2021年11月29日月曜日

無根の樹 

 無根の樹 三好昌子

 鴛鴦図の女 明和三年 1776年 五月京都西町奉行所同心・榊玄一郎。手下の小吉。堀川の心中死体を調べに行く。現場に奉行所侍医・久我島冬吾がいた。久我島は人助けと思って心中であることをもみ消せと言う。玄一郎は心中事件そ調べる。

 北川夕斎と女中・光。夕斎は美人画の絵師だったが、卒中で倒れ絵が描けなくなっていたが、一年前から幽霊絵師として売り出していた。光は松永堂から北川家に女中として送り込まれ、役者の恋人がいた。夕斎の妻・美和は、玄一郎の妻・多恵の知り合いだった。美和は絵が描けた。美和は夕斎の名で絵を描いていた。松永堂の進めだった。夕斎は庭の池で死んでいた。留守の光を責め言い争い光を殺してしまった。松永堂の忠兵衛が心中として片づけた。
 美和が死んだ。多恵に美和の落款が入った絵を残して。男女の絵だったが、男女が消えて道が一本残った。

 天馬の男 明和三年 1776年 九月 松永堂の忠兵衛が殺された。壺の中の金が盗まれていた。
 隠居した元与力・孝太夫のところで久我島と一緒に天馬空を行くという馬の絵を見せられる。天馬飛翔図。肉筆画だ。二十年前、天馬の絵が市中にばらまかれ尊王事件として大騒ぎになった。禁裏に勤める絵師・式岡華焔が捕まり、所払いになった。
 玄一郎の父親はこの頃に斬られ亡くなった。
 松永堂を調べた時、ばらまかれた天馬の絵の版画が見付かった。久我島は町奉行とともに京都の尊王論に関することを調べる密命を受けていたことを告白する。力を貸して欲しいという。大滅派と言う危険思想を片づける。
 忠兵衛は似絵売りをしていた。忠兵衛を殺したのは黒ずくめの男だった。天馬の絵を出した蓬莱屋の息子は忠兵衛に頼まれて運んだだけだと言った。孝太夫に見せた「魅山堂」に持って行ったのが蓬莱屋の息子だった。玄一郎は天馬の絵を持って家に帰る。多恵が華焔のことを知っていた。
 久我島が華焔のことを調べた。華焔は絵を描いたことを認め護送された。護送途中で殺された。護送していたのは榊玄信・玄一郎の父だった。華焔の家族は14才の天馬、弟は颯馬、妹は夕衣だった。行方不明。
 多恵の父親に絵を見せわかったこと、絵は息子・天馬が描いた物だろう。多恵は華焔の娘・夕衣。多恵の兄が言った。小吉は多分颯馬。
 天馬が描いた絵に主上が画讃を描いた。魅山堂は猩々衆だった。情報集め集団。二十年前、式岡華焔が殺される所に行き合わせた。玄信が華焔を守っていたが殺された。天馬がいた。天馬は逃げ魅山堂の息子に助けられ猩々児になっている。猩々児は敵を討とうとしている。
 王政復古を唱える伊佐船屋の本拠地へ行く。玄一郎は父親の敵というよりも、妻の兄たちを助けるために、久我島と一緒に伊佐船屋は死に、絵は燃やされた。天馬は久我島と江戸へ行った。

2021年11月27日土曜日

入船長屋のおみわ②  夢の花

江戸美人捕物帳 入船長屋のおみわ②  夢の花 山本巧次

 みわが取り仕切る長屋の住人・長次郎が、名も知らぬ女を殺してしまったかもしれないという。脅され親方と造った箪笥を造らされたらしい。
 美羽は長次郎の弟弟子・弥一と探っていく。危ないところには山際を誘う。
 箪笥を注文した高崎屋は知らないうちに箪笥の抽斗をすり替えられていた。その抽斗は親方が隠し棚を作っていたのだった。
 盗まれたのは大名の家老の借金の証文だった。手を貸したのは高崎屋の番頭だった。女を殺したように見せかけるために寺男に薗に似た死骸が出たらと頼んでいた。長次郎が寝ている間に横に死骸を寝させ、長次郎を脅して造らせた。
 番頭を引き込み裏で操っていたのは十手持ちの丈吉だった。
 親方は長次郎を小田原の知りあいに預けた。弥一は親方の後を継ぐ、嫁を貰えと言われ、美羽はどぎまぎするが、弥一は高崎屋の女中といい仲になっていた。

