岡っ引き 黒駒吉蔵 藤原緋沙子
甲斐国生まれの吉蔵は、坂崎大和守に連れられて江戸へ来た。北町奉行所与力・金子十兵衛の誘いで臨時廻り同心・菱田平八郎から十手を貰って岡っ引きをしている。岡っ引きを引退していた清五郎と若い金平が助けてくれる。吉蔵は凧・黒駒屋を営む。牧に吉蔵を預けて江戸に出た父親を探している。
凧たこあがれ 吉蔵は、町中を走り回っていた暴れ馬に乗り、手綱をつかんで止めた。馬は上野国松田藩のものだった。松田藩の山下太一郎と知り合いになる。馬が暴れたために怪我をした者はいなかったか調べを頼まれる。
年寄りを助けた板前の仙太郎が怪我をしていた。仙太郎は五日前に浪人に斬り付けられていた。そして、仙太郎の母親が、同じ浪人に自宅長屋で殺された。
仙太郎は松田藩の息子だった。双子で生まれたため一人を捨て、近江屋に拾わせていた。近江屋は跡継ぎとして育てていたが、20年前近江屋が盗賊に襲われ、五才の仙太郎と仙太郎付きの女中・みよと外出中の番頭だけが助かり、店は無くなった。
みよは母となり仙太郎を育てた。松田藩では仙太郎たちが生まれた後一年で、側室が男も子を生んでいた。仙太郎の兄は体が弱い。兄に何かあると仙太郎がいなければその子が跡継ぎになるので、仙太郎は命を狙われた。仙太郎は松田藩に行くつもりはないと言っている。
松田藩の仙太郎の腹違いの弟の祖父・中老・友近玄蕃が御役御免で減俸永の蟄居になった。
やぶからしのおてい 柳原の土手で甘酒屋を営む五十才のていはギヤマンの煙管を持つ夜鷹の憧れだった。吉蔵も寄るようになった。過去を話すようになった。板前と女中とていの三人で奈良茶漬けの店を営んでいた。スリに有り金を擦られたという若い男・巳之助を助けた。店を手伝っていた巳之助がていと関係ができ豹変した。板前が辞め、女中が辞める。巳之助はていが貯めていた三百両を盗んで出て行った。店は潰れた。
ミノてめい、許せねえと言った男・丑松が殺された。
甘酒屋を休んだことがなかったていが店を出さなくなった。ていは、二十五年前、旗本の屋敷で働いていた時、旗本の三男・彦三郎の子供を産んだ。生まれてすぐ取り上げられ、父親がはなと名付けて里子に出されていた。瓦版で商家の女将・はなが自宅に入った泥棒を捕まえたと言う話を読み、自分の娘だとわかった。はなは去年の野分けに襲われ店の修理代がかさみ、借金に困っていることを知り、助けてやりたくなった。ていは巳之助を見つけた。人を殺しているところを見た。名前を変えて料理屋の主人になっていた。ていは昔の金を返して欲しい、人を殺しているところを見たと脅迫する。そして殺された。
吉蔵は巳之助を捕まえる。妾がていの煙管を持っていた。大阪での老夫婦殺しと丑松殺していの殺害で処刑された。
吉蔵は彦三郎に会いていの話をする。はながていの遺骨を引き取り墓に収めた。彦三郎も現れる。畑をしているという話を聞き、一緒に住もうと誘う。
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