幽玄の絵師 三好昌子
〜百鬼遊行絵巻〜
妖異が見える異能の絵師・土佐光信は将軍足利義政から人身を惑わす妖物の正体を解くよう命じられる。
風の段 五年前に姿を消した朱音の遺体は、取り壊される室町殿の梨花殿の塗籠の唐朱瓶の中にあった。
花の段 顔を斬られ血まみれの女の幽霊が出るらしい。光信は正体を探す。義勝・義政の兄が七代将軍に就いた時、祝いの宴で言祝ぐために呼ばれた桂女の最期の一人が、何も言わなかった。二三日塗籠に閉じこめるつもりが、女は自死していた。傍の屏風に血で予兆をしたためていた。しまい込まれ燃やされる運命の屏風の絵を描いた。蓮花地獄図と梨花極楽図。
雨の段 光信が真魚だったころ、於菟也がいつも一緒に居てくれた。命を助けた鯉に友が欲しいと言った真魚に二人の友が出来た。二人ははるおうとやすおう。謀反で鎮圧された足利持氏の息子二人が処刑された。春王丸と安王丸。一月後、義教が赤松邸で暗殺された。赤松満祐の息子だった於菟也は死罪を免れるが、右腕を斬り落とされた。
真魚が絵師になる決意を持った日。
鳥の段 光信、三十一才。義政の室町御所が完成。後花園院の御幸のために、自然のゆりかもめを自由に操る笛吹と鳥面冠者を室町御所に呼ぶ。鳥面冠者の沙衣と笛吹の真汐は刺客になった。真汐の放つ矢の前の義政の盾になったのは光信だった。桂丸の放った矢で死んだのは沙衣だった。沙衣は真汐を助けてと言って死ね。光信は真汐に逃げ道を教える。二人は沙衣の泣き声で鳥を操っていたと光信は考えた。光信は沙衣の形見になった声の卵石を真汐に渡す。笑い声が聞こえるという。
影の段 光信は矢傷を治していた。義政は義視を後継者にした。富子は納得していない。影を食われた者が、高熱を出す事件が起こる。二日程で熱は下がる。富子の熱が下がらない。誰かの呪詛だと噂が流れた。
占い所司の玉桂が、妖物の望みを叶えてやればいいと光信に言った。作事方・忠時が庭に埋もれた鏡を拾い、きれいに磨き上げていた。天人鏡と呼び、池で天が見えるように沈めていた。鏡に忠時の絵をやる。
富子は仮病だった。
嵐の段 富子が懐妊した。よく当たる占い師が現れた。於菟也が於菟阿弥と名乗っていた。ないはずの右手が現れ墨が滲み円が描かれる。誰にも右手は見えていない。於菟也には飛行丸という子供がいた。於菟也は願い事をしている。於菟阿弥は義政に会うことになった。於菟阿弥の願いは飛行丸を母に合わせること。
於菟阿弥、飛行丸、玉桂は夫婦、息子だった。人の願いを叶えることで存在する童子のおかげで、義政が変わり、光信も含めて謀反の罪で殺すと言っていた義政が一転、四人を自由にした。が義政の望みは嵐為天心、乱為君子だった。騒乱を起こすつもり
終の段 義政が藤見の宴を催す。光信が結婚する小萩も呼ばれる。鳴らない鼓を順に鳴らすがならない。小萩は鳴らした。光信には誰か・義光に殺された鼓方の楽師が見えた。
義政の中の夢童子は男の亡霊が鼓を打ちたいと願っていたと言う。小萩は亡霊を呼ぶ寄せる質だという。嵐が来る。早く帰れと。
翌年三月 応仁の世の始まり。
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