2022年5月28日土曜日

花咲家の 怪

花咲家の 怪 村山早紀

 別れの曲 桂はりら子の手伝いで桜野観光ホテルに行った。五年前に一度来たきりだった。
ホテルのピアノを弾く。習ってもいないのに「別れの曲」が弾ける。少女と犬が傍に立つ。少女はユリアと名乗った。五年前、シェパードのいる洋館でユリアにピアノを習ったことを思い出した。でも五年前にはもうその洋館はなかった。洋館があったと言われている場所でまた来ますを言う。

 夏の川 お習字の先生だった菊野弥生先生が亡くなり、先生が家やその他の物を残された遠縁の娘・みぎわちゃん。先生の告別式の夜、着物をはらりと脱ぎ、庭から星空に向かって行進する不思議なあやかしの群れの一番後ろにほっそりした二本足のカワウソの姿で加わった。天の川を目指すように練り歩き夜空から消えて行った。草太郎はそう話した。

 火車 駅前の古い居酒屋の常連さんが、同じく常連さんのケーキ屋さんを元気つけるための花束の注文があった。木太郎は花束を配達に行く。花瓶を探し皆川さんと話し花を生けて帰る。次の日、訪れた木太郎に、娘を殺した少年が大人になって帰って来て、猫を殺していると訴える。怪我を負わされた逃げてきた猫を抱え皆川さんは亡くなった。
 後日、猫を殺していた男は警察に保護を願い出る。皆川さんが火車になり怨念で男を追いかけ、炎に焼かれながら遠いところに連れ去られた。

 約束 千草苑の店内で花咲茉莉亜と漫画家の有城竹友のオンエアがあった。有城の調子が悪そうだ。
 有城は寂しい少年時代を過ごし、友だちはこっくりさんだった話しとか、ゴミ捨て場に捨てられていたのを拾ってきたボロボロのロボットとおもちゃが、大切な友だちだったことを話す。ロボットはずっと君のそばにいるよ。ぼくが君を守ると言ってくれた。約束するずっと君と友だちと言ったのに、転校し友たちができロボットは手元にない。
 一世を風靡した少女漫画家、私の話し相手になってくれるのと言ったかの子。年月が経ち、先日かの子が行方不明になった。真奈姫川に身を投げた噂がある。話し相手になる約束をしたのに。
 有城の具合が悪そうだ。茉莉亜は一緒に行く。有城は真奈姫川で川の方に降りて行く。かの子に誘われる。ロボットが有城の足首を引っ張り引き止めた。間に合った。死んじゃだめ。約束を守れて良かったと言うロボット。誘うかの子。草むらの草が道を開け、茉莉亜が近づく。帰りましょう。かの子は川の中へ、有城は茉莉亜に医者に連れて行かれた。有城はロボットを抱えていた。光る神様も見える。神様は元気になったら見えなくなる。見えなくなってもそばにいる。
 この夜のことは余り覚えていない有城でした。

 


 

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