2022年11月27日日曜日

しゃばけシリーズ こいごころ

しゃばけシリーズ こいごころ 畠中恵

 おくりもの 料理屋の三野屋が、はしかの子供が遊びに行き伊和屋の子供、主人の妹・沙江にもはしかを移してしまった。伊和屋にお詫びの品を贈りたいが何をすればいいか判らない。相談された長崎屋の若旦那・一太郎は、伊和屋を調べに行く。内向きのことを知ってしまった一太郎は、沙江の縁談をまとめ、主人の縁談をまとめるのがいいことに気付く。

 こいごころ 熱を出し寝込んでいる一太郎の夢の中へ、狐仙と呼ばれる妖狐・老々丸が現れ、立派な妖狐になると思われていた笹丸の妖の力が尽きかけている笹丸を、おぎん様に頼んで茶枳尼天様の庭に入れてもらえないかと言ってきた。広徳寺の寛朝の所へ連れて行く。金印を飲み込んだ狸を盗んだ者を見つけ出し狸を探す。祝いの席で笹丸を消えた。妖の力が失せた時、命が無くなる。老々丸は命の無くなる笹丸のために、以前に声を掛けられ親切にしてもらった一太郎に恋心を持った笹丸のために、最期に一太郎に合わせるために江戸に来たのだった。

 せいぞろい 長崎屋の主人が、一太郎のために誕生祝いをした。店の奉公人の夕餉に祝い物をつけお酒が一本付いた。離れの妖もする。食べ物を調達に行く妖がそれぞれの所で集まる妖を増やしてくる。河童、猫又、王子の狐、天狗。人数が多くなり過ぎて広徳寺ですることになった。賊が押し入り奪った金を奪われ、探し回っていると日限の親分が知らせに来た。日限の親分も参加する。三百両しか入ってなかった千両箱に、賊たちは大事な物を入れたのだろう。盗まれた千両箱を取り返しにきた賊を、佐助と二吉でが捕まえ、千両箱を盗んだのは賊の船頭だろうと教え日限の親分を奉行所へ追いやった。

 遠方より来たる 一太郎の掛かり付けの医者・源信が、引退する。誰が長崎屋出入りの医者になるか住民は見ていた。源信の弟子は、甥の黄源と信青がいたが、黄源は源信が品川に連れて行くことになり、信青は大阪の医師に預けられることになった。新しい医者は火幻と名乗る鳥辺野から来た妖の化前坊だった。僧装だった火幻に医者の着物と源信が住んでいた家を渡した。

 妖百物語 火幻が長崎屋出入りの医者に決まった。廻りの商家の主から顔合わせに、百物語の会に誘われた。火幻と一太郎と金次と屏風のぞきも誘われた。九十九で終わらせる話しを百までして妖を呼ぶという。四人は困った。出てきた妖が、親しげに四人に話しかけてきても困るし、自分たちの手に負えない妖が出てきても困る。途中で一太郎の具合が悪くなり四人で帰るという計画で会場へ行く。会場へ行くと商家の主たちを目の敵にする商家の次男三男が、山伏を集めていた。不穏の気配に一太郎が途中退場しようとすると、帰りの扉は反対側から閂が掛かっていた。扉の向こう側では若者たちの悲鳴が聞こえる。山伏は逃げ、怪異が若者たちを引きずっている。一太郎は寛朝のお札を持たせて小鬼たちを投げる。怪異にぶつかった小鬼は怪異にお札を張る。怪異は消えた。その後、百物語は禁止になった。一太郎は熱を出して寝込んだ。若者たちは怖がって出てこなくなった。

 

2022年11月25日金曜日

八丁堀強妻物語〈二〉 銀の玉簪 

八丁堀強妻物語〈二〉 銀の玉簪 岡本さとる 

 見廻り中の芦川柳之助の目の前で、若い娘・いとが大川へ身を投げた。近ごろ起こっている娘の”神隠し”が、いとの身投げと繋がっているか否か。隠密廻りとして探索を始める。
 恋しい夫のために戦う喜びを味わった千秋は、柳之助の探索が気になる。

