2022年2月7日月曜日

北の御番所反骨日録〈三〉蝉時雨

 北の御番所反骨日録〈三〉 蝉時雨 芝村凉也

 着任挨拶 裄沢広二郎と同僚の来合轟次郎が大奥の騒動に巻き込まれ傷を受け定町廻りの役目を休むに中たり、裄沢は「来合の怪我が治って原職に復帰するまでの短期間の代理」として裄沢は定町廻り、来合の持ち場を拝命した。
 亥太郎が裄沢に手札が欲しいと言ってきた。亥太郎に案内されて行ったのは隠れ淫売を商売にしている曖昧宿だった。亥太郎はまともに言えないところで銭を払わず女を抱き飲み食いしたと言いふらすと脅した。裄沢は亥太郎に縄を打て!と与十次に命令する。若い与十次が動けない。三吉が現れ取り押さえ、与十次のはっぱを掛ける。亥太郎を捕まえ、困ったことがあれば室町さんに相談しろ、俺は臨時の代役だからと言い置く。亥太郎をこのままにしておくと、牢を出た亥太郎によって娘たちに被害が及ぶと思った。
 三吉は北町奉行所で小者のまとめ役をやっていた。捕物の稽古指導を任され信頼を得た熟練の小者だった。やむにやまれぬ事情で奉行所内で盗みを働き奉行の情けで捕らわれてはいなかった。盗みを看破したのが裄沢だった。三吉は裄沢に恩を感じていた。裄沢の手伝いをしたいと言った。
 亥太郎は猪吉という名で赤坂で悪事を重ね死罪は免れないようだ。

 畑の死人 来合の指示で時々髪を整えてくれていた銀次が毎日来てくれる。
代官所と町奉行所の境界の畑で死体が見付かった。地主の角口の若旦那・正治だった。
 この辺りの畑は本百姓が土地を担保に借金し金を返せず丸ごと質屋の所有になった。質屋は田畑を所有しても活用が難しいので町家にしたいと代官所と町奉行所に願いがだされているところだった。入って来なくなる年貢とか、町家になったら流れていく人によってでる空き家とか町入用費の負担と礼金、裏金のおねだりなどいろいろ問題が生じていた。近くの大名家から火除地になっているので近くまで町家になっては困ると言われて二割を畑のままにすることで了承されていた。
 三吉が大名家の下屋敷用人が米相場の借金を払ったと言う話しを持ってきた。裄沢は大名家からの火除地の話しは、正治が用人に持って行ったはなしではなかったか。用人は入った金の正治の取り分を渡さず借金の払いに使ってしまい正治を殺すことになったのではないかと室町に話した。室町は証言を集め奉行に話し、目付が動いたようだ。用人は切腹した。
 質屋は面倒になり近隣の富農に売り渡たした。農地として残った。角口には室町が話した。
 裄沢は三吉に手札を渡した。

 怪盗 深川の材木問屋の金蔵に泥棒が侵入した。鍵を開けた形跡がない。小さな窓から入ったようだ。鉄柵が取れる。千両箱を盗まれていた。
 裄沢は三吉に、軽業師、力持ち、猿使いがいる見世物小屋を捜してもらった。鳥ノ山紅玉一座が見付かった。山王社で興行を打っているので山王社辺りを受け持ちの佐久間に詳しい調べを任せる。
 佐久間は一日目、無造作に岡っ引きに話し、二日目に行くと座頭、作家、裏方の男三人、軽業師三人、力持ち二人、猿回し十五人がいなくなっていた。裄沢は持って逃げていないかも知れない盗んだ金が見付かればいいがと思う。
 夜、裄沢の前に座頭が現れた。自分たちの邪魔をした裄沢を見届けようとしたらしい。怪我をさせ勤めにでられないようにしようとする座頭だったが、ちょうど歩く練習をする来合が来合わせ座頭は逃げた。
 来合と

 蝉時雨 裄沢は備前屋を通じて錦堂から内所事の相談を持ちかけられた。一人息子の治吉が突然羽目の外し方が度が過ぎるようになった理由を探って欲しいと言われた。
 治吉は手代の清二が、父親の隠し子であることを知り、清二に店を継がせようとしていると思い込んだ節があることがわかった。
 岡っ引きの伊助が治吉を錦堂に連れてきて、裄沢が治吉の誤解を解くことで話しが決まった。
 裄沢の足を引っ張りたい内与力古藤、同心佐久間、与力寺本、同心大竹、見延等が、集まって相談していた。裄沢が錦堂に行かれないように邪魔をして相談事を失敗させようとした。出かけようとしている裄沢を止め、古藤様の火急の用と呼び出す。古藤は二刻待たされた。現れた古藤の話しは至急ではないため、自分が行かなかったため重大事が起こっていたら覚悟せよと言い放って出かける。
 治吉は死んでいた。清二が付き合っている女中に手を出し、清二が向かってきた拍子に治吉は転んで頭を打った。清二と女中は逃げていた。
 裄沢は出処進退は奉行に委ねる。古藤は、奉行の小田切に、定町廻りを呼び出す程の用とは何だったのか。二刻も掛かる用とはなんだったのかと聞かれる。裄沢が行かなかったばかりに死人が出たことを聞く。即答出来ない古藤に長屋で大人しくしておれということになった。
 本当の所は、治吉が錦堂に帰ったのは、昨夜、事が起こったのは前日の夜だった。三吉から与力、同心の集まりの話しを聞いていた裄沢は、二人を逃がすための用意の時間稼ぎのため悪意の所業を利用したのだった。古藤は屋敷の留守居に廻され、裄沢は三日の謹慎になった。古藤に組した者は誰か調べるように。
 裄沢が帰ってきた。
  

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