2021年11月25日木曜日

あきない世傳金と銀 〈十一 〉

あきない世傳金と銀 〈十一 〉 風待ち篇 高田郁

 五鈴屋の愛染の浴衣地は江戸中の支持を集めた。一時の流行で終わらせないためにどうすべきか幸は考えた。
 神田から火が出て南側を焼いた。菊栄が造っていた簪も手元にあった二本を残し全部焼けた。菊栄は職人さんが無事で良かった。また造れますと言う。
 日本橋音羽屋(幸の妹・結の嫁ぎ先)は焼けたが、隣の小間物屋の地所を買い上げて再建している。太物商いにてを伸ばすらしい。
 菊枝の簪のお披露目に音羽屋の「娘道成寺」を考えていたが中止になった。
 五鈴屋は火事用心の拍子木柄の愛染を売り出すことにした。幸は浅草太物仲間の寄り合いで愛染の両面糊置きの技を伝授し皆で売り出すことにした。音羽屋に買い占められ綿の反物が少ない。仲間で別けあい全ての店から売り出す。
 音羽屋は顔見せの役者に愛染を着せ、同じ柄物を売り出した。
 幸の夫・智蔵の友人・富五郎が大阪からやってきた。
 顔見せの千穐楽に菊栄と幸はよばれた。演目の筋に障らない玉響の出番に、立女形吉之丞と中村富五郎が、白拍子に扮し菊栄の簪を刺し現れた。
 浅草太物仲間で下野の綿栽培を手助けすることになった。
 勧進大相撲で揃いの愛染浴衣をきることになった。幕内と二段目、三十人。
 親和文字を使い個人個人の名前入り浴衣を作ることにした。幕下には手形柄にした。手形柄を河内木綿七十反を半纏にすることになった。触太鼓の面々に揃える。
 浅草太物仲間で作り、売ることになった。大成功に終わる。

 浅草に丸屋という呉服屋さんがあった。お客に優しい呉服店だった。呉服仲間で値上がりが決まり安く売れなくなった。太物屋に転身したいという話が出た。浅草太物仲間は浅草呉服太物仲間にしようという話が出た。
 

2021年11月23日火曜日

時雨みち

時雨みち 藤沢周平 

 帰還せず 隠密・半之丞は、まだ戻らぬ同僚山崎を探しに加治藩に戻った。鍛冶屋の婿に成り代わっていた。半之丞は死んでいたと報告すると山崎に告げるが、山崎は半之丞を殺しにきたので半之丞は山崎を殺した。

 飛べ、佐五郎 佐五郎は敵として十二年追われていた。国元では斬りあった理由が冤罪だったとわかり同情の声があがったという。佐五郎を追っていた男が病で死んだ。佐五郎は安心し、三年間世話になったとよに別れを告げた。とよは佐五郎を刺し殺した。

 山桜 野江は18才で嫁に行き、二年目に死別。一年前に磯村に再嫁した。舅は金貸しをし、市中に妾を囲い早く隠居し、蓄財に専念していた。磯村家に馴染まない。結婚せず一人暮らしていた伯母の墓参りの帰り、山桜の枝を折り取ってくれた武士・手塚弥一郎と出会う。出合は初めてだったが、彼からの縁談があったことを思い出す。母一人、子一人の家に嫁ぐことをためらった。今幸せかと言う質問を受ける。
 その年の暮れ、手塚弥一郎が諏訪平右衛門を刺殺した。諏訪は富農と組み農政に口を挟み、富農に有利な検見をし、私服を肥やす。長年の農政への干渉が百姓の強訴に繋がるが、諏訪は名家老の裔のため手出しが出来なかった。帰ってきた夫の手塚の悪口に野江が口答えをし、離縁となった。
 手塚は四月の藩主の帰国を待ち裁断を仰ぐことになった。獄中で丁寧に扱われているらしい。
 野江は山桜の枝を手折ってもらい手塚の家に行く。手塚の母が、磯村のような家に嫁がれたあなたやご両親を怒ってましたよと言う。野江は家に上がりながらここが私の来る家だった。もっと早く気づかなかったのだろうと思った。