 柳之助は定町廻り同心・外山壮三郎と協力する。
 いとと追いかけていた男が仁助と判明する。
 金貸し彦右衛門が殺された。仁助が女を騙し彦右衛門の寮へ連れ込んでいたことが判明。彦右衛門の寮から櫛、簪、匂い袋が見つかる。いとの櫛があった。
 書家の北村東悦の駕籠が襲われ、殺された。東悦の家に賊が入り、金蔵を荒らされた。東悦は彦右衛門とつながっていた。
 仁助の遺体が埋められ見つかった。
 東悦は大身旗本、大名、富商などと付き合いがあり調べていると横槍を入れられる。
 柳之助は、万屋竜三郎と名乗り、消えた跳ねっ返り娘が出入りしていた汁粉屋に行く。女将のふみは、気持ちの良い女で娘たちは駆け込み寺のように訪ねてきていた。千秋の命で花は柳之助を見張っていた。
汁粉屋を出ると小間物屋で玉簪を物色した。花から聞いた千秋は嫉妬し、何故見張らしたのか後悔した。柳之助が帰ってきた。月見灯籠が描かれた銀の玉簪を差し出した。
 仁助や東悦と繋がり、私娼を仕切る、漢籍を売る本橋道四郎の身柄を確保した。取り調べを始めた途端、高家・三雲丹波守から横槍が入り、本橋解き放した。
 汁粉屋で柳之助は、本橋に上手く乗せられないようにと言う。千秋と花はふみをつけた。何か判ったかと聞く三人の編み笠を被った武士と会った。
 本橋が三雲の屋敷に行く途中、覆面の武士に襲われた。本橋は矢が刺さって死んだ。「悪党め!天罰を受けよ」と言った。一人捕まえた武士は「守相手を違えるな。木っ端役人めと言って自決した。柳之助は通りすがりの飛脚を装い立去った。
汁粉屋は店じまいしていた。
 儒者、軍学者・松尾槌次郎は政道塾を開いていた。天誅世直しの活動をしている。ふみの妹が、彦右衛門に攫われ妹は潮来の女郎屋で死んでいた。女を生き地獄に落とす者を許してはならぬ。妹の仇討ちと称して仁助と彦右衛門を殺した。繋がっていた東悦を殺し、本橋を殺した。そして三雲を殺すことを前に、蔵を荒らしため込んだ金を奪うという。ふみは聞いてしまった。槌太郎と一秋が、金を持ち去りさえすれば我らの勝ち。同志たちは先生を逃がすために命をかけるでしょうと言った。ふみは一秋に斬られた。虫の息のふみは、柳之助にただの盗人に成り下がった。今宵・・・と伝える。
 松尾たちは三雲邸を襲った。柳之助、千秋、花は通りすがりの助っ人と名乗り松尾たちにかかる。松尾は荷車に略奪品を載せて屋敷の外へ。千秋の兄・喜一郎が奉公人と共に駆けつけた。柳之助たちは松尾一党を追う。官兵衛は二挺艪で来てくれた。千秋と花が半弓で槌太郎に射掛けた。柳之助は刀の峰で槌太郎の眉間を打ち、ふみ仇は討ったと語りかける。
 奥高家・三雲丹波守は隠居し永蟄居となった。


2022年11月23日水曜日

鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿

 鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿 鳴神響一

 鎌倉山の邸宅の書斎で文豪の蘆名盛雄95才が死体で発見された。神奈川県警捜査一課の吉川元哉巡査長がコンビを組まされたのは、幼馴染で鎌倉署刑事課の小笠原亜澄巡査部長。二才年下なのに小生意気で口煩い亜澄だが、抜群の推理力でこれまで共に難事件を解決してきた相棒だ。

 蘆名盛雄は自殺と思われた。ただ、遺作原稿「稲村ヶ崎の落日」が無くなっていた。

 夫婦池公園の池でフリーライターの上原尚一の他殺体が発見された。吉川は亜澄と組まされ手帳のUBAGAYAを手がかりに「姥ヶ谷」に行く。姥ヶ谷は稲村ケ崎にあった。蘆名盛雄の「稲村ケ崎の落日」についてのインタビュー記事が見つかった。湘南中学の同級生で残っているのは蒲生隆郷だけ、蒲生に読んで欲しいというものだった。インタビュアーは上原だった。
出版社の鳥居は、被害届を出します。原稿は探して下さい。二人は事件が関係すると考え、「稲村ケ崎の落日」を追いかけさせてもらうように頼む。

 蒲生隆郷に会う。二人の孫。開発企画室・蒲生秀之33才、営業戦略部係長・細野敦司34才。
 アラン・カルパンティエ司祭
 蘆名家の使用人、秘書兼財産管理・富田実、運転手兼雑用・金上利夫、料理や掃除・三村和枝・松本麻里奈。

 調べた結果、蒲生隆郷の長男として育った秀郷は、蘆名盛雄の子供だった。母親・貴子だけが知り、貴子が亡くなる前に秀郷だけに話していた。昨年、秀郷は亡くなる前に、本当の父親・蘆名盛雄に告白して亡くなった。蘆名は海軍の特攻に出る前に愛する人と結ばれた。貴子はお腹に蘆名の子供がいることを承知で蒲生と結婚した。蘆名は死んだと思っていた。
蘆名は去年までその事実を知らなかった。そして「稲村ケ崎の落日」を書いた。

 誰が原稿を盗んだか。上原を殺したのは誰か。二人は蘆名盛雄の追悼ミサであぶり出しことにした。AIで合成した盛雄の声で「私の本が何故でないのだ」と言わしめた。
 あぶりでたのは、松本麻里奈だった。
 麻里奈は死のうとする直前の盛雄に頼まれた。原稿を鳥居に渡すこと。一ヶ月前に書いた公正証書遺言を預かった。盛雄は病気のための頭の痛みに耐えられない、もうすぐ意識混乱が起こる。自分の頭がはっきりしている間に片づけておかなければと言った。
 麻里奈は秀之と付き合っていた。原稿を読む秀之が不利に、蒲生家から追い出されると思い表にだすことを拒んだ。上原は麻里奈が原稿を預かっていること、富田や三村がお金を着服していることを知っていた。会おうと言われた日の前に上原が亡くなりほっとしたことを告白した。
 上原は富田と三村と会い、二人を脅した。上原は殺された。二人は認めた。
 蒲生家の人々がすべてを知ったが、関係は変わらなかった。隆郷は、秀之が文化勲章者の孫だ。名誉になっても恥にはなるまいと言った。

 鳥居も隆郷も原稿が見つかりおおいに喜んだ。


神奈川県警の捜査本部長は黒田刑事部長で、捜査主任は福島捜査一課長。二階堂管理官もいた。


 


 

2022年11月21日月曜日

恋いちもんめ

 恋いちもんめ 宇江佐真理

 水茶屋「明石家」の娘・初17に裁縫の師匠・久が、青物屋の「八百清」の栄蔵との縁談をもってきた。二人は気があった。初は頼りない兄が心配で嫁に行くことに気乗りがしない。

