2021年11月15日月曜日

花宴

花宴 あさのあつこ

 嵯浪藩の勘定奉行の西野新佐衛門 の娘・紀江は小刀の名手だった。父の弟子・三和十之介との縁談がまとまる。二人は手合わせをする。互角だった。だが縁談は破談になった。十之介の兄が殺され十之介は仇討ちに出た。帰ってくれば三和家を継がなくてはならない。
 一年が経ち、紀江と勝之進との縁談が整った。十之介が仇を討ち帰藩した。家禄が五十石増え、一年後家督を継ぎ、筆頭家老磯村の近縁の娘と妻帯した。
 紀江の心から十之介は消えなかった。娘が生まれた。しかし、かっての婚約者の姿を追っていた。娘は三才の夏亡くなった。
 次の年の夏、新佐衛門が城中で亡くなった。心臓の発作ということだった。
 三年が過ぎる。朝帰りの夫が覆面の男たちに襲われた。紀江が助ける。傷だらけの夫が、父の亡くなった理由を伝えた。
 筆頭家老になるために磯村は前筆頭家老堀田を毒殺した。堀田は野田家老を筆頭家老にしようとしていた。磯村は堀田を殺し、野田の縁戚のものを陥れるために十之介の兄を殺していた。堀田の死に不審を持った新佐衛門は不正の証拠を探していた。新佐衛門も毒殺された。勝之進は、毒殺した医者の遺書を手に入れた。そして襲われた。勝之進は書状を紀江に託した。
 紀江は竹筒を持って家を出る。五人の男に囲まれる。三和がいた。紀江は父の死の真相をご存知かと問う。全てを知っていたと判る。自分の身を挺して三和を倒す。三和はこうするよりしか・・・なかった。気がついた時には後戻りが出来なかったと言い残して死ぬ。
 書状は下男が元大目付に届けた。
 紀江は屋敷に帰り、勝之進の胸に顔を埋め、安堵し自分の帰る場所はここだったとやっと辿り着いた思いだった。

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