2023年5月11日木曜日

料理人季蔵㊹ 小雪ずし

 料理人季蔵㊹ 小雪ずし 和田はつ子

 一膳飯屋塩梅屋に、朝、漁師たちの走り使いの喜代が魚を届けてくれる。喜代は十七、八の鼻まで前髪を垂らしている。ヤリイカで軽い押し寿司・小雪ずしを作る。鮪の赤身と中トロを漬けにし、中トロは炙り小雪ずしにし、大トロは炙り小雪ずしにする。
 烏谷が来る。清水川藩と金江藩の縁組みの妨げになっている絵を盗んで欲しいという役目だった。絵師・清原彩香の下にある清水川藩の若様・竜之助が片思いの絵師に送った彩香と竜之助の絵だという。その絵を回収してほしいという頼みだった。
 絵師・喜多見国麿が自殺に見えるように殺された。季蔵は疾風小僧と国麿の畳の下から、清原彩香と国麿が書かれた掛け軸を取り出す。回収する竜之助の絵も同じような物だろう。疾風小僧が掛け軸を頂戴した。
 彩香の屋敷に、小雪ずしの作り方を教えに行くことになった。疾風小僧は風呂焚きのじいさんと掃除の婆さんの代わりに入る予定だったが、彩香が絵の話をしたいと言うことで、疾風小僧がすしの作り方を教え、季蔵が探すことになった。
 疾風小僧が彩香と絵とすしの話をしている時、季蔵は襖が仕舞われているところから山茶花の絵を見つけ、裏門から出した。疾風小僧は一晩で偽物を作らせ偽物を烏谷に渡し、本物は疾風小僧が頂いた。
 身の危険を感じた彩香は烏谷が京へ逃げた。
 彩香から手紙が届く。国麿の山茶花を失い残念ですが、疾風小僧の名で国麿と私の一緒の絵が届いた。あの日、寿司を作ったのは疾風小僧ですね。あなたは掃除のおしげ婆さんに成りすましていたのでしょう。山茶花の絵を手放さなければ私の命がなかったのでしょう。我が身を守って下さったお二人に感謝。そして国麿兄さんを手に掛けた下手人に天罰あれと、書かれていた。

 師走おせち たくさんの牡蛎が届き、油煮の牡蛎と、大徳寺納豆を鍋でじっくり火を通した。
 ことこと煮込み・おでんを作り、師走のおせちを作る。
 長崎屋五平が来る。金小町選びの催しで、審査を務める人の手土産を調えるようにということだった。紫花いんげん豆と餅と傷んだミカンを使う。紫花豆の甘煮、みかんの柔か飴、三種のおかきを作った。
 大江戸一番小町選びは終わった。二位になった愛と愛と付き合いのあった加平が死んだ。離れているが相対死だと言われる。烏谷は季蔵に男女の二体の骸になった理由を証明してほしいと言われる。
 この催しは、一位になった薬師問屋の妾腹の娘に格を付けるための催しだった。主催者・富沢屋は二位の愛を加平が丸め込んで借金漬けにし、富沢屋の意のままに動くようにするのが目的だった。捕まった富沢屋は、愛に阿附蓉入のしょくらとを飲ませ、密貿易を広げるべく素人美人好きの大名に取り入ろうとしたことを白状した。監禁していた愛が亡くなり、加平が死に、小僧も殺された。富沢屋は殺しには知らぬ存ぜぬを貫いた。

 冬至ぜんざい 不漁の日の小雪すしに使う白味噌を甘酒味噌にした。味噌を三分の一にした方に鰆を、二分の一の方に鯖を浸け込む。数日後、軽く押し寿司にする。
 かぼちゃと小豆に砂糖を加えて煮る。冬至ぜんざい。大根の赤唐辛子煮と一緒に出す。
 季蔵の弟分・船頭豪助の女房・漬物茶屋を営むしんが、沢庵屋夏越しの女主佐和の殺害犯人として捕まった。首を絞めた帯紐が、しんの物だった。しんも認め、しんの特別誂えだと小間物屋も証人になった。
 松次親分も烏谷も本決まりのようなことを言う。
 佐和の母親から豪助に手紙が届く。しんが犯人ではないことは分っている。証拠は漬物樽の中にあるだろう。豪助と季蔵は樽の中から書を見つける。母親は、佐和の弟の話をする。
 寿太郎は書家になるつもりだった。娘に絡んだごろつきから娘を助けようとし、ごろつきに怪我をさせた。其のため人足寄場に入れられ、人足寄場で、なぐられ蹴られ亡くなった。
 佐和は、詳しく信太に聞き、丑三と巳之吉を探していた。二人を見つけたと佐和から連絡があった。そして佐和と信太は殺された。
 しんの帯紐を誰が盗んだか。季蔵たちは走る、近所の紀美を殺そうとしていた男・巳之吉を捕まえた。佐和を殺したことを認めた。丑三は帯紐がしんの物だと言った小間物屋だった。しんは釈放された。
 紀美は寿太郎に喧嘩させろと言われて一芝居打ったと自白した。寿太郎と書の善し悪しを競っていた旗本が炙り出された。旗本は一家で石見銀山を飲んで死んだ。

 松ぼっくり焼き 季蔵は唐芋甘酒に卵を入れ蒸す料理を作って、烏谷と大身旗本・瑞葉家へ行った。先代奥様と会う。公家からの輿入れだった。先代が亡くなり、嫡男が家督を継いだ。二人の男子があり流行り病で亡くなった。孫が継いだが、「恋始末」を書き残して死んだ。弟は、賭場に行き借金を作り喧嘩沙汰になり傷を負わし、目付の知るところとなっているという。
 恋始末を読む。松尾 玲なる者から、恋文を五百両で買い取れという文が来ていた。
 弟のところには、剣道場の友の縁談がまとまったが、二人の関係が衆道だとされたら友の縁談は壊れます。五百両都合願います。松尾玲からの文だった。弟は賭場に行くようになった。もう自分は諦めているが、女中に来ていた光の縁談を、役者に出した手紙で壊そうとしている。光を助けて欲しいと言われる。
 光から話を聞き、男を尾行する。男は松尾玲のところへ行く。疾風小僧と季蔵は忍び込み手紙を探す。瑞葉家の女中が来て玲を殺し、自分も死ぬ。
 玲は女中の娘だった。先代の瑞葉の殿様のため自分の父親が亡くなっていた。そして娘を置いて母は瑞穂家の女中として江戸へ行ってしまった。恨んでいた。
 瑞穂家の奥様と弟は仏門に入った。

 金剛鮭 烏谷から、将軍家にまつわる姫様が、渡部堂源之助と付き合いがある。廻りの者は困っているが、何を言っても姫は聞かない。
 源之助の前の奥さんは湯治に行く途中崖から落ちて亡くなった。付いていた小僧も毒で死んだ。調べるにしても関係者は死んでいた。
 最後に見つけたのは喜代だった。元許嫁が、源之助だった。額には源之助から受けた傷があった。金剛石を盗んだ宇吉は斬り殺される寸前、追ってに助けられた。宇吉は源之助に頼まれたと証言した。源之助は捕まった
 姫様は座敷牢に入れられた。

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