2019年1月31日木曜日

評定所留役秘録 父鷹子鷹

評定所留役秘録 父鷹子鷹 牧秀彦
 結城家 直参旗本百五十俵。松平定信に家中から引き上げられ幕臣になった。定信の罷免後もそのまま。
 結城峰太郎56才 勘定奉行配下「鷹」といわれた。評定所留役を務め五年前に息子に譲り隠居する。
 結城新之助25才 評定所留役 三年の見習いを終え、本役になり二年目。調べに弟の力を借りる。
 結城小次郎20才 新之助の弟
 結城春香    妹
 新之助は十人の貰い子を殺した辻番の与吉の詮議をし、所見を出すことになった。市中引き回しと磔と獄門。新之助は本当に与吉がやったのだろうかと疑問を持った。南町奉行・根岸肥前守から罪一等を減じ亡骸を下げ渡すようにと横槍が入る。
 峰太郎は根岸肥前守に呼び出され、松平左京・旗本五千石から罪一等を減じるようにと横槍が入ったことを相談する。したくないので、まだ評定所送りにしていない。若い旗本を使って暴れまわられるかもしれない。
 左京の取り巻きが町人をいたぶっている場に居会わせた小次郎は三人と喧嘩した。新之助は左京の在りようを評定所に出すために弟の喧嘩を口実に左京を評定所に呼び出した。辻番小屋の後ろが松平左京の屋敷と繋がっており松平家でなされたことだと判った。
 評定所では老中等は松平左京に丸め込まれ詳しく評定されず与吉の有罪にされ磔と決まった。与吉の息子・大吉が約束が違うと、新之助の命を狙い捕まり本当のことを白状する。
 将軍・家斉の下には御庭番より松平左京並び奥方・照日の犯行が知らされる。子が授からなかった照日は心が壊れた。照日に子供を渡すが、自分の子でないと次々と殺してしまった。家斉は左京を謹慎にし、屋敷に二人だけにする。
 根岸の命を受け、峰太郎は左京を殺しに行く。気がついた二人も共に行くが、照日が薬を盛り、二人は死んでいた。

2019年1月30日水曜日

空也十番勝負 青春編 ⑥⑦ 

空也十番勝負 青春編 ⑥⑦ 未だ行ならず 上・下  佐伯泰英
 空也は長崎に入った。島で会った高木麻衣と鵜飼寅吉に会い、長崎奉行松平石見守貴強家来・大坂中也と名乗り、寅吉の配下となり、長崎奉行所の長屋に住むことになった。
 長崎奉行所の剣道場、福岡藩の長崎藩邸の道場で稽古を続ける。空也は丸山の望海楼で二十五年前、父・磐音と奈緒の身に起った事を聞き知る。
 江戸に行く渋谷重兼と眉月も長崎に立ちより二日を共に過ごす。
 無人島で季遜督と稽古を積み、酒匂太郎兵衛との試合に臨んだ。
 江戸で、薬丸新蔵は藥丸長左衛門兼武と名乗り、三十間掘の三原橋際に野太刀流薬丸道場を開いていた。酒匂次郎兵衛を倒した。
 眉月は尚武館道場で磐音やこんと会っていた。睦月は勘定奉行中川家次男・栄次郎と婚約整った。
 空也の盛光が太郎兵衛の首筋を断ち切り、太郎兵衛の刃が空也の胴に斬り込まれて二人は倒れ込んだ。麻衣と寅吉がいる。
 寛永十年師走、聖寿山崇福寺大雄宝殿の石畳上に空也は血に塗れて転がっていた。

2019年1月28日月曜日

入り婿侍商い帖 凶作年の騒乱

入り婿侍商い帖 凶作年の騒乱〈二〉 千野隆司
 凶作で上がり続ける米の値に、近くの米問屋・湯浅屋で打ち壊しと付け火騒動が起る。湯浅屋の米四百俵を大黒屋や数日預かることになる。
 江戸の各地で売り惜しみをする悪徳米問屋・大黒屋と評する読売がまかれた。何者かに先導され大黒屋が打ち壊しの標的になる。
 同心島津が行方不明になっていた湯浅屋に主人を探し出し大黒屋の米が預かり物だということを証明され、打ち壊しは治められた。
 打ち壊しを先導した者は捕まったが、命令した者のところまでは届かなかった。
 角次郎は、湯浅屋を引き合わせた、垂水屋の伝七郎に気を付けようと感じた。

