2021年10月31日日曜日

よろず相談屋繁盛記④

よろず相談屋繁盛記④ やってみなきゃ 野口卓 

 一年長いか短いか 信吾が将棋会所「駒形」を開いて一年になる。将棋大会を開くことになった。集まった寄付で賞金を出す。三両、二両、一両。十才の少女・ハツも出ることになった。出場者は百八十三人になった。

 二転三転その先は 大会初日の朝、伝言箱に相談したいので連絡が欲しいと紙片が入っていた。大会初日が始まり、昼過ぎ連絡場所・口入れ屋松屋に行く。十日後に一献と連絡が入っていた。権六親分も顔を出す。盛況だ。
 二日目、十日後に会おうと言っていた日が、明後日の暮れ六つにという連絡だった。瓦版屋の天眼が来た。そんな時、騒ぎを起こして金をせしめようとする破落戸が来た。拳で殴りにきた腕を躱し、手指の関節を逆取りし、榧寺で話そうと外に出る。榧寺で男の不意打ちの蹴りを躱し、右手の短刀を突き出すのを叩き落とす。右手首を摑み左腕を巻くようにして右肘を決めた。そして席料を払うかもう出入りしないかということで話しをした。男は捨てぜりふを残して去った。付いて来た見物人が騒いだ。信吾は天眼の質問攻めにあった。駒形に帰ると客や見物人が大騒ぎだった。
 三日目、騒ぎは治まらなかった。近所の人々宮戸屋の常連、取引先まで見舞いを持ってやってくる。大会の最中なのでと引き取って貰う。昼過ぎ、天眼の瓦版が出回った。天眼は細部まで模写していた。瓦版を見た人々が駒形に押し寄せた。大会は中止になった。権三親分は掏摸用心をするほどだ。着飾った娘たちがきゃーきゃー集まる。

 狸だって客である 夜は宮戸屋に泊まることになった。家族にも秘密にしていた護身術のことが瓦版で町中の人に知られてしまった。九才で巌哲和尚から棒術を習ったこと。
 宮戸屋で伝言箱の人と会う。取り留めの無いことを話しているだけで気にしていることの示唆を得られると評判だという。麻太郎と名乗る男と話しをした。よく笑って終わる。
 信吾の見物人は多いが、大会は順調に進む。自分から不戦敗を申し出てもいいことになった。
 豆狸からの相談がくる。怪我をした母親の食事を下さいというものだった。毎朝、宮戸屋から昨晩の残飯を貰ってきた。狸は優勝者の名前を教えてくれた。
 信吾に宮戸屋の客からお座敷が掛かるようになった。

 これが最後の一里塚 信吾に客が来た。信吾を見極めにきたのか。
 母狸の傷が治り狸が親子で礼に来た。麻太郎が駒形を見学に来た。
 信吾に楽器の卸と小売りの老舗・春秋堂の一家から宮戸屋のお座敷が掛かった。瓦版のことを話した。
 大会は一敗が二人で優勝決定戦が行われ、桝屋が優勝、甚兵衛が二位、太郎次郎が三位になった。
 麻太郎が、訳がわからぬ状態に陥っていたのに、信吾と話しをして根幹がはっきりした。ありがとうと三両を置いて信州に旅立った。
 春秋堂一家と宮戸屋一家が顔合わせをすることになった。

2021年10月30日土曜日

よろず相談屋繁盛記③ 

よろず相談屋繁盛記③ そりゃないよ 野口卓

 人を呪わば 宮戸屋で食事をしたひとが腹下しをしたと医者がやってきた。傘庵。瓦版が出る。岡っ引き権六が調べてくれているようだ。権六は大ぴらに出来ないようで、宮戸屋の繁盛を嫉む深田屋が医者と結託してでっちあげ金を強請るための狂言だったことを、知りあいの瓦版書き・天眼に書いて貰う。

 縁かいな 生き物と話しの出来る信吾は、甚兵衛の飼い猫・黒介に相談屋の看板に伝言箱を取り付けることを提案される。相談に来た人は、今までの相談で面白い話しを教えて欲しいというものだった。信吾は仲が悪い商家の娘と息子が恋しあった話しを作って話した。その話しが寸暇亭押夢という人によって「花江戸後日同舟」という戯作本になって売り出された。

