2021年12月31日金曜日

縄文人に相談だ

縄文人に相談だ 望月昭秀  

2021年12月29日水曜日

江戸時代の通訳官

江戸時代の通訳官 片桐一男 
   〜阿蘭陀通詞の語学と実務〜


2021年12月27日月曜日

はぐれ又兵衛例繰控一 二 三

はぐれ又兵衛例繰控一 駆込み女 坂岡真

 南町奉行所で例繰方の与力を務める平手又兵衛38は「はぐれ」と呼ばれる変わり者。過去の類例を完璧に諳んじる驚異的な記憶力で仕事はそつ無くこなすがやっかい事には無関心。

 駆込み女 奉行所に駆け込んできた女郎の死をきっかけに、幼馴染の鍼医者・長元坊と悪党退治に乗り出す。父母を亡くし天涯孤独の又兵衛を元気づけてくれた行きずりの少女・あさだった。十年前あさは奉公先の娘と間違えられ勾引かされ、行方知れずになった。あさを勾引かした者、豊前屋 中津藩普請奉行 定町廻り同心 元締め等。豊前屋から四千両出させる。あさが代わりに勾引かされた娘に千両を渡す。

 師匠が持ってきた見合いに行きそびれた。

はぐれ又兵衛例繰控二 鯖断ち 坂岡真

 長元坊に金貸し殺しの疑いがかかった。北町に捕まった。又兵衛は北町の同心から十手を預かる男を捕まえる。切れ者と言われる与力の悪を憎む気持ちに賭けた。長元坊は牢から出された。

 元旗本の静香の父親が改易になった理由が判る。
 静香と一緒に、父母も来た。一緒に住む。


はぐれ又兵衛例繰控三 目白鮫 坂岡真

 妻・静香の前夫・火盗改長官の息子が、捕まえた盗賊を逃がす。又兵衛が長官宅に乗り込んだ時、長官下の同心たちが、又兵衛の味方に付く。

 静香と祝言を挙げる。奉行から祝い酒が届く。

2021年12月23日木曜日

紅雲町珈琲屋こよみ⑨ 月夜の羊

紅雲町珈琲屋こよみ⑨ 月夜の羊 吉永南央

 草は、朝の散歩の途中、たすけてと書かれたメモを拾った。
紅雲中の女子生徒が行方不明になる。その後、生徒・渡辺聖は家出と判明し一件落着する。では助けを求めるのは誰か。
 草は玄関で倒れた老女を見つけ救急車を手配する。鍵を預けられる。郵便物を片づけたり するうち、家に引きこもりの男がいることを知る。
 紅雲中学の新校長が制服に喧しく、自由な時代のパネル写真を捨てた。二枚のパネル写真が届けられた草は引き取りて現れるまで小蔵屋に飾った。そして「苦さ知る、十四歳」写真展を開催した。
 ひきこもりの男は九年前会社の失敗を一人の所為にされ、信頼していた人にも裏切られ帰ってきて引きこもってしまっていた。草は聖と一緒に百々路家の掃除をし、空気を入れ替える。水道の老朽管の更新工事で断水した時、圭一が出てきた。草は「たすけて」と書かれた裏に彼の妹に「うけいれる」と書いてもらった吹き出しを渡す。

 圭一は関西へ飛び出すことができた。

 久美は一ノ瀬と同居を始めた。親に内緒だったが知られた。

2021年12月21日火曜日

卯月庵へようこそ  十日月の巻

湯島天神坂お宿卯月庵へようこそ  十日月の巻 中島久枝
 
 プロローグ 卯月庵の板前杉治は、暴れ馬に飛び乗り幼い女の子を助けた。杉治は前身を知られたくないため素早く立ち去った。女の子の祖父・薬種屋青天堂は助けてくれた人を探すが杉治は助けたことを否定する。

 三人姉妹 八王子の花火師をかかえている紅屋の大女将・粂が泊まる。妹の材木商に嫁いだ次女・桐が、夫が十八才の娘と浮気して子供が出来たと家を出てきた。浅草の料理屋に嫁いだ三女・市が、三社祭りにお金を使い借金をしていたと泣きついた。三姉妹は話し、桐は迎えに来た夫と帰り、市は桐の持ち出して来ていたお金を借りて帰った。

