2022年7月30日土曜日

端午のとうふ 

 端午のとうふ 山本一力
 〜江戸人情短編傑作選〜

 騙り御前 「損料屋喜八郎始末控え」
札差米屋の相談役・喜八郎。札差伊勢屋は、与力・秋山と札差米屋を陥れる謀略をめぐらす。役者に貴族のふりをさせ、旗本と組み、茶碗を米屋に預けたり、陥れようとするが、喜八郎が、秋山の力を借り、米屋を助ける。

 菱あられ 「深川駕籠」
入谷から雑司が谷へ行く深川駕籠の新太郎。町内鳶の頭・辰蔵と賭になり、源次は見届け人になる。入谷まで手代を運んだ駕籠が新太郎の邪魔をする。雪や火災に遇うが、新太郎は男気を見せ時刻までに雑司が谷に行く。

 端午のとうふ 「深川黄表紙掛取り帖」
定斎屋の蔵秀は雑穀問屋・丹後屋から四百五十俵の大豆の処理を頼まれる。五十俵の仕入れが五百俵になっていた。蔵秀は絵師・雅乃と戯作者を目指す・辰次郎、飾り行灯師・宗佑とでトラブルを知恵と度胸で解決する。正月二日に金の大黒と銀の大黒を入れた大豆を売り出す。
売った大豆に屑が混じっていたと判った丹後屋に大豆の回収を頼まれるが、町中の豆腐屋を巻き込み五万個の豆腐を配ることにする。屑大豆を売りつけた商家と五十を五百と書かせた者も天罰を下される。

 そこに、すいかずら 「いっぽんの桜」
常磐屋治佐衛門が娘のために三千両で誂えた豪華な雛人形。雛人形のための蔵に入れ二度の火災にも焼けないで残った。治佐衛門は一度目の火災の後、踏ん張り料亭を建て直したが、二度目に店が焼けた時、夫婦は火事現場に飛び込んだ。娘・秋葉は、雛人形を寺に預け、どうにか立ち上がる。

 猫もいる 「江戸は心意気」
生き物を飼えば子宝に恵まれると易者に言われた男、友乃は猫好き。床下に迷いこんでいた三匹の猫を飼うことにした。

 閻魔堂の虹 「江戸は心意気」
貸本屋の閻魔堂。桔梗屋の奥女中が、お嬢様の本を借りに来る。返された本はしわを伸ばされていた。弥太郎はお嬢様に好意を持つ。雨の日にやってきたお嬢様は・・・だった。女中さんがやっていたのだ。

 井戸の茶碗 「落語小説集 柴浜
仏像の中から五十両が出てくる。代わりに出した茶碗が井戸の茶碗だったの話し。

2022年7月28日木曜日

料理人季蔵捕物控㊸ さしみ朝膳

料理人季蔵捕物控㊸ さしみ朝膳 和田はつ子

 さしみ朝膳 長崎屋五平から、幽霊画観賞と怪談噺の前に七夕膳を出張料理で作ることを頼まれた。
 幽霊画家・河口幽斎が、首と右手首から先のない刺殺体が見つかった。季蔵は、手首、首の在りかを見付ける。犯人は妻・里恵。手助けしたのは、健斗と由美と見当をつける。里恵は、幽斎の自殺だと言う。里恵が助け、時間稼ぎに幽霊役を由美が 、その助けを健斗がしたと言った。季蔵も何も口を挟まず、奉行所に届けなかった。

 醤油水 由美と健斗は駆け落ちするつもりだったが、由美の店から蒼汰が迎えに来て二人は帰った。由美は屋台の天麩羅屋から、大店の天麩羅屋になった大房屋の跡取り娘。健斗は屋台寿司から大店になった高岡屋の跡取り息子だった。
 塩梅屋に松次が来て、勾引かしの子供の話をする。今年四人がいなくなっていた。松次は四年前にも四人の五六才の娘がいなくなっていると話す。北町奉行・烏谷が来て、貧乏人の娘がいなくなってもいい加減の捜査しかしない。今回、京谷屋の娘がいなくなって金を積まれて川浚いをする。そんな南町奉行所のあり方に憤然としていた。

 氷室菓子 氷室付きのよろず海鮮屋が売りに出されていた。その氷室でいなくなっていた一人の娘の死体がお菓子に囲まれ見つかった。海鮮屋を買った嘉月屋の嘉助が捕まる。塩梅屋の三吉の菓子作りの師匠だ。季蔵は犯人を見付ける。年老いた旗本が、馬で登城していた。下城時、馬が暴れ、娘の頭を蹴っていた。旗本は屋敷の氷室に置き、お菓子を作りきれいに飾り海鮮屋の氷室に置き、すぐ見つかるようにしていた。殿様は自決していた。探り出した季蔵は知らせ、嘉助は放免される。嘉助は店を閉め、乾燥ドクダミを売り、お金を貯めて氷室付きの店を買い海鮮屋を買おうとした漁師のおかみさんたちに渡そうと考えた。

 夏薬膳 ドクダミ料理、酒で瑠璃は元気になる。

 福おにぎり 大房屋の主が亡くなった。二階から落ちていた。蒼汰は主と娘・由美の喧嘩のことを話す。季蔵はいろんな物を調べて、犯人は蒼汰だという。蒼汰は主を恩人だと報いてきた。由美の婿にすると言ったが、大店の三男との見合いを進めていた。自分は使い捨てだと感じ、殺すことにした。いろんな仕掛けを持ちかけた女がいたが、蒼汰は知らないと何も言わなかった。由美は屋台主の助けをし、店を閉めた。
 高岡屋の番頭が死んでいた。主と息子・健斗の命が狙われていると言われ、季蔵は毎夜、健斗を預かる。季蔵は一夜ずしともいう早ずしを教わる。
 健斗がいなくなる。季蔵は探り、健斗がウニ採りに行ったことをつき止める。船に穴が空けられ溺れている健斗を助ける。同じくいなくなっていた主は、番頭が死んだ蔵で殺されていた。高岡屋の所為で亡くなった屋台をひいていた父母の敵打ちだという重七に殺された。重七の遺書で、大房屋の主をうらんでいたきんがいたことが判った。三人で考えた仇討ちだった。きんを見付けた。幽斎の妻と言っていた里恵だった。
 健斗も奉公人を身のたつように計らい店を閉めた。由美・本当の名は波留。健斗と波留は上方に修行に行った。塩梅屋のような店を開きたいと。
 幽斎は死んではいなかった。幽斎は御禁制の子供が泣き叫裸の女児や男児の絵そ描いた。京谷屋の主もこの手の性癖だった。京谷屋の娘は母親の手で匿われていた。四年前と今年と勾引かされた子供は殺されて埋められていた。


2022年7月26日火曜日

入船長屋のおみわ④ ふたつの星

入船長屋のおみわ④ ふたつの星 山本巧次 

 長屋に住む大工・和助が普請した芝居小屋の席が崩れ怪我人が出る。和助の不始末と決めつける読売が出た。
 美羽は崩れた原因を、小屋の若旦那と客の若侍と供に調べる。
 大口の贔屓客が、次に同じ歌舞伎の題目をする河原崎座の贔屓客とどちらが人気が出るか賭ていた。
 切り込みを入れ崩れるように仕掛けをしたのは、河原崎座の賭をした贔屓客の息子だった。
一緒に原因を探していた二人は恋人だった。

2022年7月24日日曜日

大河の剣 

大河の剣 稲葉稔

 安政四年 (1857年) 六月
 山本大河は武者修行から江戸に帰り、北辰一刀流桶町千葉道場で、重太郎から師範代を命じられた。
 新両替町の乾物問屋吉田屋の次男・徳次の面倒をみることを頼まれ、一軒家を借りてくれ、徳次と住んでいる。
 玄武館を去った清河は塾をつくり大河も誘われるが、大河は剣一筋だった。試合を申し込まれれば受ける。
 川へ赤ちゃんを連れて身投げしようとしている女・みつを助ける。夏の終わり、みつの赤ちゃん・太一は熱を出し死んでしまう。みつはそのまま二人の世話をしながらどうにか元気になった。大河はみつを好ましく思い手をだす。

