2023年5月13日土曜日

針と剣 縫箔屋事件帖② 風を結う

針と剣 縫箔屋事件帖② 風を結う  あさのあつこ

 吉澤一居18才が、二千石を離れ一になって縫箔師になろうとして半年経った。一には才能がある。やる気もある。縫箔屋の娘・ちえ17才は、袴姿で竹刀を振る。稀代の剣士吉澤一居と勝負がしたいと願う。自分の剣が一居にどこまで通じるか試してみたい。願う余りにちえが倒れた。
 やってきた馴染の医者・宗徳が、一を見て顔色を変えた。武士かとつぶやき、昔の知り合いに似ていたと言いながら嘘話で誤魔化した。
 その夜、宗徳は自死か殺しが分らない形で毒で死んだ。仙五朗の調べが始まる。

 ちえが通っていた榊道場へ行く。門弟の一人が何人もの女を殺す事件があった。犯人に犯人にされ掛けた師範は自決した。そのため道場は閉じられていた。寝込んでいた榊一右衛門も元気になっていた。
 伊上源之亟が来ていた。よく来ているらしい。源之亟は、榊道場を再開しようとしていた。
 
 宗徳がちえの家から帰り、榊道場に寄っていた。その前に遠州屋に行っていた。

 宗徳の助手・堂島左内が殺された。一は、宗徳の帳面を見て、堂島の薬代の水増し請求を見つける。薬屋の番頭と二人でしていたようだが、二人の殺しとは関わりがなかった。
 
 宗徳の死が遠州屋に関わりありだが、何も分らない。ちえは一に頼みごとをする。武士の格好で遠州屋に行ってほしいということだった。
 仙五朗とちえと一は遠州屋に行く。遠州屋の内儀・美紀は一居を見て兄上と呼んだ。

 宗徳は昔、下村伊介。美紀の兄は琢磨と言った。二人は女と手慰みを覚えた。何人かつるんでけしからぬことをしていた。琢磨に好きな人ができ仲間から抜けようとした。二十歳の祝言の日、伊介等仲間は祝言を無茶苦茶にしてやろうと花嫁、花婿の膳に毒を混ぜた。殺すつもりでは無かったが、調合を間違え二人は尋常ではない苦しみ半刻以上苦しみ亡くなった。
 伊介は蓄電した。仲間は死罪になった。美紀の父親は、腹を切り、美紀の家は取り潰しになり江戸へ出てきた美紀と母は苦労を舐めた。宗徳は伊介だった。
 美紀は、宗徳が伊介だと分っていた。宗徳は一を見て琢磨を思い出し、妹の美紀を思い出した。美紀は名前を変えていた。一を見た日、遠州屋に来た宗徳は土下座して謝った。美紀は、兄上と同じ死に方で死んでくれれば許すと言った。気持ちは晴れなかったが、終わったと思った。
 宗徳は遺書を残した。遺書を見た堂島は、美紀を強請った。五十両を要求され持って行った美紀は、堂島に襲われた。美紀は、懐剣で堂島を殺した。
 遺書には、宗徳の屋敷、財を全て食事、洗濯、掃除の世話をしていた秋に譲ると書いてあった。秋は金の半分を榊道場の再建に使ってくれと言った。
 秋の孫は、ちえを先生と呼ぶ、道場の教え子だった。道場の再開を待っている。
 

 

 

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