 盗み食い 助次郎は、腕が良く新しい物にも挑戦する根付師職人だった。助次郎は労咳だった。二年先輩の政太は、親方の技を忠実に伝える職人だった。親方の跡継ぎを匂わされていた。政太には将来を約束したみつがいた。助次郎が寝込み仕事が忙しくなったため、みつに助次郎の食事を頼んだ。仕方なく受けたみつだった。一月後、みつは政太に別れ話を持ってきた。政太と別れて助次郎の面倒をみるという。政太はわかったと言うしかない。政太は助次郎に親身な心配をしていなかったことに気付く。

 滴る汗 森田屋右兵衛は公儀隠密だった。城内で徒目付の鳥谷に茶を飲みながら城下に公儀隠密がひそんでいることが知れ手配をしたと教えられた。右兵衛は、刀を埋め、書付を燃やす。一度連絡を頼んだ下男を探し、寝込んでいる爺さんを殺した。鳥谷が能登屋が捕まったことを教えてくれる。爺さんが殺され根付の折れ端が落ちていたとも言う。右兵衛の亀の根付のしっぽだった。右兵衛は全身が汗にまみれた。

 幼い声 昔の長屋の少女

 夜の道 三才の娘がいなくなり十五年探している伊勢屋の内儀、結婚が決まったすぎのところにやってくる。すぎは伊勢屋に行く。何もおぼえていない。自分の子供が三才になった。思い出した。伊勢屋に走る。

 おばさん 夫を亡くし一人暮らしのよねは長屋の人に馴染まない。火事で焼け出された若い男が転がり込む。よねは元気になるが、男は一緒に住みたい女が出来て出て行く。

 亭主の仲間 店を潰した亭主は人がいい。人足をしている。人足仲間を連れてきた。二度目に一分貸して欲しいと頼む。ちょこちょこ付いてくる。安之助は仕事を辞めた。二日後一分の無心にくる。きくが留守の間に安之助がくる。辰蔵が金がないというと家捜しして荒れ狂って帰った。一月後夜中に誰かがきた。二人は出なかった。首を裂かれた猫がすててあった。これからどうなるのか。

 おさんが呼ぶ 紙問屋伊豆屋の下働きのさん19才は無口だった。自分からしゃべれなくなっていた。紙問屋へ紙の売り込みに地方から人がくる。廉七と民蔵という人がきていた。手代の庄次郎と民蔵が得意先にお金を使い廉七の邪魔をしていることを知る。廉七が帰る時、さんは一緒に連れていってくれと頼む。主人にさんのことを話しに行く廉七に付いていって民蔵と庄次郎のことを話そうと思うさんだった。

 時雨みち 昔の女に会いに行く

2021年11月21日日曜日

落暉に燃ゆる 大岡裁き再吟味

落暉に燃ゆる 大岡裁き再吟味 辻堂魁

 大岡忠相は還暦を迎え、江戸町奉行から寺社奉行に転出させられていた。なぜか突然の気鬱に襲われた忠相に町奉行時代のある事件への疑念が芽生えた。「私の裁きは本当に正しかったか?」鷹狩りで出会った江刺・古風十一を使い真相の究明を始める。

 五年前の米問屋高間屋の打ち壊し騒動の後、番頭が殴り殺されているのが見付かった。一ヶ月後、指物職人の与佐が殺しているのを見たと辻番の三人の番人が訴え出た。与佐が捕まり、拷問に掛けられ死罪になった事件だった。

 三人の番人の行方は判らない。捕まえた同心・前波甚之助の行方もわからなかった。

 十一の調べで三人の辻番が番頭を殺し、同心は金を掴まされたと判った。前波は自死した。全てが判ったところで今更何も出来ない。三人をどうにも出来なかったが、酒亭の五平は博打にのめり込み一年も経たないうちに借金が膨らみ酒亭を失った。道三郎は水茶屋の客ともめ刺された。表火之番衆・仲間広之進こと広助は何者かに惨殺された。誰かと口論になり斬られたと見なされた。

2021年11月19日金曜日

京都船岡山アストロロジー

京都船岡山アストロロジー 望月麻衣 

 憧れの耕書出版に就職した高屋誠は中高校生向け占い雑誌に配属される。編集部は大阪支社で住まいも未定。占い嫌いの高屋は、船岡山珈琲店にいる正体不明の占い師にぶち切れ星読みと大喧嘩をする。その揚げ句店の二階に住むことになる。

