2023年5月27日土曜日

連鎖 

 連鎖 小杉健治

 鶴見恭介は河合正人から、妻の弁護を頼まれる。河合しずかは、諸岡恭平宅で包丁で殺害した容疑で逮捕された。
 警察は不倫の別れ話がこじれての犯行とした。しずかは不倫を否定した。諸岡が自分を殺そうとしたので包丁で刺したという。諸岡との関係を言おうとしない。しずかが買った枝川紀代彦の三枚の絵、諸岡がテレビで人気が出たきっかけになった枝川の絵。恭介は過去を探しに行く。

 しずかは十五才ぐらいでマスコミの誘いを受けた。十八年前、しずかがカメラマンにいたずらされそうになった時、助けに入ったのは、中学生の枝川だった。突き飛ばしカメラマンは亡くなった。そこに来た考古学者・深田恭一郎は、二人を逃がす。しずかを現場から離れたところに送ってから現場に戻り通報する。深田は警察に捕まったが、証拠不十分で逮捕されなかった。が、高校教師の職を失い、離婚し、考古学の世界からも弾かれた。十年前、深田は車で事故死した。五年前、枝川は、自殺した。諸岡は深田の息子だった。
 恭介が調べた三人の関係だった。
 深田の死は自殺だった。諸岡は父親の書き残した物を見、枝川のことを知り、枝川に父親のが自殺したことを話す。青酸カリ入のペットボトルを渡して帰る。枝川は飲んだ。
 しずかは枝川の自殺に衝撃を受けた。諸岡の枝川の闇を知っているような発言を聞いて、諸岡恭平のことを調べた。しずかは、諸岡に父親の恨みを晴らすために枝川を殺したのかと詰め寄った。諸岡は名が売れて飛躍するチャンスにしずかが障害に思え、襲いかかった。しずかは夢中で包丁を掴んだ。しずかの首には締められた後があった。

 



2023年5月25日木曜日

秘め事おたつ〈四〉 春よ来い 

秘め事おたつ〈四〉 春よ来い 藤原緋沙子 

 花岡藩奥女中・多津は青茶婆になって側室の息子・吉次朗を探していた。

 多津は藩主・忠通が毒を飲ませれていることを暴き、道喜を殿の医師にする。

 知り合いになった母子の父親は、藩から命の上意討ちの相手を探して五年帰って来ていなかった。母子は国許を離れ江戸で二人で生活していた。
 上意討ちの相手・木島鉄之助を見つけたたつは、くらしの場所へ行く。そこで病んでいたのは、母子の父親・小野琢磨だった。木島は護岸工事をするうちに普請奉行黒木の不正を知った。正に行った木島はかっとし、黒木を殺してしまい追ってを向けられた。
 たつは木島の父親に会い、今の木島の現状を話す。
 黒木の不正が明らかになり切腹していた。二人は帰藩が許され家は再興された。

2023年5月23日火曜日

隠密鑑定秘録〈二〉 恩讐

 隠密鑑定秘録〈二〉 恩讐 上田秀人

 諸大名二百数十名の人事評価が記された「土芥冦讎記」綱吉の頃に編纂された書物の新版作成のため、小人目付・射貫大伍が調査役に抜擢された。
 家斉は自分の権力基盤を強固にしたかった。
 大伍は組屋敷を出、独立した屋敷に移る。黒鍬者・森藤の娘・佐久良は大伍の世話をする。

 家斉と御側御用取次・小笠原若狭守が、御用の間に篭り密談すると小姓組頭能見石見守から情報を得た定信は、何を話しているか詐欺るよう命令する。また、御用の間の書物を持ち出すよう命じる。能見は、隠密御用の道具を用立てる白木屋を通して忍を雇う。それらを知った小笠原と家斉は大伍に退けるよう命じる。抜け道で待つ大伍は忍んできた忍と会う。忍は手裏剣を残して逃げた。

 御用の間の近くで忍同士の戦いがあったと耳にした田沼意次は、何があったか調べさせるために黒鍬者の鈴川武次郎を呼び出した。武次郎は、佐久良を嫁にしようとしている者だった。