 清河や山岡鉄太郎等から、幕府や日本の現状の話を聞くが、耳を貸さない。二月末、徳次と房州への武者修行に出る。 

 大老・井伊直弼が日米修好通商条約に調印した。

2022年7月23日土曜日

新・酔いどれ小籐次㉑ 光る海 

 新・酔いどれ小籐次㉑ 光る海 佐伯泰英    

 老中や、町奉行所が扱いに困った、旗本陣内家の養子と札差伊勢屋と蔵宿師の勝ってのしほうだいを、仲間割れをお越し最後に残った蔵宿師を小籐次が斬って収めた。旗本も伊勢屋も代替わりした。礼として小籐次に千両が回ってきた。

 森藩藩主命令で国許に行くことになった小籐次は、元服して平次となった駿太郎とおりょうを連れて参勤交代に先行して、出発し、三河の薫子姫のところに行く。

 旗本・三枝寛貴は、酒を飲みひがな過ごしていたが、三河田原城下の賭場に連れて行かれ借金を拵えていた。娘・薫子を売る参段をしていた。小籐次は田原の殿様・三宅康明に会い、奉行を動かし賭場を潰す。薫子の父親は殺されていた。小籐次は康明に隣の陣屋の薫子の後見を頼む。賭場を潰し、藩に三千両が入った。

 おりょうを残し、二人は森藩の参勤交代の一行と落ちあうために出発した。

2022年7月21日木曜日

東京バンドワゴン ⑧ 

東京バンドワゴン ⑧ フロム・ミー・トゥ・ユー 小路幸也

  紺に交われば青くなる 堀田紺
 ばあちゃんを見たのは三年前、初七日の法要の後、死んだはずのばあちゃんが縁側の座布団にちょこんと座ってにこにこしてた。紺がばあちゃんの姿を見たのはこの時だけ。時々話はできる。今は研人がばあちゃんが見えるようだ。
 研人と紺の話
 紺が小学校二年、「僕の子なんだ」と赤ちゃんを抱いた我南人が帰ってきた。お母さんの名前はいえない。赤ちゃんには名前がついていないと言う。ばあちゃん・サチが、「藍子、紺、次は青でしょう」と名前が決まった。
 おばあちゃん・秋実は、大ばあちゃん・サチを尊敬していた。尖っていたアキが、大ばあちゃんに頭を撫でられ、わんわん泣いて境遇を話してしまった。おじいちゃん・我南人がうちにおいで、愉しめる楽しい家だからと誘われ家に来た日にお嫁さんになった。
 だからアキは、青ちゃんも自分の子にした。
 青が中学二年の時、テレビドラマや映画に出た。
 食事中に、「貰われてきた子供?」と聞いた。我南人が「僕とある女性の間に産まれた子共だよ。藍子や紺とは異母兄姉弟になるね」と言った。
 紺と青と二人の時に、親父にくって掛かれ、もっと言いたいことを言えと言ったら、青は我南人にこてんぱんにやられた。青は紺よりいい筋してる。堀田家の血だねと我南人は言った。横で大じいちゃん・勘一は、俺が相手をしたら周りをこんなに壊さないと言った。
 悪い先輩に誘われて夜の街に出かけたり、暴走族の集会に出たり。そんな時、暴走族が一斉検挙された。その中に青がいた。サチと紺と青が警察で警察の話を神妙に聞いている最中、我南人が、ツアー用の十トントラックで警察の玄関前の駐車場で、ガルウィングを開け、ゲリラライブを始めた。一曲終わると、青は泣きながら、親父!と叫んで、今の青になった。自分のために息子のためにとんでもないことをしてくれたと理解した。
 研人は親父の武勇伝を何度聞いてもおもしろがる。お父さんは悔しくない?と聞く研人に、お父さんは堀田家の頭脳だからね。ひひじいちゃん・草平にそっくりなんだそうだよ。

 散歩進んで意気上がる 堀田すずみ
 大じいちゃん・勘一と出かける。すずみは何も知らされないまま、昭和三十三年の「小説宝玉」を持って、土合英昭の「空家の少女 真夏の女」の登場場所を回る。幼なじみの元神主・祐円とポラロイドカメラで写真を撮りながら。二人の幼いころの遊び場所を回る。老人ホームの松谷峰子さんの写真も撮って、勇造の見舞いに行く。土合英昭は勇造だった。作家を志、始めて世に出た小説だった。が、小説を書くのを止め、家業・長寿庵を継いだ。勘一たち幼なじみの誰かが亡くなる前に、彼女・藤子と別れた理由、小説家を諦めた理由を話す約束をしていた。
 この小説は、藤子との出会いを本に書いたフィクションだ。内容は遺産相続に絡む、人間の嫌らしいどろどろした事件だった。藤子の家に隠されていた事実をほとんど小説に書いてしまった。ノンフィクションのように白日にさらした。藤子の家が没落したのも小説が原因だと言ってもいい。愛した女よりも作家の性を選んでしまった。出来上がった小説は傑作だった。
 峰子は藤子の妹だった。峰子は祐円さんの神社の木にペンダントが今もあるかもという話の人物でした。

 忘れじのその面影かな 木島主水
 木島は、ライター紛いの男から、「マードック・モンゴメリー」に関する話を仕入れる。木島はずーと我南人を追いかけてきた。ドブの中を駆けずり回っているうちに匂いが染みつき抜けなくなって、金のために我南人のスキャンダルを暴こうとした。我南人にインタビューをし、素の自分に戻った。自分が惨めになった。そんな木島を堀田家の皆は何にもいわずに許してくれた。俺は堀田家のためなら何でもすると思っている木田だった。
 マードックと話をしようと、藤島社長の家を借りる。
 マードックは日本が好きで日本に来たが、一文無しで帰るに帰れなくなった時、素晴らしい佇まいの古本屋を見付けた。勘一にご飯を食べさせてもらって、大きな古本屋に持って行きなと古本を1冊貰った。そのお金でイギリスに帰った。食事を作ってくれた藍子が、初恋の聖母マリアにそっくりだった。だからもう一度日本に来てこの辺に住んでいた。
 木島は、自分に高校生の娘がいることを話す。知らないうちに産んでシングルマザーとして子供を育てていた。誕生日とクリスマスプレゼントは贈っている。この頃は連絡をくれるらしい。
 関空の税関が薬物の密輸で(マードック・モンゴメリー)に目をつけているという情報を教えた。マードックは人違いだと言う。正式の名前はマードック・グレアム・スミス・モンゴメリー。
 同じような名前で怪しい美術関係の人がいる。気をつける。ドラブルに巻き込まれるかもしれない。

  愛の花咲くこともある 脇坂亜美
 亜美・20才。北海道への一人旅、函館でボストンバックを盗まれた。盗難届を出してる時、同じ女性用のボストンバックを持った男性を見かけた。亜美は跳び蹴りで男性を捕まえた。男性は堀田紺・20才、我南人の長男。
 財布も荷物も無くした亜美は、一ヶ所に寄って帰るという紺の車に同乗して東京に帰ることにした。
 一ヶ所というのは、函館から八〜十時間かかるオトイネップのカイナ山の〈最後の桜〉を、旭川で一泊して行くと言う。我南人の友人が亡くなる前に桜を見てきてほしいと頼んだそうだ。紺は、亜美がドラムスティックを持って桜の木の下でドラムを叩く感じで写真を撮る。亜美はドラムをやっていたと言う。スティックを桜の木の下に埋めた。
 亜美は東京に帰ったら、〈東京バンドワゴン〉にお邪魔しようと思った。