 高屋の小学生の頃、ヒミコという占星術師がいた。高屋の母はのめり込み離婚した。高屋は祖父母に育てられていた。高屋が覆面占星術師がいる店に住み始めたことを知った高屋の母は息子まで騙されていると思い込み珈琲店に乗り込んでくる。
 ここの覆面占星術師は女子高校生の桜子だった。昔、ヒミコだったのは桜子の兄と名乗っている柊だった。女装していた。母と母の再婚相手に良いように利用された小学生だった。桜子と柊に占星術を教えたのは桜子の祖父だった。柊は占星術を習い記憶力が良過ぎたため利用されたのだった。
  
 母に再婚話があった。母は高屋の許しがないと再婚に踏み切れなかったのだった。

2021年11月17日水曜日

土偶を読む

土偶を読む 竹倉史人
 〜130年間解かれなかった縄文神話の謎〜

 土偶は縄文人の生命をはぐくんでいた主要な食用植物がモチーフに選ばれている。
 具体的かつ写実性に富む、植物の人体化なのである。

 ハート型土偶の顔は二つに割られたオニグルミの殻
 ハート型土偶の体表に施文される渦巻き状の模様とエッジに並ぶ孔はオニグルミの殻の文様 に似る。
 
 合掌土偶と中空土偶の顔はクリをかたどっている。
 頭頂部の尖端、顔面の横断線、横断線の下側の繁雑な斑点、体表のヘリンボーン様はクリの毬ではないか。
 
 椎塚土偶はハマグリを型ちどり、他にもオオノガイ、アサリ、サルボウ、シオフキ、アカニシ等の貝類を形どっている。

 ミミズク土偶はイタボガキ

 星形土偶はオオツタノハという笠貝類。貝輪の材料だった。

 ビーナス土偶・カモメライン土偶はトチノミ。

 結髪土偶は最後の土偶。刺突文土偶は稲やヒエを表現している。

 遮光器土偶はサトイモの精霊像。

2021年11月15日月曜日

花宴

花宴 あさのあつこ

 嵯浪藩の勘定奉行の西野新佐衛門 の娘・紀江は小刀の名手だった。父の弟子・三和十之介との縁談がまとまる。二人は手合わせをする。互角だった。だが縁談は破談になった。十之介の兄が殺され十之介は仇討ちに出た。帰ってくれば三和家を継がなくてはならない。
 一年が経ち、紀江と勝之進との縁談が整った。十之介が仇を討ち帰藩した。家禄が五十石増え、一年後家督を継ぎ、筆頭家老磯村の近縁の娘と妻帯した。
 紀江の心から十之介は消えなかった。娘が生まれた。しかし、かっての婚約者の姿を追っていた。娘は三才の夏亡くなった。
 次の年の夏、新佐衛門が城中で亡くなった。心臓の発作ということだった。
 三年が過ぎる。朝帰りの夫が覆面の男たちに襲われた。紀江が助ける。傷だらけの夫が、父の亡くなった理由を伝えた。
 筆頭家老になるために磯村は前筆頭家老堀田を毒殺した。堀田は野田家老を筆頭家老にしようとしていた。磯村は堀田を殺し、野田の縁戚のものを陥れるために十之介の兄を殺していた。堀田の死に不審を持った新佐衛門は不正の証拠を探していた。新佐衛門も毒殺された。勝之進は、毒殺した医者の遺書を手に入れた。そして襲われた。勝之進は書状を紀江に託した。
 紀江は竹筒を持って家を出る。五人の男に囲まれる。三和がいた。紀江は父の死の真相をご存知かと問う。全てを知っていたと判る。自分の身を挺して三和を倒す。三和はこうするよりしか・・・なかった。気がついた時には後戻りが出来なかったと言い残して死ぬ。
 書状は下男が元大目付に届けた。
 紀江は屋敷に帰り、勝之進の胸に顔を埋め、安堵し自分の帰る場所はここだったとやっと辿り着いた思いだった。

