2022年11月7日月曜日

北の御番所反骨目録〈五〉 かどわかし

北の御番所反骨目録〈五〉 かどわかし 芝村凉也

 奉行所内でやさぐれと言われてきた裄沢に対し、周囲の者がご機嫌取りをしにきている。裄沢は降りかかった火の粉を払いのけたのだが、そのために内与力二人が役を解かれ、裄沢に強圧的な態度を取っていた与力も致仕した。商人からの引きあいもあるようになった。
 そんな中、呉服屋鷲巣屋が、二重底の菓子折りを持ってきた。裄沢は返しに行く。鷲巣屋の主人・金右衛門が声を掛けてきた。自分と知己を得たところで無駄金になるだけと去って行く。
 金右衛門は裄沢を味方にしたいと思った。裄沢に御番所の在り方を変えようという誘いまでした。裄沢は己の意のままに動かそうとする奸策ということになると言って帰る。金右衛門は右腕という手代・梅吉に周りを引っかき回し右往左往させ最後に脅してあたふたさせたいと命令した。
 梅吉が考えたのが、裄沢が富岡八幡でたまたま会った隣の娘・茜の勾引かしをやらせることだった。裄沢と話しをし別れた茜を勾引かした。お付きの女中が裄沢に助けを求めた。来てもらおうかというヤクザ者に従って行く。女中は帰した。梅吉は、ヤクザ者に勾引かしを頼みいなくなった。
 裄沢は付いて行きながら、自分が同心であること、娘も役人の娘、あの娘は死ぬことになる。追求は厳しいものになることを説く。娘の所へ連れて行けと厳しくいう。手心を加えてやる娘のところへ連れて行け。茜が大丈夫なことを見、勾引かし犯四人に江戸を出るように言った。彼らの謀ではなく己の素性を隠して唆した者がいた。茜を駕籠に乗せ家に帰る。茜の父親に事が表沙汰に成らないように務めたことを話す。
 裄沢は、犯人の心当たりとして鷲巣屋を挙げた。鷲巣屋から梅吉は消えていた。西田たちは鷲巣屋を探索し揺さぶりを掛けた。金右衛門は首を吊り、番頭三人は殺され他の奉公人は消えていた。裄沢は、鷲巣屋は海賊の出店だと思っていた。

 奉行所の小者のまとめ役・善三が、大松が行き方知れずだと言いに来る。大松は裄沢をけ落とすため邪魔をしていた同心に裄沢の動きを知らせるように言われていた小者だった。同心・佐久間が大松を殺したのではないかと疑われた。裄沢は調べを命じられた。三吉に頼んで調べて貰う。
 何日か前、溜池で溺死人が見つかった。佐久間が、腐乱死体であったため誰かも分からないまま、誤って落ちたと決めつけ葬った。溺死人が大松ではないかと思われ、裄沢は墓から出して調べた。善三が、背中の三つの黒子とはっきりしない着物の柄から大松だと言った。犯人は佐久間だと思われた。
 裄沢は、善三が大松だとはっきり言ったことに疑問を持つ。善三が殺したからこれが大松だとはっきり言えるのではないか。
 犯人は善三だった。犯人が佐久間だと思われるように大松を殺した。が、中々死体が浮かばなかったことで善三のおでんだてが狂ったのだった。
 佐久間は小者を無下に扱った。大松は小者として邪魔だった。裄沢が暴いたことで善三は捕まり、理由は私憤だと言い張った。裄沢には、ちゃんと話して逝った。
 奉行は、佐久間への罰の手配りが遅かったことを反省した。

 小者のまとめ役の補佐に三吉を求められたが、三吉はもう小者には戻れないと決めていた。
 

  

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