 縁もたけなわ味なもの 藤島直也
 藤島直也25才。大学を卒業後三人でS&Eを起業し、代表取締役。今では大企業に成長している。一緒に起業した三鷹が、修業してくると言い残し行方不明だ。藤島は社長には三鷹の方が向いていると思っている。
 自由時間が出来た。昔から行ってみたいと思っていた〈東京バンドワゴン〉・古本屋に行く。
 この店の本を全部買いたいけど、およそいくらぐらいになりますかと尋ね、店の主人・堀田勘一に大声で怒鳴られた。一冊持っていた本に付いて聞かれ、挿絵と詩の関係、装幀も素晴らしく作り手の魂が感じられる。丁寧に保存されている買い手の気持ちが感じられた。と言うと堀田さんは褒めてくれた。
 孫娘・藍子さんが現れる。姉によく似ている。我南人が現れる。息子さんのようだ。我南人は藤島を知っていた。待たされている間に小学生の男女が現れる。
 お坊さんが来て、仏事に付き合う。お坊さんは三鷹だった。何もかも承知の我南人が仕組んでいた。修業を始めて半年、三鷹もそろそろ潮時かと考えていた。
 藤島は、本を一冊売って貰い、感想文を持ってきたら一冊売ってやると言われた。必ず来ますと言い、三鷹と一緒に寺に行く。
 一緒に起業したもう一人・永坂に、週に一回、二時間ぐらい昼間の時間を開けてくれと言う。古本屋に行くんだ。

 野良猫ロックンロール 鈴木秋実
 秋実は三人のチンピラから我南人たち〈LOVE TIMER〉に助けられた。強い。我南人はのんびり躱していた。そして秋実を背負って、自分の家に逃げた。施設にいるから家はないと言う秋実に、家は心の中にある、一緒に居たいと思った人と一緒にいるのが家だと言った。

 会うは同居の始めかな 堀田青
 ツアー添乗員の堀田青25才、大学の経済学部で〈海外留学と外国で暮らすための知恵〉という特別講義で喋った。その時の講師と学生で合コンすることになった。一次会が終わり、二次会に行く途中で、角を曲がり抜けた。一人付いて来た。槙野すずみ。話したかったから付いてきたと言う。会話しているのが楽しかった。〈喫茶 多摩蘭堂〉
 多摩蘭堂で、すずみの友人二人と喫茶店ウェイトレス・杏に囲まれる。どうしてすずみと別れるのかと聞かれる。すずみは何も話さないらしい。すずみの父親が亡くなり、ひとりぼっちのすずみの恋人まで離れていくのか。「俺が悪い。そう思ってくれ」それしか言えなかった。
 友人二人を除いて杏が言う。一度だけすずみの父親・槙野教授が女子学生とコーヒーを飲んだ。待ち合わせていたように思った。女子学生に対する特別な思いを感じた。女子学生は青のお姉さんだったと思う。槙野さんの葬儀に隠れるように遠くからみている藍子を見た。二人が別れたと聞いた時、藍子が一人で産んで育ててきた花陽ちゃんが繋がった。想像が事実なら、あなたは絶対に別れないと言わなければ駄目。二人が別れたら、将来不幸になる人間が四人になる。すずみ、青、藍子、花陽。自分のことで青が最愛の人を失ったと思うと傷つくだろう。あなたたちが別れなければ不幸な人はいなくなる。
 遺言で法事はない。三回忌に墓の前で、三人に問い詰められたことを話した。杏さんにお礼を言わなきゃ。多摩蘭堂に寄る。

 研人とメリーの愛の歌 堀田研人
研人四年生の六月、学校のバザーで〈東京バンドワゴン〉の古本屋をすることにした。平本芽莉依と一緒にする。マードックさんと古いリヤカーを改造してワゴンを作る。
 校長先生が、古本の雑誌を見、幽霊と言いながら気を失う。雑誌の写真には芽莉依の祖母が写っていた。
 夜、校長先生・初芝が来る。四十年前、学生運動で先生の恋人が怪我をして亡くなった。その人の写真、亡くなったはずの恋人の写真だった。芽莉依の母と祖母が来る。西田優子さん。恋人との交際を止めさせたい親が、優子さんを死んだと初芝に伝えた。初芝は大学を辞め郷里に帰り、大学をやり直す。優子さんは連絡を付けられなかった。校長先生はお元気で何よりでしたと言う。
 
 言わぬも花の娘ごころ 千葉真奈美
 真奈美が偶然、日比谷で花陽と会った。花陽が藍子と仲のいい真奈美にお父さんのこと知ってるって聞かれた。母親が不倫して産んだのが自分で、不倫相手のお父さんと一緒に暮らしていたお姉さん・すずみが今は、一緒の家にいる。内心は複雑なはずの花陽の質問に真奈美は応えた。
 藍子22才、真奈美21才の時、隣町の産婦人科で二人は久しぶりに会った。藍子は妊娠、真奈美はしていなかった。知ってる人に会わないよう隣町に行ったのに会ってしまった。
 藍子は相手が妻子ある大学教授だと言う。全然関係ない先生だけど、一目惚れだと言う。産むことを教授に伝えなさいと、二人で槙野教授に会った。藍子は素晴らしい家族がいるから私は大丈夫、離婚をしないでください。槙野さんの家族を大切にしてほしいと言った。
 真奈美は藍子に内緒でもう一度会った。学校に槙野教授が、学生と深い中になっていると匿名の手紙と写真が届いた。写真は、槙野教授は分かるが、女性は誰だか分からない。槙野教授は真奈美の名前を出してしまった。真奈美は大学まで行き、偉い人に会った。槙野さんと深い関係になりましたが、これきりで終わります。申し開きし、学校の学生でなかったので不問にされた。
 このことは藍子は知らないからね。
 
 包丁いっぽん相身互い 甲幸光
 真奈美さんの友だち・松谷さんの小学二年の息子さんが、亡くなった母親に柿のコロッケを作ってもらっていたという。作り方を教えてほしいと言われる。コウは、いろいろ考える。いっしょに作っている時、松谷さんと話した。
 松谷さん夫婦は、真奈美がコウを雇ったことを驚いていた。真奈美は昔手酷い失恋をした。妻は何日も泊まり込んで自殺をしないよう見張っていた。二度と一生恋はしない。自分の隣に男性を置かない。人を雇っても女性しか採らないと言った。それ以後、彼女はかたくなだったらしい。
 何故、自分は雇われたのか。どうでもいいと思える笑顔があった。

 忘れものはなんですか 堀田サチ 
 朝刊が配られていなかった。配っているのは大学生の土井彰太君。彰太君の様子が変だというのでみんなで聞き回る。最近、祖母が亡くなった。急死だった。遊び回っていて携帯をの電源を切り連絡が取れなかった。すごく後悔していたことを聞き込んだ。
 紺に頼まれ公園に行く。研人が合図をしたらにっこり笑って手を振ってお辞儀をしてさよならと言って去って行ってと言う。
 紺の隣にいる彰太君と眼が合う。ゆっくりお辞儀しててを振りさよならを言い脇き道に入った。
 新聞を入れ忘れた日、屋根の上のサチが彰太には自分のお婆さんに見えた。それで入れ忘れた。研人は、お婆ちゃんは彰太君にさよならを言いに出てきたんだ。と伝えた。

2022年7月19日火曜日

東京バンドワゴン⑦ 

 東京バンドワゴン⑦ レディ・マドンナ 小路幸也

 



