2017年4月25日火曜日

三島屋変調百物語 四之続

三島屋変調百物語 四之続 三鬼 宮部みゆき
 迷いの旅籠 鶴見川の北、小森村のつぎという13才の子供が三島屋の黒白の間の語り手としてやってきた。
 領主の子供が亡くなったため立春の前日に行う行灯祭りが禁止された。行灯祭りは冬の間眠っている田圃の神様・あかり様に目を覚まして頂くためのお祭りで、あかり様が目を覚まさなければ凶作になるという。
 名主の客・絵師・岩井石丈(与之助)の発案で小森神社の脇の名主の父親の隠居屋を大きな行灯に見立てようということになった。壁を壊し、障子をはり、絵を描く。大行灯に火が灯った。息子の親不孝を詰る名主の父親が現れる。つぎの兄・一平の許嫁・なつが現れる。死んだ人が現れる。代わりに関係者が一人意識不明になる。あの世からの道が開いた。大行灯を燃やそうという。絵師は通行手形を書き、現れた亡霊に渡す。みんなが去った後、生まれるはずだった子供と女房を亡くした寛太郎は向こう側に入り戸を閉めた。そして隠居屋は燃やされた。
 名主たちは、領主・旗本・堀越の所へ行ってこの話をつぎにさせるつもりだ。ちかは私が代わりに行く。主・伊兵衛は碁相手だからと言い、つぎが行かなくて良いようにする。
 食客ひだる神 だるま屋さんの仕出し料理屋のお弁当は人気がある。桜の時期が終わると、秋の紅葉狩の頃まで店を閉める。だるま屋の主・房五郎が黒白の間に来た。ちかが夏場に店を閉める理由が知りたくて招いた。
 15才で江戸に出てきて五年、辛抱した仕出屋を飛び出し親切にしてくれた蒲焼き屋に世話になり煮売りやをしていた孫娘と一緒になった。25才の時、実家の母親が病気と聞いて搗根(とうがね)藩に帰った。江戸への帰り道で、ひだる神に会い、憑いて来てしまった。ひだる神は何をするわけでもないがよく食べる。煮売りやから弁当屋になった時も、裏店から表だなに変わった時も、客を連れてきたのはひだる神だった。家が傾く、隙間ができる。理由はひだる神が太り過ぎて重すぎ家が傾いていたのだった。ひだる神のために休むようになった。47才、父親が病みついたという事で実家に帰る。父親の葬儀を出し、帰る途中。ひだる神に話しかけてもいなくなっていた。
 房五郎は江戸の店を弟子に任せ、ひだる神の近くに店をだすかも
 三鬼 改易された栗山藩の江戸家老をしていた・村井清左衛門が黒白の間の語り手として来る。清左衛門の若い頃の話。
 清左衛門は小納戸役六十石だった。妹が藩の上層部、役方の次男、三男の三人に非道なことをされた。清左衛門は許せず、果たし合いの形で一人を斬り、二人は逃げた。切腹を師範に止められ、罰として洞ケ森村の山番士を三年勤めることになった。三年勤めれば、村井家は再興、お納戸役として戻れるという。須加利三郎といっしょになった。利三郎は砲術隊の隊員だった。
 洞ケ森村は、山は険しく、気候も厳しい、夏は旱、冬は大雪、生きるに厳しい、労力の無駄な所だった。清左衛門は上の村で過ごし、大雨の時、気安くなった兄弟の兄が泥水に流され生きてはいたが、怪我がひどく、医者を呼びに村に降りようと思った時、何者か判らない者が現れ、けが人を殺したとわからないように殺したと感じた。清左衛門は何者か分からない者を見た。この世の者ではないほど早い走りで逃げた。利三郎は下の村で暮らし、姉妹の妹と夫婦のように暮らし、子供が出来た。産後の肥立ちが悪く、母親は寝たきり、子供も弱い。やはり、何者か判らない者が現れ二人を殺したようだ。間引きだ。二十六年前から村長が自分がやるつもりで行くともう誰かが終わらせていた、という。二人は村長に頼み鬼を呼び寄せる。鉄砲で撃つ。誰もいなかった。着物と編み笠だけが残った。雪崩が起こる。二人は助け出される。三年経ってないが、二人は山の実情を訴えに行く。筆頭家老が殿と共に話を聞き、山の村の者を呼び戻した。清左衛門は小納戸役となった。江戸家老に呼ばれ江戸に出府。藩を離れた利三郎は清左衛門の妹と一緒になって江戸で砲術指南所をしている。
清左衛門は切腹した。介錯は利三郎だったようだ。
 おくらさま おくらさまの話をしに来た梅婆様がいた。香具屋の美仙堂にはおくらさまがいた。蔵座敷で常香盤のお香を絶やさずたき続ける。姉妹で順に替える。おくらさまが店を守ってくれる。火事で廻りが焼けたが美仙堂は守られた。その代わりに三姉妹のうち一人が蔵に閉じこもらなければならない。次のおくらさまになる。菊が選ばれ蔵に閉じこもる。
藤が跡取りとなった。話が終わると梅が消えた。
 三島屋の次男・富次郎21が奉公先の木綿問屋「恵比寿屋」で奉公人の喧嘩仲裁をして頭を打ち意識不明になった。気がついても起られず、やっと動けるようになって、三島屋に帰ってきた。
 貸本屋・《ひょうたんこ・どう》の若旦那・勘一と富次郎とに助けられ、美仙堂を探し、梅を見付ける。美仙堂は三十年前に燃えていた。梅以外の家族は死んでいた。梅ももう眠っていた。ちかが話の礼を言う。梅の魂が三島屋に来ていたようだ。梅はちかに家に閉じこもっているとおくらさまになるよ。と言い残して亡くなる。
 深考塾の青野利一郎が国許に帰ることになった。国許で用達下役をしている朋友・木下源吾が病に侵された。母親、妻、子供が四人いる。一番下の男の子が三才。源吾は利一朗の許嫁の従兄弟だった。利一郎は木下家に養子に入ることになった。
己の人生の道筋を変えようとしています。それが正しいと思うから。あなたにも訪れるその時には躊躇わず、黒白の間から踏み出して下さい。という言葉を残して旅立った。

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