 眠る男 眠れない男 狂歌師・古家雨漏が千首読みをする三日前から卯月庵に泊まる。前夜、雨漏は眠れる薬を飲んだ。弟子たちは用意のため眠らないための薬を飲んだ。梅乃は誤って雨漏に眠れない薬を渡し弟子たちに眠る薬を渡してしまった。途中で寝てしまう。千首読み終わった。

 猫が仕出かした不始末 紅葉と梅乃が世話をしている猫が、水茶屋の壺を割ってしまった。壺を金継ぎするための金を稼ぐために水茶屋の手伝いをする。二人は物置のような家を片づける。伝は物を捨てられない。伝を如月に一泊させ家を片づける気になるようにする。家は、猫が物置と間違わないように片付いた。壺も戻った。

 人形と旅をする男 人形を連れて旅をしているという男・万作が泊まった。人形に生きているように話しかける。人形の名は鈴。元の家に戻してあげたいので元の家を探している。灘屋に鈴という内儀がいて人形を作った。鈴は六年前に亡くなったことが判った。梅乃は万作の言うことを信じているが、紅葉や他の人は万作を疑い強請りをしようと思っていると考えた。灘屋を呼んだ。万作は灘屋から盗み強請ろうとしていた。人形は灘屋が持って帰った。

 エピローグ 杉治は昔、大名の半年前に生まれた男子を殺す密命を受けた。自分が所帯を持ち娘が生まれた時、仕事ができなくなった。村から逃げた。杉治が使った薬と馬の乗りこなしから杉治は青天堂に呼ばれた。青天堂の主は杉治の兄だった。もう逃げる必要はなくなった。村が仕事を辞めたことを知った。青天堂の主は杉治の兄だった。娘・夏に会った。

2021年12月19日日曜日

お宿卯月庵へようこそ 上弦の巻

 湯島天神坂 お宿卯月庵へようこそ 上弦の巻 中島久枝

 非凡な記憶力で如月庵を支えてきた下足番・樅助が、客の名前を思い出せなくて落ち込む。
十代のころ一緒に呉服屋で働いていた蟹吉のことになるとあやふやになる。記憶力が良過ぎて人に疎まれた。

 十三夜に鼻煙壺の夢 如月庵の掛け軸を書いた書家・村岡の集めた鼻煙壺を買うために秋田から百衛門が来た。五つの内の一つを売ってもらう。村岡の家が火事に巻き込まれる。百衛門は鼻煙壺の心配をする。今だ。全部を売って貰おうと考える。樅助がゆっくり村岡父娘の話をする。百衛門は全ての鼻煙壺を手に入れた。村岡もお金が必要だった。百衛門は村岡に四つの鼻煙壺を預けた。見たい時に来て鼻煙壺の話しをしましょうと帰って行く。

 王子の願いと卵焼き 占い姉妹が泊まった。誰かを待っているようだ。晴吾が重い役に就いて迷いがあるようだ。みんなが占ってもらうように言うが、晴吾は自分のことは自分で決めると言う。占いをする妹は晴吾の言葉を聞いて占いを辞める決心をする。

 おならの顛末 卯月庵で見合いをしている場で、紅葉はおならをしてしまう。見合いの娘・蝶は自分がしたように見せて見合いを止めてしまう。二人は知り合いで相思の仲だったが、話しは壊れたようになる。紅葉は自分の所為だと二人の仲が良くなるように走り回る。紅葉は蝶の甘えを指摘し、逃げ出した。話しがまとまったことを聞いた。
 
 恋の行方と菊の花 梅乃は医者・桂次郎に想いを寄せている。桂次郎は付け火の手引きをした篠の治療をしている。少し元気になった篠は、火付の手引きは園がしたことと言う。恐ろしさに記憶の改ざんがされているのか。園は梅乃の姉で篠の友人今は桂次郎の助手をしている。桂次郎は園を庇う。梅乃は気がついた。桂次郎と園は惹かれ合っている。
 銘石会に石を出品し売り上げを持った五郎大夫の所にお客様がきた。樅助は昔のことを思い出した。蟹吉を殺した角太郎だった。財布を盗んでいた。
 樅助は店の隠し箪笥の開け方を教えなかったために蟹吉が角太郎に殺されたことに思い当たった。