冬 雪やこんこあなたに逢えた
 亜美の弟・修平と折原美世・本名・三迫佳奈の結婚式があった。紺と佳奈の姉とは同級生でわだかまりがあったが、両家は顔を合わせ今後ともよろしくと挨拶を交わした。
 カフェで、アコースティックライブを始め、1ヶ月に1回ほど夜8時ぐらいからカフェを開けるようになった。
 鈴花とかんなは藤島のことを「ふじしまん」と呼ぶ。
 古本屋の客で二人変わった人がいる。一人は、一冊ずつ本を売りにくる。もう一人は、棚の一角に入っていた本をごそっと買って行く。
 古本屋に、奈良勢津子がちょくちょく来る。池沢の先輩。昔は奈良さんの劇団員だった。
 木島と茅野のおかげで不思議な客のことが判った。
 棚の一角の本を買って行くのは、藍子の同級生、三石でした。高校時代に藍子に告白して、「十年後に気持ちが変わっていなければまた申し込んでください」と言われた人。もう一人は、奈良の息子だった。我南人がクリスマスパーティに二人を呼ぶ。
 三石は病気で手術を受ける。初めて真剣に人と向き合うことを教えてもらった藍子に礼を言えたらと思って寄ってみたという。勘一は入院中に読むよう気分の明るくなる本を五六冊渡す。元気になってまた来ますと言う。
 奈良は、桐箱に入った、初代が制作した〈東京バンドワゴン〉所蔵の古書をまとめた名だたる文豪が寄稿している豪華な目録。目録に収録されている文豪の直筆の原稿用紙を出してきた。〈伊豆の堀田草平〉は奈良の劇団のパトロンだった。勘一が草平の息子だと知って、お礼を言いに来た。お金に困ったら売りなさいと預かった本と目録を返しにきた。

春 鳶がくるりと鷹産んだ ひな祭りのお雛さまが五セットある。芽莉依は友だちとツアーのように全部見て回る。
 花陽は高校に合格。目標の医大合格のため塾に行き出した。
 研人が、部活の最中に先輩・田代を殴ったと学校から呼び出しが来た。田代が「我南人なんて過去の人、オワコン」と言ったために研人は手を出したようだ。怪我をさせたことは事実だからと、紺と亜美と我南人と研人は謝りに行く。納得できない研人は、次の日、朝早く葉山の龍哉の所に行ってしまった。勘一と亜美と池沢が向かえに行く。龍哉は、この別荘は俳優の親父が愛人だった母のために遺したただ一つの物。愛人を住まわせて死ぬまで閉じこめておいた男が遺したもの。環境からすごい乱暴者の不良だった龍哉が殺したいぐらい厭なやつがいた。その時、母親が殺すことより、許すことの方がはるかに難しい。どうしたら許せるかを考えるために人間は生きている。生きていたかったら許すことを考えなさいと言っていたと話した。怒りを別のものに表現する、そうすれば何かのエネルギーになる。曲を作れば感動した人の生きる糧になる。創作ってそういうものだと、我南人に教わったと話す。
 研人はあいつと会うとムカムカすると言っている。亜美は任せなさいと言い研人と学校に行く。先生に会い、部活に行く。亜美は田代に、昨日謝ったのは研人が、殴ったことに対してだった。我南人をなじったことは、まだ発言の重さがわからない子供だから今は許す。三年音楽演っても自分の発言がどんなに愚かだったか理解できなかったら音楽をやるんじゃありません。いいですね。と凄んだ。ただのおばさんに言われても・・・。と言う田代に対して、バスドラを響かせ、軽やかにかつ正確にドラムソロを響かす。「いかが?」「すげ、です。」と言う感想を聞いて亜美は「でしょう?。これからもよろしく頼むわね」と収めた。研人も勘一に「母さんすげえって。」
 ライブに出演した中川浩成が、我南人に相談する。一度もあったことの無い娘に、一年に一度手紙とお金を送っていた。娘が東京の大学に入って会いたいと言ってきた。会いたいが、自分は社長をしていると言っている。どうしたら良いだろうと言う。
 葉山の三鷹の会社の保養施設を借りてパーティをするこにした。知りあいを集めて娘さんをもてなす。我南人、龍哉、池上、三鷹、永坂、藤島、勘一の付添に紺、風一郎。潤子が来て挨拶をする。潤子の母は美容院をやっている。明るく、シングルマザーは一つの生き方。父親は私たちを母子にしてくれた。それで幸せ。父親として家庭に入れる人じゃないけれどそれは個性なんだ。ひがまないで楽しみなさいと言われてきた。
 すまん!中川は社長なんて嘘、売れないミュージシャンなんだと自分で言ってしまう。
 勘一は知りあいというのは本当だ。昔からの友だちや歌を聴いてファンになったそこは嘘じゃないぜ。親父さんは良い歌を唄うぜ。潤子はお父さんの歌が聴きたいと言う。

夏 思い出は風に吹かれて 夏休み、花陽と研人はマードックとイギリスに十日間行った。
 すずみの友人・美登里が久しぶりに訪れる。毎日、二人と遊んでくれる。
 勘一の様子がおかしいと、みんなが言う。勘一は、サチの父親の蔵書を探していた。サチの父が書いた本・海外を見聞した紀行文、20冊しかない私家版、〈最愛の娘、咲智子へ〉と書いてある本を探している。
 岩書院の社長・大沼が五条辻家の蔵書印の入った本が見つかったと持って来てくれた。出たところが悪かった。通称〈山端文庫〉。M大付属書誌学山端爾後研究所。昔、醍醐が、家の蔵の全部のリストを作らせてくれ必要な本を買い取りたいと来た。断ると、夜泥棒に入って来た。逃げ出すのを、ぶん殴った。警察沙汰にはしなかった。が、総入れ歯に鼻曲がりになったという曰くがあった。
 勘一は、見せてくれ私家本だけでも譲ってくれと言えば、代わりに蔵の中のものをと言われかねないと悩んでいた。
 山端文庫の建物は、かっての男爵東集済様の屋敷・みんなでジャズ・バンドで演奏した屋敷だった。
 花陽が電話をしてきた。研人が一人でロンドンのライブハウスに出かけ、夜、バスが無くて、キースに電話して泊めてもらったという。我南人に礼の連絡をしておいてという連絡だった。
 三石が元気に、古本屋にやって来た。
 大沼社長から、〈東京バンドワゴン〉から盗まれたらしい本が持ち込まれた。今日、金を取りに来ると連絡を受ける。勘一と紺とすずみが行く。やって来たのはやはり美登里だった。美登里は男に騙され男の借金を返すためにソープで働いていた。虫干ししていた本を持ち出していた。話を聞いたすずみは、父親の生命保険の残りから三百万を美登里に貸す。
 我南人が来る。大沼に〈山端文庫〉の講堂でライブをやりたいと話をしてほしい。我南人はノーギャラで特別ゲストに、キースを呼ぶ。入場料は〈山端文庫〉に寄付する。代わりに五条辻家の蔵書から一冊ただでほしい本があると伝えてほしいと交渉する。
 同じ頃、真奈美は赤ちゃんを産んだ。すずみと美登里と我南人は借金を清算しに行った。
紺と勘一は、病院に向かった。
 赤ちゃんが産まれるのを待つ間、池沢は青に、生まれる時の話をする。生まれる時に来た我南人は、この子はきっと周りの皆を幸せにするよと言ってくれた。本当に私を幸せにしてくれた。青は、母さんと呼ぶのは死んだ堀田秋実、ただ一人なんだ。いつまでたっても母さんとは呼べそうにない。でも鈴花におばあちゃんと呼ばせてもいいかなと聞いた。池沢は、こくんと頷きありがとうと言った。
 コウと真奈美の息子は、勘一が真幸と名付けた。真奈美の真とコウの幸光の幸をとった。