 大伍は人物評価を探るために、まず関宿へ行くことにした。

2023年5月21日日曜日

神田職人えにし譚⑤ 瑞香

 神田職人えにし譚⑤ 瑞香 知野みさき

 瑞香 神無月 咲は自分の作った物を買ってくれる伊麻と知り合う。新しく瑞香堂が、咲の作った匂い袋を高く買ってくれることになった。
 出会った戯作者の九之助は、狐にまつわる者、物を追いかける。咲と修次は、稲荷神社の神弧の化身だと思っている双子のしろとましろに九之助を近づけてはならないと思っている。
 九之助は、瑞香堂で伊麻が高崎の狐憑きの小間物屋の娘だと暴く。咲と修次、伊麻と九之助と瑞香堂の店主・聡一郎は話す。
 伊麻は、狐憑きの家と言われ、高崎を逃げ江戸に出てきた。聡一郎も狐憑きと言われ京を逃げ、大阪を出、江戸に逃げてきたことをあかす。
 九之助は、狐が好きで、狐は瑞獣だと思っているという。

 伊麻と聡一郎は仲良くなる。咲は、九之助のために九尾の狐の紙入れを作った。

 猫叉の山 長屋の勘吉は猫を欲しがった。みつを紹介されたが、みつは、育という老婆の下に行った。育には銀がいたが、死を迎えているようだ。黙って行くのと言う咲の問いかけに、育は、銀が猫又の山へ行く夢を見た。勘吉はたくさんの猫と押し蔵饅頭をした。勘吉はみつを諦め、育が飼うことを認めた。

 職人の銘 咲に人形の着物の縫箔の注文が来た。月白堂の店主は楠本英治郎と言う人形師だった。隠しているが、店主は女性だった。咲は人形を見せて貰ううちに判った。妊娠していた。番頭の文七は、役者の家に生まれたが女形がいやで江戸に逃げてきていた。咲は子どもができてもこの形をとるのかと聞く。

 月白堂の店主は向島に住むことになった。店主の妹と文七が、子どもができたから一緒になった。
 
 桝田屋の女主・美弥のお腹に赤ちゃんが出来た。死産や流産を経験している美弥は、あまり喜ばず冷静だ。
 咲に自分の作品に銘を入れようと言ってくれた。
 咲は修次と交換する青海波模様の財布に、初めての銘を入れた。修次の簪も流水文様だった。
 咲は兄妹に、修次との関係を聞かれるが、職人仲間だと言っている。
 修次はいっしょにならないかと言った。


2023年5月19日金曜日

吉原裏同心㊳ 一人二役

吉原裏同心㊳ 一人二役 佐伯泰英 

 吉原会所八代目頭取四郎兵衛になった神守幹次郎だったが、吉原を改革しようにも会所には三百両余りしかなかった。
 定信が突然解任され、定信の改革のための金が宙に浮いたので、十万両使えることになった。

 お歯黒ドブからきれいにした幹次郎だった。切見世を買い込んでいる者の存在を知った。調べて行くうちに、家斉御台所の総用人・西郷三郎次忠継の名が出てくる。買い込んでいた表の顔の壱楽楼の夫婦、使い走りの朋吉も殺される。

 幹次郎は五十間道に間口を持つ外茶屋の土地・四百七十五坪を買った。大工を入れる。

2023年5月17日水曜日

アンデス・マチュピチュへっぽこ紀行

アンデス・マチュピチュへっぽこ紀行 芝崎みゆき
 インカ・プレインカ遺跡の旅 

2023年5月15日月曜日

京都寺町三条のホームズ〈19〉

京都寺町三条のホームズ〈19〉 望月麻衣 
 〜おがみ屋さんと鑑定士〜

 プロローグ 賀茂澪人が小松探偵事務所に依頼にくる。鑑定の依頼とお化け屋敷の調査。
二月、清貴は車を買った。葵が清貴をちらちら見ることが気になる。

 変わらないもの、変わりゆくもの 家頭武史・清貴の父が、時代小説から現代小説家を書こうとしている。メディアミックスされたいのでしょうと清貴に指摘される。
 清貴と葵は、依頼人宅、北区中川まで、ドライブする。
 父親の遺品整理をしている依頼主は、顔が赤く腫れている。この家で一晩過ごすとこうなるという。夜、目の前で火が燃えている夢を見、目を開けると真っ赤な顔の男たちがいたと言う。澪人は、祖父が彼の父親が手に入れた品の強い想念を、生きている限りという期限付きで閉じこめたことを思い出した。本人が亡くなり解除されたようだ。大井戸茶碗。澪人の大祓祝詞と、清貴のあなたの望まれる主を探すという言葉でおさまる。
 澪人の書いた封じの札を茶碗の下に忍ばせ一時的に美術館に置かれることになった。
 澪人が「蔵」で話している間、武史はメモをしていた。ホラーにしようかと思っている。

