2022年2月25日金曜日

江戸の雷神 

 江戸の雷神 鈴木英治

 七年前から火付盗賊改役の伊香雷蔵は、常に捕物の先頭に立ち町人に人気がある。

今、追っているのは五人組の盗賊、匠小僧と呼ばれる盗人、辻斬りだ。
五人組の盗賊は日暮れ店じまい寸前に押し入る。殺された者はいない。三ヶ月前から。
匠小僧は三年前から四十軒ほど盗まれている。
辻斬りは三人斬られた。

 雷蔵は一人で辻斬りを待つ。黒ずくめの盗人が現れたが逃げられた。辻斬りが出た。雷蔵と手合わせしたいために三人を斬ったと言う。雷蔵は土竜という秘剣を使う。辻斬りの向こう脛を斬ったが仲間が現れ担がれて逃げた。三人だった。誰かに雷蔵を殺すように依頼されたようだ。

 五人組の隠れ場所の密告があり内藤新宿へ行く。北町奉行所の捕手もいた。中から現れたのは雷蔵の兄・要太郎だった。雷蔵と一騎打ちになるが、要太郎が逃げ、立ちはだかった北町の与力・岩崎が殺された。要太郎は逃げた。押し込みの四人は殺されていた。

 雷蔵は火盗改の頭、先手組の頭も罷免になり無役になった。逼塞になった。伊香家の千六百石の家禄はそのまま、長崎奉行だった父残した蓄えが数万両あった。
要太郎は十年前家を出、五年後勘当されていた。四年前、父が亡くなり、その後、兄死亡と一緒に大阪へ行った者から伝えられていた。それが舞い戻り驚いた。

 北町奉行、奈古屋冬兵衛。雷蔵の幼馴染み。二千九百石の旗本。

 雷蔵は散歩に出て、子供に無体を仕掛けている男に会った。男から男児二人を助ける。その後、匠小僧が雷蔵の屋敷に現れる。子供を助けた礼を言いにきた。匠小僧は寺で子供を19人育てている。そのために盗人をしているようなので、雷蔵は辞めるように言う。罷免された理由を話し、要太郎を探すことを頼む。そのための資金十両を渡す。匠小僧はもう一軒だけ盗みに入り辞めると言う。匠小僧は三笠屋に忍び込んだ。強い用心棒がいて逃げ出した。

 雷蔵が師範代としてきている今枝道場に道場破りが来た。安斎六右衛門。仕合は雷蔵が勝ったが、強い。雷蔵は六右衛門をつける。六右衛門は四人の侍に囲まれこのままでは殺してしまうと思いかけた時、雷蔵が入り助けて逃げる。雷蔵の屋敷で江戸に住む者が幸せになるように悪いやつを懲らしめようと思っている手伝いをして欲しいと頼む。六右衛門は考えとくと言って帰る。
 六右衛門29才は、陸奥五本松四万五千石仁和家の使番だった。六右衛門が遣いに出ている間に妻・芳江は、殿・長茂に手込めにされ流産し亡くなった。葬儀を終えた次の日、長茂に会い、長茂が六右衛門を殺そうとした刀を奪い首を落とした。屋敷に帰り自決するつもりだったが、芳江の声に止められ江戸へ逃げる。長茂は松平伊豆守の実弟だった。仁和家に養子に入っていた。
 江戸の口入れ屋で三笠屋の用心棒になり、匠小僧を追い払い、二十両を手にした。口入れ屋から勝負してくれる道場を聞き、今枝道場に行った。雷蔵と手合わせした帰り、睦藩の追手に囲まれた。伊香屋敷に逃げたのだった。

 要太郎の居所を匠小僧が知らせに来た。荒れ寺で要太郎は、四人が止めるはずだった押し込みを続けるつもりだったこと。四人で押し込めば人を殺してしまうことになること、止めさせるために殺したことを話した。与力は刀を振った方に頭を動かし殺すことになったと言った。首筋に刀を当て自死した。

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