秋 レディ・マドンナ 鈴花とかんなの七五三。
 藤島がきれいな人と歩いていたというのは、義理の母・父親の若い奥さんだった。藤島と五才しか違わないらしい。
 秋実の友だち・姉妹みたいな智子が来る。建物の老朽化が激しく、資金難もあり施設を閉めることになりそうだと報告にきた。智子は秋実たちが育った施設で子供の面倒をみてきていた。春までは頑張ると言った。
 龍哉と一緒に生活している公平が相談に来た。今、くるみと三人で暮らしているが、公平はアメリカへの赴任が決まった。残った二人は好きあっているのに、あの家で二人は暮らせないと思っている。くるみは引っ越すつもりだが、たくさんある本を引き取ってほしいと言ってきたら、話を聞いて二人をうまく導いてくれないだろうかという。
 妹・淑子の弁護士がきて、淑子は住んでいた家を勘一に遺した。もともと勘一の名義だった。ありがとうと受け取る。
 勘一は三石を呼び、明後日、智子と龍哉たちを呼び集める。我南人は親父さすがと感心する。
 勘一は龍哉に、手に入った淑子の別荘と龍哉の家と交換しようと言う。古さと大きさでほぼ同等と鑑定した三石が言う。勘一は、二人は淑子の別荘で暮らして、龍哉の別荘は売却して、児童擁護施設の改築と運営費用に充てるという計画を話す。龍哉の母は龍哉に愛する男の幻影を見、自殺した。くるみは義父から逃げている。くるみの考えていることを話す勘一。龍哉は我南人に敵わないと思っていたのにもっと敵わない人に会いましたと話す。
 龍哉は勘一の計画を受け入れスタジオも造り、新しい場所で新しい生活を始めることにした。
 龍哉は三日後、祐円さんの神社で挙式をした。
 紺が仏間でサチと話そうとした時、かんなが、おおばあちゃんとサチを指さした。紺は研人の時と同じように、おおばあちゃんが見えても指を差さないように教えなきゃと言った。
 
 

2022年7月16日土曜日

〈磯貝探偵事務所〉からの御挨拶

〈磯貝探偵事務所〉からの御挨拶  小路幸也

 刑事を辞め、探偵になった磯貝は、元同僚・鈴元から探偵事務所のビル一階のアートギャラリーの店長を紹介される。彼女・勝木奈々は鈴元の中高時はそんなに親しくない同級生だった。奈々の夫・勝木章38才と連絡が取れなくなっているので探して欲しいと言われる。勝木章は、ペンネーム綾桜千景でライトノベル作家をしていた。

 綾桜が創作教室の講座の五年間手伝いにきている大学を卒業した佐々木翔子に会う。彼女も連絡が取れなくなっていた。

 磯貝がバイトに誘っている桂沢光。彼は大学二年、磯貝が刑事を辞めるきっかけになった事件の関係者だった。光の母の妹・事件がきっかけで記憶をなくしている青河文は小樽の〈銀の鰊亭〉に住み、光も一緒に住んでいる。事務所のあるビルの土地も青河家の持ち物だ。
 光が、間宮ひかるさんと知りあい鉄柱の写真を撮りたいと光の車で実家近くの鉄柱の写真を撮りに行く。鉄柱のそばに勝木という農家があった。ひかるの実家は喫茶店だった。喫茶店のアルバイトの面接に佐々木翔子がきていた。

 磯貝は手詰りになり、綾桜の本を読んでいる。舞台が銀の鰊亭だと思われる話があり、鰊亭に出向く。そこで光と文がひかるの写真撮影の目的が分からないとはなしていた。磯貝はひかるちゃんを呼んで聞けばいいと集まるおでんだてをする。知りあいのS大建築学科准教授・宮島俊を呼び、写真を見る会を開く。ひかるちゃんは佐々木翔子と一緒に来た。磯貝は匿名にし、探偵というこも隠していたが、翔子がきたことで身元が分かってしまった。
 ややこしいことは省き、ひかるに何故写真をとりに行ったかを尋ねる。ひかるはグライダーで上を飛んだ時、その家の人が動物を抱えている写真を撮った。実家付近では動物虐待の噂とかがあった。ひかるが飼っていたネコもいなくなりその敷地に埋められているのではないかという思いがあったと言った。その農家は磯貝が探している勝木の弟の家だった。
 別の日、宮島も含めみんなで訪れ、彼と話をする。勝木の取材ノートに書かれた数字は勝木の弟の家を示す数字だった。この数字を書いたのは鈴元だった。

 磯貝は細かく調べ、一つの結論に達する。綾桜千景はあの家の庭に埋まっている。
二人を呼び、たどり着いたことを話す。二人は話した。二人の不倫を知った章は、自分のマンションで奈々を犯人に仕立て上げるための偽装をした自殺をした。見付けたのは弟だった。弟は全て理解し、兄の遺体を運び自分の庭に埋めた。遺体がないところに奈々は戻り鈴元が呼ばれた。彼は事件現場をビデオで撮った。二人は章を失踪者のままに出来なかった。そして優秀な刑事・磯貝に託した

2022年7月14日木曜日

貸し物屋お庸謎解き帖

 貸し物屋お庸謎解き帖 平谷美樹
  桜と長持

 桜と長持 元禄九年(1696年)
 二年前に開店・湊屋両国出店 庸は店主、本店から手代の松之助が通っている。同じ商売の大店の店主・長兵衛が長持を貸したが何に使われたか判らない。次に貸しても大丈夫が調べてくれと言ってきた。雨が降り、大工をしている弟・幸太郎と、甚八が調べてくれた。
 白粉屋の娘がいなくなっていた。無理に結婚させられる娘は、店の者の手を借りて駆け落ちしていた。長持は落ち葉を入れる所に埋められ、娘がいなくなったと大騒ぎになるまで一晩娘を隠す場所に使われた。長兵衛から白粉、店の者から口紅を貰った。

 遠眼鏡の向こう 庸は自分が清五郎を好きなことに気がつき戸惑っている。
 呉服屋京屋の若旦那が遠眼鏡を借りに来た。挙動不審の人は何に使うか調べる。吉助は出会い茶屋の女を見ていた。女を調べるとあやたろうという家に入った。吉助の挙動が怪しく女の身が危ないと感じた庸は女に用心するよう言いに行く。綾太郎は陰間だった。女は綾太郎だった。綾太郎たちは庸を気に入る。吉助が動くように綾太郎は出合茶屋に行く。吉助は匕首を持って構える。そこにいたのは綾太郎と清五郎だった。庸は清五郎が危ないと吉助に飛びかかる。庸は吉助を父親の所に連れて行き、このままでは吉助が何をするか判らないので誰が見張りを付け、上方にでも修業にだして欲しいと言う。陰間に手を出すのはいい。匕首を出すのは良くない。

 小猿の面 猿の面を借りに来た。何に使うのだろう。綾太郎の仲間が調べてくれる。犬猿の仲ということで犬払いに使うようだ。見えてる者と見えてない者がいる犬のようだ。庸も見張る。権介という昔飼っていた犬のようだ。抱いてもすり抜け、餌をやっても一所懸命食べても減らない。夫婦に行くべきところに行けよと言うと光が薄くなった。次の日は出なかったようだ。
 
 つぐらの損料 綾太郎たちが庸が貸したつぐらに入った捨て子の赤ちゃんを連れてくる。つぐらを借りて行った名前から、母親が分かった。父親は賭場の借金三十両を残して死んでいた。三十両の借金のために身を売る。子供を綾太郎たちに託していこうとした。庸は何もできなかった。もらい乳をした家が一緒に育てると言ってくれた。
 清五郎に話に行き、何も出来なかった。貸せぬ力もあるということを学びました。辛うございますと報告した。

 ちびた下駄 ちびた下駄を借りに来た。綾太郎たちが調べてくれる。櫛や簪を売る丸屋の主人だった。半月に一度、物乞いに化け呉服屋の前に座る。一人の女を見ていた。故郷・上総に残した女房と娘が、父親を探して江戸に来ていた。父親は出稼ぎに来て、丸屋の入り婿になっていた。庸は何もしなかった。母と娘は自立していた。
 清五郎が良い仲間を持ったなと言う。

 大歳の客 長いこと会っていなかった息子に会いに行くという年寄りが来た。膳と器を二人前借りたいという。ここで借りると酒と肴が付くと教えられたと言う。姉のりょうだ。息子の長屋に行く。息子は誰もいないと言うが、庸は半兵衛は死んだんだなと話、息子と話す。半兵衛は謝ってばかりだった。誠太郎は最後に住んでいた所を聞き、遺骨を貰って来ると言った。半兵衛は泣いた。
 帰り、りょうが現れた。修業が終われば二度と外に出られないらしい。
 
 

 