 それぞれの恋慕 円生は、四条大橋で、「若冲が目に留まったものを書いた」と言った葵の言葉を考える。イーリンがボロアパートの前で、ごめんなさいと涙を流して立ち去ったことを考える。
 葵は香織に、バレンタインに陶芸サークルの出町商店街のカフェでの「陶器と花の展覧会」の出品に誘われた。葵はバレンタインが誕生日の清貴に何を送るか悩んでいた。作品をプレゼントすることにした。
 香織は、クリスマスに酔った勢いで一人暮らしになった春彦の部屋に泊まろうと言ったことを悔やみ、拒否されたことに春彦の誠実さを感じると共に、自分に関心がないと思い、好きだという告白を無かったことにしてもらったことを話す。作品に自分の気持ちをぶつけることにした。
 円生は絵を描き始めた。

 黄昏のホラーハウス 小松と利休と秋人と清貴、四人で澪人の依頼を受けた屋敷へ清滝トンネルを抜けて行く。人里離れた山の中にぽつんと存在する洋館だった。
 アメリカの資産家が日本に住んでいた時、日本人と結婚し、この洋館を手に入れ住んでいた。彼は一人娘が小さい時に離婚アメリカに帰った。彼が亡くなり、昔の日記に、私の宝が京都の別荘に残されているかもしれないと書かれてあるのが見つかった。親戚が京都に来て宝を探している。宝を見つけて欲しいという依頼だった。
 彼らは真里に出会った。真里は、母も帰らなくなった。除霊の前にこの屋敷の屋敷の秘密を知りたいと言った。彼らは屋敷を見てまわる。小松は三十代半ばの女性に子どもを探していると声を掛けられる。
 清貴は、この屋敷の秘密、お父さんの宝は、真里さん自身ですという結論に達した。真里は死んでいた。第二次世界大戦のため父親はアメリカに帰り、真里の容姿のため妻と子は山中の一軒屋で暮していた。母は実家に帰った時、空襲に会い亡くなった。娘・真里はもしもの時に入るように言われた隠し部屋に入り亡くなった。真里の遺体が見つかっていないため、母親は亡霊になって真里を探している、と言う。置き時計が入口になっている防空壕の変わりになる地下へ下りる階段の途中に白骨死体が見つかった。真里は母親と消えて行った。
 澪人も真里の遺体がこの館にあるところまでは分ったが、どこにあるかわからなかった。除霊し、真里の父親の孫に会う。澪人に除霊を頼んだ人・亘だった。伯母さんの白骨遺体が見つかったことを告げる。埋葬をお願いする。
 澪人が蔵へ来た。店長・清貴の父はメモを取りながら興味津々だ。澪人が小春とのデートだと帰った後を、質問があると追いかける。澪人と清貴のことを書こうとしている。タイトルを聞かれて葵は「拝み屋さんと鑑定士」と答える。

 終章 二月十四日 陶器と花の展覧会開催。香織の作品を見た春彦は、賀茂川縁に香織を誘う。好きだという春彦に、香織は、クリスマスにキスをねだり拒否されたことを言う。春彦は何かの間違いだろうと必死で堪えた。自分でめちゃ褒めていたと告白する。リベンジしていいかという春彦に、こんなところで駄目と拒否する。デートすることになった。
 清貴は会場に、円生のスケッチが飾られていて驚いた。葵の作品は花器はリボンで包まれジャスミンの花は風船のように飛び立つように丸くなっている。リボンを取ると車の形の花器だった。ボームズさんへのプレゼントです。感激している清貴に、ペンション「レイクサイド」の宿泊券を送る。感激したホームズは、葵にこんなところで駄目です!と怒られた。
 会場を出た円生が、アパートに帰ると、見た目は爽やかな男が待っていた。

 おまけ 澪人は、清貴に、どうやって葵さんと深い仲になったかと聞く。二十歳の誕生日に旅行に。親は致し方なく黙認。外堀を埋めることが大事とアドバイスを貰う。澪人に、「禁欲王子」の称号を譲った。

2023年5月13日土曜日

針と剣 縫箔屋事件帖② 風を結う

針と剣 縫箔屋事件帖② 風を結う  あさのあつこ

 吉澤一居18才が、二千石を離れ一になって縫箔師になろうとして半年経った。一には才能がある。やる気もある。縫箔屋の娘・ちえ17才は、袴姿で竹刀を振る。稀代の剣士吉澤一居と勝負がしたいと願う。自分の剣が一居にどこまで通じるか試してみたい。願う余りにちえが倒れた。
 やってきた馴染の医者・宗徳が、一を見て顔色を変えた。武士かとつぶやき、昔の知り合いに似ていたと言いながら嘘話で誤魔化した。
 その夜、宗徳は自死か殺しが分らない形で毒で死んだ。仙五朗の調べが始まる。