2019年1月26日土曜日

辻番奮闘記二 御成

辻番奮闘記二 御成 上田秀人
 島原の乱の後、潰された松倉家と禄高を減らされた寺沢家の企みに巻き込まれそうになった松浦家だったが辻番が、火の粉を払い大事にならずに済んだ。松平伊豆守に武器庫を見られた。平戸にあったオランダ商館は長崎に移され松浦家は逼迫した。
 辻番頭と補佐は国許に帰り、斎弦ノ丞24才は家老滝沢大膳の姉の娘・津根27才を嫁にしていた。津根は病弱であり弦ノ丞より三才年上だった。馬廻りになっていた。滝沢は身贔屓などしない身内なればと無茶を押し付けるぐらいだった。
 松倉の牢人が毎日仕官を願って門前に集まった。門番でなく辻番で処理しようとした殿・松浦肥前守重信と大膳は弦ノ丞に十石を加え、辻番頭に任命する。
 牢人対策で辻番頭になったが、将軍・家光が松平伊豆の屋敷を訪れることになった。将軍の行列に一矢報いてやろうと松倉の牢人が廃屋敷の元松倉藩邸に集まっていた。前を通る松浦藩の辻番を一人殺す。いなくなった辻番を探し、弦ノ丞と南町奉行所吟味方与力・相生拓馬は空き屋敷に牢人が屯していることを知る。
 当日、弦ノ丞と相生拓馬等は空き屋敷から出てきた牢人の前を塞ぎ、旗本寄合辻番が出てくるまで塞ぎ止めるが、空き屋敷に火を付けられ弦ノ丞は、配下の者に目が届かなかった。事が終わった時、配下に一人死者が出た。報告は旗本寄合辻番に任す。弦ノ丞は任を解かれた。
 寄合辻番が松倉家空き屋敷の火事に気付き駆けつけたところ、不逞の輩が斬りかかってきたので松浦家の辻番の加勢を受けて撃退したと報告された。
 手柄が欲しい寺沢兵庫頭堅高は、土井大炊頭の入れ知恵で牢人を雇い、行列を襲わせ、寺沢の藩士によって行列を護るという芝居をする。家光と松平伊豆守に見透かされる。何も声が掛からなかった。寺沢は菩提寺で自害した。寺沢家は改易になった。
 

2019年1月24日木曜日

コンパニオンで野菜づくり

コンパニオンで野菜づくり
  無農薬 野菜だより特別編集 ◎
有機・無農薬のおいしい野菜づくり
  暮らしの実用シリーズ 監修 木嶋利男 ◎
野菜づくり大図鑑  藤田智 ○
からだにやさしい野菜づくり 菊池建志 ○

2019年1月18日金曜日

禁裏付雅帳〈七〉 仕掛

禁裏付雅帳〈七〉 仕掛 上田秀人
 禁裏付役屋敷に捕まっていた南條蔵人は、京都所司代に移された。南條と東城鷹矢の暗殺を頼まれた殺し屋は、南條にも鷹矢にも手を出せず、鷹矢の屋敷にいる弓江を勾引かした。
 鷹矢は仕丁・土岐の手引きで光格天皇に会い話しをする。
 鷹矢は弓江のことで南禅寺に呼び出される。

2019年1月16日水曜日

料理人季蔵捕物控㊱ 鴨ぱりぱり

料理人季蔵捕物控㊱ 鴨ぱりぱり 和田はつ子
 行方不明になっていた若い女の遺体が発見された。捕まった犯人は絵師・秋川清州。塩梅屋の常連客の北町同心田端宗太郎の妻・美代の幼馴染み玉の夫だった。美代は元岡っ引きで犯人探しを始めた。清州は犯人で無いことが証明され牢をでる。
 清州は十七年前に勾引かされた同心岡村の息子だった。筆頭同心長田精兵衛は悪と手を結び闇の社会に君臨していた。十七年前、長田と息子が殺され、生まれた孫が勾引かされた。岡村の息子と長田の孫は悪に、裏切らない者に仕立てられていた。育てたのは長田にに逃がして貰った盗賊、坊主・順円になっていた。岡田は息子を探し続けた。長田の悪を調べていた今は亡き井沢ともはなしていた。井沢は調べ帳を残していた。
 岡田は、順円と二人の若者(勾引かされ筋金入りの悪人に育てられた、一人は清州)を殺して亡くなった。順円がすべての罪を被った。
 玉も殺されたが、美代には玉と清州は江戸から出たと知らされた。
 怪我をした、食の細い田端のために鶏のかりかりあげを作った。
 