2022年7月12日火曜日

フルスロットル

フルスロットル ジェフリー・ディーヴァー 池田真紀子訳

 フルスロットル キャサリン・ダンス
仕掛けられた爆弾を探す。犯人は捕まえた。どう聞き出すか。時計を速め、爆発が起こって閉まった様子で話す。連行中に記者に「どうしてあの人たちを標的にしたんです?」という質問をするよう頼んだ。爆弾の場所は分かった。

 ゲーム サラ・リーバンが殺されたと思われ、犯人・ウェスターフィールド親子は捕まった。家政婦のカーメル・ロドリゲスはサラの遺体を見付けることを、エディ・カルーソに頼む。
 カルーソが調べた事実は、サラは死んではいないこと、隠れる手助けをしたのはカーメルの夫だった。

 バンプ ポーカの生番組を流した。第一回終了後、お金が狙われた。たまたまその場に居合わせた男がテコンドウで阻止した。第二日目、最終決戦でオコナーは負けた。
 オコナーは現金強奪未遂事件も勝負も出来レースだったことを暴いた。一つ取引といこうか
と最後に言った。

 教科書どおりの犯罪 リンカーン・ライム
第一事件現場にゴミが散乱、物的証拠を得られない。第二現場は爆発し、水をかけられ物的証拠が拾えない。ライムが書いた教科書を準えている。第三の現場は風呂タブ、水を入れながら死んで行く。サックスが助け出した。教科書を買っていたファーガソンの元妻が犯人だった。
 ライムは手術で動く場所が増えている。

 パラダイス 
 
 三十秒
 

2022年7月10日日曜日

無花果の実のなるころに

 無花果の実のなるころに 西條奈加

 父の転勤に同行せず、神楽坂の祖母と暮らすことを決めた中学二年生の滝本望。包丁を持てない祖母は面倒くさがりで、気が強い。でも「お蔦さん、お蔦さん」と誰からも頼られるような不思議な吸引力を持っている。お蔦さん目当てに人が集まってくるから望も忙しい。
 本名・滝本津多代。神楽坂の元芸者・芸名・蔦代。みんなはお蔦さんと呼ぶ。

 罪かぶりの夜 望の幼なじみ・木下薬局の洋平が、蹴飛ばし魔の犯人として警察に捕まった。望はお蔦さんと警察に行く。ヨシボンと呼ぶ刑事さんに詳しく話を聞き、本当の蹴飛ばし魔を探す。洋平が好きな女の子の彼氏が犯人だった。彼氏を庇った浅井美樹が犯行を洋平に見せた。洋平は美樹を庇って自首した。

蝉の赤 望は桜寺中学美術部に所属している。文部科学賞をとった足尾先輩が文化祭に来た。足尾は文科賞をとって自分が使った赤は乾蝉丸という作家の「蝉の赤」の真似なのに賞を貰っていいのかと悩んでいた。赤とオレンジが足尾さんの色と言われて落ち着いた。展示していたその作品が外され穴が空いていた。望と一緒に見に来ていたお蔦さんが烏の嘴での事故としてその場を収めた。本当は足の不自由な杖を突いていた人の杖の持ち手の痕だった。二人は足尾を連れて江木に会い話を聞いた。展示していた絵が落ち手を出した手に杖を持っていたため穴を空けてしまったのだった。彼も、学生の時、父親の絵を真似て描いた絵が賞を貰って悩んだまま年を取っていた。お蔦さんはせめて新藤のじいさんの歳まで続けてけてから泣き言を言いなと言う。新藤のじいさんは、美術部部長の祖父。日本画家。

 無花果の実のなるころに 近所で俺俺詐欺の被害が続く。お蔦さんが調べると犯人はかなり綿密に調べていた。お蔦さんと望は望が作った無花果タルトを手土産に被害にあった志野さんの所に行く。孫の聡が来ていた。お蔦さんは聡と無花果の話しをした。五百万ぐらいだったらいつでも都合できると話す。詐欺電話が掛かって来た。望は祖母がいないので用意出来ない祖母が帰ってから銀行に行くと言うとバイク便がくる方法を指定された。バイク便がお金を運び待っていた男を捕まえた。孫の聡は偽物だった。お蔦さんには判ったから五百万の話をしたのだった。志野さんは望の作った苺タルトを持って面会に行くと言った。

 酸っぱい遺産 芸者頃のお客さんで、今も付き合いのある立脇工業の社長が亡くなった。先代社長がご贔屓さんだった。社長は遺言で個人所有株全てをお蔦さんに残した。総株数33%、六億円になるという。筆頭株主になった。弁護士と息子・専務が伝えに来る。専務の継母、社長の奥さんが来る。お蔦さんと望は会社見学に行く。望は専務の弟・大学院生に開発途中の調理ロボットを見せて貰う。株主総会でお蔦さんの思う通りに進んだ。社長は将棋と同じ、会社も守りの固い土台がしっかりしていた。資産運用に失敗した専務を辞めさせ、特許技術二つを売り、お蔦さんの相続した株を三社に分けて売り、借金を返済した。社長は取締役の一番若い人がなった。専務は喧嘩腰でお蔦さんの前に現れた。辞めさせられた文句を言う。あんたにとって、会社を出て、裸一貫から会社を興し大きくしたじいさんと同じ行き方をしたほうが良いと社長が判断したのだとお蔦さんは言った。守るより攻める山っ気な気質もじいさんにそっくりだ。三代目なんて向いてない。

 果てしのない嘘 わが家を訪ねてきた楓を望は好きになっていた。楓の母親が倒れ病院に運ばれた。通報したのは乾原奉介だった。楓の父親だった。争った痕があるので奉介は容疑者だ。母親・石井有紀は、病院で気がつき自分で転んで頭を打ったと言った。奉介が来たことは知らなかった。お蔦さんと望は病院に行く。お蔦さんは身内だと言う。奉介の義理の姉だと言う。望の祖父の弟だった。奉介・乾蝉丸だった。楓はわが家が預かった。
 有紀は自分で転んだとしか言わなかった。有紀の右手の中指と薬指の爪に茶色の革が付着していた。
 望と楓は同級生の翠に会った。父親も一緒だった。翠の父親は新東フィルのコンマスだった。革製のヴァイオリンケースを持っていた。望は翠の父親が楓の母親の事件と関係がありそうだと思った。
 楓は三才の時別れた父親と会った。楓は奉介の母親・蝉丸とそっくりだった。有紀は退院した。
 お蔦さんは、事件の筋を話した。有紀はガンだった。レーザー治療で治した。音楽教室の生徒が減った。有紀が不安な状態の時、翠の父親・小坂に会った。フランスで二人は恋人だった。小坂と別れたあと奉介と暮らし始め、楓が生まれた。小坂は奉介に、楓は自分の子だと言った。有紀は否定したが、奉介は家を出た。そんな小坂が六千万のヴァイオリンを持っていた。楓と同い年の子供がいる。彼は有紀と付き合っている時、結婚していたのだ。有紀は、楓は小坂の子だと強請った。そしてあの日揉めて有紀は怪我をした。小坂は逃げた。ヴァイオリンケースを警察が調べればはっきりする。
 奉介も望も、はっきりさせることを拒否した。翠もショックだろうし、楓も傷つく。一生黙っていることにする。楓に嘘を付いた。
 楓がずっと笑っていられるようにこの道を選んだ。自分の役割を。
 