 ちえが通っていた榊道場へ行く。門弟の一人が何人もの女を殺す事件があった。犯人に犯人にされ掛けた師範は自決した。そのため道場は閉じられていた。寝込んでいた榊一右衛門も元気になっていた。
 伊上源之亟が来ていた。よく来ているらしい。源之亟は、榊道場を再開しようとしていた。
 
 宗徳がちえの家から帰り、榊道場に寄っていた。その前に遠州屋に行っていた。

 宗徳の助手・堂島左内が殺された。一は、宗徳の帳面を見て、堂島の薬代の水増し請求を見つける。薬屋の番頭と二人でしていたようだが、二人の殺しとは関わりがなかった。
 
 宗徳の死が遠州屋に関わりありだが、何も分らない。ちえは一に頼みごとをする。武士の格好で遠州屋に行ってほしいということだった。
 仙五朗とちえと一は遠州屋に行く。遠州屋の内儀・美紀は一居を見て兄上と呼んだ。

 宗徳は昔、下村伊介。美紀の兄は琢磨と言った。二人は女と手慰みを覚えた。何人かつるんでけしからぬことをしていた。琢磨に好きな人ができ仲間から抜けようとした。二十歳の祝言の日、伊介等仲間は祝言を無茶苦茶にしてやろうと花嫁、花婿の膳に毒を混ぜた。殺すつもりでは無かったが、調合を間違え二人は尋常ではない苦しみ半刻以上苦しみ亡くなった。
 伊介は蓄電した。仲間は死罪になった。美紀の父親は、腹を切り、美紀の家は取り潰しになり江戸へ出てきた美紀と母は苦労を舐めた。宗徳は伊介だった。
 美紀は、宗徳が伊介だと分っていた。宗徳は一を見て琢磨を思い出し、妹の美紀を思い出した。美紀は名前を変えていた。一を見た日、遠州屋に来た宗徳は土下座して謝った。美紀は、兄上と同じ死に方で死んでくれれば許すと言った。気持ちは晴れなかったが、終わったと思った。
 宗徳は遺書を残した。遺書を見た堂島は、美紀を強請った。五十両を要求され持って行った美紀は、堂島に襲われた。美紀は、懐剣で堂島を殺した。
 遺書には、宗徳の屋敷、財を全て食事、洗濯、掃除の世話をしていた秋に譲ると書いてあった。秋は金の半分を榊道場の再建に使ってくれと言った。
 秋の孫は、ちえを先生と呼ぶ、道場の教え子だった。道場の再開を待っている。
 

 

 

2023年5月11日木曜日

料理人季蔵㊹ 小雪ずし

 料理人季蔵㊹ 小雪ずし 和田はつ子

 一膳飯屋塩梅屋に、朝、漁師たちの走り使いの喜代が魚を届けてくれる。喜代は十七、八の鼻まで前髪を垂らしている。ヤリイカで軽い押し寿司・小雪ずしを作る。鮪の赤身と中トロを漬けにし、中トロは炙り小雪ずしにし、大トロは炙り小雪ずしにする。
 烏谷が来る。清水川藩と金江藩の縁組みの妨げになっている絵を盗んで欲しいという役目だった。絵師・清原彩香の下にある清水川藩の若様・竜之助が片思いの絵師に送った彩香と竜之助の絵だという。その絵を回収してほしいという頼みだった。
 絵師・喜多見国麿が自殺に見えるように殺された。季蔵は疾風小僧と国麿の畳の下から、清原彩香と国麿が書かれた掛け軸を取り出す。回収する竜之助の絵も同じような物だろう。疾風小僧が掛け軸を頂戴した。
 彩香の屋敷に、小雪ずしの作り方を教えに行くことになった。疾風小僧は風呂焚きのじいさんと掃除の婆さんの代わりに入る予定だったが、彩香が絵の話をしたいと言うことで、疾風小僧がすしの作り方を教え、季蔵が探すことになった。
 疾風小僧が彩香と絵とすしの話をしている時、季蔵は襖が仕舞われているところから山茶花の絵を見つけ、裏門から出した。疾風小僧は一晩で偽物を作らせ偽物を烏谷に渡し、本物は疾風小僧が頂いた。
 身の危険を感じた彩香は烏谷が京へ逃げた。
 彩香から手紙が届く。国麿の山茶花を失い残念ですが、疾風小僧の名で国麿と私の一緒の絵が届いた。あの日、寿司を作ったのは疾風小僧ですね。あなたは掃除のおしげ婆さんに成りすましていたのでしょう。山茶花の絵を手放さなければ私の命がなかったのでしょう。我が身を守って下さったお二人に感謝。そして国麿兄さんを手に掛けた下手人に天罰あれと、書かれていた。