 栄蔵にはふじが一緒に来る。ふじは栄蔵を好きなようだ。ふじは一人娘で婿をとらないといけないので栄蔵と一緒になれないようだ。川開きの後、栄蔵との話が決まる。

 八百清から火が出て、母親が亡くなる。栄蔵がいなくなった。 

 十月、ふじの結婚が決まった。栄蔵の従兄弟・友次郎だった。八百清の土地は更地になって伯父の管理になった。仮祝言の日、友次郎はそれまで付き合っていた女に殺された。

 栄蔵が見つかった。品川で女郎屋の妓夫をしていた。栄蔵と合ったがうまく話が出来ない。俺のことは忘れてくれだった。

 初の母親が好きな人と一緒におなりと言う言葉を残して死んだ。初の父親・源蔵の友人・佐平次は、栄蔵の借金を返し栄蔵を自由にした。

 正月、誘われてふじの家に行くと栄蔵がいた。栄蔵は働いていた。花見の季節、初は栄蔵がふじと一緒になるのが周りの人々に好都合なのだと思うようになった。栄蔵に伝えると、自分のことは自分で考える。人の都合になど振り回されない。見くびるなと言われた。

 四月三日、初の兄の祝言の日、栄蔵は来た。栄蔵は初の夢を叶えると言って帰った。藤城屋を出た。ふじが栄蔵を探しに来た。
 一ヶ月後、両国の床見世に栄蔵が八百清の見世を開いた。


 

2022年11月19日土曜日

マイ・ディア・ポリスマン

 マイ・ディア・ポリスマン 小路幸也

  宇田巡(めぐる)巡査25は小学校の三年間を過ごした町の交番に配属された。捜査一課からてんの配属だった。同級生・大村行成が副住職を務める東楽観寺前交番。お寺の境内に交番勤務の独身警察官の住居があった。

 昭和最後の平場師と呼ばれた女掏摸・菅野みつの孫娘・楢島あおいがいた。みつに負けない掏摸の上手い、漫画家志望の女子高生。あおいの友人・鈴本杏菜と一緒に、自分の子供に虐待か育児放棄の疑いがある市川美春の存在をうたのお巡りさんに知らせるため、美春の財布を掏摸、四人でいる時に交番前のベンチに置くという荒技を使う。
 美春の夫は二人の同級生だった。あいうえお順の市川、宇田、大村だったため三人が思っているよりもお互いをよく知っていた。
 美春の夫・市川公太にはいろんな問題があった。が、巡と行成は、巡の住居へ呼び、手製寿司でもてなす。奥さんのこと、自分の店に客を呼ぶため自営業の家にちょとした悪さをしていることをしっていると教える。
公太は夜の仕事を辞め、運送会社に勤めながら高卒の資格を取り大学へ行き、弁護士になることにした。

 あおいは祖母・みつを知っているという天野さくらの存在を知る。話を聞く。巡も菅野みつと自分の祖父を知っているという天野さくらの存在を知り話を聞く。

 巡は非番にあおいとデートする関係になった。あおいに市川兄弟の記憶力の不思議な力のことを話、あおいのしたことを知っているとはなす。平場師の技を使って人助けしようと思うのならその人の人生まで考えないといけない。ちゃんと相談して欲しいと言った。
 行成は杏菜と境内の掃除デートしている。
 

 

2022年11月17日木曜日

猫弁⑤  猫弁と魔女裁判

猫弁⑤  猫弁と魔女裁判 大山淳子

 百瀬太郎の住むアパートの大家は、持っていた不動産を売って故郷の熊本に息子と帰った。太郎は売れ残ったアパートの大家の代行をしている。

  百瀬は、日本最大大手法律事務所・ウエルカムオフィスの秦野から以来された裁判の調べに没頭し、アパートにも事務所にもいない常態だった。
 不正アクセス禁止法で逮捕した、魔女と呼ばれるアメリカのスパイ・シュガー・ベネットの裁判。外事警察、公安の滝之上が十年かけて追いつめ逮捕・拘留したが証拠不十分で不起訴、経団連が告訴するが不起訴、検察審議会に訴え起訴相当となり指定弁護士を秦野に頼んだ。秦野は百瀬に頼んだ。
 百瀬は引き受け、指定弁護士の権限で、強制捜査を始め、逮捕・拘留した。
 日本ではスパイの裁判はお茶を濁す。即時釈放国外退去が恒例だった。
 百瀬は強引だった。拘留は行き過ぎではないかと疑問視された。
 太郎は、シュガー・ベネットは自分の母親だと思っている。

 百瀬がいない事務所を赤井玉男が手伝っていた。
 死んだ愛猫の生まれ変わりと称して新しい猫を押し付ける、詐欺の訴えを調べていた赤井。
 生まれ変わりでないことを承知で、新しい猫を飼っていた本人、買った訳ではなく、本当に猫が好きか調べられ次の猫を紹介されただけだった。猫を動物愛護センターから引き取り猫を亡くした愛猫家の元に猫を届けていた青木その子。赤井が青木に会った時、青木は母を亡くし、猫を飼えて安い住むところを探していた。赤井は百瀬の住むアパートを紹介する。
 柳まこと獣医は、動物愛護センターに収容された犬猫の殺処分が禁止になったことを伝えた。まことは、黄色の蛇を高知に運んでくれたトラックの運転手と結婚した。

