三島屋変調百物語伍之続 あやかし草紙 宮部みゆき
開けずの間 長姉の塩断ちが元で、家に行き逢い神を引き入れ、父母と五人の兄姉と義姉を亡くした末の弟の話。最期に母親が自分の命と引き換えに行き逢い神に出て行ってもらった。
ちかと三島屋の次男・富次郎とで話しを聞き、富次郎は家から出て行く女の後ろ姿を描いた。
だんまり姫 駿河の大名のお国様のしゃべらない姫様のおまる付き女中になったもんも声の女・せいの話。もんも声はあの世の者を呼んでしまう。現藩主の兄・一国は側室の子で父親は国家老だった。十才の時、国家老が藩が二つに割れることを苦にして孫に毒を盛る。悲しんだ側室は亡くなり、家老は切腹する。せいは亡くなった一国と話すようになった。一国を城から連れ出し解き放つ算段をする。大蜘蛛退治を演目にする人形芝居を呼び、武者人形の中に入れて城外に連れ出した。一国様は武者人形より大蜘蛛がいい我の入れ物と言った。諸国を巡り土地の禍を一身に集める形代になろう。恨みと悲しみを食らう。姫の声は戻った。
富次郎は、右半分の大蜘蛛に乗った草笛をふいている男の子の背中を描き。遠景に海、雲の中に鷗を描いた。
面の家 沢山の面が逃げ出さないように見張りをする娘・種のはなし。悪いことをしたものにしか見えない面。見える種は見張りを頼まれるが、面は種をお金で買収する。逃げるが知らないふりをしておけ。面たちは逃げた。火事があり、外に出れば番犬のような者はいっぱいる。面は見付かり封じられた。面が外に出ると禍が起ると言われている。種は面に齧られた足の指を針で浄められた。話しの後、三島屋の守り役・勝が種に古い柘植の櫛をやった。富次郎は櫛の絵を描いた。
あやかし草紙 ちかを嫁に欲しいと言っていた越後屋の清太郎の縁談が決まった。
瓢箪古堂の勘一の助言で、富太郎の描いた絵を入れる箱ができた。桐の箱で、厚手の美濃紙に貼り付けた絵を柵に挟んで縦にしまうようになっていた。聞き捨て筐。あやかし草紙と名付ける。
勘一は不思議話をする。貸本屋・井泉堂の持ち出し禁止の己の運命と寿命を知る本があった。瓢箪古堂の写本をしてくれる人が関係し、知ることになった。その人が亡くなり、勘一は井泉堂の主から、見せてあげると言われた。勘一は井泉堂には行っていないと言う。
小さな婆さまが自分のことを話す。十五才で嫁いでから六度も嫁に行ったと言う。一人目は四年で死別。二人目はその弟、前夫への悋気で三年で実家に帰る。三人目は家作持ちの三男で五年で死別。四人目は風流人で二十四年で死別。五人目は四人目の夫の遺言で結婚。娘が身代狙いだと煩く、一年半で離婚。六度目は商家の番頭。七年と十ヶ月で死別。
婆さまは六人の顔がそっくりだったと言った。
婆さまの長閑な笑顔と動じない物腰。同じよう人を知っている。
ちかに川崎から手紙が届く。ちかが逃げ出した川崎、ちかの兄・喜一はちかの分の咎を背負って暮らし続けている。老いてゆく両親を助けながら逃げずに旅籠を続けていた。申し訳ないと思っていた。喜一が先月末に先夫との間に五つの子がいるえいを嫁に貰ったと書かれていた。えいのお腹に喜一の子がいると。
ちかは黒白の部屋に籠り考えた。瓢箪古堂に行き、勘一に、井泉堂に行き、寿命を教える冊子の写本をしたでしょうと問い詰める。見届ける覚悟をしたので嫁に貰って下才と願った。祝言は一月二十日になった。
金目の猫 百物語は富次郎が続けることにした。兄・伊一郎が三島屋にくる。伊一郎が不思議話をする。伊一郎が十才、富次郎が八才。三島屋がこの場所に店を構えて直ぐのころ。富次郎がお稲荷さんの木の上で子猫を見付けた。三島屋で飼えないので、近所の油屋で飼うことになった。まゆと名付けられ、三島屋にも来た。まゆが三島屋の二階の縫子の赤ちゃんの顔に上に乗りかっているのを見付けられ、大騒ぎになりまゆはいなくなった。
まゆの正体は三島屋の縫子・きんの生き霊だった。きんは縫子を続けたかったが辞めなくてはならなかった。代わりに行ったさとは三島屋の悪口を言いふらす。我慢できなかった。稲荷の木上で三島屋を見ていた。大騒ぎになった日、逃げるまゆは伊一郎の懐に飛び込み、いちの坊ちゃんごめんなさいね。猫がしゃべる。伊一郎はきんの長屋へ行き、きんのはなしを聞いて知った。きんは遠くへ行くところだった。
祝言の日、小旦那・富次郎は、商人風の者に祝言は終わりましたかと声をかけられた。ご縁のあった者です。お幸せにとお伝え下さいと姿を消した。勝は小旦那を百物語の継ぎ手と認めたのでしょうと言った。
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