2015年5月31日日曜日

陽炎の門

陽炎の門 葉室麟
 桐谷主水37 豊後鶴ケ江六万石黒島藩執政 妻・由布20才、主水の友・吉村綱四郎の娘。綱四郎は十年前藩主興嗣を中傷する落書を書いたとして主水により介錯され切腹していた。
 由布の弟・喬之助が父の仇討ちに現れる。十年前の事件を調べて行くと二十年前の後世河原の騒動も関係している事が判った。
 果たし合いの時、隠れていた事柄を公にし、現藩主興世を押し込めにすることになっていたが、興世は早瀬与十郎に斬られる。与十郎は主水に無理に斬らせて死ぬ。
 二十年前の後世河原で若者たちの乱闘騒ぎの後、世継ぎ時代の現藩主が小姓と共に覆面で現れ、倒れている者をめった打ちにした。止めに入った綱四郎は斬り合いになり一人を斬り、相手が若殿であることが解り、何も言えなかった。このことが一番の根っこだった。
  十年後、綱四郎は若殿の廃嫡を申請する。危険を感じた興世は綱四郎を罠に嵌め切腹に追い込んだ。罠に嵌めたのが興世だと言うことは執政たちは解っていたようだ。この事件で二人の家老が隠居し今の執政が出世したものだから、また藩主であるから何も言えなかった。
 主水は何もかも暴露し、現家老と隠居した家老を呼び出し協力させた。
 河原で斬られた者は片腕を無くし京で僧侶になった。次席家老の息子・与十郎の兄だった。乱闘騒ぎの後の若殿の行ないを皆は知らないため、綱四郎か主水が斬ったものと思われ、主水は憎まれていた。何もかも解った時、与十郎は気持ちの整理をつけ兄の復讐をしたのだった。

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