 四月七日の結婚式に向け、大福亜子は式場と一人で打ち合わせをしていた。
 亜子の父親へ挨拶に行くと言っていた太郎だったが、裁判の調べのため行けなくなった。野呂が替わりに父親・徹二に挨拶する。父親は野呂を気に入った。野呂は百瀬の心は一級品と言い、お嬢さんのお相手として不足はないと言いきった。父親は式には出ると言った。
 久しぶりに会った太郎は、亜子を養護施設に連れて行った。子ども園の園長・遠山にシュガー・ベネットは母だと言う。遠山は面会を許可されシュガー・ベネットに会った。太郎の生い立ちを話す。頭が良い彼に、弁護士になればお母さんを助けてあげられるかもしれないと生きるモチベーションを与えたことを話した。
 亜子の後輩・赤坂と結婚してフィリッピンに行った旧姓・寿春美は、赤坂隼人に
一ヶ月三十万の家事手当てを頂くことになったと連絡してきた。三年の任期が終わり離婚することになっても慰謝料や財産分与は無いという契約をした。

 裁判が始まった。起訴状は五年にわたる三十五回の不正アクセス行為により、懲役三年の求刑。
 一回目公判、三十四回の不正アクセスは遠隔操作による被害者の可能性があるということで一蹴される。三十五回目の島根の医者の論文の改ざんについては、百瀬は次回の証人尋問を要求し認められた。
 二回公判、百瀬が論文の改ざんをされたという医者・上野三郎は、掲載されると思っていた論文が返され、自分の記憶にある論文と違っていた。自分がアルツハイマーの初期症状だと認識していた上野は、こんなに病気が悪化していたのかと思い、診療所を閉じ施設に入っていた。
 百瀬はパソコンの復旧作業をし、改ざんされる前のデーターを救出した資料A。投稿されたもの資料Bとは明らかに違っていた。
 上野の友人・佐川の元にシュガー・ベネットが、上野の論文を返して欲しいと訪れたことを証言した。佐川の元に在った論文は資料 Aと同じだった。被告人・シュガー・ベネットも佐川を訪問したことを認めた。
 百瀬は、三十五件目の不正アクセスは立証された。医療の進歩を妨げ、インターネットの不信感という点で社会に与えた影響は大きい、懲役三年を求刑した。
 
 十日後の判決当日、亜子と父親は、沢村と二見に傍聴チケットを譲ってもらう。
 判決は、懲役三年となった。裁判官は、圧力がかかったが、無罪にもできず、執行猶予もつけなかった。
 判決の言い渡しが終わった後、百瀬が、被告人に三十五年前、七才の息子を手放しましたね。理由を述べてくださいと言う。諜報活動のためです。行為は間違っているとは思いませんか。その時、それが息子にとって最良の道だと判断した。後悔したことはありませんか。私は正しかった。息子にとって最良の道だった。あなたを見て今、そう確信している。とやり取りがあった。二人は見つめ合ったシュガー・ベネットは退場した。二人の会話を止めさせようとした裁判長に亜子は二人に時間をとお願いした。
 沢村は彼女はAMIの命令に背いた。逮捕されるしか組織を抜ける道が無かったのだろう。小さな証拠を一つ残し、たどり着く人間を待っていたのだろうと言った。
 シュガー・ベネットの弁護士・前に弟だと言って百瀬の前に現れた男が、太郎に渡してと写真を渡した。太郎と母の写真だった。手にした太郎はどんどん昔の記憶が蘇る。

 亜子の父親は式場をキャンセルさせる。それを聞いた太郎は、分かりましたと言い、彼女のおかえりなさいを思い出にしなければならないと思った。
 亜子は、結婚式にはお母さんに出席してもらわなければ、式は三年後に延期すると父が言うと続けられた。
 明日から一緒に住むと亜子は言う。
 
 

 

 

 


2022年11月15日火曜日

猫弁④ 猫弁と少女探偵 

猫弁④ 猫弁と少女探偵  大山淳子

 滝之上京子10才は、川岸で烏に突かれている三毛猫を拾った。猫が心配で猫を飼っているマンションの隣の部屋の野口美里に相談した。猫にエリザベスと名付け、飼うための道具も揃えてくれた。散歩に行き猫がいなくなった。京子は探した。印刷屋でチラシを作り新聞と一緒に入れてもらった。見付からない。猫の身代金五百万円を要求する電話があった。美里は猫弁・百瀬に依頼した。

 百瀬太郎の弟・百瀬次郎と名乗る赤毛の男が現れる。太郎のアパートで一晩過ごす。帰った後、盗聴器が仕掛けてある。太郎は偽物だと言う。太郎の母親は日本国籍ではない、母から赤毛は生まれないことを揚げる。

 猫弁になりたくて事務所を訪れる石森完太10才と一緒に京子の猫探しをする。完太の家にエリザベスはいた。完太の家にいるアネキだった。
 印刷屋は百瀬の中学の美術の先生・上安里で、チラシを作ったのは上安里の教え子で、身代金の電話を掛けてきたのも彼だと分かった。

 百瀬の事務所に京子の父親が訪れる。京子の机の中の百瀬の名刺を見たようだ。百瀬は京子と、美里と猫の話をし、京子の日常を話す。滝之上は、公務員だが、十年掛かった仕事が終わる。5時帰宅の部署に替えてもらうと言って帰る。
 透明人間・沢村が、百瀬に会いにくる。帰る滝之上を見て、彼は公安だと言った。沢村は二見との近況報告にきた。沢村は百瀬との出会いに意義を感じていた。
 沢村は、先生が誰かを幸せにするんではなく、先生といる人が幸せになると言った。

 百瀬は大福の家で見合いをすると聞き、大福の家に行く。亜子の手を引き、家から連れ出しバスに乗る。見合いは亜子の同級生・赤坂と亜子の会社の同僚・寿春子のものだった。
 春子は会社を首になり仕事を探していた。赤坂は、外交官として外国赴任に妻を伴いたかった。二人は少なくとも三年間は結婚し、春子は専業主婦で外交官夫人を全うすることにした。

