2022年2月13日日曜日

満月珈琲店の星詠み

満月珈琲店の星詠み 望月麻衣
 〜ライオンズゲートの奇跡〜

 鮎月沙月 京都で生まれ、高校生から香川の母の実家に移る。三年の時オーディションを受けデビュー。三年前、不倫騒動が起こった。小学生時代の登校班班長・中山明里と会い、不倫謝罪会見を行う。二年後、マネージャー・高田聡とつき合い始める。

 沙月は、先月、プロポーズされた高田を、 母に合わせるため香川に行く。途中、ラジオから二季草渉が交通事故に遭い意識不明の重体とのニュースが流れる。
 沙月たちが家に着いた時、二季草のニュースを聞いた母・藤子が倒れ救急車で運ばれるところだった。

 八月の新月、三毛猫のマスターの元に海王星の遣い・サラが訪れ、満月珈琲店を手伝う。自分の気持ちを蔑ろにしてきた藤子、才能の限界を感じた作家・二季草の心の扉が開く。

 藤子には中学の頃から仲良しの男子・鮎沢がいた。東京からきたいじめられっこだった。藤子は剣道部でまっすぐだった。藤子は鮎川の持つ特別な雰囲気を異端と感じ排除しようとする人がいる反面、自分は護りたかったといいう。鮎沢の家の事情もポジティブに考える。鮎沢のピアノが引けることを表に出し、同級生の見る目を変える。高校も同じ高校に通い、大学は京都の大学へ進んだ。藤子は恋愛感情があったが、鮎沢の恋愛対象ではないことが分かっていた。就職してからも付き合っていたが、鮎沢から別れの言葉がでた。藤子は了承する。そして妊娠した。親にも連絡せず京都で産み育てる。父が亡くなり、母と一緒に暮らすことになり高校生になった娘・沙月を連れて香川に帰る。
 沙月がオーディションを受け、女優の道に進んだ時、鮎沢が訪ねてきた。沙月は私の子供ではないかと。藤子はきっぱりと違うと答え追い返す。

 藤子はトレーラーの満月珈琲店でラムネを飲む。レアチーズケーキを食べながら、二季草は藤の花の事だと教えられる。京都から香川にきて就職や生活が楽しくないのは、自分の心に正直に対応していないからだと言われる。

 鮎沢は中学の頃から書きためた小説があった。編集者になりたかったが、就職出来ず、親のコネで入った証券会社は合わなかった。誰かと付き合っても心が落ち着かない。そして藤子に会いたくなった。藤子と別れてから小説を書いていない。昔書いたものを推敲し文学新人賞に応募した。名前を藤沢渉をひねって二季草渉とした。結果作品は受賞し、映画化さらベストセラーとなった。これまで書きためた小説を推敲し二作目、三作目と世に出た。東京に移り住んだ。
 書きためた物がなくなってきた。学生時代の物を推敲していた鮎沢に新しいものを生み出す力はなかった。そんな時、オーディションで川田沙月を見た。自分にも家族ができるかもしれないという思いで香川を訪ねた。父親は他にいると言われてしまった。
 それからの十年は地獄だった。小説のストックが底を付いた。漸く書き上がった作品の評価は散々だった。赤信号だとわかりながら何も考えられずそのまま渡っていた。

 鮎沢は霧の中で故郷の海岸を歩いていた。外国人にプレッツッルを差し出され食べる。本のことを話し、才能なんて枯渇しないのです。井戸水のように呼び水を入れポンプを押せばあふれ出てくるのですと言われる。鮎沢は自分の呼び水は彼女だと思った。

 藤子は訪ねてきた鮎沢に、沙月の父親は別にいると言い切った。鮎沢は帰っていく。ラムネの瓶を持った藤子は走り出す。海岸にいる鮎沢を見つけた。言いたかったことを言い合い、ラムネを飲んだ。鮎沢君は男の人しか愛せないというが、私はたくさん愛してもらった。恋愛感情は大きな愛の中の一つでしかない。藤子はずーと見ていた鮎沢のことはみんな知っている全部ひっくるめて私はあなたを愛してる。

 沙月と高田が香川に向かっている車の中で、二季草渉の新作が海外で映画化が発表されるニュースが流れた。家に着いた。家が変わっていた。壁は白く塗り直され屋根はオレンジ、庭には花が咲いていた。出迎えてくれたのは母と二季草渉だった。それから沙月の出生の真相を聞くことになった。

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