 シナガワ戦争 望の友人はイケメンで有名な彰彦だ。洋平と彰彦の家に遊びに行った時、彰彦に、おまえの彼女の翠を捕まえている。すぐ助けに来い。来なければ翠がどうなっても知らないぞと脅かす。時間を伸ばし、用意する。サッカーボールや、いろいろ。情報を集める。彰彦の兄の同級生らしい。相手を突き止め家に連絡する。廃工場へ行き、彰彦と洋平が相手をしている間に望は翠を助ける。だが、捕まってしまう。そんなところに相手の父親と妹が来た。父親は息子を殴った。
 彰彦の家で話しあう。八馬宗司、友だち二人、父親、妹、彰彦の兄と両親、翠と父親、望と洋平。
 宗司の妹が彰彦に告白した。ふられて間がない彰彦は付き合う気がないと言った。それなのにすぐ翠とデートしている彰彦を見た妹は兄に愚痴った。兄・宗司は妹のために翠を捕まえ、彰彦に暴力を加えようとした。
 宗司の父親は謝り、警察に行かすと言った。翠の父は事を大げさにしないと言った。宗司の父は高校を中退し、これ以上半端な真似をさせればこいつのためにならないと言う。
 翠の父は、自分の悪意を持って嘘を言ったり、はずみとはいえ人を傷つけたこともある。ある人に、心からすまないと謝罪して己の罪を抱えて生きるのも立派な生き方だと言われた。人の弱さや痛みを知り、他人の罪も赦す。寛大さを持てと言うことかと思う。
 宗司は買ったばかりのバイクを売った。
 翠の父親もヴァイオリンを売っていた。何か悪いことをして償いに大事なものを諦めたのかなと言った。
 お蔦さんは、小坂と有紀を会わせてお互いに謝罪させたらしい。

2022年7月7日木曜日

京都寺町三条のホームズ 0

京都寺町三条のホームズ 0 望月麻衣 

 過去の二人と京都四季のガイド

2022年7月6日水曜日

東京バンドワゴン⑥ オブ・ラ・ディオブ・ラ・ダ

 東京バンドワゴン⑥ オブ・ラ・ディオブ・ラ・ダ 小路幸也

春 林檎可愛やすっぱいか 我南人は、研人の小学校の卒業式のサプライズライブの後、キースのアメリカの人気バンドのワールドツアーに参加のため旅立つ。池沢百合枝も付いて行った。
 三鷹と永坂と、コウと真奈美の合同挙式が祐円の神社で行われ、三鷹と永坂の結婚披露パーティと藤島の新会社設立のお披露目が一緒に行われた。
 我南人の同級生・おかはし玲の生家を記念館にしようという話が起こる。三十年前に亡くなり本は散逸、なかなか集まらない。
 古本屋のワゴンの上に林檎が載っている。三度置かれていた。
 研人が光輝と喧嘩して泣かせたと学校より電話があった。光輝と父母が堀田家にくる。青の先輩・川上も来る。風一郎が酔っぱらっくる。風一郎を我南人の部屋へ入れる。
 光輝の父・西田は喧嘩をごまかそうとする。勘一はちゃんと子供の話を聞いてやれと怒鳴る。我南人が帰って来る。我南人は全て知っていた。LOVEだね。みんなLOVE をいっぱい持ってる。でも子供だからどうしていいか判らないんだね。
 本の整理をしている時、研人が芽莉依にプレゼントした本が出てきて、光輝は急に泣いてしまった。光輝は芽莉依が好きだった。研人はそれが判ったから喧嘩したことにした。
 おまけが付いた。その本は東京バンドワゴンが検印があった。何故、学校の図書館にその本があったのか。青は昔、川上が好きで店の本を川上に渡していた。青の初恋かな。川上、今は森下、中学校の先生になっている。
 林檎の謎も解決、奈美子ちゃんが研人を好きだったということ。
 研人と光輝、奈美子の芽莉依も、集まったおかはし玲の本を並べる手伝いをすることになった。
 風一郎はいなくなっていた。

 夏 歌は世につれどうにかなるさ 安藤風一郎が十年ぶりにテレビに登場。〈ホームタウン〉大層うれている。我南人の新曲、花陽の着メロだった。堀田家では風一郎の盗作?という話になっている。
 青が映画出演することになった。主役は折原美世、亜美の弟・修平の彼女。舞台は古本屋ということで東京バンドワゴンも使われることになった。
 始まってすぐ、本の積み方、後の家訓の消えかかった文字をきれいに書きなぞっているのを見て、勘一が切れた。予想していた紺と青が、京都の乱麻堂を紹介した。青は京都で撮影に参加した。
 風一郎の盗作?の話が、編曲した龍哉の耳に入る。龍哉はあれは我南人の曲じゃないと言う。龍哉のスタジオで江ノ島ライブのリハをする。その時我南人も行くことになった。勘一と紺と研人も行く。我南人は、我南人が作った風一郎のデビュー曲を弾いた。風一郎は、作りかけの曲を盗んだと言った。アルコール依存症で妻に愛想尽かされ売れる曲が欲しかった。この曲さえあればと思ってしまった。妻が帰って来てくれると思った。あれは研人の曲だと言う。あの曲を全部完成させ、歌詞書いてすごい曲に仕上げたのは間違いなくフーちゃんだよ。
 風一郎は作曲の名義に研人も入れた。印税が研人に入った。

 秋 振り向けば男心に秋の空 この秋でかんなと鈴花は二才です。
 怪しげなヤツがいると言っていた正体が現れた。昔の介山陣一郎の孫、幸子が来た。会社は衰退するばかり、会社もわが家も売り払い整理するつもりだ。父が残した蔵書を譲るならここと書いてあったという。持って来た本は刳り貫いてあった。二百冊ほどが刳り貫かれガラス瓶が仕込まれていた。刳り貫かれていなければ高い本もある。亜美がこの瓶一本で百万円ですと言った。生家は手放さなくてもいいようになった。
 幸子が、おかはし玲の本がたくさんあるのを見て記念館の話になった。原画も絵本も童話もあるという。屈強な男たちが会場のガードをしてくれることになった。

 冬 オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ 研人は学校でバンドを組もうと仲間を集めている。
研人は龍哉のスタジオに一月に二、三度行く。
藤島は藤島ハウスに住んでいる。藤島をストーキングしている男女がいると木島が言う。男は高木宏、女は平井恵だった。藤島の姉が無理心中した相手が、高木宏。高木は生き残り、自分の罪だと長い刑期を務めた。どうして二人が藤島をつけていたのか聞こうとした時、病院から電話があり、勘一の妹・淑子が亡くなった。
 淑子を弔いたいと思うが、淑子はチャーター便でアメリカに帰り、葬儀はアメリカで行われる。
 平井恵、作家の中澤恵さんは藤島の姉の友人だった。麻里の弟・藤島が、麻里とそっくりな中学生と歩いているのに驚いた。誰と付き合っているのか言わなかったが、相談には乗っていた。でも止められなかった。救えなかった。高木は、彼女の弟に何かあってはいけないと思い心配し、様子を窺っていた。
 高木は藤島ハウスの管理人になった。中澤には高木もいる、しっかり聞いて彼女の人生を本に残してやれと勘一は進めた。藤島には二人の手を借り、きっちり葬らせろという。
 十二月二十日、修平と佳奈が式を揚げる事にした。
 真奈美が妊娠した。コウは勘一に名付け親になってほしいと頼む。
 はるに池沢百合子がいた。アルバイトをする。真奈美の親戚のおばさん・慶子さんですと紹介された。
 
 

2022年7月3日日曜日

東京バンドワゴン⑤ オール・マイ・ラビング

 東京バンドワゴン⑤ オール・マイ・ラビング 小路幸也


夏 あなたの笑窪は縁ふたつ かずみ、マードックの引っ越しです。藤島ハウスへ。
亜美の弟・修平が店の手伝いに来てくれる。道ならぬ恋をしているらしい。
 花陽は和太鼓の稽古をしている。双子の兄弟・神林君が迎えに来た。花陽は、恭一君が凌一君か分からないで付き合っている。
 修平君が付き合っているのは、折原美世・三迫佳奈さんでした。人気女優になって自分は彼女の邪魔になるのではないかと考え、別れ話を出していました。青は修平の前で、「佳奈おまえは俺のものだ。子供が出来た身だから一度は諦めたが、昔みたいにな。いいな、修平」と佳奈を抱き寄せる。修平が「冗談じゃない。どれだけ佳奈のことを考えて邪魔にならないように付き合ってきたか」青を棚に押し付けて真っ赤になって怒っている。佳奈は僕の恋人だ。やっと言ったか。脇坂家に帰ってきちんと報告した。
 勘一は、ネズミの墓参りの帰り、茅野の甥を東雲文庫に連れて行く。後説百話物語を見せる。親友の彼氏が浮気する反省させようとしたのだった。浮気する男の怖い話、浮気する男が茅野の甥だった。