2021年11月13日土曜日

出絞と花かんざし

出絞と花かんざし 佐伯泰英

 京北山の北山杉の里・雲ヶ畑の山小屋でかえでは暮らしていた。母を知らず、父と犬との暮らしだった。六才年上の従兄の萬吉と六才のかえでは、京見峠へ京の町を見に行った。途中、杉坂の船水で、祇園のお茶屋花見本多の女将と出会った。何年か後、京に出てきた時は頼っておいでという言葉を貰った。
 二人は、上賀茂神社の巫女だった村長の嫁さんに読み書きを習うようになった。一年半が過ぎた。萬吉は北山杉を育てる山稼ぎをしている。三男の萬吉は京に出て宮大工になりたいと思っていた。
 かえでの父親が小野郷の山で百年ものの天絞を見つけ三人で盗もうとして谷に落ち死んだ。かえでは村長の家の養女になった。萬吉は小野郷の材木商菩提寺屋の若旦那と馴染になり北山杉のことを教わった。
 出会ってから二年が経ち、萬吉は花見本多に手紙を出し、宮大工の棟梁を紹介してもらい弟子になった。北山杉をよく知る萬吉は棟梁付の新弟子になった。英才教育を受け、六年が経った。
 七年目、かえでが京に出てきた。 かえでは母が京生まれということで京へ行きたいと思っただけで、何をするか決めていない。かえでは舞妓を見、髪結いを見学し、舞妓の髪に付ける花かんざしを作る修業を選んだ。
 かえでは、仙造の元で三年、職人が代々生み出し完成させた花かんざしの造り方を手と頭に刻み込んだ。師匠はかえでの考える花かんざしを一年分造ってみと言われた。行き詰まったかえでは北山に帰り自然の中を歩き、京へ帰った。
 かえでが花かんざし職人として生きていけるか審査される日が決まった。
 かえでの花かんざしを造り始めて四ヶ月後、花見本多の広座敷に花畑が満開に咲くように四季の花々が飾られ、花かんざしが披露された。
 かえでの義母、実母、萬吉の父母、師匠、菩提寺屋の主人、若旦那、大工仲間、舞妓等が集まった。
 萬吉は師匠の跡継ぎになるような話しも聞こえてくる。

2021年11月11日木曜日

縄文土偶ガイドブック

 縄文土偶ガイドブック 三上徹也

縄文土器・土偶

縄文土器・土偶 井口直司 

2021年11月9日火曜日

親子十手捕物帳⑦ 

 親子十手捕物帳⑦ 親子の絆は永遠に 小杉健治

 辰吉がりさと別れて二年が経った。りさは鳥羽屋の清吉と一緒になり娘を産んでいる。

 伊賀屋に泊まった男・利八が杉ノ森稲荷で殺された。利八は娘・鶴を吉原に売っていた。金子は持ってなかった。利八に大きな身体の男が付き添っていたようだ。兄弟で利八を狙っていたようだ。弟の甚五郎と、伊賀屋の奉公人・岩松、本当の名は甚一郎だった。

 りさは清吉に頼み、鶴を吉原から身請けし、利八が持って帰るはずだった金子を鶴の故郷に送った。鶴は鳥羽屋で奉公している。

 捕縛中に弟・甚五郎が屋根から落ち死んだ。兄・甚一郎は岡っ引き・忠次が殺したと思い、忠次の内儀・さやの命を狙う。甚一郎は捕まる。大番屋へ護送中、忠次が甚一郎を逃がしてしまう。さやが刺され生死をさ迷う。甚一郎は捕まる。辰吉は、さやが元恋人・寅助と会っていることを知り、忠次が不穏な動きをしていると思っていた。忠次は甚一郎の縛りが緩くなったことを認めた。辰吉はさやが、忠次とすれ違いの生活が寂しいと寅助に愚痴っていたことを話す。忠次は岡っ引きを辞めた。

 一ヶ月後、辰吉は赤塚新左衛門から手札を貰い、岡っ引きとして独立した。若親分と呼ばれている。

2021年11月7日日曜日

ごんたくれ

ごんたくれ 西條奈加

 吉村胡雪・彦太郎。淀藩の侍の家に生まれる。祖父に馴染、父母に疎まれているように感じていた。応挙の弟子になる。三度破門されている。 三重の寺に絵が残る。箏白に宮島の寺に絵を残す。

 深山箏白 師匠に馴染まず、一人で絵を描く。池大雅夫婦と馴染むが、大雅が亡くなる。応挙の絵は図絵だという。胡雪が亡くなり宮島の絵を見に行き、箏白の名を捨てた。

 