 石森完太は、千葉のおばさんのところに行った。月に二回、上安里のところで京子と絵の勉強をしている。
 京子は、夕飯を美里の家で食べる。

 

2022年11月13日日曜日

猫弁③ 猫弁と指輪物語 

猫弁③ 猫弁と指輪物語 大山淳子 

 朝八時 百瀬は大福亜子といつもの喫茶店で朝食デートをした。春美が考えたミッションだった。朝ご飯を一緒に食べる仲になること。朝会って朝食を食べた。
 亜子は週末一泊旅行に誘われる。百瀬は秋田にエンゲージシューズを買いに行こうと言う。亜子は店長の家に、百瀬は職人の家に泊まる予定。亜子は長くかかる新幹線を選んだ。
 当日、行けなくなったと百瀬が来る。亜子は秋田まで行けば迎えがいるからと一人で秋田に行かされる。
 大河内三千代に会った。彼女は何もかも分かっていた。そして自分の気持ちをはっきり伝えるか、あなたが百瀬に慣れることが必要だとアドバイスされた。
 早足で歩けて、走っても痛くなくて、雨の日も大丈夫で、何年もどこへでも履いていける目立たない靴を注文した。そして三千代は希望の靴ではないが、この靴を履いて貰いたいと赤い靴を渡した。もっと自信を持ちなさい。人を幸せにする才能を持っているのだからと言われた。繊細かつ強靭な赤い靴。
 亜子が帰る時間、百瀬は迎えに行った。亜子はお似合いの男性と二人だった。男はミスター美波、美容コンシェルジュ、テレビに出ている人だった。
 百瀬は赤い靴を履いた亜子と会った。亜子は沢山話した。事務員の七重が亜子に真珠が一個ついている指輪を贈った。
 
 まこと先生は、飼い主の小松が引っ越しで飼えなくなるビルマニシキヘビを引き取ってきた。
 まこと病院にトラックで轢きそうになった灰色猫を運転手が連れてきた。栄養が足りなくてぐったりし、前足首を脱臼していた。入院させる。
ビルマニシキヘビの行き先が決まった。クビになったトラック運転手・土田帆巣が、運ぶことになった。
 秋田に行く予定の日、依頼がきた。小松がビルマニシキヘビを転売された。取り戻して欲しいというものだった。
 まこと病院で二人の会話の録音を聞いた。小松に勝ち目はない。

 七重は、時々百瀬法律事務所の黄色いドアに落書きする、貼り紙をする少年を捕まえた。
 
舞台女優・白川ルウルウの密室で飼っている猫が妊娠した。所属するオフィスの社員見習い・味見克子が代理人でやって来て、相手は誰か、真相を解明し、損害賠償を請求したいと依頼する。百瀬は味見を大学に戻し、講義を受け卒論を書くよう勧める。
 白川本人に会う。メインクーン種名前はべべ。世界チャンピオンを狙おうかという猫。
 野呂が百瀬に代わりペットシッター・今井静香に会い話しを聞く。べべの顔つきが変わったこと。過去に何回も脱走していること。白川ルウルウは恋愛詐欺で被害者が大勢いることを聞く。前回脱走した時、ミスター美波に任せたこと。
 野呂は百瀬に自分の過去を語った。白川ルウルウは司法試験の勉強中に一緒に住んでいた女性だった。親に金の無心をして指輪を買って彼女の指に嵌めた。婚姻届けにサインをする時彼女は消えた。会っても名前を言っても彼女は覚えていなかった。
 味見克子は、就職活動を辞め、卒業までしっかり勉強することにしたと報告に来た。
 真相を報告する。べべは妊娠していない。まことが連れてきた灰色の猫がべべだった。逃げたべべを見付けられなくてミスター美波はべべの母親・マリンを連れてきて入れておいたのだった。マリンは用意された段ボールの中で三匹の赤ちゃんを産んだ。まことが土田を呼び産後の必需品を運んできた。生後二ヶ月ここに置いて欲しいという。白川るうるう・土田とめ子は帆巣の母親だった。野呂は帆巣の年を聞き、父親ではないことが判った。
 べべは帆巣が引き取った。帆巣は俳優の金城武に似ている。イケメンドライバーの相棒は大型美ネコ。
 土田とめ子は司法試験に十回も落ち弁護士を目指して勉強していた男から指輪を貰い、奮起し、ブロードウェイに行った。その指輪を出し、またもやアメリカに行く夢を追いかけて。

2022年11月11日金曜日

猫弁② 猫弁と透明人間

猫弁② 猫弁と透明人間  大山淳子

 百瀬太郎の弁護士事務所に杉山というタイハクオウム・杉山の様子を見てきて欲しい。というメールがきた。透明人間からだ。
 杉山は、天気予報士・山田とテレビ出演していたが、映画「どついたるねん」の言葉を覚え大阪弁で喋るため山田は、世話を頼んだ会沢に押し付けていた。会沢は杉山をもてあましているため引き取ってきた。杉山は、キャットタワーの最上段を自分の居場所としている。透明人間から百万円入る。最終的には透明人間に杉山を引き取って貰おうと考えている。
 透明人間・沢村透明は、十才の時、同級生が屋上から飛び降りたのが、自分の言った「臭い」の所為だと思い、言葉を発しなくなり、引き籠りになった。本読みに明け暮れ二十才の時、一生分の勇気を出して司法試験を受けた。合格したが研修所には行けなかった。トップ成績で受かったのに研修所に来ない沢村の存在を知った落ちこぼれどうにか弁護士になった二見は、沢村に会った。沢村は二見のゴーストになり家から独立した。訴状書き、裁判のシナリオも何パターンか作る。青山に事務所を持つ二見は、テレビで売れっ子で法律王子と呼ばれた。
 沢村は、夜の公園で遊ぶ母子を知った。夫は入院中で病院と争っていた。二見が持ってきたのが、母子の医療訴訟だった。手術後の意識が戻らない。病院側だった。降りたいが降りられない。沢村は母子を助けるためデーターの改竄をした。ハッキングだった。