2021年12月17日金曜日

酔いどれ鳶 

酔いどれ鳶 宇江佐真理
 〜江戸人情短編傑作選〜 菊池仁
 
 酔いどれ鳶 松前藩士物語 憂き世店
 先代藩主松前道弘の鷹部屋席だった総八郎は長屋暮らしをしながら傷付いた鳶の怪我が治るまで面倒診る。
 
 室の梅 おろく医者覚え帖 
 妊娠した杏は植木市で美代治から梅を買う。押し込みの犯人だと思った杏は美代治の店に調べに行く。美代治に鉢合わせした杏は腹を蹴られ流産する。美代治は薬で自死した。枯れたと思っていた梅が咲いた。

 雑踏 江戸夜咄草 聞き屋与平
 聞き屋与平の前に、顔に大きなあざがある侍が来る。縁談が起きた。迷っていた。後日縁談を受けたことを言いに来る。

魚族の夜空 春風ぞ吹く 代書屋五郎参る 図書館で借りることにした。

びいどろ玉簪 ひょうたん
 紅いびいどろの簪を持ってきた兄妹に簪もお金も取られる。兄妹が川で死ぬ。父親にはめられた。

 柄杓星  蝦夷拾遺 たば風

2021年12月15日水曜日

江戸の蘭方医学事始

 江戸の蘭方医学事始 片桐一男
 〜阿蘭陀通詞・吉雄幸左衛門耕牛〜
 
 鎖国時代に、オランダの医学即ちヨーロッパの医学を深く学び、蘭方医学の礎を築いた吉雄耕牛の生涯。

2021年12月13日月曜日

京都寺町三条のホームズ17

京都寺町三条のホームズ17  望月麻衣
 〜見習いキュレーターの健闘と迷いの森/後編〜
 
 小松探偵事務所は、田所敦子から佐田と智花の結婚話を壊して欲しいと頼まれる。
清貴は、智花と佐田から何故結婚に反対するのか調べて欲しいと頼まれる。

 葵は円生の展覧会の準備に忙しい。葵は展示に神戸切子を取り入れる。円生は偽絵を描いていた頃の知り合いから、何を書いても贋絵しか描けないと言われ展示会を止めようと思った。清貴の自己肯定感が低いとか、僕がエージェントになってあげると言われ、葵の考えた展示会場に行く。神戸切子のクリエーターチームに円生の幼なじみユキがいた。円生は自作に救われた。次の日から展示会は開かれた。

 円生に偽物しか描けないと言った男・風雅。清貴が初めて見つけ出した画家だった。コンクール展示会と迫って来たものに負け、薬物に手を出し潰れていった人物だった。

 田所敦子の離婚した男の再婚相手が、佐田の母親だった。敦子の息子と佐田は腹違いの兄弟だった。佐田の母親も離婚していた。離婚した男の家は呪術の家だった。敦子は呪われていると思っていた。子供を護るために敦子が、探し出し渡した水晶のブレスレットを佐田が付けていた。ホームズは佐田と敦子の息子・博樹の二人に話しをした。呪いは家に付くもので血には関係がないと。博樹は陰で悪口を言われた思いを口にするが、円生に、母親に捨てられてはいないとか、正面から大人に言われたことは無いだろうとか言われる。
 佐田は兄のいたことを喜んだ。博樹は呪いなんて関係なかったと母親に思われようと考えた。

 香織は春樹を好きだと言うが、春樹は前の彼女を思っている。

2021年12月11日土曜日

花人始末 菊花の夢

 花人始末 菊花の夢 和田はつ子

 植木屋の花恵に厄介事が持ち込まれる。医者を狙う付け火に怯える医者。金貸しが毒殺された事件に苦心する同心。差出人不明の恋文を貰う植木職人・晃吉。江戸一の生け花の師匠に頼りたい花恵だったが、夢幻は菊の生け花大会に向いていた。