 常に初心に 巌哲和尚の紹介でやってきた丑太郎は楽しくしゃべり、ぼんやりしていたことがくっきりと見える気がすると相談料を二分置いて帰った。

 隣はなにを  隣人が子供の声がうるさいと言ってきた。信吾は酒を持ってあいに行く。
信吾は隣の人が大変だという猫の声に起こされる。三人が刀を持って押し掛けている。信吾が蹴散らし逃げた。隣人・藤原は同僚の罠にはまり、同僚を殺害して十八年逃げていた。信吾と話してその夜居なくなった。


2021年10月29日金曜日

よろず相談屋繁盛記②

よろず相談屋繁盛記② まさかまさか 野口卓

 信吾 黒船町で将棋会所「駒形」とよろず相談所を営む
 甚兵衛 豊島屋の隠居。「駒形」の家主
 巌哲和尚 信吾の名付け親で武術の師匠
 常吉 「駒形」の小僧
 庄右衛門 信吾の父
 繁 信吾の母
 正吾 信吾の弟
 咲江 信吾の祖母

 命あっての 信吾が大名の若殿とそっくりで呼び出される。信吾が何も知らされないまま若殿になりすまし反対勢力をつり出し撃退する。若殿暗殺に失敗した反対勢力は三人が切腹し、若殿は平安になったようだ。信吾が宮戸屋の息子と知らない大名は、お礼の会を宮戸屋で開き、若殿と信吾がそっくりなことが宮戸屋の皆に知られる。信吾はお礼として百両を受け取る。 
 
 話して楽し 駒形の常連客が将棋をそっちのけで、話しに花が咲く時がある。信吾は知らないうちにいなくなる。

 鬼の目にも 白犬が相談所にやって来て信吾に相談する。白犬は宮戸川ぺー助という幇間だという。信吾はぺー助の家族に犬と話せることを話し、ぺー助の今の境遇を話し、話し合いをし三人が一緒にくらすようにする。ぺー助たち三人が元に戻ったと礼に来る。信吾のおかげと毎月一分を二十ヶ月払いに来ることになった。芸人たちに相談に行くように触れ回ったようだ。

 夢のままには 十才の少女ハツが祖父と一緒に「駒形」にやってきた。信吾と将棋を指し、通うようになった。常吉が将棋に興味をもち始めた。信吾は仕事が終わってから教えるようになった。他にも十代の少年が増え、二十代の人も増えていった。生意気になっていた子供たちの親玉的存在の留吉と常吉を対戦させた。皆に礼儀を教え人の将棋を見ることの大切さを教える。常吉が勝った。信吾は子供たちの心を摑んだ。

2021年10月28日木曜日

よろず相談屋繁盛記①

よろず相談屋繁盛記① なんてやつだ 野口卓

 人は見掛けに 信吾は弟の正吾に浅草寺で、駄洒落や洒落を言えるようになるよう教えている。誰にも言ってはいけないと言いながら、自分が鳥や動物と話せることを教える。信吾には危ない時に、生き物が 教えてくれるという秘密もあった。
 信吾は覆面の浪人に襲われた。信吾は鎖双根で搦め捕る。四年前助けられた真坂だった。九才で棒術と体術を習い始めた信吾は、十五才で真坂にならず者から助けられ、剣術も習い始めた。十七才から護身術・鎖双根に取り組んだ。
 四年前、ならず者に襲われた時、真坂に助けられたが、ヤモリに、その男下心があるぞと教えられた。真中は実家・宮戸屋へ連れて行った。真坂はもてなしを受け今では奉公人たちとも顔なじみだ。
 信吾は真坂と話し込んだ。煙に巻いたようだ。
 宮戸屋の旦那寺の巌哲和尚が信吾と正吾の名付け親だ。七才の時、巌哲の棒術を見、教えて欲しいと頼んだ。その時、店は正吾に継いでもらい自分は世の中の人のために働くために身を守る術を学びたいと言った。
 信吾は、九才で棒術を始める時、巌哲に、三才で病気になりそれ以後自分のしたこと言ったことを覚えていないことがあると告白し、店を潰してしまうかもしれないとはなした。
 信吾は十九才になり、見世を継ぐのは正吾で、自分は相談所を開き、宮戸屋を離れても生きていけるように二枚看板にしようと思った。家族には明らかにしておこうと決心した。