 師走おせち たくさんの牡蛎が届き、油煮の牡蛎と、大徳寺納豆を鍋でじっくり火を通した。
 ことこと煮込み・おでんを作り、師走のおせちを作る。
 長崎屋五平が来る。金小町選びの催しで、審査を務める人の手土産を調えるようにということだった。紫花いんげん豆と餅と傷んだミカンを使う。紫花豆の甘煮、みかんの柔か飴、三種のおかきを作った。
 大江戸一番小町選びは終わった。二位になった愛と愛と付き合いのあった加平が死んだ。離れているが相対死だと言われる。烏谷は季蔵に男女の二体の骸になった理由を証明してほしいと言われる。
 この催しは、一位になった薬師問屋の妾腹の娘に格を付けるための催しだった。主催者・富沢屋は二位の愛を加平が丸め込んで借金漬けにし、富沢屋の意のままに動くようにするのが目的だった。捕まった富沢屋は、愛に阿附蓉入のしょくらとを飲ませ、密貿易を広げるべく素人美人好きの大名に取り入ろうとしたことを白状した。監禁していた愛が亡くなり、加平が死に、小僧も殺された。富沢屋は殺しには知らぬ存ぜぬを貫いた。

 冬至ぜんざい 不漁の日の小雪すしに使う白味噌を甘酒味噌にした。味噌を三分の一にした方に鰆を、二分の一の方に鯖を浸け込む。数日後、軽く押し寿司にする。
 かぼちゃと小豆に砂糖を加えて煮る。冬至ぜんざい。大根の赤唐辛子煮と一緒に出す。
 季蔵の弟分・船頭豪助の女房・漬物茶屋を営むしんが、沢庵屋夏越しの女主佐和の殺害犯人として捕まった。首を絞めた帯紐が、しんの物だった。しんも認め、しんの特別誂えだと小間物屋も証人になった。
 松次親分も烏谷も本決まりのようなことを言う。
 佐和の母親から豪助に手紙が届く。しんが犯人ではないことは分っている。証拠は漬物樽の中にあるだろう。豪助と季蔵は樽の中から書を見つける。母親は、佐和の弟の話をする。
 寿太郎は書家になるつもりだった。娘に絡んだごろつきから娘を助けようとし、ごろつきに怪我をさせた。其のため人足寄場に入れられ、人足寄場で、なぐられ蹴られ亡くなった。
 佐和は、詳しく信太に聞き、丑三と巳之吉を探していた。二人を見つけたと佐和から連絡があった。そして佐和と信太は殺された。
 しんの帯紐を誰が盗んだか。季蔵たちは走る、近所の紀美を殺そうとしていた男・巳之吉を捕まえた。佐和を殺したことを認めた。丑三は帯紐がしんの物だと言った小間物屋だった。しんは釈放された。
 紀美は寿太郎に喧嘩させろと言われて一芝居打ったと自白した。寿太郎と書の善し悪しを競っていた旗本が炙り出された。旗本は一家で石見銀山を飲んで死んだ。

 松ぼっくり焼き 季蔵は唐芋甘酒に卵を入れ蒸す料理を作って、烏谷と大身旗本・瑞葉家へ行った。先代奥様と会う。公家からの輿入れだった。先代が亡くなり、嫡男が家督を継いだ。二人の男子があり流行り病で亡くなった。孫が継いだが、「恋始末」を書き残して死んだ。弟は、賭場に行き借金を作り喧嘩沙汰になり傷を負わし、目付の知るところとなっているという。
 恋始末を読む。松尾 玲なる者から、恋文を五百両で買い取れという文が来ていた。
 弟のところには、剣道場の友の縁談がまとまったが、二人の関係が衆道だとされたら友の縁談は壊れます。五百両都合願います。松尾玲からの文だった。弟は賭場に行くようになった。もう自分は諦めているが、女中に来ていた光の縁談を、役者に出した手紙で壊そうとしている。光を助けて欲しいと言われる。
 光から話を聞き、男を尾行する。男は松尾玲のところへ行く。疾風小僧と季蔵は忍び込み手紙を探す。瑞葉家の女中が来て玲を殺し、自分も死ぬ。
 玲は女中の娘だった。先代の瑞葉の殿様のため自分の父親が亡くなっていた。そして娘を置いて母は瑞穂家の女中として江戸へ行ってしまった。恨んでいた。
 瑞穂家の奥様と弟は仏門に入った。