秋 さよなら三角また会う日まで 十月 藤島と三鷹と永坂と三人で始めた会社だったが、永坂が辞めた。藤島は三鷹が永坂を好きなことを知っていた。二人が一緒になればいいなと思っている。
 研人は我南人の部屋でギターをいじるようになった。
 新聞記者が堀田家を調べていた。勘一は蔵の中の国宝級の古典籍、古文書だと言う。創業者・堀田達吉は華族・三宮家の入り婿だった。鉄道事業で大儲けした。突然三宮家と縁を切って世捨て人のようになって〈東京バンドワゴン〉を作った。明治の話。その時代に隠さなければならない本や文書を頼まれて隠した。その後、草平も戦後の日本政府と進駐軍の両方に関係があった。財閥の株式売買利益等が蔵に眠った膨大な蔵書購入資金になった。そうゆう物をを海外に散逸させないように、戦いが始まるような偉いさんの文書類を根こそぎ集めた物が秘密の穴蔵があるということだった。家族全員、藤島と茅野も聞きました。
 鈴花とかんなの誕生日。月曜日に転校する神林兄妹を誕生日パーティに呼びました。引っ越し先はイギリスです。
 新聞記者が来た。蔵を調べたいと言う。断ると、マスコミは騒ぐでしょうねとくる。脅しか。敵に回しましたね。木島がやってくる。俺に任せろ。木島はフリーになり裏から脅す。あいつロリコンなんですよ。首尾よくいくとしばらく雲隠れします。勘一は昔からああいう男に助けられて来たんだと言う。

 冬 背で泣いている師走かな 紺の大学の恩師・百々准教授が本を保管できないか聞きに来た。東雲文庫を紹介する。百々は、自分の所為で大学をやめた紺がいるのに、自分が教授になってはいけないと思っていた。紺は紫式部の自筆の門外不出の源氏物語を百々先生に渡し、研究してくださいと言う。百々先生が作った偽物が本物と言われ流出した。紺は自分が作ったと言い大学を辞めたのだった。
 我南人が甲状腺の手術をする。声が出無くなるかもしれない。このままだと死んでしまう。後悔しないように手術する事にしたと発表した。

 春 オール・マイ・ラビング 三月 永坂と三鷹が結婚式を挙げることになった。
 ハリーがやって来た。キースに我南人の名前を出すとすぐに会ってくれた。ギターの中に日記はあった。ギターを持って来た。キースは我南人にワールドツワーを一緒に回ろうと誘っていた。我南人は行くことにした。
 研人は卒業式で我南人のバンド出演を頼みました。校長先生も。言い出しはメリーちゃんです。卒業式で演奏が始まりました。オール・マイ・ラビングです。研人が我南人と一緒に歌った。
 藤島は新しい会社を設立した。
 勘一は真奈美とコウさんの結婚式もしようと提案する。

2022年7月1日金曜日

東京バンドワゴン ④ マイ・ブルー・ヘブン 

東京バンドワゴン ④ マイ・ブルー・ヘブン 小路幸也

 プロローグ 昭和二十七年四月 
マイ・ブルー・ヘブン〈私の青空〉がラジオから流れる。私を救い、自分たちの新しい人生を求めてアメリカへ旅だった。マリア、ジョー、十郎。

 On The Sunny Side Of The Street    昭和二十年十月
 父に寄せ木細工のような箱を持たされ、浜松の東雲の家に行くように言われた。箱を肌身離さず持ち時が来るまで開けてはならない。どんな人に会っても声を掛けられてもまっすぐ浜松に行く。怪しいと危険だと思えば迷わず逃げることと言われた。政治に関わる大変重要な文書が入っている。五条辻の娘です。何があろうと強く生きるのです。
 上野でアメリカ兵に、五条辻咲智子さんですね。と声を掛けられ捕まりそうになる。丸坊主に真ん中だけ髪が長くニワトリの鶏冠のような頭の男性に、嫌がっているじゃないかと助けられた。手を離しなさい。とキングズ・イングリッシュで話す。一本背負いでアメリカ兵を地面に打ち付けないようにしてあげた。ピストルを出した時、上から人が降ってきて野次馬が傾れ込んできた。そして私たちは逃げた。
 彼は堀田勘一。東京バンドワゴンという古本屋さんだった。静岡行きの切符を無くし、家にも帰られず、古本屋さんに匿われる。
 主・堀田草平は、五条辻家は陛下にも近い位置で激動の時節を過ごされた。この文書は陛下の戦争に関わる何がしかの文言が書き留められた文書なのだろう。それを狙っているのは、GHQだけでなく日本の元軍関係、やくざにも狙われるだろうと言う。父・五条辻政孝くんとは学生時代の友人だと言う。ケンブリッジに留学も同じ時だった。祖父は堀田達吉・三宮達吉。鉄路の巨人と言われた人だった。
 勘一の母・美稲と大山かずみを紹介される。勘一の結婚相手という偽装で辻本サチ。堀田サチになったということにした。
 ジョーのボスは政治家の大物、十郎は陸軍情報局、そしてマリアも、それぞれ違った立場で、箱の移動を防ぐ目的で守りに来た。箱はベストに縫い込まれ肌身離さず身に纏うことになった。
 五条辻の父母の居所が分からない。どこかに軟禁状態ではないかということだった。トラックで五条辻の家に忍び込み、持ち去られていない物を運びだした。

 Tokyo Band Wagon 昭和二十一年一月
 堀田勘一は、東京医専の学生だった。マリアの父親は東北の鬼神といわれる介山陣一郎だった。ジョーの父親は日本人で母親はアメリカ人、父親は早くに亡くなり、母親はアメリカで再婚して、GHQの幹部の妻として、日本に来ている。
 介山がやって来た。妹の幸子も来た。
 ジョーの母親が、危険だから自分に近づくなと言ってきた。
 十郎が狙われた。この古本屋の力を見せるために内覧会を開いた。皆を招待するには二日かかった。出版社、作家、元財閥関係者、政府関係者、実業界の大物、音楽界、芸能界。
 ジョーの母親が、五条辻夫妻はヘンリー・アンダーソンが軟禁していると情報をもたらす。アンダーソンは元東集済様の屋敷に住んでいた。サチは屋敷の内部を知っていた。

 My Blue Heaven アンダーソンの屋敷で行われている演奏会に呼ばれるため、ジャズ・バンド・TOKYO BNDOWAGONを結成する。マリアとかずみが歌、サチはピアノ、勘一はベース、ジョーはサックス、十郎はドラム。マネージャーと用心棒に海坊主、山坊主、川坊主が付いてくれた。いろんなステージに立つ。アンダーソンのステージから依頼が来る。
 演奏後、父母が監禁されていそうな部屋へ忍び込み、父がいつも使っている名前入りの万年筆を見付け持ち出す。
 草平はアンダーソンをジョーのボスの別荘へ招待し話し合う。サチと勘一も一緒に呼ばれ、サチの知らない間にすり替えられた箱を燃やされる。サチは本物がどこにあるか知らない。サチほ箱から離れた存在になったことを認めさせた。アンダーソンが手に入れたことにし、サチの父母を今までと同じ大切に保護することを求め、アンダーソンは了承した。
 別荘からの帰り、勘一は偽装結婚は辞め、夫婦になってくれないかと言った。サチは了承した。
 お母さん・美音が病気療養のため草平と伊豆に行く。勘一は三代目になった。我南人が生まれた。
 昭和二十七年四月 アンダーソンがアメリカに帰った。三日後、サチの父母が東京バンドワゴンにやってきた。祐円さんの神社で式を揚げる。

 eqilogue 昭和三十七年四月 我南人の高校入学祝いに、アメリカのジョーと十郎とマリアからエレキギターが届いた。