 獲らぬ狸の 信吾は家族に考えを打ち明けた。見世は正吾に継いで貰い、自分はよろず相談屋と将棋指南所の看板を並べるつもりだと言った。父母も祖母も反対した。自分の記憶が抜け落ちることを話し納得してもらった。巌哲和尚にも話した。
 もう少し若ければ将棋指南所を開くのだがと言っていた豊島屋の隠居・甚兵衛に指南所の細かい質問をした。甚兵衛が空き家を貸してくれることになった。宮戸屋から近く、翌日には信吾の荷物を運び、小僧の常吉が住み込んだ。
 年が開け親類縁者、同業の料理屋の主人、町内の有力者、取引先を集め、料理屋「平石」で料理をとりながら、宮戸屋を正吾が継ぐことになったお披露目をした。信吾のことも話された。武蔵屋は信吾と話して悩みが解決した。彼には特殊な力があると言いきった。

 あれも人の子 信吾は将棋指南所の名前を「駒形」とした。初めて十日が過ぎた。マムシと呼ばれる親分権三が来た。親分は信吾と話し機嫌よく帰った。
 信吾の家に泥棒が入った。猫が知らせてくれる。会所に何度か来た万作だった。信吾は話しをし、五百八十八文を貸す。そして金額を万作に返したように証文を書いた。万作が朝ご飯を作り三人で食べて帰った。
 権三が信吾を呼び出す。駒形堂で話しをする。取り留めの無い話しをした。五日後、権三親分が大手柄を挙げた。

 船は波間に お菓子卸商菊次郎の番頭が相談にやってきた。ももお嬢さんが信吾に一目ぼれ恋煩いになっていると言う。信吾は宮戸屋を出たことを話す。鳩の助言もあって信吾は会うことを引き受ける。
 料理屋「深田屋」の息子・粂太郎が、厭でたまらぬ家業を弟に押し付け、勘当されることなく自分のやりたいことをやる方法を教えてもらいたいと来た。私は継ぎたかったと言いながら涙が出た。粂太郎はあわてて帰った。
 ももお嬢さんは信吾が宮戸屋を継がないことを知って恋煩いは消えていた。鳩に米をやる。鳩は豆が良いと言う。鳩と話す。

 騙し騙され 佐助と名乗る男が常連客・太三郎に賭け将棋をを仕掛けているようだ。佐助が一両を負けた時、佐助が五両の賭けを申し出た。佐助は名前を変えてあちこちで賭け将棋をやっている男のようだ。太三郎にも佐助の正体を話し、賭け将棋はしないように言う。信吾は自分のところで佐助を止めるつもりだ。太三郎は佐助に勘当されるのでお金を用意出来なかったと賭け将棋を突っぱねた。すごんで見せる佐助に権三を呼ぶように言う。佐助は信吾にも凄む。信吾は一歩も下がらず、佐助の人相書きが出ていると相手する。佐助は捨て台詞を吐いて出ていった。太三郎は近江屋の家業に精を出している。賭け将棋撃退の武勇伝が広まり町の人たちがやってきて嫁取りの話しが持ち込まれる。
 半月後、太三郎の父親がお礼にと五両を持ってきた。
 


2021年10月26日火曜日

禁裏付雅帳〈十二〉 継争

 禁裏付雅帳〈十二〉 継争  上田秀人

 二百石の加増のために江戸へ呼ばれた東城鷹矢。松平定信の走狗として京に赴き、朝廷の弱みを探る密命をこなしててきたが、定信に敵対してしまった。道中の刺客を次々退け江戸へ到着する。
 次の日、定信本人が東城家を訪れる。鷹矢は砂屋楼右衛門とかかわりのあった浪の居所は知らないで通した。土岐が定信と話し、二百年の幕府の主従関係など、千年をこえる歴史には勝てない。闇はどこにでもある。幕府より朝廷に重きを置いている者はどこにでもいる。それが朝廷の強みだと言った。