 金剛鮭 烏谷から、将軍家にまつわる姫様が、渡部堂源之助と付き合いがある。廻りの者は困っているが、何を言っても姫は聞かない。
 源之助の前の奥さんは湯治に行く途中崖から落ちて亡くなった。付いていた小僧も毒で死んだ。調べるにしても関係者は死んでいた。
 最後に見つけたのは喜代だった。元許嫁が、源之助だった。額には源之助から受けた傷があった。金剛石を盗んだ宇吉は斬り殺される寸前、追ってに助けられた。宇吉は源之助に頼まれたと証言した。源之助は捕まった
 姫様は座敷牢に入れられた。

2023年5月9日火曜日

蘭方医・宇津木信吾⑮ 老中

蘭方医・宇津木信吾⑮ 老中 小杉健治 

 ねずみ小僧が松江藩の上屋敷に入った。警護の侍に手傷を負わされた。刀傷を負った男が幻宗の治療院に現れる。ねずみ小僧か確かめるため、警護の侍に詳しく聞くが、はぐらかされ途中で止められた。ねずみ小僧らしき男・次郎吉からも話を聞く。

 信吾は、老中・板野美濃守から抜け荷を迫られていた宇部家老が、美濃守の失脚を事前にしっていたことが疑問だった。失脚した美濃守の家来・鹿島銀次郎が、信吾に近寄り何故美濃守の後ろ盾を断ったかを問う。信吾と話し何かに気付いた様だった鹿島は、殺された。鹿島について聞きにきた鹿島の下で働いていた冬二も殺される。
 信吾は次郎吉につなぎを頼み、美濃守と会う。美濃守は、自分の失脚と二人の殺された真相を知りたいと言った。

 調べの途中、松江藩医師でなくなることなど考え真相の突き止めをやめようかと思ったが、美濃守の自裁を知った。美濃守は鎌倉期の山城国吉光の短刀を形見に届けられた。
 香保にもお抱え医師の看板が無くなる覚悟を伝え真相の追及に乗り出す。
 中野石翁、岩見藩調べたいことが出てくる。
 次郎吉がねずみ小僧で、岩見藩上屋敷に現れると密告される。信吾は次郎吉を止め、盗みを止めるよう説得する。岩見藩邸へ行くと升吉親分が見張っていた。信吾は命を狙われた。升吉らが駆けつけたため彼は逃げた。

 松江藩は、中野石翁に近づき国許の隣の岩見藩に抜け荷の権利を譲り、国境の問題を解決した。美濃守の二人の家来を斬ったのは岩見藩の家臣・勝田伊八郎だった。信吾は調べる途中、間宮林蔵とも話し合った。

 分ったことを、宇部家老に話す。宇部家老は幻宗の元に走る。幻宗は中野石翁のところに行った。信吾は幻宗と石翁の関係に疑問を持つ。宇部家老は話してくれた。幻宗は二年前、石翁の病を治し感謝されていた。関係は持たなかったが、勝田が、信吾の命を狙うことを聞き、石翁のところに行った。どんな結果になるかは分らないが。
 信吾は、まもなく出府する藩主・喜明が寂しがるため藩医を止めさせられなかった。
 間宮林蔵は公儀隠密の職を解かれた。岩見藩の抜け荷は調べられなくなった。川路聖謨から高野長英と再会し、新しい世界を見ていると話す。
 
  

 

2023年5月7日日曜日

めおと相談屋奮闘記殴⑨ 新しい光

めおと相談屋奮闘記殴⑨ 新しい光 野口卓 

 二つの面 将棋会所に来る房右衛門が、他所の夫婦の喧嘩の仲裁をしてお多福の顔のことで喧嘩したはなし。お互いがお多福とひょっとこのお面を付けて謝る。
 柳風の紹介で初めての人・千足が席亭・信吾に挑戦する。接戦で信吾が勝つ。信吾は二度目の挑戦を受ける。甚兵衛と桝屋良作は、席亭はいつも僅差を凌いで勝つのだと言う。千足は三局対局料を払って帰った。
 相談箱に、 知らぬがホトケ  と書かれた紙が入っていた。
日を置いて、イワシの頭も信心から  と書かれた紙が入った。
また、日を置いて  ヨタカハアサガタカタガツク と書かれた紙が入っていた。
 飼い犬・波の上に、大福で箱の番を頼んだ。
 ヨタカが殺された。

 待つ仕事  相談箱に 美晴と金太がくっついた  と書かれた紙が入っていた。
遊び仲間の名前を入れ、囃し立てる子どもの遊び歌だった。
 マンジュウを喰ってみるか と書かれていた。別の相談箱に  采女原にも風情あり と書かれた紙が入っていた。
 千三屋万八から相談の呼び出しがあった。相談内容を言わない万八に、信吾は、もう万八は答えを出している。なかなか踏み出せない。だから誰かに背を押して貰いたいのでしょう。間違っていません。自分を信じて進めなさい。と言った。万八は前向きに生きていけば、壁を乗り越えられると分ったと迷いが無くなって帰った。