2021年11月6日土曜日

めおと相談屋奮闘記⑩

めおと相談屋奮闘記⑩ 梟の来る庭 野口卓

 恋患い 信吾の竹輪の友の一人・完太が恋患いになった。見合いの相手と相思になったのに、見合いの席で、イヌ、サル、カエルを連発したため相手の親が断りを入れてきた。波乃は相手の豊に会いに行く。豊も完太を気に入っていた。波乃は恋患いになり二三日食事を抜くことを進める。
 二人で結婚することになったと言いに来た。豊は波乃が言った通りになったと驚いていた。

 梟の来る庭 庭に梟・福太郎が来た。信吾に長崎屋のカナリーという鳥の話をする。オウムやインコ、カナリーに興味を持った波乃のために、何でも知ってそうな留守居役・蟻坂吉兵衛に聞きに行く。後日、吉兵衛はカナリーとオウムを宮戸屋に持ってきてくれた。信吾と波乃は鸚鵡返しに驚いた。

 蚤の涎 昇平が相談に来る。昇平は小僧から手代、手代から番頭と出世した。同僚から嫉まれ、初めての集金の帰りを狙うという悪巧みがあることを聞く。信吾が護身術を身に付けていることを知り護衛を頼みに来た。昇平と信吾は体付きが似ていた。夜分でもあるので代わることにした。三人を脅し上手くいった。昇平は何もなかったように振る舞ったようだ。一ヶ月後昇平は実家に帰った。昇平の実家を信吾は知らない。相談事の中で、昇平が使った言葉、蝶の口と雀の涙、蚤の涎で波乃の笑いの箍が外れた。
 昇平が集金に行った足立屋の隠居・鈍牛が信吾に興味を持ち、話しを聞きたいと言われた。父のことを知っているようだ。信吾は何も知らないが聞かなかった。

 泣いた塑像 家事を何も出来ない波乃のために、奥女中のモトが波乃に付いて新所帯に来ていた。モトは全て教えたので春秋屋に帰ることになった。
 モトのことを権六親分が教えてくれた。元旗本の姫・基姫様だった。頑固一徹な父親は公金を横領したとされた。追い落とそうとした連中が書類を偽造し罪を被せた。父親は妻と娘を離縁し、首謀者三人を長男と一緒に叩き斬り、取り巻きも殺傷した。父と息子は切腹した。母も自死し姉は尼になった。基はどこに行った判らなくなっていた。春秋屋に助けてもらった。春秋屋は基を外と接触させず、奥に置いた。
 話しを聞いた波乃は泣いた。モトには知っていることを気付かせないように振る舞う。
 感謝の宴を開いた両家の前で、波乃が礼を言うと、モトは自分が二十年前に春秋屋の奥様・ヨネに受けた恩返し、生涯かけても返せない程の恩がある。と言った。
 モトは春秋屋に帰って行った。

2021年11月5日金曜日

めおと相談屋奮闘記⑨

めおと相談屋奮闘記⑨  寝乱れ姿 野口卓

 さかとら  仮名逆虎と名乗る人が信吾に会いたいと言ってきた。話しているうちに、女の持参金狙いの女房喰いと言われる仲人の話しになった。次にどんなてを考えるかの話しになって、信吾は武家娘と商家の縁の話しをした。本当に起こってしまった。持参金付の武家娘を花嫁に式の当日花婿は持参金と共に消えた。婿が逆虎に似ている。信吾は自分が策を与えてしまったと大弱りだった。逆虎がやってきた。信吾は安心した。

 信吾二人 天眼が調べた巌哲和尚のことを話してくれる。もと武士、妻は凉、息子は信吾妻と息子を亡くし、坊主になったという。巌哲のところに行くが、そんな話しはできなかった。信吾には二人の父がいる。二人の父から信吾と言う名前っっを貰った幸せな男だ。

 幸せの順番 幼馴染がお妾さんになっていた。出会ってしまったと時々将棋を指しに来る商家の手代・徳次が川を見て悩んでいる。お妾さんになっている幼馴染に出会ったことに衝撃をうけていた。二ヶ月後、徳次が幼馴染の仙を連れてきた。一緒になることになった。徳次は徳兵衛と名乗り京都店の掛になった。徳次は二人にめおと箸を持ってきてくれた。