 医者 沢森正海に火を付けた三次は、生け花の師匠静原夢幻の屋敷を狙って捕まった。医者・塚原俊道を狙ったのは、花恵が助けた死にそうな老人・佐助だった。疱瘡医と名乗って大儲けしていた。

 金貸しと同じ毒で沢森の妻が亡くなった。塚原が犯人だと乗り込んだ沢森だったが、その場にいた夢幻が、沢森が妻のお腹の中の赤ちゃんを殺そうとしていたこと、沢森が使っていた植木職人が殺したことを明らかにした。
 花恵は晃吉に恋文を出す人を本気に探す。恋文に書かれていたのは、雄鶏がオオムカデの鬼と死闘を繰り広げ母娘を助ける話しだった。いろいろ当たってみて最後に行き着いたのは、米問屋・尾高屋の母娘のところだった。
 娘・初は誰かに押されて大八車に轢かれた。阿片を握っていた。父親は抜け荷が発覚しかけたので自殺した。父親の弟が主人に納まり、妻子を追い出した。二人は、絵草紙屋を開いていた。陥れられた話しを誰かに聞いて欲しくて晃吉に母親が書いていた。初が晃吉の絵を描いていた。諦めさえしなければ泣くのは恥ではないと晃吉に言われたことがあったようだ。話しをしている最中に男たちが襲ってきた。夢幻が助けてくれる。尾高屋に頼まれて来たようだ。初を突き飛ばし轢かれるように仕向けたのは沢森だった。沢森は抜け荷の阿片に手を出していた。尾高屋に頼まれていた。抜け荷をしていたのは弟だった。

 塚原は隠居し、薬料を貰わず診療した。長崎から帰った息子・千太郎があとを継いだ。妹は夢幻の弟子の一人・美乃だった。
 

2021年12月9日木曜日

明日につながる5つの物語 

明日につながる5つの物語 あさのあつこ

 この手に抱きしめて ガンが見付かった父親。半生を振り返る。娘の結婚。

 烏城の空 岡山藩藩主・池田綱政。偉大な父の後継ぎ。襲い来る天災。自分には藩主の器量は無いのか。悩む。父親の寵臣・津田永忠。相談する。
石工たちの空 大阪の石工が岡山へ。岡山領内の大規模な事業を手がける。

 カレシの卒業 愛莉が一年付き合った彼は宇宙人だった。一年で帰ってしまった。おばあちゃんは言った。「本気で好きやったら帰ってくる。この星で好きな相手と暮らそうと思う。うちがそうやったがね。おじいちゃんのことほんまに好きやったからな。」美真が柿の木の下に立っていた。

 フィニッシュ・ゲートから 南野悠斗は将来有望視された高校生長距離ランナーだった。幼なじみの絵梨に振られ、記録も伸びない時期にがむしゃらに走り足を壊した。今、悠斗はランナーのシューズを作っている。絵梨が結婚することになっていた同じく幼なじみの冠城湊。絵梨と湊が結婚式場を見に行く日、絵梨は事故で亡くなった。音信不通になって8年。湊が東京マラソンに出ると電話をしてきた。悠斗は湊に会い、湊のシューズを作った。

 桃の花は 美容室を経営する美枝。結婚はしない。一人で生きていくと決めている31才。 十才年下の那留君に美枝の故郷の桃畑を見に行こうと誘われる。美枝は母親に桃畑に置き去りにされ、親戚を転々として大きくなった。故郷の桃畑で、思い出した。母が無理やり美枝と引き離され再婚させられた光景を。病気の母の見舞いに行く決心をした。捨子だったのは那留だった。養子にし育ててくれた祖父の桃畑を継ぐ。美枝のプロポーズした。

2021年12月7日火曜日

勘定侍柳生真剣勝負〈四〉 洞察

勘定侍柳生真剣勝負〈四〉 洞察 上田秀人 

 柳生家が一万石になり祝いの席を設けなければならない。執政衆、惣目付等呼んでも来ないと家老・松木は言うが、淡海は老中・堀田加賀守は来るだろうと予測する。邪魔もするだろうと思う淡海は、駿河屋に頼み一日前に鮑と鯛と伊勢エビを八十ずつ注文した。一夜干しを頼んだ。案の定、当日、魚市場の売り買いを止められた。
 当日、自分がいないほうが良いだろうと考えた淡海は出かける。堀田は居なかったことで二日後淡海を屋敷に寄越せといって帰った。
 