 鷹矢は黒書院で上様・家斉と会うことになった。上様直々目録を下さると臨んだが、公家の話、光格天皇の話、大御所称号のこじれた理由、最終的には幕府を長続きさせるためには子を作り身内を増やせばいいということまで話す。二百石の加増は無くなった。家斉が着ていた紋付きの羽織を脱ぎ、葵の紋が鏤められている乱れ箱にいれ拝領品となった。
 安藤家の家臣・布施の娘・弓枝を安藤対馬守の養女にすることになった。
 十年、鷹矢は禁裏付の役を続けることになった。
 家斉は、主上にお目にかかることがあれば、躬が詫びていたと伝えて欲しいと言葉を残す。

 京へ帰った。

2021年10月24日日曜日

突きの鬼一⑥ 春雷

突きの鬼一⑥ 春雷 鈴木英治

 城下の寒天問屋から賄賂をもらっている江戸家老・黒岩監物が、手を組んでいた殿の母親・桜香院の殺害を忍びの頭・東御万大夫に命じた。国元の一郎太の弟・重次郎の一粒種・重太郎の重体が知らされる。桜香院は美濃に向かう。一郎太は神酒藍蔵と桜香院の警護をしながら美濃に行く。一郎太に冷たかった桜香院だったが、優しい言葉を掛けるようになっていた。桜香院の危機を救い国元に着く。孫に会い城に泊まったものと思っていた桜香院が、元居住していた離宮で殺される。

 国家老になった藍蔵の父・神酒は寒天問屋の裏帳簿を見つけ黒岩の賄賂の証拠を掴む。次期殿の正妻の父親ということで切腹と言うわけに行かず、悪いことをしていたが改心し、殺人を繰り返した東御の隠れ家を教えることになったと噂を流す。東御によって黒岩は殺された。黒岩の蔵から東御が隠し金を持ち去っていた。
 
 一郎太と藍蔵は東御の隠れ里を探す。東御が現れ最後の決戦に一郎太が危なくなった時、紫頭巾が現れる。江戸にいるはずの一郎太の正妻・静だった。隠し金一万五千両も見付かる。
 雪崩がおき埋まるが、皆見付かる。

 一郎太は、当主を重次郎に譲り、江戸に帰る。

2021年10月22日金曜日

蘭方医・宇津木新吾 ⑬ 恐喝

蘭方医・宇津木新吾 ⑬ 恐喝 小杉健治

 西国屋で傷を負った男の手当てをする。男は河太郎。西国屋と松江藩の抜け荷の証拠の書付を持ち強請っている男だった。河太郎は仲間を殺され西国屋から逃げていた。治療のため新吾は河太郎を幻宗の治療所に匿う。
 河太郎の後ろにいるのは二年前に世継ぎ問題で死に追いやられた八田家家臣・戸川だと思われた。河太郎にはそう名乗っていた。戸川は西国屋と松江藩に一万両を要求してきた。
 西国屋と松江藩はお金を用意するが、投げ文により町奉行所役人が出張っていた。取引は失敗する。二度目もうまくいかない。新吾は疑問を持つ。
 隠密・間宮林蔵と話し、五年前、間宮が大阪奉行所を動かし松江藩の抜け荷を調べようとしたとき、老中から横槍が入ったことを知らされる。五年前には証拠が無かった。今回は戸川の持つ証拠が、役人に渡ると松江藩が大変なことになるという。西国屋は表御番医師・花村法楽から奥医師・桂川甫賢から老中・板野美濃守を頼ると言う。
 新吾は判った。裏に居るのは戸川ではなく老中なのだ。五千両を要求されるだろう。用人・高見左近に言うが、左近は抜け荷の証拠を握られている我らは負けだと。新吾は口を閉ざすかわりに抜け荷をやめるよう進言する。

 新吾は黒幕の老中板野をこのままにしていいわけがないと思う。いつか美濃守に会い真相を質したい。妻・香保の父・上島漠泉に表御番医師に返り咲いてもらおうと思った。

2021年10月20日水曜日

照降町四季(四) 一夜の夢

照降町四季(四) 一夜の夢 佐伯泰英 

 八頭司周五郎は兄の死を病死にするよう殿に直談判する。その代りという条件が出された。

 照降町はどんどん復興する。宮田屋、若狭屋、南峰の診療所、ふみの小網湯、牢屋敷も出来道場も出来た。

 佳乃は周五郎が照降町を離れると分かっていながら周五郎と結ばれる。
 梅花花魁は茶屋四郎次郎清方に身請けされ梅香になった。

 殿が重臣派と改革派の主導者を集めた。周五郎も殿の呼び出しに応じ裏方を任される。
 重臣派は吉原での散財と藩御用達商人との談合を調べ上げられた。改革派は重臣派の周五郎の兄を殺したことを明らかにされる。謹慎蟄居を通達される。
 大書院の集いで家臣団が参集した。周五郎は裏手に控える。

