時雨みち 藤沢周平
帰還せず 隠密・半之丞は、まだ戻らぬ同僚山崎を探しに加治藩に戻った。鍛冶屋の婿に成り代わっていた。半之丞は死んでいたと報告すると山崎に告げるが、山崎は半之丞を殺しにきたので半之丞は山崎を殺した。
飛べ、佐五郎 佐五郎は敵として十二年追われていた。国元では斬りあった理由が冤罪だったとわかり同情の声があがったという。佐五郎を追っていた男が病で死んだ。佐五郎は安心し、三年間世話になったとよに別れを告げた。とよは佐五郎を刺し殺した。
山桜 野江は18才で嫁に行き、二年目に死別。一年前に磯村に再嫁した。舅は金貸しをし、市中に妾を囲い早く隠居し、蓄財に専念していた。磯村家に馴染まない。結婚せず一人暮らしていた伯母の墓参りの帰り、山桜の枝を折り取ってくれた武士・手塚弥一郎と出会う。出合は初めてだったが、彼からの縁談があったことを思い出す。母一人、子一人の家に嫁ぐことをためらった。今幸せかと言う質問を受ける。
その年の暮れ、手塚弥一郎が諏訪平右衛門を刺殺した。諏訪は富農と組み農政に口を挟み、富農に有利な検見をし、私服を肥やす。長年の農政への干渉が百姓の強訴に繋がるが、諏訪は名家老の裔のため手出しが出来なかった。帰ってきた夫の手塚の悪口に野江が口答えをし、離縁となった。
手塚は四月の藩主の帰国を待ち裁断を仰ぐことになった。獄中で丁寧に扱われているらしい。
野江は山桜の枝を手折ってもらい手塚の家に行く。手塚の母が、磯村のような家に嫁がれたあなたやご両親を怒ってましたよと言う。野江は家に上がりながらここが私の来る家だった。もっと早く気づかなかったのだろうと思った。
盗み食い 助次郎は、腕が良く新しい物にも挑戦する根付師職人だった。助次郎は労咳だった。二年先輩の政太は、親方の技を忠実に伝える職人だった。親方の跡継ぎを匂わされていた。政太には将来を約束したみつがいた。助次郎が寝込み仕事が忙しくなったため、みつに助次郎の食事を頼んだ。仕方なく受けたみつだった。一月後、みつは政太に別れ話を持ってきた。政太と別れて助次郎の面倒をみるという。政太はわかったと言うしかない。政太は助次郎に親身な心配をしていなかったことに気付く。
滴る汗 森田屋右兵衛は公儀隠密だった。城内で徒目付の鳥谷に茶を飲みながら城下に公儀隠密がひそんでいることが知れ手配をしたと教えられた。右兵衛は、刀を埋め、書付を燃やす。一度連絡を頼んだ下男を探し、寝込んでいる爺さんを殺した。鳥谷が能登屋が捕まったことを教えてくれる。爺さんが殺され根付の折れ端が落ちていたとも言う。右兵衛の亀の根付のしっぽだった。右兵衛は全身が汗にまみれた。
幼い声 昔の長屋の少女
夜の道 三才の娘がいなくなり十五年探している伊勢屋の内儀、結婚が決まったすぎのところにやってくる。すぎは伊勢屋に行く。何もおぼえていない。自分の子供が三才になった。思い出した。伊勢屋に走る。
おばさん 夫を亡くし一人暮らしのよねは長屋の人に馴染まない。火事で焼け出された若い男が転がり込む。よねは元気になるが、男は一緒に住みたい女が出来て出て行く。
亭主の仲間 店を潰した亭主は人がいい。人足をしている。人足仲間を連れてきた。二度目に一分貸して欲しいと頼む。ちょこちょこ付いてくる。安之助は仕事を辞めた。二日後一分の無心にくる。きくが留守の間に安之助がくる。辰蔵が金がないというと家捜しして荒れ狂って帰った。一月後夜中に誰かがきた。二人は出なかった。首を裂かれた猫がすててあった。これからどうなるのか。
おさんが呼ぶ 紙問屋伊豆屋の下働きのさん19才は無口だった。自分からしゃべれなくなっていた。紙問屋へ紙の売り込みに地方から人がくる。廉七と民蔵という人がきていた。手代の庄次郎と民蔵が得意先にお金を使い廉七の邪魔をしていることを知る。廉七が帰る時、さんは一緒に連れていってくれと頼む。主人にさんのことを話しに行く廉七に付いていって民蔵と庄次郎のことを話そうと思うさんだった。
時雨みち 昔の女に会いに行く
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