 淡海は早く柳生を出るために、勘定方を鍛えることにする。また柳生家に貸しを作っておけば帰りやすくなると考えている。
 淡海は堀田の呼び出しとは別に、次の日、駿河屋の口利きで堀田に会いに行く。上方に帰りたいので当家をいじめんとってと直談判。加賀守の屋敷に忍び込んだのは私の知り合いです。貸し一つで許して欲しい。左門を柳生の里に縛りつけて、江戸へ来ないようにすると言った。

2021年12月5日日曜日

輝山

輝山 澤田瞳子

 金吾はかっての上役・小出儀十郎から代官・岩田鍬三郎の身辺を探れとの密命を帯び、江戸から石見国大森代官所の中間として赴く。金吾は万事恙なしの文を送っていた。

 七年が経つ。大森代官所へ、小出儀十郎が来た。銀山で働く十数人の無宿者を連れてきた。
 小出儀十郎は、銀山の辛さ、役人の無慈悲な扱いを江戸から来る間言い続け、無宿人が逃げ出すように仕向けた。同じ日にみんな逃げた。金吾は無宿人の中で、石見出身の年寄りが娘に辛く当たられ逃げたことがわかったので、生まれた故郷へ行き連れ戻す。
 小出は無宿人が逃げたことを岩田の所為にして江戸へ知らせようとする。岩田は、小出の無宿人を逃がし、平和な村人に恐怖を与えたことの元を作ったとして捕らえる。

 岩田は知っていた。何故、小出が自分を陥れようとするかを。小出を見いだし出世させてくれたのは矢部駿河守だった。七年前、岩田は、浜田藩の密貿易と大阪西町奉行の矢部の関係を探りに来た。浜田藩から金銭を受け取っていた矢部は、抜け荷の証拠を江戸に送り、商家と浜田藩の要職を捕縛した。矢部は江戸表に栄転した。矢部は岩田が何をしたか小出に知らされては困るため小出を使い金吾を使い見張っていた。矢部が亡くなったあとも小出は見張らせた。自分と矢部の関わりを明らかにするのではないかという脅えのために。だが、岩田は言う、わざわざ調べるほども価値も無い小人などこれっぽちも気を払っていなかったと。

 金吾は暮らしながら岩田の代官としての、領内の人々に対する姿勢に、生活の平安を護る施政に感化されていたのだろう。金吾は堀子たちと付き合いながら岩田のふところ刀・元締め手代・藤田幸蔵に絞られながら、この人のようになれるかなと思いながら中間の仕事をこなしていた。

2021年12月3日金曜日

大名絵師写楽

大名絵師写楽 野口卓 

 耕書堂蔦屋重三郎は、「祭りで踊り狂う男」という絵を見た。この絵師に役者の大首絵を描かせようと喜三二に紹介を頼んだ。喜三二は描いた人が誰か判れば紹介しようと言った。
 一年が経過し、重三郎は、結果を持って喜三二に当たる。徳島藩蜂須賀家十代藩主・重喜。久保田新田藩二万石佐竹義道の四男。蜂須賀家に養子に行き、早急に改革を行い徹底した藩政の立て直しを図り、家臣団の反発で幕府に隠居を命じられた。国許にいる。兄の息子・甥は大名絵師曙山だった。現在五十六歳

 出羽国久保田藩佐竹家の江戸留守居役筆頭・平沢常富/朋誠堂喜三二。
 徳島藩江戸留守居役・菊池貞兼。部下、瀬波九郎。
 三十三軒堀一丁目 藍玉問屋四三屋芳之助。
 影武者として藩お抱え能役者・斉藤十郎兵衛

 大谷候が役者絵を描き贈答用の摺り物として配った後は市販してもかまわないという許可が出た。豪華な錦絵を摺、贈答用とする。紙や絵の具の質を落とし、東洲斎写楽の落款、極印、板元印を加え市販用とすることにした。

