風烈廻り与力・青柳剣一郎22 冬波 小杉健治
金貸しの使用人・多助が主・善兵衛を殺し、おこうの家に逃げ込み、おこうを人質にし、二階に立てこもって喚いていた。静になって四半刻、同心が梯をかけ二階に上がるとおこうは目隠しされ、猿ぐつわをかまされ、両手足を縛られていた。多助は自分で腹を刺して死んでいた。剣之助は違和感を覚えた。廊下の向かいに押し入れを開けた。天井板が少しずれて黒っぽい着物が見えた気がした。
多助が善兵衛を殺し、立てこもった後、自害したとされた。
剣之助は納得がゆくまで調べることにする。剣一郎は文七に剣之助の調べを助けてやって欲しいという。文七と剣之助は個人的な付き合いが始まる。
見廻り中、いつも「備前屋」を見ている男・政次がいることを大信田新吾から聞く。政次が男をつけているのを見、政次をつける。男は備前屋にはいり、政次は自分の長屋に帰った。茶道具屋「懐古堂」の主人が殺されて見付かった。備前屋からの帰りだった。政次が疑われる。懐古堂の殺しには関係が無いようだが、政次は何かを隠しているようだ。
善兵衛を殺したい者、おこうを知っている者、を探していると、長屋に住む、母親が病気のおたまが浮かんできた。好き合っている砂吉がいる。善兵衛からお金を借り、女衒がおたまを連れて行くことになっていた。善兵衛が亡くなり、善兵衛のおかみさん・おすなに返済期日を延ばして貰い、返済は五両でいいことになっていた。おすみにおたまと砂吉のことを訊くと目に涙をためてくって掛かられた。砂吉の罪を暴いてもおたまを不幸にするだけだ。何の証拠もない。剣之助はこれ以上の調べを止める。
剣一郎は、商家の旦那がいかさま博打に手を出し自死している事件を調べるように言われる。胴元に部屋をかしていた東條廉太郎が殺された。東條が会っていた商人太田屋を調べ、一緒にいた男は備前屋の番頭だった。備前屋を調べると先代の息子は勘当され、内儀と娘は内儀の巣鴨の実家に帰ったという。巣鴨に実家は無かった。
やはり、最後まで調べようと剣之助が調べると、長屋に住むお房とおたまが備前屋の先代の内儀と娘だった。政次は備前屋の息子・豊太郎だった。おこうの所にお房とおたまは居たことがあった。豊太郎が善兵衛を殺し、多助を殺したのだろうと考えた。
備前屋の番頭が賭場の中盆の忠助で、主人が胴元の惣兵衛だった。旗本・勝山谷右衛門と惣兵衛が組、豊太郎をいかさまに引っかけどんどん金を貸した。勝山が中に入り、豊太郎を勘当し、惣兵衛を養子に入れ、備前屋を乗っ取ったことが判った。
備前屋に人が集まり賭場が開かれる日、剣一郎は一計を案じた。豊太郎を備前屋に入り込ませ、豊太郎を捕まえに捕り方が入り、賭博を見付ける。惣兵衛は捕まる。東條は備前屋に強請りをかけていた。勝山の家来に殺された。懐古堂は止めようとした。
政次・豊太郎は金貸し・善兵衛を殺したのは自分だと自訴した。剣之助はケリがついている事件だと取り合わなかった。別の形で罪を償えと。
剣一郎は政次に江戸を離れ、五年紙の仕事について学んでくるように言う。まっとうになって帰ってこい、備前屋に戻れるようにすると言う。政次は酒田に旅立った。
勝山は家来を斬り、切腹した。
剣之助は見習いがとれ、本勤並になった。
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