〈捕物〉時代小説傑作選 なぞとき 細谷正充編
五月菓子 和田はつ子
呉服・太物屋の京極屋の乳母として務めたいとは気に入られ、主・迪太郎の妾になった。いとのお腹に子ができた。いとの手作りの柏餅を食べ、息子・弥太郎が死んだ。いとは捕まるが季蔵が調べ、柏餅の前にカステーラを食べていた。弥太郎は小麦粉アレルギーだった。初めて口にした小麦粉だった。
煙に巻く 梶よう子
煙草屋の人気の双子の若旦那。十ヶ月違いの兄妹ということになっている。長男の見合い相手は次男の相思の相手だった。長男は煙管職人になりたがっていた。二人は入れ替わっていた。二人を取り上げた産婆・辰が殺された。犯人は産婆の茶飲み友達だった。双子の若旦那を脅してお金を取ろうとした。辰と揉めて殺してしまった。知られた若旦那たちは、長男が煙管師の元に行き、弟が祝言を挙げて家を継いだ。
六花の涼 浮穴みみ
継母が大好きな少年・兎一郎。兎一郎が毒を飲まされていることに気付いた蝶は、調べ始める。継母・蔦は蝶の昔馴染みだ。毒を飲ませていたのは、昔馴染みの女中と蔦の昔の男だった。蔦は昔のことを話すと脅され、兎一郎を育てても大きくなったら知らん顔だと言われていた。蝶は蔦が継母に育てられ苛められていたことを知っていた。蔦に自分の母親と同じことをするのかと問われる。兎一郎は三年かかって育てた変わり朝顔の花を蔦に持って行く。
人待ちの冬 澤田瞳子
薬屋・成田屋の娘・香津がいい加減な商売をする婿とその仲間に福寿草の毒を盛ることに気付いた真葛は、馴染みの薬屋で自分の考えた毒消しを作り成田屋に行く。七人が亡くなり二人が助かった。死ぬつもりだった香津と女中の雪も助かり捕まった。婿たちの仲間を装った雪のお腹に子がいた。真葛は雪を助けて欲しいと言ってきた平馬は生まれた子どもを育てるのではないかと思った。
うき世小町 中島要
一膳飯屋たつみの娘・加代が江戸錦絵小町比べに出場すると言ったことから、加代の幼友達・八重が志乃を殺し、加代が見破り自訴して出るという。容姿を武器に成り上がろうとした志乃、恵まれた境遇ながら見た目の善し悪しに囚われた八重、二人のことを知らず女であることを恨んでいた加代。
鰹千両 宮部みゆき
双子の一人を生まれて直ぐ捨てさせられた伊勢屋。伊勢屋の先代内儀が亡くなり、今の内儀の一人娘が亡くなった。伊勢屋は棒手振りの角次郎に千両で鰹を買うと言う。角次郎に相談された茂七は角次郎夫婦の娘が拾い子であることを見抜く。手放す気が無いことを確かめ、伊勢屋に行く。伊勢屋の娘は十三年前に死んだ。角次郎に払ったと思って千両くれと言い放つ。伊勢屋が怒って出したお金を伊勢屋の前に出し、「俺からの口止め料だ。二度とちょっかいを出すな。あの子が捨て子であることを誰にも口外するな。」と言う。
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