継いだのだった。
 紀三郎は佐吉の再調べを条件に、奉行所のやりたい格好で獄門になることを了承した。市中引き回しにされながら、皆をにらみ返し悪態をついて悪者として死んで行った。
 佐吉と新吾は紀三郎を見送った。

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