2019年1月14日月曜日

隠密同心 闇の密約⑵

隠密同心 闇の密約⑵ 小杉健治
 まぼろし小僧と呼ばれる盗人・文吉が出てくる一巻とんでいるようだ。
 連也坊と名乗る松原源四郎が、市松の影になることを決意して現れる。
 遠州望月伊勢守と隣接している旗本松尾主水の知行地の境界争いが起っているらしい。伊勢守が裁定を求め、老中本柳越後守が訴えを取り上げたが、盗人文吉が松尾主水の所から盗んだ書き付け・誓約書で、さること成就の暁、松尾主水に御番入りが約束されていることが判明した。伊勢守の訴えを取り上げた越後守がもう一方の当事者に宛てた誓文を書いている。市松は遠州に行くことになった。錺職市松と侍佐倉市九郎に代わりながら調べていく。
 遠州では、望月家十万石の家老の息子・畑中政次郎の飾り職人・伊助の親方の簪への不払いが元で、畑中の友人・沢田清一郎と金山松之進が死んでいた。伊助が金山に助けを求め、金山が沢田を殺してしまい、沢田の弟が兄の敵と金山を殺した。伊助は金山に助けをを求めていない。沢田を殺したのは金山ではない。沢田の弟が金山を殺すよう仕組まれていたことが判明する。
 望月家と松尾家の境界である山頂では、松尾家の牢づくりの計画が噂され、小屋に人足が泊まり込んでいた。人足が小屋で殺され望月の犯行という者があったが、小屋にいたのは江戸から連れてきた無頼の者たちであり、松尾側から殺しの犯人が上がっていくのを文吉は見ていた。
 望月家では、金山の友人たちが二人殺され、調べをする市九郎を襲った畑中が通う石場道場の師範代が捕まった。奉行所は師範代による金山への女のことによる遺恨ということで調べが終わった。
 市松が世話になった甚吉と甚之助親子の確執が納まり、甚之助に自信ができ、嫁も決まった。
 

2019年1月12日土曜日

孫連れ侍裏稼業④ 成就

孫連れ侍裏稼業④ 成就 鳥羽亮
 伊丹茂兵衛と松之助は一人残っていた仇・岸崎虎之助を討ち、松之助の父母の仇討は終わった。
 普請奉行・竹沢弥右衛門が雲仙流の同門の者を出世をえさに見方に引き入れ、江戸に送り込んでいた。
 竹沢は国許の年寄席に就くために、普請で不正を成し、重臣への賄賂に使っていた。そのことを知った勘定奉行だった茂兵衛の息子夫婦を岸崎たちを使って殺していたことが判った。
 茂兵衛と松之助は江戸の長屋を引き払い出羽国亀沢に帰ることになった。

2019年1月10日木曜日

天下普請 

天下普請 稲葉稔
 慶長三年 1598年 遠州山名郡木原郷から鈴木長次は木原吉次に率いられ江戸に出る。家康の家臣であり大工である。木原大工衆だ。長次は江戸城の天守閣を建てたいと思うが、家康は京大工衆を率いる中井正清に命じる。
 長次は中井正清の仕事を知り、木原大工の後継の技術の向上を目指す。
 家康が亡くなる。秀忠は江戸城天守を造り替える命令を長次に出す。天和天守。長次は大工頭となり五百石取りになった。家光の代になると天守は建て替えの命がでた。
 三河伊賀八幡社の新造を任された。渾身の作・伊賀八幡社は現在国宝に指定され重要文化財になっている。
 寛永十三年1636年 長次死亡 
 二年後、寛永天守の工事が竣工した。明暦三年1657年大火で焼失。

