鬼役伝〈二〉 師匠 坂岡真
鬼役の矢背家、初代の物語
江戸城門番だった伊吹求馬は、老中・秋本但馬守に剣術の腕を認められ、御前奉行支配同心に抜擢された。日々唯一無二の鬼役と呼ばれた南雲五郎左衛門の元で修業に明け暮れていた。
志乃を納得させ、矢背家に婿養子として迎えられなければ鬼役にはなれない。
御役に必要な資質 剣術の技量 度胸と勇敢さ 冷徹さと不動心 正義に殉じる覚悟と密命を下される御方への忠心。目を掛けられた者はふるいに掛けられる。
秋本但馬が、京洛北から連れてきた八瀬衆を束ねる首長の娘・志保。求馬に失ってはならないものは信義だと教えてくれた。敬うべき人だった。
伊吹家も二十年前は御所の警備する内舎人だった。母は近衛家の女官だった。近衛家が御所から遠ざけられ京都所司代だった稲葉丹後守正通から幕臣に誘われた。父は正通を刺客から救ったことがあった。父も母も死んだ。母が死ぬ前に教えてくれた。
求馬に命令を伝えるのは公人朝夕人・土田伝右衛門。
赤穂塩の取引を調べることになった。囲い込みと売り惜しみで塩相場を吊り上げ高値で売り抜ける。調べの途中、風見新十郎と出会う。風見も鬼役の候補だ。塩を横流しするもの、目をごまかす者、隠し場所を提供するもの。日置を倒し風見の元に駆けつけた先に風見が倒れていた。厳起坊にやられかけた求馬を救ったのは志乃の弓だった。風見も命には別状なかった。塩は流され証拠は無くなった。
一粒づつ笊に移す作業を続ける。次は鯛を腐るまで睨む。
求馬の剣の師は青雲寺の慈雲和尚。鹿島の神官から臨済宗の僧侶となり鹿島新当流に禅と関係の深い無外流の抜刀術、金剛杖術が取り込まれている一風変わった奥義を修得した。
南雲 烏頭毒で目が見えなくなった。
南雲は一度しかやらぬと言い、綱吉公に供するのと同様の膳を食した。懐紙で鼻と口を隠し、一の膳、つみれ汁、平皿から小鉢や壺へと流れるように進む。平目の刺身、青鷺の煮物、車海老の付け焼き、胡瓜や根菜の酢の物。二の膳鱚の塩焼き、付け焼き鮎の塩焼き鱸に木の芽、置き会わせは蒲鉾、玉子焼、からすみ。美しい所作で食される。鯛の尾頭付き。形を崩さず背骨を抜き、小骨を取る。研鑽せよ。求馬は瞼に焼き付けた所作を繰り返す。
志乃の供で船頭をしながら不忍池で、桂昌院を護る。襲って来たのは額に犬の文字が入った浪人だった。求馬は隣家の松太郎に剣を教えている。松太郎が勾引かされ求馬は誘き出され洞窟で阿片をかがされ呪文を掛けられる。求馬の額に犬の文字が浮かぶ。捕まり浪人が収容されている牢に入れられる。洞窟まで誘って行った男・高垣が牢から脱してくれた。八代順斎の術を掛けられていることを教えてくれる。順斎の得手勝ってに使われる。米蔵を襲う計画のようだ。南雲がまやかしの術を解くには強い意志と痛みがいると言い、鉄火箸で腿を刺す。鉄火箸の片割れを手渡された。
志乃が現れ密命を伝える。陰陽師を見つけ出し黒幕の正体を暴け。
順斎に傀儡になることを強いられる。松太郎が木にぶら下がっている。志乃がつり下がる縄を切り、猿婆が松太郎を助ける。順斎も黒幕の名を告げずに死んだ。
足利家の宗家喜連川家当主が、江戸家老に裏切られ屋敷をすてて秋元家に逃れてきた。求馬は喜連川家正室吉の方を救い出すと命令を受けた。喜連川家を乗っ取っているのは吉良家の息子・荒之助だった。母親は遊女と言われてきたが本当は公卿の娘・大奥を牛耳る御年寄りだった。黒幕は常磐。
綱吉下向。前日、求馬は南雲に少量の毒を盛られ、薬を与えられる。薬の調合を教えられ、誰かを頼るな。おのれで考え信じた道を進め。安易に死んではならない。命を粗末にしてはならない。侍であることを忘れるな。侍とはいつなりとも死ぬる覚悟を携えた者のこと。と言われる。
当日。捕まっていた浪人が開放され秋元家に集まる。綱吉は鉄砲隊を遣い撃たせようとする。南雲が綱吉に浪人を救っていただきたいと進言、諌言した。そして求馬に介錯をさせ切腹した。求馬は綱吉が浪人に直々会うという言葉を持って前触れに走った。綱吉は普段着で、すまぬ。みなに辛い思いをさせた。仁政とはなにかを考えると話した。浪人たちは帰った。
常磐は求馬と志乃が密命を果たした。
荒之助が秋元を襲った。黒部が殺された。求馬は黒部に言われた荒之助の丹田を狙った。荒之助は死んだ。黒部の死を告げに行った。が三行半をもらって妻女には告げられなかった。南雲がいつも買ってくれるという少女が千振を持っていた。これからは求馬が買うことになった。
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