 寝乱れ姿 将棋会所で常連さんが話しをしている。虚実織り交ぜ艶笑談、艶っぽい話し、怖い話。

 女先生冷汗 鏡の中から声がして困っていると糸が相談してきた。男はイトを好きだと言う。それは自分ではないイトだった。糸は男の言うイトの屋号を聞き出していた。波乃はイトに会いに行く。男は首つり死んでいた。波乃は、糸に男にイトはおかめひょっとこの悪いところばかりを取ってつけたような顔をしていると言ってきたと告げた。糸は波乃に話しを聞いてもらってから男の声が聞こえなくなったと言った。

2021年11月4日木曜日

めおと相談屋奮闘記⑧

めおと相談屋奮闘記⑧ 友の友は友だ 野口卓

 川獺日和 信吾は釣りに行き、川獺に竹輪の友・寿三郎の家・極楽堂に押し込む話しをしていた者がいると教えられた。引き込みの女が女中として入り、裏木戸を開ける手はずになっている。信吾は寿三郎に話し、お金が家にある日を聞き出し、権六の助言を聞き、寿三郎と裏木戸を張り込む。女中が鍵を開けに来たところを捕まえる。外では盗人たちが役人に捕らえられた。権六は極楽堂からのお礼百両を半分を信吾が受け取るなら自分も五十両受けとると話しを付けたようだ。信吾は五十両を貰う。信吾は波乃と一緒に川獺に礼を言いに行く。

 目覚め 常吉がハツの感化か将棋に興味を持ち強くなりたいと願うようになった。常吉は駒の並べる順序、盤上の駒の位置を升目の記号を使って頭の中で表すことを教えてもらった。信吾は常吉が、強くなれば宮戸屋に帰らなくても良いかもしれないと思う。

 繋ぎ役に例 三月、信吾と波乃の披露宴が開かれた。寸暇亭押夢が家に来た。押夢を見た甚兵衛が、銀竹屋だと屋号で呼んだ。四十過ぎで隠居したと教えられた。信吾は詳しく知らなくて良いと思った。

 新しい友  駒形に武士が来るようになった。羽織の紋から御城将棋の大橋家の若様だと判ったが、信吾は気にしない。三度来て、駒形に慣れそうになった時、迎えが来て来れなくなった。ハツと指していたのが途中になった。信吾は三番勝っている。

2021年11月3日水曜日

めおと相談屋奮闘記⑦ 

めおと相談屋奮闘記⑦ 次から次へと 野口卓

女房食い顛末 権六が女房食いの話しをする。持参金を持って結婚し、妻をいびり妻側から離縁するようにもっていく。妻側からの離縁だと持参金を返さなくてもいい。持参金目当てに始めから追い出すのを目的に結婚する者がいるらしい。またそれが目的で仲人話しを持って行く者がいるらしい。新妻が入水した事件が起こった。そして悪徳仲人が殺された。天眼の瓦版がでた。仲人殺しの犯人は捕まらない。信吾は犯人は権六親分ではないかと疑った。

将棋指し 子供たちからの提案で、十五才以下は十文になった。ハツは女の子じゃない。ここでは将棋指しだと言った。子供たちが増え、留吉の妹・紋も来るようになった。

付き纏う数 夕七が相談に来た。自分に七が付纏うという話しだった。

運も力だ  信吾の所に知りあいの話しだがと庄太郎が相談にきた。お店のお嬢さんと恋仲になってしまった。そのお嬢さんに大店から養子話が舞い込んだ。断れない話しでどうしたらいいのでしょうという話しだった。波乃の所に知り合いの話しだがと千枝が相談に来た。店の手代と恋仲になったが大店から養子に来る話しが舞い込んだ。どうしたらいいのでしょうと言う。信吾と波乃は話しあったが結論は出ない。待っていてもそれ以後二人からの相談がなかった。
 半月以上たち、二人が一緒にやってきた。大店のほうから婿養子の話を無かったことにしてくれと言ってきた。婿養子に来るはずだった男に大きな取引先から娘の婿にと望まれたようだ。残念で落ち込んだ様子で、父親に手代を婿にと母親が進めてくれ二人は一緒になれることになった。自分たちは何もしていないが、運が良かった。