 中村座で新作「照降町神梅奇譚恋の道行」。大入満員興行が続いた。最終日周五郎は屋敷に戻った。小倉藩御番頭として。佳乃は芝居見物の席で、殿様に周五郎の修業は終わったと言った。

2021年10月18日月曜日

浮世絵宗次日月抄〈五〉 汝よさらば

 浮世絵宗次日月抄〈五〉 汝よさらば 門田泰明

 宗次と別れようとしていた西條家の美雪は、宗次と生きていくことを決心する。宗次も受け入れる。

 宗次が倒した隠密情報機関「葵」の本家本郷家を統括する高尾が現れる。葵を壊滅させた宗次・徳川宗徳を憎んでいた。高尾が自死した後、高尾の右腕富士に銃で撃たれ倒れる。



 死んでしまった?吹雪は来ない?死んで終わるのは嫌だ。

2021年10月17日日曜日

家請人克次事件帖 秋草の花

 家請人克次事件帖 秋草の花 築山桂

 岡っ引きの正蔵と安五郎が襲われた。中山家の早苗も狙われていると聞き、克次は調べる。8年前に早苗がおとりになり克次が捕まえた婦女暴行殺人の犯人五人の内三人が、金持ちの商家のお金で解き放たれていることが分かった。
 被害者の父親が犯人だった。解き放たれた男たちを殺すことを助ける。殺した父親も死ぬ。
 
 克次は新しい店に移り京と一緒になることになった。


2021年10月16日土曜日

ふしぎ

ふしぎ 細谷正充

 睦月童 西條奈加 悪いことをした者が睦月童・イオを見るとイオの目が金色に光る。

 潮の屋敷 泉ゆたか 江ノ島から江戸へお嫁に来た。屋敷は老人の殺された家だった。

 紅葉の下に風解かれ 廣嶋玲子 飼い主を探していた白兎はあやかしになった。白兎は少年に付纏う母親のあやかしを少年から離し、行くべきところに連れて行く。

 紙の声 宮本紀子 直筆の書き物から亡くなった人を呼び出せる主人がいる紙屑問屋に奉公にでた太一。亡くなった父親と話しをし、大工になり父の望んだ家を建てた。

 遺恨の桜 宮部みゆき 回向院の茂七 商家の息子、日道と名乗り霊感があると引っ張りだこ。見えることもあると言う。

 

2021年10月15日金曜日

まっくら長屋騒動記 江戸の茶碗

まっくら長屋騒動記 江戸の茶碗 中島要

 江戸の茶碗 贋茶碗に騙された兄、別の人を騙そうとするが妹が止める。赤目勘兵衛が連れてきた永田屋八助が百両にしてくる。「江戸の茶碗」と銘々される。兄妹は店を買い戻した。

 寝小便小僧 九才の定吉。夜中の便所で鬼に遭遇し、夜中に便所に行けなくなり寝小便をするようになった。馬鹿にされるのがいやで手習いに行けない。初に困ったら赤目さんに相談するよう言われた定吉は赤目に相談する。林仙時では礼金、墨代、半紙全ていらない、全て和尚の持ち出しだった。赤目は見つけた般若の面で和尚が霞小僧だと見抜く。定吉も知るが和尚を許す。

 遺言 山城屋の亡くなった新造の遺言で赤目勘兵衛は月に一両貰っている。放蕩息子の栄太郎は近江屋の年上の娘と結婚させられるのがいやで娘が結婚できないようにしてくれと頼みに来る。赤目は栄太郎を殺しに来る。山城屋の主人の遺言は山城屋の先行きを見守り、店が傾いた時には災いの根を絶って欲しいということだった。今まで内儀に命を護ってくれと言われていたから我慢していたが、断ってきたからきたから遠慮が無くなった。先代の遺言を果たすと言う。一閃され元結を切られた。栄太郎は近江屋の娘と一緒になることにした。