2019年1月7日月曜日

江戸は浅草

江戸は浅草 知野みさき
 雷門で掏摸に遭い路頭に迷っていた真一郎は、六軒長屋の大家・久兵衛に用心棒兼使い走りとして拾われる。真夜中に面を打つ謎の美女・多香。隣は女のひもで洒落者の笛師・大介。目が見えにくい胡弓弾きの鈴、鍵師の守藏等の住む長屋だった。
 五年前に矢師を辞め、上方に行こうとしていた真一郎だったが、矢師の道具を買い戻し江戸は離れ難いと思った。

2019年1月5日土曜日

表御番医師診療禄〈十二〉 根源 

表御番医師診療禄〈十二〉 根源 上田秀人
 表御番医師・矢切良衛は綱吉の食事の味付けが将軍職に就くより以前から何者かの命令で濃い塩気の多い物にされていたことが分かった。良衛は綱吉の兄にあたる甲府宰相の死にも繋がるのではないかと考え、甲府のことも調べたいと思った。良衛は伝の方に相談する。伝の方は綱吉の御台所・鷹司信子に相談するように言う。甲府の正室は信子の又従姉妹・煕子だった。良衛は信子からの病気見舞いという形で甲府家に行く。煕子は二ヶ月で娘を亡くしていた。
 良衛が甲府家に行ったことで動く者がでた。良衛は命を狙われた。甲府家の抱え医師で逃げようとした者が現れた。
 柳沢吉保は家光の血筋を絶やそうとしているのか徳川の血筋を絶とうとしているのか分からない。
 影の者から最後の命令が下された。矢切良衛と甲府藩医師二人、元綱吉の食事方二人の殺害。良衛だけが残った。九人が良衛を襲うことになった。黒幕は家忠の命を受けた者の子孫。
 典薬頭・半井出雲守が良衛が甲府に病気見舞いに行ったことで、典薬頭・今大路兵部大夫・良衛の義父を謹慎にした。吉保が謹慎を解いた。
 御台所の元へ、甲府からの使い・田鶴と伝と良衛が集まった。
 

2019年1月4日金曜日

倉敷高梁川の殺意

旅行作家・茶屋次郎の事件簿 倉敷高梁川の殺意 梓林太郎
 ノン・ノベル茶屋シリーズ⑪
 旅行作家・茶屋次郎は知己の翻訳家・中野麻子から行方不明になっている弟・伸之助の捜索を依頼される。足取りを追うが行方は掴めなかった。伸之助が倉敷で保護された。茶屋は姉弟の暮らす近辺で、轢き逃げ事件があったことを聞く。その前に少女誘拐事件があり、遺体発見は倉敷近くの高梁川河畔だった。伸之助の事件の後、もう一件拉致され倉敷で保護される事件が起る。茶屋が調べて、十一年前に飯田市で起った殺人事件と十年前の名古屋で起った八才の少女誘拐殺人事件の犯人を調べ出した。飯田市の犯人が判った花沢大造が犯人を強請ったために犯人が大造の孫を誘拐し殺していた。十一年前の犯人は捕まり、その時盗んだ六千万円が証拠にされた。少女誘拐殺人も認めた。
 今回の犯人は、娘を殺された大造の息子だった。少女誘拐は娘のような少女だった。騒いだので殺してしまった。後の三人は学童の登下校見守りをしていた。態度が気障りだった。茶屋は十一年前に父親が殺人事件の犯人の疑いを受けた時から狂い始めたのだろうと思った。