 手妻使い 船饅頭が殺された。采女原では無かったが、マムシと呼ばれる権六親分に連絡した。権六は奉行所に挑戦していると言う。権六は采女原を見張った。西側で喧嘩が始まり、東側でヨタカが殺された。
 伝言箱に紙を入れようとした男に、波の上が吠えた。 骨折り損のくたびれ儲け と書かれていた。頼まれた男だった。今度頼まれたら、猛犬が見張っているから断ると言えと教えた。
 万八・本名・百一の父親・伊勢谷百兵衛が礼にきた。信吾が人の心を自在に操る手妻使いではないかと不安だった。百一を信じさせ高い物を売りつける心配だったと言う。会って話して安心して十両を置いて帰った。

 禍副の縄 旗本の二・三男の三人組の二人が遊びに来る。坂下が、ずーと格上の旗本に婿養子が決まったと話しに来た。
 坂下の養子話が壊れたと連絡してくる。
 波の上が吠えまくる。黒い大犬を連れた者が伝言箱に紙を入れに来た。 雌雄を決するときが来た と書いてあった。
 坂下家には黒犬がいた。坂下の養子先だった家に、坂下の讒言をしたのは町奉行所の人間だった。其の所為で坂下養子話が反故にされた。その人間を突き止められず坂下は町奉行所に喧嘩を吹っかけた。自暴自棄になったのだ。
 信吾は、二人に町方が手ぐすね引いて待っている。自重するようにと坂下に伝えて貰う。坂下は自裁した。
 波乃の姉・花江に子どもが産まれた。元太郎と名付けられた。
 波乃の胎にも子どもが宿った。

2023年5月5日金曜日

めおと相談屋奮闘記⑧ とんとん拍子

 めおと相談屋奮闘記⑧ とんとん拍子 野口卓

 見える女 よろず相談所時代に、三日三晩高熱に来るしめられ、奇跡的に命をとりとめたサチさんが来た。サチは死が近い人がだんだん薄くなっていくのが見えるようになったと相談に来た。自分の旦那様になる人が薄くなるのはいやなので結婚ができないと言う。信吾は、動物と話ができるようになったことを話す。
 薄く見えてきた人に、医者にいくことを進めるようにすればどうかと助言した。
 さちが来た。縁談がまとまりかけた時父が亡くなった。釣り場での事故だった。その後縁談がまとまり結婚した。相手に死を前にした人が薄く見えることを話していないので二人で来れなかった。
 薄く見えた人に、医者に行くことを進め元気になっていく人がありうれしかったと語った。

 惚れちゃったんだもん スミに子が出来、髪結いの亭主だった源八が、仕事を始めようとするが、雇うところがない。三十才だった。いつも源八に嫌みを言っている平吉が源八の兄に頭を下げ、取りなしてくれた。兄から、明日からスミが働ける間に住み込みの小僧から手代見習い手代になる。三年で番頭になれるように励めと言われている。

 あたし、うれしい 結婚一年。
 将棋の家元大橋家の御曹司がお忍びでやってきた。はつとの途中だった将棋を指すためだった。誰も「龍之進」が大橋家の御曹司だと思っていない。母屋の方で指す。前に二度勝った信吾だったが、今回は負けた。迷いがあった御曹司の迷いが無くなっていた。
 はつは、御曹司だと教えられ龍之進は町人とは指さない。この駒形では四人が指した。しかも女の子、でも内緒だよ。将棋家元と対局したたった一人の女の人になるんだよ。
 私だけの大切な秘密を人に話してなるものかとハツは言った。

 とんとん拍子 料理と茶漬けの「桐屋」の息子・嘉平が結婚の相談にくる。嘉平に似た体型の絵師の卵が刺される事件が起こる。夫婦で仲人をする。

2023年5月3日水曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎61 桜の下で

風烈廻り与力・青柳剣一郎61 桜の下で 小杉健治 

 青柳剣一郎は、師・真下治五郎から元足袋屋の主人・幸助の力になってほしいと頼まれる。
幸助は元足袋屋の幸助ではなかった。卯平と名乗った。幸助のところに来ていた久米吉が殺される。

