よろず相談屋繁盛記⑤ あっけらかん 野口卓
大波の狭間 信吾が相談屋を開いて一年、 ならず者にからまれた事件を機に瓦版のネタになり武芸が達者であることが町に広がった。話題の人物となり、宮戸屋のお座敷がかかることも増えていた。
今回のお座敷は大名家の留守居役七名だった。みんな字名で呼びあい質問する。最後に陸奥のさる大名家のお家騒動の話が出た。継ぐことが決まった嫡男が、信吾にそっくりだと寡言と呼ばれた留守居役が言った。信吾は過日、十両の手付けで関わり、後百両を貰ったあの騒動だと気付いた。関わったことは微塵も知られないようにした。
破鍋に綴蓋 楽器商「春秋堂」の家族と信吾の家族が集まった。和気あいあいのうちに話しが弾み、「信吾の嫁に波乃さんをいただけませんか」「申し出を慎んでお受けいたします」と進んだとき、信吾が言わなければならないことがあると切り出した。生活費のこと、そしてほんのたまに、自分の記憶が抜け落ちることがあると話した。波乃は信吾のところに嫁に行くのは自分しかいないと言った。祖母の似合いの夫婦です。破鍋に綴蓋の言葉で一緒になることが決まった。
次の日、波乃は将棋会所を見に来る。野良犬の群れも来た。波乃は信吾が野良犬の親玉と話しをしているようだったと言う。
隣家を借りることになり仮祝言を挙げ、一緒に住むことになった。
ハツと信吾は心の声で話した。ずっと将棋を続けると。
余波は続く 旗本の次男、三男三人に待ち伏せされた。三人を連れて家に帰り酒を飲み愚痴を聞いてやる。
七名の留守居役のうちの白眉が信吾に会いに来た。話しをして上機嫌で帰った。親たちは白眉の機嫌の良さに驚いた。
留守居役の若干が会いに来た。名前は蟻坂吉兵衛だと名乗った。蟻坂は機嫌よく帰った。親たちは若干の明るさに驚いた。
初めての夜 巌哲和尚に波乃を会わせる。甚兵衛と常吉に三日後の二月二十三日の仮祝言のことを告げる。
新居に新郎・新婦の家族が集まり武蔵屋が仲人で祝言が行われた。
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