 百瀬は大学教授をしている同級生・寺本から、赤井がウエルカムから誘われているが百瀬の事務所に行きたいと言っているどうしたものかと相談を受ける。百瀬と話をし、寺本は百瀬になりたかったら、クビになるまでウエルカムにいろと、言うことにする。
 後日、寺本がウエルカムは赤井から二見に替えたと聞いた。二見に医療訴訟を回してうまくいったらという話しのようだ。百瀬は医療訴訟を調べる。原告側の弁護士に会う。西田幾太郎から資料がきていた。改竄されていた。ゴーストをかって出た。西田幾太郎は透明人間だと思った。

 百瀬は沢村にたどり着いた。杉山を持って行く。透明人間であり西田幾太郎でしょう。改竄は直したと言う百瀬を、毒で殺そうとした。飛び込んで来た二見が、裁判で負け、原告側のシナリオも沢村が書いただろうと言い、言いたいことを言って怒って出て行く。
 百瀬は、よくある点滴時に空気が入り、田部井が、心房中隔欠損症であったため小さい脳梗塞が出来ていることを見付けた。状況証拠で刑事裁判は無理だが民事裁判では病院側の過失が認められた。賠償額は適当で病院側は控訴しない。沢村はコーヒーを飲もうとした百瀬のカップを払いのけた。百瀬は割れたカップをきれいにかたずけた。
 杉山は沢村に渡された。
 後日、百瀬は透明人間から、大阪弁で研修所に通うことにした。資格が取れれば青山で働らこうと思てる。というメールを受け取る。
 
 百瀬太郎と大福亜子は、婚約したと言いながら喫茶店での初デートをする。
 二度目は百瀬が濡れているため外でお弁当を食べることになった。百瀬の過去を聞く。
 高校に行かず、大学の生活費を稼ぐためにパチンコ店の住み込みを三年間。同級生の高校生の家庭教師をしながら高校の勉強をし、大検を受けた。その高校生が女子と聞いて亜子は機嫌が悪くなる。東大に受かって今のアパートに入った。
 世田谷猫屋敷事件の被告・黒岩サチ江が亡くなった。行くたびに増えていた手作りの猫は三十七匹あった。だんだん上手になっている。一匹貰い後は棺に入れる。後日、作ったのは亜子だと知る。
 獣医師・まことから亜子の写真を受け取った。百瀬はポケットに入れる。
 百瀬は事件絡みの男に暴行され、病院で看護婦になった、パチンコ店の娘・沙織と再会した。父親は亡くなり、母親は出て行った。沙織は百瀬の真似をした。住み込みで看護学校に通わせてくれる病院で勉強し、看護婦になった。結婚し、子供もいる。
 亜子の同僚・寿春美の助言で、百瀬を両親に合わす。百瀬の戸籍に父親はいない。母親とは7才で別れた。母親が子供をすてたのか、うちの娘との交際は認めん!と言われてしまう。

 田部井家は陽子の実家に移った。田部井耕平はひまわりを見た。

 
 

2022年11月9日水曜日

情け深川恋女房

 情け深川恋女房 小杉健治 

 深川佐賀町の稲荷小路に「足柄屋」という小間物屋を構える与四郎と小里の夫婦がいた。十三年前に江戸にやって来た与四郎は、地蔵様からの恵みと縁、修行時代に互いに一目惚れした女房の小里を大切にし、支えられた商いが誠実なことで周囲から評判だった。
 小僧の太助が、大店の娘と深川祭りに行き難癖をつけられ大怪我を負った。大怪我をした太助を助けてくれた「鶴岡屋」の又右衛門は親切で、動けない太助の面倒を見てくれた。
 大店・丸醤の主は足柄屋を恨み悪評を撒いた。商売に影響がでた。
 又右衛門と岡っ引きを引退した千恵蔵親分が、周りの人の誤解を解いたり、丸醤の主に会って話しをしてくれた。客は戻って来た。与四郎も小里も千恵蔵親分が親切な理由が分からなかった。
 小里は知らなかったが、小里は千恵蔵親分の娘だった。小里には、母親に昔世話になったと話した。
 与四郎は、親切な又右衛門に額に傷のある目つきの鋭い男がまとわり付いていることに気付いた。男は又右衛門から預かった箱を長屋の男に渡す。千恵蔵に話し一緒に話しを聞きに行く。
受け取ったのは松藏。昔、店で五百両を盗まれそれがために店が潰れ、医者に行く金が無いため妻は亡くなったという経歴の持ち主だった。男は盗んだ泥棒が返したいと代わりに持ってきたと五百両のお金を置いて行った。
 与四郎は傷のある男・秀次郎と話す。秀次郎は又右衛門は、昔、二人の人を殺していると言う。与四郎は今の又右衛門の日常を語り、人助けを語る。秀次郎は、本当に重吾・又右衛門が本当に改心をしていることを知り、事故で亡くなった隠居の死を重吾がやったと言いふらし、自分が殺した弥吉殺しを重吾がやったと弥吉の親に言ったと千恵蔵に話した。
 松藏から五百両を盗んだのは秀次郎だった。重吾がやったと言っていた弥吉殺しも自分だと言い捕まった。
 又右衛門は弥吉を殺したのは自分だというが、秀次郎を庇うなと言われてしまう。
 十三年前、与四郎の有り金を盗んだ弥吉を重吾が殺し、雨宿りしていた地蔵堂に駆け込んできた小僧が地蔵を拝むのを見て可愛そうになり、二朱を置き、持って行けと囁いた。小僧・与四郎は地蔵が言ったとあり難く頂き、今も地蔵様を大事に拝んでいる。そんな関係だった。

