2021年12月19日日曜日

お宿卯月庵へようこそ 上弦の巻

 湯島天神坂 お宿卯月庵へようこそ 上弦の巻 中島久枝

 非凡な記憶力で如月庵を支えてきた下足番・樅助が、客の名前を思い出せなくて落ち込む。
十代のころ一緒に呉服屋で働いていた蟹吉のことになるとあやふやになる。記憶力が良過ぎて人に疎まれた。

 十三夜に鼻煙壺の夢 如月庵の掛け軸を書いた書家・村岡の集めた鼻煙壺を買うために秋田から百衛門が来た。五つの内の一つを売ってもらう。村岡の家が火事に巻き込まれる。百衛門は鼻煙壺の心配をする。今だ。全部を売って貰おうと考える。樅助がゆっくり村岡父娘の話をする。百衛門は全ての鼻煙壺を手に入れた。村岡もお金が必要だった。百衛門は村岡に四つの鼻煙壺を預けた。見たい時に来て鼻煙壺の話しをしましょうと帰って行く。

 王子の願いと卵焼き 占い姉妹が泊まった。誰かを待っているようだ。晴吾が重い役に就いて迷いがあるようだ。みんなが占ってもらうように言うが、晴吾は自分のことは自分で決めると言う。占いをする妹は晴吾の言葉を聞いて占いを辞める決心をする。

 おならの顛末 卯月庵で見合いをしている場で、紅葉はおならをしてしまう。見合いの娘・蝶は自分がしたように見せて見合いを止めてしまう。二人は知り合いで相思の仲だったが、話しは壊れたようになる。紅葉は自分の所為だと二人の仲が良くなるように走り回る。紅葉は蝶の甘えを指摘し、逃げ出した。話しがまとまったことを聞いた。
 
 恋の行方と菊の花 梅乃は医者・桂次郎に想いを寄せている。桂次郎は付け火の手引きをした篠の治療をしている。少し元気になった篠は、火付の手引きは園がしたことと言う。恐ろしさに記憶の改ざんがされているのか。園は梅乃の姉で篠の友人今は桂次郎の助手をしている。桂次郎は園を庇う。梅乃は気がついた。桂次郎と園は惹かれ合っている。
 銘石会に石を出品し売り上げを持った五郎大夫の所にお客様がきた。樅助は昔のことを思い出した。蟹吉を殺した角太郎だった。財布を盗んでいた。
 樅助は店の隠し箪笥の開け方を教えなかったために蟹吉が角太郎に殺されたことに思い当たった。

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