 真眼 十五年前、掛け取りの五十両を殴られ奪われ目が見えなくなった梅次郎は按摩をしている。お人よしが売り物だ。長屋のくず拾い彦兵衛が大店三河屋の隠居だと分かった。彦兵衛は梅次郎に優しい。医者を紹介してくれ医者代を持ち目を治してくれた。目が見えるようになった梅次郎は昔の泥棒は彦兵衛ではないかと疑る。逢いに行ったとき彦兵衛は亡くなっていた。泥棒の鼻の脇にほくろがあった。彦兵衛は確かめようとしたが目は開かなかった。つむったまま彦兵衛の笑顔が見える気がした。

 嫁入り問答 相手が馬鹿だから嫁に行くのはいやどという湊屋の娘・花。尼になると言う。赤目の知りあいの尼僧に頼み相手の弥太郎と問答をすることになった。尼になるよりも自分の言いなりになる亭主と一緒になった方が得だと気付いたようだ。花は弥太郎と一緒になることを決めた。

 いじっぱり 定吉の母親・今は近所の料理屋で働いている。定吉が赤目と親しくなるのが心配で知りあいだという尼僧に会いに行った。尼僧は赤目の昔の話をする。若殿の側近だったが母親が亡くなり、新しい側室に子供が出来ると若殿は命を狙われた。六歳で亡くなった時、二十三歳の赤目は乗り越えられなかったようだ。酒に溺れ乱暴狼藉を働いた二年間があった。十八年をただ無為にいきていた。子供や母親には害をなさないことは受け負うと言われた。そして自分から定吉が離れていくのが不安なのだろうと言われる。
 今は、定吉の命が大事なら稲葉屋の料理に毒を盛れと薬を渡された。赤目は相談され定吉を見つけ出すから毒を入れるなと言った。言われた通りにするなら最後の料理にするように。必ず定吉を連れて行く。最後の最後に赤目は定吉を連れてきた。
 稲葉屋の後添えとその妹夫婦、後添えの情婦も捕まった。
 赤目と今は口げんかをする。

 男と女の間 定吉は喧嘩ばかりする赤目と母親を心配している。和尚に母親の再婚を言われ赤目が父親になるのはいやだ。と思う。

2021年10月12日火曜日

料理人季蔵捕物控㊶ 焼き天ぷら

料理人季蔵捕物控㊶ 焼き天ぷら 和田はつ子

 季蔵は北町奉行の烏谷に、呉服問屋浅岡屋の跡取り息子・元太郎が八王子で想い女・紅代と暮らしているので連れ戻して欲しいと頼まれた。 季蔵は八王子で紅代と紅代の幼なじみが心中しているところに遭遇し、元太郎を連れて江戸に戻る。季蔵は二人は殺されたのではないかと思った。

 商家の主が次々と殺される。季蔵の馴染の長崎屋五平と間違われ弟弟子が殺された。それらは殺し屋の仕業と思われた。殺し屋の元締めと思われた艾屋が殺された。五平の持ち物が傍に落ちていたので五平は捕まる。新しく商家の主になった者が集まるということで季蔵は烏谷の意向で南町の奉行宅に出張し京風料理を拵える。庭の木の根元に埋めてあった小判を掘り出した持ち帰ったようだった。集まった商人は吉川奉行夫婦にたっぷり贈答品を渡した。

 季蔵は元太郎から相談される。番頭に店を譲らなければ主と若旦那の命はないと文が届いたと。季蔵は八王子に行く。前に出会った和尚も役人も全ての人が居なかったり、違った人だったり。

 季蔵は浅岡屋の茶室の傍で聞く。浅岡屋の主人は殺され番頭が捕まり、元太郎が番頭を殺し、番頭に殺され掛けたが反撃しころしてしまったことにするつもりらしい。その場にいた鍋が殺され、秋と季蔵が踏み込み番頭は助かり元太郎は捕まった。

 元太郎は鍋から艾屋が殺し屋の元締めで殺しを頼む商家の主は、自分に直接関係のない者を頼む。元太郎は長崎屋殺しを頼む父親を見てしまったことで、自分が殺し屋も元締めになろうと考えたのだった。