 大谷候が江戸へ出てきた。都伝内の口上絵を描いた。本人をよそ目で見、着物を着た他人を見ながら伝内の絵を描いた。蜂須賀重喜は、五月五日都座を観て、六日から八日で十一枚。九日に桐座を観て十、十一で七枚。十二日河原崎座を観て十三から十五で十枚の絵を描きあげた。何も注文を付けず、書きたい物を思う存分楽しんで書いた二十八枚だった。重喜は上機嫌で帰って行った。

 盆興行にも、大谷候は江戸へ来た。重三郎は立ち姿がいいとか紙の大きさにも注文が付いた。重喜候は三十七枚を描きあげた。疲れたと言い、集中力が欠け、後になるほど出来が悪い。重三郎にも判っていた。本人の書きたいものでは無かったのだ。
 写楽が誰か同心も探っていた。四三屋に行き着いた時には、候は出発していた。どこかの隠居。

 顔見せ興行には来なかった。重三郎は若手に写楽の真似をさせ写楽の名前で絵を出すが重三郎の後悔だけが残った。
 二年後、候は耕書堂を訪れた。写楽は私が作り出した絵師ですので、命を張って守り抜くと言う。

 

2021年12月1日水曜日

舞風のごとく

舞風のごとく あさのあつこ

 小舞六万石の城下に火事が起こった。大火事だった。罹災者が多く出、新里正近の兄嫁・恵心尼・七緒が居る清照寺にも罹災者が集まっていた。清照寺には千代も引き取られていた。千代は七緒の兄・生田清十郎の娘。 生田清十郎は施政者に作り上げられた殺人者だった。妹・七緒の夫・新里結之丞を殺した。弟・林也・正近が清十郎を斬った。千代の辛い日々が始まり、七緒に助けられたところだった。全てを知っているのは、正近の現主・樫井透馬と七緒だけだ。正近と透馬の友・半四郎も知らない。樫井透馬は庶子だが長男が身体が弱いため家老職の樫井家を継いでいる。正近と半四郎は透馬個人の家来になっている。

 透馬と半四郎は、樫井家の蔵を開け、全ての米を罹災者に別ける。藩にも蔵を開けるように掛け合うつもりだったが、登城を止められる。二人は火災の原因を探す。火事の元に行き探った。知りあいの元遊女・梶に合う。身請けされ商家の嫁になっていた。二人の命が狙われる。梶は川で死体となって見付かる。

 千代は罹災者が死ぬ間際、付け火を見たと告白され提灯の模様を告げられる。千代が町へ使いに出た時、襲われるが、廻りの人々に助けられる。千代が町に出たことを知った七緒は、正近に助けを求める。馬で駆けつけた二人は千代が助けられる現場に着く。助けられた千代は新里家で休まされ次の日、清照寺へ送られる。正近は七緒に会う勇気がなく半四郎に送って貰う。正近は七緒にわが家にいて欲しかった。が七緒は寺に行ってしまった。千代は正近に心を寄せたようだが、正近は千代を不幸にしたと思っている。半四郎は千代に心を寄せた。

 透馬と正近は火事のこと、火事後の煮え切らない藩の態度に不審を感じて調べていた。

 正近は元水杉派の生き残り稲生の娘・弥生と妻帯していた。お腹の中で子供が亡くなり妻は実家に帰った。稲生の家で当主が刀を振り回して家来を殺していた。火事のために人々が大変なことになり正気でいられなかったようだ。火事は元水杉派の者を元押し込み梶の亭主の甘言でなされたことだった。火事を起こし城下を騒がせる。梶井家老に一泡吹かせる狙いだった。家老の評判を落とす。稲生は自決した。弥生と弟が残った。新里家で養生する。

 透馬が最後に行き着いた。全てを誘導したのは梶井保孝・透馬の兄だった。自決したくとも刀も持てない。命は亡くなった。父親は致仕届けを出した。
 保孝の世話係のふさに子供が産まれる。透馬は梶井の血だ。生まれればそいつに家督を譲っておれはお役ご免になれるとふきの家をを建てた。