2022年11月7日月曜日

北の御番所反骨目録〈五〉 かどわかし

北の御番所反骨目録〈五〉 かどわかし 芝村凉也

 奉行所内でやさぐれと言われてきた裄沢に対し、周囲の者がご機嫌取りをしにきている。裄沢は降りかかった火の粉を払いのけたのだが、そのために内与力二人が役を解かれ、裄沢に強圧的な態度を取っていた与力も致仕した。商人からの引きあいもあるようになった。
 そんな中、呉服屋鷲巣屋が、二重底の菓子折りを持ってきた。裄沢は返しに行く。鷲巣屋の主人・金右衛門が声を掛けてきた。自分と知己を得たところで無駄金になるだけと去って行く。
 金右衛門は裄沢を味方にしたいと思った。裄沢に御番所の在り方を変えようという誘いまでした。裄沢は己の意のままに動かそうとする奸策ということになると言って帰る。金右衛門は右腕という手代・梅吉に周りを引っかき回し右往左往させ最後に脅してあたふたさせたいと命令した。
 梅吉が考えたのが、裄沢が富岡八幡でたまたま会った隣の娘・茜の勾引かしをやらせることだった。裄沢と話しをし別れた茜を勾引かした。お付きの女中が裄沢に助けを求めた。来てもらおうかというヤクザ者に従って行く。女中は帰した。梅吉は、ヤクザ者に勾引かしを頼みいなくなった。
 裄沢は付いて行きながら、自分が同心であること、娘も役人の娘、あの娘は死ぬことになる。追求は厳しいものになることを説く。娘の所へ連れて行けと厳しくいう。手心を加えてやる娘のところへ連れて行け。茜が大丈夫なことを見、勾引かし犯四人に江戸を出るように言った。彼らの謀ではなく己の素性を隠して唆した者がいた。茜を駕籠に乗せ家に帰る。茜の父親に事が表沙汰に成らないように務めたことを話す。
 裄沢は、犯人の心当たりとして鷲巣屋を挙げた。鷲巣屋から梅吉は消えていた。西田たちは鷲巣屋を探索し揺さぶりを掛けた。金右衛門は首を吊り、番頭三人は殺され他の奉公人は消えていた。裄沢は、鷲巣屋は海賊の出店だと思っていた。

 奉行所の小者のまとめ役・善三が、大松が行き方知れずだと言いに来る。大松は裄沢をけ落とすため邪魔をしていた同心に裄沢の動きを知らせるように言われていた小者だった。同心・佐久間が大松を殺したのではないかと疑われた。裄沢は調べを命じられた。三吉に頼んで調べて貰う。
 何日か前、溜池で溺死人が見つかった。佐久間が、腐乱死体であったため誰かも分からないまま、誤って落ちたと決めつけ葬った。溺死人が大松ではないかと思われ、裄沢は墓から出して調べた。善三が、背中の三つの黒子とはっきりしない着物の柄から大松だと言った。犯人は佐久間だと思われた。
 裄沢は、善三が大松だとはっきり言ったことに疑問を持つ。善三が殺したからこれが大松だとはっきり言えるのではないか。
 犯人は善三だった。犯人が佐久間だと思われるように大松を殺した。が、中々死体が浮かばなかったことで善三のおでんだてが狂ったのだった。
 佐久間は小者を無下に扱った。大松は小者として邪魔だった。裄沢が暴いたことで善三は捕まり、理由は私憤だと言い張った。裄沢には、ちゃんと話して逝った。
 奉行は、佐久間への罰の手配りが遅かったことを反省した。

 小者のまとめ役の補佐に三吉を求められたが、三吉はもう小者には戻れないと決めていた。
 

  

2022年11月5日土曜日

新・酔いどれ小籐次〈二十四〉 八丁越

新・酔いどれ小籐次〈二十四〉 八丁越 佐伯泰英 

 頭成の湊に着いた。森藩の国家老・嶋内と商人・小坂屋の不穏な結びつきを知った。
 また、二年前、参勤交代時に殿が伴った采女の事件を思い出した。采女は小坂屋の娘だった。采女を殺したのは小籐次と思われていることが分かり、小籐次は小坂屋に会い、本当の出来事を話した。長崎屋の宿泊した采女は御納戸役・国兼鶴之丞と姿をくらました。国兼を殺し、剣術家・橘寿太郎に乗り換え神奈川宿にいた。池端と小籐次が神奈川宿に着いた時、采女は橘に殺された。池端が橘と勝負し、池端が勝ったと言う事件があった。

 武道場を持つ商人・塩屋は格式は高いが落ちぶれていた。一年半前に跡取り・喜太郎は、ジ神社の石垣から落ちで亡くなっていた。妹・海は駿太郎に、兄は朝霞八郎兵衛に殺された。仇を討ってと頼まれる。駿太郎は朝霞に呼び出され朝霞を討つ。