 吉川は妻の咽を突き、切腹した。
 五平は解き放たれた。

2021年10月10日日曜日

新・秋山久蔵御用控〈十一〉 残り香

 新・秋山久蔵御用控〈十一〉 残り香 藤井邦夫

 出戻り 秋山久蔵の首に25両が掛けられていた。秋山の弱みを教える噂をまき、寄ってきた者を調べる。旗本内藤家が浮かぶ。離縁されて帰って来た娘は、二年前、夫が名のある壺や茶碗や名刀の偽物を作り売りさばいて、秋山が切腹に追いこまれていた。娘・浪路は尼になった。

 迷い道 南町新米同心・水沢信吾は、茶道具屋「梅光堂」の女中に盗賊閻魔の鬼吉の手引きをしている。盗賊一味から抜けたいと相談を持ちかけられた。情報を聞き出すためにそのままにしておいた。梅光堂の廻りをうろつく人が増えたと盗賊に伝えると姿を消すようにと連絡があり女中は姿を消した。
 和馬等は、毘沙門の万平一味を追っていた。盗み場所を梅光堂と思わせたかったのだろうか。金貸し勘三郎の家の前で捕らえた。

 残り香 呉服屋越乃屋の主が殺された。女が逃げていくのを見られた。女の足取りを掴めない。容疑者は浮かばない。小普請組支配組頭が殺された。人足風の男が見られた。女が身投げをするところを止められ、二人は交換して人を殺した。

 小塚原 尾張藩の侍と旗本の若侍が喧嘩する。秋山は町方の者が巻き込まれたり、刀を振り回したら捕まえるように指示した。本人たちにも捕まえると宣言している。昌平橋で斬りあいが始まった。旗本と尾張藩の家来を一人ずつ捕まえた。中心人物・藩主の甥に切腹を命じた。下屋敷から上屋敷に移動する間に乱闘事件を起こし、秋山に斬られ川に落ち溺死した。旗本の首領・本多は旅に出ようとした。小塚原で秋山に斬られた。

 

2021年10月8日金曜日

向島・箱屋の新吉新章〈一〉

 向島・箱屋の新吉新章〈一〉 箱屋の使命 小杉健治

 向島で唯一の芸者・葉の世話をする新吉は、生駒屋に呼ばれた新梅屋敷で不審の人物を見つける。勘定奉行・笠木嘉門が呼ばれていた。後日、笠木を殺す邪魔をするなとこの前の不審者が現れる。三郎太と名乗った。
 新吉は三郎太を調べた。笠木に罪を着せられ切腹、家は断絶した内村家の奉公人だった。新吉は罪を犯す前に捕まえ助けたいと思った。
  
 定町廻り・梶井扇太郎は稲荷裏に埋められた遺体を調べていた。一ヶ月前から行方不明だった冬吉と判った事件を調べていた。
 
 笠木が生駒屋の寮で、トリカブトを塗った吹き矢で殺された。

 冬吉と思っていた遺体は三郎太だった。三郎太と名乗った男は生駒屋の親戚奈良屋のゆかりの者だった。奈良屋は笠木の後勘定奉行になった大畑と懇意だった。
 新吉は三郎太と名乗った男に襲われた。
 新吉は奈良屋と生駒屋の呼び出しに応じた。偽三郎太が三郎太を殺し見付かっても冬吉に間違えられるようにして埋めていた。そして笠木を殺し、三郎太の復習と思われるように新吉に見られるように動いた。奈良屋の番頭・茂太の言う通りに動いた。新吉を殺すため浪人を集めていた。新吉は梶井に捕らえてもらうが茂太がいなかった。奈良屋は大畑の家臣というが、大畑には否定される。大畑が勘定奉行になるために仕組んだ証拠は無かった。

 

2021年10月6日水曜日

風の市兵衛㉙ 寒月に立つ

風の市兵衛㉙ 寒月に立つ 辻堂魁 

 公儀十人目付筆頭・片岡信正の命で越後津坂藩内定の最中、返弥陀丿介が瀕死の重傷を負った。信正は、譜代ながら跡継騒動を抱え、陰に御用商人の不審な噂が絶えない津坂藩の探索の続きを唐木市兵衛に託す。

