2016年9月5日月曜日

からくさ図書館来客簿〈第五集〉

からくさ図書館来客簿〈第五集〉 仲町六絵
 月下の想い 閻魔庁第七位・八瀬の大将がふくろうに化身してやって来る。
図書館で野鳥を書いても良いかと学生が電話をしてきた。上村松園親子展で道なしの少女に話しかける電話をしてきた学生・古川青一に会う。図書館へ連れて来る。青一の偽書は「花鳥佳人」。道なしは事故で亡くなった画塾の先輩・菅野雪枝だった。青一に取り憑いて美人画を描かせて欲しいという。篁の提言で二人で弁乳母の下絵までを書くことになった。月下の想いという題の下絵が出来た。青一は冥府に行く雪枝に下絵に彩色した絵を渡す。青一の絵は色がおとなしい。月夜が背景だからビビッドにとアドバイスを貰った。青一から雪枝の記憶は無くなっている。
 親王のアキナケス 二人で春に剪定鋏を買った「山城正光」に刃物油を買いに行くと道なしがいた。店員・有馬34才には虎が見えていた。虎に触れた時子の掌に「たかおかしんのう」の文字が浮き出る。有馬を図書館に誘う。高岳親王は799年生まれ、67才で天竺に行く途中で亡くなっていた。日本から来ていた遣唐使にペルシアの商人から買い求めた、アキナケスと呼ばれる短剣を託した。密林で道なしになっていたところ、異国まで冥官が迎えに行き、今は閻魔庁第五位の冥官になっている。もし、短剣が見付かれば、高知県清瀧寺に生前建てた石塔にと言う。
 有馬が虎を従えて図書館に来る。虎が61才で亡くなった山城正光の刀匠・黒崎になった。有馬の偽書は「刃のめぐり」。黒崎は作刀技術を記した巻き物「百刃取揃」の「波斯国不動短剣 アキナケス」を作ろうとしていた。有馬から記憶が消される。有馬は「史学雑誌」を借りて帰る。黒崎との話が夢の中のように残っていた。
 八瀬童子 東京からおじいちゃんの生まれ故郷八瀬に行く少女・緒方瑞希がやってきた。年を取った祖父が13才の時、秋元神社の赦免地踊りで会った秋元神社に祀られている老中秋元喬知に会って来てくれという。手紙を託された。
 瑞希は京都の宿が解らず道を訪ねた。篁・時子・茜・晴明・太田・八瀬童子たちは少女と道なしを見ていた。瑞希をゲストハウスに送りながら後ろの武士に話しかける。秋元と聞いて瑞希は「五十年位前、私のおじいちゃんに、自分だけの手柄ではない。自分だけが祀られるのはいかぬ。と言いましたよね。」と言い始める。気になったが、他の人には見えなかったから無視してしまった。老い先が短いからほうっておきたくないと、手紙を預かってきましたという。秋元は近衛様も家宣様もご恩がある。なのに自分だけが神扱いではあの世に行けんという。篁らはだいたいの事は摑めた。
 瑞希の偽書「日本の弓術」。燈籠飾りに東照宮の猫と雀の同じ意匠がが乗って讃えていることを見付けた。八瀬の祭りに行く。秋元は徳川家への感謝のしるしかと納得した。
 瑞希の記憶は消された。近藤様も家宣公も八瀬で尊敬されていた。お寺で恩人の名前を読み上げて供養している。燈籠の猫と雀が東照宮の写しであること。手紙の封が切られ、秋元但馬守と書いてある。瑞希は東京に帰る。
 月下の想いが完成した。青一から発表会の連絡が来た。
 千五百年を冥官として過ごした八瀬童子は退官する。その後、古い天人たちの語る思い出を採録しながら天道で過ごすことにした。
 時子の背が延び、掌から梵字が現れ、一枚の紙になった。
 
 

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