2021年10月22日金曜日

蘭方医・宇津木新吾 ⑬ 恐喝

蘭方医・宇津木新吾 ⑬ 恐喝 小杉健治

 西国屋で傷を負った男の手当てをする。男は河太郎。西国屋と松江藩の抜け荷の証拠の書付を持ち強請っている男だった。河太郎は仲間を殺され西国屋から逃げていた。治療のため新吾は河太郎を幻宗の治療所に匿う。
 河太郎の後ろにいるのは二年前に世継ぎ問題で死に追いやられた八田家家臣・戸川だと思われた。河太郎にはそう名乗っていた。戸川は西国屋と松江藩に一万両を要求してきた。
 西国屋と松江藩はお金を用意するが、投げ文により町奉行所役人が出張っていた。取引は失敗する。二度目もうまくいかない。新吾は疑問を持つ。
 隠密・間宮林蔵と話し、五年前、間宮が大阪奉行所を動かし松江藩の抜け荷を調べようとしたとき、老中から横槍が入ったことを知らされる。五年前には証拠が無かった。今回は戸川の持つ証拠が、役人に渡ると松江藩が大変なことになるという。西国屋は表御番医師・花村法楽から奥医師・桂川甫賢から老中・板野美濃守を頼ると言う。
 新吾は判った。裏に居るのは戸川ではなく老中なのだ。五千両を要求されるだろう。用人・高見左近に言うが、左近は抜け荷の証拠を握られている我らは負けだと。新吾は口を閉ざすかわりに抜け荷をやめるよう進言する。

 新吾は黒幕の老中板野をこのままにしていいわけがないと思う。いつか美濃守に会い真相を質したい。妻・香保の父・上島漠泉に表御番医師に返り咲いてもらおうと思った。

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