 森藩の参勤交代の行列が、森陣屋に着くという八丁超えで、国家老・嶋内が雇った刺客が十二人、待ち受けていることが判った。小籐次は別行動をする。行列は弓で襲われ明りを消し、一晩動かなかった。
 矢や鉄砲を用意し、行列を狙う者に、筆頭物頭最上捨丈は藩主の行列に鉄砲を放つのは家臣のすることかと諌める。国家老の命でという家臣に、藩主・久留島通嘉の家来にすぎぬことを思い出せと家に帰って控えておれと命じる。
 小籐次は刺客の頭を倒す。
 駿太郎は、町の刀鍛冶を訪ねる。
 小籐次は殿の御前にと呼ばれるが放って置かれる。

 江戸では新兵衛さんが亡くなった。通夜は行なわれたが、葬儀は小籐次が帰ってきてからと決まった。

  

2022年11月3日木曜日

恭一郎と七人の叔母 

恭一郎と七人の叔母 小路幸也
 
 恭一郎が、長い年月を共に過ごし更屋家を継いでいくことになる亜季に、叔母たちの話しをしているはなし。 
 亜季は、加世子の友人・寺の娘・妙子と、更屋家の火事騒ぎで、幼稚園児を多数助け大感謝された早田銀一の娘。銀一と女優の妙子が離婚後、銀一に育てられた。妙子と会話の後、アメリカの大学へ進み演劇を専攻した。亜季は時々日本に帰り、恭一郎と話す。

 更屋家は豪農だった。明治になる前に、植木屋、造園業に転身。
 長女・さき子は19才で加山一造と結婚。一造は政治家の息子であり、学士だった。結婚後半年で列車事故で死亡。身重のさき子は、離縁してもらい更屋家に帰る。
 次女・志乃子、恭一郎との年の差19才 橋本司・歯医者。中学一年生の正月、中学の担任・明石先生との不倫を仄めかされる。一回きりで終わったようだ。
 三女・万紗子、四女・美津子、年の差17才 祖父が残した骨董品を元に店を始めた。店を訪れた飲食店経営の双子の吉田満雄と厚雄と結婚した。
 五女・与糸子、年の差15才。あまりかまって貰えない自分のことは自分ですると判断したのは三才の頃だという。大学入学と同時に家を出た。数学教師になった。中学生の頃、だらしない双子の姉に腹を立て、二人を縄で木に縛りつけたことがあった。24才で、体育教師と結婚。二人とも働くので子が出来て落ち着くまでこの家に住みたいと言った。
 六女・加世子、年の差12才。平凡なおっとりした性格。寺の娘・菅田妙子と友だち。妙子の父は住職、母は映画女優・中田理津子。妙子は目立った存在だった。加世子と一緒にいて加世子の真似をしていれば目立たなかった。加世子は、妙子が自分を押し隠すために一緒にいるということに気がついた。加世子は理解し、妙子を抑えるようにした。芸能スカウトから妙子を護るために周りの学生に妙子を護ることを頼んだ。自分たちが守ったと思っているが、加世子のことは意識にない。高校卒業後、電気部品工場に就職。大手電機メーカーの御曹司の研修時に、案内をして貝原健一と結婚することになる。
 七女・喜美子、年の差10才。愛嬌のいい子。スキンシップの大好きな子。高校卒業後、三年間更屋家の植木、造園業の営業をする。新規顧客開拓はどんどん増えた。喜美子は金と広い度量を持つ男を探していた。造園の仕事も増えたし、職人や建築士も探してくる。そして田島邦和を見付けた。喜美子はパトロンになって欲しかったが、田島は十年掛けて、三人の愛人と妻と別れた。喜美子はバーを持ちマダムとして君臨した。
 八女・末恵子、年の差7才 絵の才能があった。中学で勉強せず絵だけを描くようになったため、美術部の助川先生に勉強が出来なければ美大に行けないことを解いてもらった。先生のモデルになった。ヌードモデルだったため先生と更屋家の秘密にされ、先生は一対一で会わない約束をさせられた。美大二年の秋、突如、末恵子は変わった。長い髪は括っただけ、白いブラウスに紺のプリーツスカート真っ直ぐ家に帰るという生活が、派手な化粧でモデルのような出で立ち酒場にも顔を出す。父親・原史は助川に会いに行く。助川は、高校生の時に男としても画家としても見限られたと言った。原史には何故末恵子が変わったか判らなかった。恭一郎は志乃子の事件の後、大人の世界を垣間見、色気を発し始めた。末恵子は恭一郎のヌードを描いた。末恵子は爆発させ変身した。美大卒業後、パリに行き海外で生活した。自分が死んだら恭一郎にすべて残すと言っている。


2022年11月1日火曜日

空也十番勝負七 風に訊け

 空也十番勝負七 風に訊け 佐伯泰英

 空也は、福江島から船に乗り込み長州藩の城下町に降り立った。町の道場を訪れると、図らずも藩主派と家老派による毛利家のお家騒動に巻き込まれる。
 家老派との因縁があることに気付き、藩主派に力をかすことにした。
 長州藩は長崎会所の交易船を襲い積み荷を奪っていた。三度目の襲撃で空也が乗り込み萩藩の家臣・菊池成宗の提案でイスパニアの剣術家と勝負した。菊池も死んだ。二度長崎会所の交易船を襲い、積まれていた品々を強奪、京にて販売、莫大な利益をあげていた。長崎会所は三度目に長崎奉行所も乗り込み取り締まった。毛利藩は被害の償いを請求されている。海賊行為を公儀も承知。

 空也は若い、下士が集まった「長門組」と一緒に家老一派が隠れ家にしている寺に住む浪人たちを蹴散らした。
 国家老は切腹した。
 小姓・峰村正巳が総大将の長門組に三百石が与えられ藩主直属の直目付となった。
 浜中屋の財産は藩が没収した。家老の屋敷から何万両も見付けた。長崎会所に支払う金が出来た。

 空也の便りを速水は上様に直接見せる。