2019年1月2日水曜日

野分けの朝 江戸職人綴

野分けの朝 江戸職人綴 千野隆司
 闇の河岸 植木職の仙吉は時々親方と盗みをしている。岡っ引きが親方の廻りをうろついているのは知っていた。女郎になっている幼馴染みのみちが病気なのを知って盗んだ金で身請けする。薬代が必要だが親方は用心して盗みはしない。仙吉は親方の家に盗みに入る。親方に見付かり殺してしまう。仙吉も刺される。みちの所に行くが岡っ引きが待ちかまえていた。岡っ引きは何もかも知っていた。岡っ引きがみちの面倒をみると言う言葉を聞き、力が抜けていった。
 驟雨に消えた 徳利印附師の安次郎は博打で七両一分の借金を作った。蝋燭問屋の主が財布を落とすのを見た。返すことを考えるが入っていた十一両二分を使い博打の借金を返すが、拾った金だと知った峰蔵は残りの金を取り、後十両を要求する。お上に知れれば打ち首だと。峰蔵はかみさん・ひさを売れと言ってくる。安次郎が峰蔵を殺そうとした時、峰蔵が借金の形に店を取り上げたため女房と娘を亡くした男が峰蔵を刺し川に流した。六年間仇を討つ機会を待っていたのだった。安次郎は働き始めた。十一両二分を返しにいくために。
 両国橋から 竃職人の佐久造は十才で親方に弟子入りし、六年前、二十二才で親方の娘と一緒になり婿にされた。五才と三才の男の子ができ、親方と呼ばれるようになっていた。老舗の足袋問屋に仕事に行き、六年前好きでもない男と祝言を挙げなくてはならないという女と関係を持った。今度会うことがあっても知らない人と言う約束で別れた女かもしれない人に会った。主人の女房・すまだった。傾きかけていた生家の太物屋のために大枚の金子を用立ててもらって嫁に入っていた。先代のおかみや店の使用人からの信頼は絶大だった。一度関係を持った下駄屋の旦那から強請られていた。約束の日、佐久造もこっそり行った。すまは強請を突っぱねた。暴力にでた旦那を佐久造は一発殴って止めた。何も言わなかったが六年前の女だとはっきり分かった。六年前の女の姿が離れて行った。
 薮入りの声 しづ18才と勝蔵21才と久助20才の三人はこの四年ほど、薮入りを三人で過ごしていた。しづは飯屋の住み込み、勝蔵は瓦職人の住み込み弟子、久助はいなり寿司の屋台を引いていた。勝蔵はしづに所帯を持とうと言い、しづも喜んだ。勝蔵の親方の娘がしづに会いに来る。勝蔵は婿になる話しを断っていた。勝蔵はきみと一緒になって家の婿になれば江戸で一番の瓦職人になれる。あの人では出来ない鬼瓦を造れる人なのだと言いにくる。しづは小さい時からあの人が好きだった。横から手を出そうとしないでおくれといいながらも黙って町を離れた。半年後二人が所帯を持つことになったと聞いた。久助には遊び人の兄がいた。久助の屋台は結構儲けがあったが兄がせびりにくる。久助の儲けを巻き上げていた。しづは久助のお金を預かっていた。返しに行った時、兄がきて取られそうになる。久助の内腿に匕首が刺さる。余計な口を利くなと言う兄に、久助の女房になるんだと言ったしづ。意気地なし!だれが女房になってやるものかと声に出さず毒づいた。
 野分の朝 伴次26才は十五年掛かって小料理を持てるようになった。借りる店を決めた。店の仲居のちかと所帯を持ちたいと考えていた。嵐が来た。借りる店が心配で見に行き、ちかのそこひの父親が船を見に行ったことを知った。船尾にひっかかった父親を助ける。ちかが借金のために身を売ることを聞く。伴次は女房のために金を出すと言い、十両二分を出し借用書を受け取る。借用書を取り上げようとする者に殴る蹴るの暴行を受けたが誰かが役人を呼びに行くまで借用書を守り通した。
 木槌の音 嘉造は四才で親に捨てられ、三十半ばで表通りに小さな桶職人の店を持った。六年前に所帯を持った女房の実家、仕事を認め懇意にしてくれる老舗の店の主から借金をしている。十二年前、賭場の借金で困っている時に盗みの手伝いをし、二十両を手にした。少しずつ借金を返すように、道で会っても知らない振りをすることと言われて別れた。その時の泥棒のような鋳掛け屋を見た。岡っ引きが鋳掛け屋が淡路屋を見張っているようだと言った。嘉造は鋳掛け屋・文五郎と話しをした。嘉造の息子が大怪我をし、医者の高額な費用がいった。文五郎を訪ねたが旅に出たと聞いた。文五郎の家には嘉造が作った桶があった。夜、文五郎が嘉造の所にきた。怪我をし失敗したと言いながら四両を渡し、盗人稼業の行く末はこんなもんだと言いながら逃げた。文五郎は捕まった。岡っ引きは、嘉造を連れてきた男だったと言った。嘉造を知っているかと聞くと知らないと言って死んだと聞かされた。遠い記憶と繋がった。
 盂蘭盆会の火 駒平25才は四年前まきと所帯を持って、まきの父親・鶴川屋の援助で表通りに煙管職の看板を下げた仕事場を持った。まきは溺愛されて育った我儘娘。すぐ親の助けを求めた。聞き入れられないと実家に帰った。義父は良い客を紹介してくれる。腰を据えて仕事が出来、腕も上がった。鶴川屋あっての稼業だった。義父が人を職人を雇い手広くやれと言ってきた。やってきた職人は詰めが甘い。この男と仕事を続けていけば早晩信用を無くすと思う。職人を辞めさせた。これ以上譲れば自分は自分で無くなってしまう気がした。別れたぎんのことを思った。職人としての栄達に目が眩み、迷いの心を向井入れたことを。仕事道具とやりかけの煙管だけ持って出た。繋がりが切れたぎんにも臆さず気持ちのすべてを込めてぶつかるつもりだ。
 ろくでなし 吉次は「御簾留」の職人だ。ぐれて荒んだ暮らしをしていたのを十六才の時、先代親方留五郎に拾われた。今、留五郎は寝たきりで息子・留藏が親方になっている。留藏は我儘で道楽息子等と遊び回っている妹・てい19才の祝言を決めてきた。相手・真砂屋佐太郎は大店の跡取りということ以外に取り柄はなさそうだった。吉次は
ていが堅気ではない男と連れ立っているところを見た。ていを預かっている返して欲しければ十両出せという文が届いた。留藏は十両を渡したが、もう十両要求された。吉次は留五郎にていを頼むと言われた。留藏は十両を取られ、もう十両要求された。吉次はつけ、しもた屋を突き止めた。居着いたていに内緒で留藏を強請っていた。吉次は家に飛び込む。殴る蹴るの暴行を受ける。手慣れた攻めだった。吉次は十年前の吉次だった。膝で腹を蹴り上げ繰り返す。力が抜けた。うめき声を上げる亥之助から十両を取り上げ、先の十両を探す。七両になっていた。平手でていの頬を殴り「ろくでなしが、今度やったらただじゃ済まさない」と連れ帰った。やくざ者の怖さが身に応えたらしかった。ていは吉次の嫁になることを望んだ。留五郎を落とし、吉次の母親も落とした。吉次は何度も断った。どんなに邪険にあつかってもめげなかった。昔与太者だったお前が性根を入れ替えて素っ堅気になったんだ。おていだっていい嫁さんになるだろう。と留五郎は言う。
 糊と刷毛 萬次は裏長屋に看板をぶら下げた経師職人だ。十両二分の借金があった。老舗塩問屋の仕事に行った。若女将は近所の菓子屋の娘・しのだった。しのは奉公人に慕われていた。子供がいないため嫁いびりされていた。若旦那・徳太郎の妾に子供が出来た。しのを追い出すために徳太郎はしのを襲わせた。話しを聞いていた萬次はしのを助ける。萬次は塩問屋に盗みに入る。女将に見付かり失敗した。しのが一緒に逃げた。