 三年前、花見の席で女に無袋を働いたため江戸所払いになった宗次が江戸に現れた。夫に売られ遊女屋にいる女を助けたいため、自分と同じ桜の入れ墨の遊女の夫・十蔵を殺し、自分が死んだことにしようと思う。十蔵は、薪炭屋「上総屋」で松島屋で手代をしている正太郎を見張っていた。剣一郎は十五年前、上総屋が盗賊に襲われ主人と番頭が殺され、主人の弟が、正太郎が二十才になるまで主人に納まることになったことを知る。

 剣一郎は、久米吉が上総屋の正太郎が店の戻る日を調べていたことを知る。宗次の三年前の事件は濡れ衣だったことを知る。女に無袋を仕掛けたのは、狼と言われていた御家人だった。お裁きが間違いだったことで宗次の人生が変わってしまってはいけない。

 十蔵を殺すために近づいた宗次は、正太郎殺しを頼まれる。その前に十蔵を殺すつもりだったが殺せなかった。正太郎を殺そうとする十蔵の前に立ち塞がる。見張っていた剣一郎に十蔵と番頭は捕まる。上総屋の金を自らの店に使い込んでいる主人は、正太郎に店を渡したくなく、十蔵に殺しを頼んでいた。
 上総屋に近づいた久米吉を殺していた。
 本当の幸助は、十五年前、盗賊が捕まり逃げた男が隠していた上総屋の千両箱を見つけていた。そのお金があることで頑張ってきた幸助だったが、妻が亡くなり江戸を後にした。吉野で出会った卯平に千両箱を息子が跡取りになったら返して欲しいと頼んだ。卯平はそのつもりで江戸にいた。卯平は盗賊の生き残りだったが、剣一郎は明らかにしなかった。
 剣一郎はその場所が分った。一本だけ桜が咲いている場所があった。
 太助が掘り出し、正太郎に渡した。

2023年5月2日火曜日

新・秋山久蔵御用控⑮ 介錯人

新・秋山久蔵御用控⑮ 介錯人 藤井邦夫 

 強請者 八百石の旗本の息子・梶原新三郎が殺された。友人・香川喬之助に疑いがかかる。顔を見たと思えるようは見ていないと言う。香川を付けていた勇次は遊び人の彦六が死んでいるの見つける。香川は浪人・高村慎吾を探していた。新三郎は高村が兄嫁を恐喝していることを知り、食い止めようとしたが斬られた。慎吾は香川を強請ろうとしたが彦六が怖じ気づいたので殺したと言う。ようは香川の産みの親だった。

 嘘吐き 小料理屋「千鳥」の前で半天を着た男・為五郎が殺されていた。横に酔った佐吉が寝ていた。佐吉が疑われる。かよは逃げていく男を見たと証言する。似顔絵にも協力する。
 似顔絵の男は源八だった。源八は為五郎殺しにされたと言う。かよは佐吉を助けたかった。
 為五郎は呉服屋の放蕩息子・喜助を調べていた。才次は喜助に頼まれ為五郎を殺していた。
 源八は、旗本・榊恭一郎が貰った恋文を使い、旗本の奥方・琴に恋文を買い取れと強請っていた。琴は毒を飲んだが死ねなかった。秋山は榊に会う。榊は切腹の身と秋山に槍で向かう。
秋山は榊を斬った。

 瓜二つ 久蔵は二十五、六の女を見た。十八年前に斬った盗賊に囲われていた女にそっくりだった。女・なつ、錺職の女房、薬種問屋萬宝堂の通い女中だった。なつを見張り近づく坊主を探る。商人宿「安房屋」、盗賊観音の宗十郎を名乗る、黒川主水と分ってくる。なつに父親が盗賊だと言いふらされたくなければと萬宝堂の引き込みをやらせようとしていた。黒川の父親が観音の宗十郎だった。人斬り観音の倅だとさげすまれ宗十郎にされたと言う。まじめに暮すなつを何故引き込むと尋ねられ、自死した。なつには何も知らされなかった。

 介錯人 若い武士は髭面の浪人たちに囲まれ土下座して謝った。新八は笛を吹いた。浪人たちは逃げた。若い武士を雲海坊は追った。速水左馬之助だった。居酒屋で食い詰め浪人が怒鳴る。編み笠の侍が二人の浪人の首の血脈を断ち斬った。速水が疑われた。浪人は良沢がいる寺に入り込んでいた。速水は半年前、新造が大川に身投げし死んだ菅原を探していた。道場仲間だった。
 浪人が血脈を斬って殺された。犯人は編み笠の侍だった。菅原の新造・弓絵は良沢の正体を暴いた。良沢は浪人たちに弓絵を拉致させ弄んだ。弓絵は死んだ。秋山は寺に行き、良沢たちを追い出し尋常に立ち合うようにする。良沢は死んだ。菅原は切腹し、速水に介錯を頼んだ。