 波乃の姉・花枝の婿取りの婚礼が行われた。 三月二十七日。

2021年11月2日火曜日

めおと相談屋奮闘記⑥ 

めおと相談屋奮闘記⑥ なんて嫁だ 野口卓 

 竹輪の友 信吾の竹輪の友が来る。ありきたりでない人を捜していた波乃がありきたりじゃない信吾を見付けた。そんじょそこらににいる人じゃない波乃だった。三人は二人を見て結婚も良いものだと思った。波乃の友人が二人来る。
 相談所の仕事が入った。母親と息子・新之助が来る。息子が弟に店を渡し、自分は別のことをしたいと言う。信吾の瓦版をみたからだろうと言う母親。信吾は店を継ぎたいけれど後遺症のため継げなかったと話す。

 操り人 母親と息子と話した次の日、新之助の弟・仲蔵が来る。来た時は、母親と兄に何を話したとか母親にいくら金を貰ったとかけんかごしだったが、話して波乃も加わり仲蔵は笑って帰る。半年後、仲蔵が母親と兄、信吾と波乃、正吾も呼び食事をする。母親は信吾と波乃の三人の時、二人に頭を下げ、包みを手渡した。十両入っていた。

 そろいの箸 波乃は初めて子供の相談にのる。五人のもらい子の姉兄 弟姉妹が両親が優しい。悪いことをした時には怒って欲しいと言う。波乃は五人そろって両親にそう言うことを進める。子供たちに預けられた相談料でそろいの箸を送ることにした。箸は子供たちが選んだ。 
 黒介が波乃の子供たちとのやり取りを聞き、関心していた。
  
 新しい看板 権三親分が波乃に会いに来る。モトが権ちゃん権三さんと言い直し、権三はモトさんと言った。二人は知り合いだった。権三は信吾と話していると身に付いた汚れが落ちていくという。
 前に来た泥棒・万作がお金を返しに来た。
 よろず相談所を波乃と一緒にすることになった。看板を「めおと相談屋」に作り直した。

2021年11月1日月曜日

よろず相談屋繁盛記⑤ 

よろず相談屋繁盛記⑤ あっけらかん 野口卓

 大波の狭間 信吾が相談屋を開いて一年、  ならず者にからまれた事件を機に瓦版のネタになり武芸が達者であることが町に広がった。話題の人物となり、宮戸屋のお座敷がかかることも増えていた。
 今回のお座敷は大名家の留守居役七名だった。みんな字名で呼びあい質問する。最後に陸奥のさる大名家のお家騒動の話が出た。継ぐことが決まった嫡男が、信吾にそっくりだと寡言と呼ばれた留守居役が言った。信吾は過日、十両の手付けで関わり、後百両を貰ったあの騒動だと気付いた。関わったことは微塵も知られないようにした。

 破鍋に綴蓋 楽器商「春秋堂」の家族と信吾の家族が集まった。和気あいあいのうちに話しが弾み、「信吾の嫁に波乃さんをいただけませんか」「申し出を慎んでお受けいたします」と進んだとき、信吾が言わなければならないことがあると切り出した。生活費のこと、そしてほんのたまに、自分の記憶が抜け落ちることがあると話した。波乃は信吾のところに嫁に行くのは自分しかいないと言った。祖母の似合いの夫婦です。破鍋に綴蓋の言葉で一緒になることが決まった。
 次の日、波乃は将棋会所を見に来る。野良犬の群れも来た。波乃は信吾が野良犬の親玉と話しをしているようだったと言う。
 隣家を借りることになり仮祝言を挙げ、一緒に住むことになった。
 ハツと信吾は心の声で話した。ずっと将棋を続けると。

 余波は続く 旗本の次男、三男三人に待ち伏せされた。三人を連れて家に帰り酒を飲み愚痴を聞いてやる。
 七名の留守居役のうちの白眉が信吾に会いに来た。話しをして上機嫌で帰った。親たちは白眉の機嫌の良さに驚いた。
 留守居役の若干が会いに来た。名前は蟻坂吉兵衛だと名乗った。蟻坂は機嫌よく帰った。親たちは若干の明るさに驚いた。

 初めての夜 巌哲和尚に波乃を会わせる。甚兵衛と常吉に三日後の二月二十三日の仮祝言のことを告げる。
 新居に新郎・新婦の家族が集まり武蔵屋が仲人で祝言が行われた。