2019年1月1日火曜日

吉原裏同心抄〈四〉 木枯らしの

吉原裏同心抄〈四〉 木枯らしの 佐伯泰英
 身代わりで入牢した間に財産を盗まれた佐吉。佐吉の隠れ家にはもっと重要な物があった。幹次郎は隠れ家に隠れて忍び込む誰かを待ち、誰が裏にいるか探った。裏にいるのは公用人坂寄儀三郎・旗本だった。公儀の役職でない公用人は幕府の要職に就いた家の用人を引き受け実務に精通、幕閣の機密を承知していた。坂寄は老中松平様の懐刀を自任し、隠然たる力を発揮している。
 坂寄は吉原にも手を出し始めた。茶屋の一軒を買い取るようだ。佐吉から盗んだ金が使われた。吉原会所七代目頭取・四郎兵衛はそろそろ引退をという話しを南北奉行から匂わされた。
 幹次郎は佐吉と同心・桑平市松の三人で坂寄を始末することを考えた。車善七の繋ぎで浅草弾左衛門と会うことが出来、助太刀してくれる話しになった。坂崎屋敷に乗り込み坂崎、坂寄家用人、用心棒を三人で始末し、弾左衛門配下が屋敷を燃やした。坂崎が握っていた秘密はきれいに燃えた。
 茶屋に支払われた金子は返り、佐吉の手に返された。