2021年10月31日日曜日

よろず相談屋繁盛記④

よろず相談屋繁盛記④ やってみなきゃ 野口卓 

 一年長いか短いか 信吾が将棋会所「駒形」を開いて一年になる。将棋大会を開くことになった。集まった寄付で賞金を出す。三両、二両、一両。十才の少女・ハツも出ることになった。出場者は百八十三人になった。

 二転三転その先は 大会初日の朝、伝言箱に相談したいので連絡が欲しいと紙片が入っていた。大会初日が始まり、昼過ぎ連絡場所・口入れ屋松屋に行く。十日後に一献と連絡が入っていた。権六親分も顔を出す。盛況だ。
 二日目、十日後に会おうと言っていた日が、明後日の暮れ六つにという連絡だった。瓦版屋の天眼が来た。そんな時、騒ぎを起こして金をせしめようとする破落戸が来た。拳で殴りにきた腕を躱し、手指の関節を逆取りし、榧寺で話そうと外に出る。榧寺で男の不意打ちの蹴りを躱し、右手の短刀を突き出すのを叩き落とす。右手首を摑み左腕を巻くようにして右肘を決めた。そして席料を払うかもう出入りしないかということで話しをした。男は捨てぜりふを残して去った。付いて来た見物人が騒いだ。信吾は天眼の質問攻めにあった。駒形に帰ると客や見物人が大騒ぎだった。
 三日目、騒ぎは治まらなかった。近所の人々宮戸屋の常連、取引先まで見舞いを持ってやってくる。大会の最中なのでと引き取って貰う。昼過ぎ、天眼の瓦版が出回った。天眼は細部まで模写していた。瓦版を見た人々が駒形に押し寄せた。大会は中止になった。権三親分は掏摸用心をするほどだ。着飾った娘たちがきゃーきゃー集まる。

 狸だって客である 夜は宮戸屋に泊まることになった。家族にも秘密にしていた護身術のことが瓦版で町中の人に知られてしまった。九才で巌哲和尚から棒術を習ったこと。
 宮戸屋で伝言箱の人と会う。取り留めの無いことを話しているだけで気にしていることの示唆を得られると評判だという。麻太郎と名乗る男と話しをした。よく笑って終わる。
 信吾の見物人は多いが、大会は順調に進む。自分から不戦敗を申し出てもいいことになった。
 豆狸からの相談がくる。怪我をした母親の食事を下さいというものだった。毎朝、宮戸屋から昨晩の残飯を貰ってきた。狸は優勝者の名前を教えてくれた。
 信吾に宮戸屋の客からお座敷が掛かるようになった。

 これが最後の一里塚 信吾に客が来た。信吾を見極めにきたのか。
 母狸の傷が治り狸が親子で礼に来た。麻太郎が駒形を見学に来た。
 信吾に楽器の卸と小売りの老舗・春秋堂の一家から宮戸屋のお座敷が掛かった。瓦版のことを話した。
 大会は一敗が二人で優勝決定戦が行われ、桝屋が優勝、甚兵衛が二位、太郎次郎が三位になった。
 麻太郎が、訳がわからぬ状態に陥っていたのに、信吾と話しをして根幹がはっきりした。ありがとうと三両を置いて信州に旅立った。
 春秋堂一家と宮戸屋一家が顔合わせをすることになった。

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