2017年9月27日水曜日

着物始末暦(二) 藍の糸

着物始末暦(二) 藍の糸 中島要
 綾太郎の幼馴染み向いの菓子屋・淡路堂の跡取り息子と思っていた平吉が薬種問屋・杉田屋に婿入りすることになった。平吉の妹・三和は職人顔負けの舌を持っている。珍しいお菓子でも一度食べれば材料が分かる。二年前から新作菓子の考案もしている。妹に婿をとる。
 綾太郎は興味を持った糸に会うためにだるま屋に通う。五日目、糸は綾太郎に身分が違う、若旦那には許嫁がいる、もう来ないで、という。綾太郎は糸に「余一はおまえのことをなんとも思ってないよ。みっともないよ」という。みっともなくてもいい。勝手に思うことぐらいいいでしょう。と言われてしまう。今度は余一が綾太郎に文句をいう。綾太郎は相惚れならさっさとくっつけ、はた迷惑だ。余一は自分は疫病神だと思っている。糸に近づかなくなった。
 六助の所に安蔵が盗品を持ち込む。仕立て直して売りさばくよう頼む。六助は余一を裏家業に引き込みたくなかった。安蔵が脅しを掛けてきた時、頭が割れるように痛み畳を転げ回る。安蔵が帰った途端痛みが治まる。六助はこの世の者でない者が見えたり、声が聞こえたりすることがある。安蔵が忘れて行った帯がそうだった。余一といると楽になる。余一に相談する。帯の持ち主を探す。亡くなった母親が子どものために残した帯だった。安蔵が捕り方に追いかけられ六助を匕首で刺す。寸前余一が庇い刺される。帯が助けてくれた。安蔵は大川に流され死ぬ。帯の中から子どもの手形が出てきた。
 玉は佐野屋の隠居所に骨董品を見に遊びに行く。みつは玉が綾太郎に貰った振り袖のお返しは何が良いか考えていた。余一に相談しに行く。千吉と会う。余一は浴衣はどうかと言う。糸に相談する。糸は私だったら浴衣にするという。みつの継母が家のために十両借りにくる。十両を持って家に行く途中千吉に会う。継母は千吉に十両貢ぐつもりだった。余一が継母に話を付けた。余一のところで座布団を見た。佐野屋の隠居の亡くなった内儀の着物で創った座布団だった。隠居のために泥道に膝をついて染みになった着物。隠居のところで座布団をみた玉は綾太郎に贈るものを座布団にした。
  座布団は君を思いし我が心 裏も表もないとこそ知れ  と言う文章とともに
 糸は寺社地に入って薪をとる達平に寺社地に入らないことを約束させおにぎりを食べさせていた。達平は天神様の雑木林で行き倒れの女を見付け、生きている赤ん坊を糸に預けた。余一に相談すると余一は達平から聞き出し、雑木林に行く。猫ばばしていたお金を岡っ引きに渡し、手形を受け取る。赤ん坊の着ている着物から父親が分かり連れて行く。父親・孝吉は亡くなっていた。祖父・孝三郎は道中手形と命名書を見せても信用しない。二人は帰ってきた。後日、祖母が来た。孝吉の着物の生地が赤ん坊の百徳の生地と同じだった。祖母は礼金を置いて帰った。余一は達平に渡してと糸に渡した。

0 件のコメント:

コメントを投稿