 津坂藩の江戸家老・聖願寺豊岳は藩御用商人と組み藩政を握っていた。津坂湊の香住屋と長浜湊の武井が手を組んでいた。長浜には朱雀家の采地があり津坂藩藩主鴇江伯耆守憲実の正妻・蘭の方は朱雀家から来ていた。十年前、朱雀家の遠縁から鴇江家に婿養子に入りお世継ぎに決まっていた。お世継ぎの松之丞が錯乱状態になり暴行し、家臣に斬られたことにより跡継ぎ問題が起こった。聖願寺派は朱雀家から養子を得ようとする。十年前、側室の阿木の方と生まれたばかりの若君を殺されると言う事件があった。御年寄役・戸田浅右衛門は助かった若君を死んだものとして真野分蔵夫婦に託し江戸へ逃がした。その若君を呼び戻そうとした。聖願寺が使っている影の目付・丹波一味が動き、若君を探し出し殺そうとしていた。

 市兵衛は若君を探しだし、襲ってきた丹波を倒す。世継ぎ鴇江憲実が正式に幕府に届けが出された。

 将軍が片岡信正の弟・唐木市兵衛の存在を知った。市兵衛は十俵の扶持を貰うことになった。旗本五千石広川家の養子縁組みの見合い話が進んでいる。

2021年10月4日月曜日

婿どの相逢席

婿どの相逢席  西條奈加

 楊枝屋の四男坊・鈴之助25才は、仕出屋「逢見屋」の長女・千瀬の婿になった。何もする事が無かった。役目は子をなすこと。女の子を授かることだった。

 千瀬は鈴之助に期待していると言う。鈴之助の人を和ませる力に。

 千瀬との出合いの時に、婆やのすがとは馴染になっていた。
 鈴之助は奉公人と話し、馴染が出来た。
 もめてるお客様の話を聞き、良い案を思いつき丸く収める。
 馴染まない妹たちにも少しづつ馴染んでいく。次女の丹に、御兄さんと呼ばれる。
 大女将・喜根の昔話を聞く。逢見屋を通しての昔話が話される。鈴之助は男女の仲を取り持つ。喜根も自分で昔話を鈴之助にする。

 逢見屋に嫌がらせをする仕出屋「伊奈月」がある。魚屋を巻き込み噂を振りまく。鈴之助は伊奈月の若旦那に逢見屋に嫌がらせをしているつもりでも、自分に振りかかって来ますよ。と忠告する。伊奈月は潰れる寸前になる。

 伊奈月の若旦那・鵜三郎は千瀬と双子の姉弟だった。逢見屋に嫌がらせをして悪かったと謝る鵜三郎に、鈴之助は、嫌がらせをやらせた奉公人の竜平や、潰した店の板前等奉公人に謝れと言う。
 母親・寿佐は鵜三郎に詫びは言わない。許してくれとは言わない。今のお母さんを大切に。亡くなられた先代とお母様は私の恩人なのです。と言った。

2021年10月2日土曜日

新酔いどれ小藤次〈二十〉 三つ巴

新酔いどれ小藤次〈二十〉 三つ巴 佐伯泰英 

 偽鼠小僧の悪事が止まらない。偽鼠小僧は二組いた。火付盗賊改の琴瀬と小菅が一組目。
もう一組は、元締めが表火之番組頭・井筒鎌足、話の出所が両替商の三番番頭・井筒の三男、実際に押し込むのは十人組の十人だった。

 小藤次が研ぎ舟にしていた船に水が入るようになり、船が新しくなった。無料で仕立ててくれた船大工にあやかり蛙丸と名付けた。
 
 子次郎の知り人・充吉が、子次郎をおびき出すため火盗改に捕まっていた。町中の商家の土蔵と長屋を自前に使っていた。琴瀬を斬り、充吉を助け出す。火が出た。小菅は火盗を放逐される。小菅は望外川荘に現れる。梅が人質になるが、子次郎の畳針で助けられる。小菅は斬られ無縁墓に葬られた。
 小菅と琴瀬は火盗改の身分を利用して鼠小僧の仕業と見せかけ私服を肥やしていたとされた。

 小藤次と駿太郎と子次郎、青山の家臣・中田新八としんと北町与力・岩代壮吾と南町同心・近藤精兵衛が、両替商錦木屋を船で見張っている。押し込もうとした表火の番の者を取り押さえ篠山藩江戸藩邸に連れ込んだ。目付頭が呼ばれ表にだされなかった。

 子次郎は薫子に会いに行った。三河湾を望む高台の屋敷で薫子は老女・比呂と暮らしていた。