恋道行 岡本さとる
絵草紙屋こむろやの店の奥に住み、店番をしている千七22才は、二年前まで博打打ちの小回りの用を務めて小遣い銭にありついていた。やくざ者三人と博打打ちとの喧嘩に巻き込まれ止めに入った千七が荒れ狂い、正気を失った千七を山下官兵衛が止めた。官兵衛は自分が出した絵草紙屋の店番に千七を雇った。千七は片っ端から様々な書を読むうち、読み書きがしっかりしてきた。事の善悪が身に付いた。官兵衛から小太刀を習った。伊曽保物語が大のお気に入りになった。
千七は官兵衛に奨められ、水茶屋に行き、伊曽保物語を面白く聞いてくれるゆきが好きになった。官兵衛が身請けしてくれるというのでゆきのところに行くと、森岡久蔵が無理に落籍して連れて行った後だった。住み家を探し、久蔵と仲間の勘六を殺した。仲間割れしたように細工をし、ゆきと逃げた。品川に行き、昔馴染みの落とし屋をしている深川の金次24才を頼る。木更津の廻船問屋が夫婦者の奉公人として引き受けてくれることになった。
金次は孤児の千七を拾って育ててくれた盗賊石動の惣五郎のところで一緒だった。長崎出身で父親は水夫だった。十二で父親が亡くなり船に潜り込んで江戸へ来た。惣五郎が捕まり長崎へ帰ったが抜荷に関わり得た金で船宿を構えていた。
北町奉行所定町廻り同心・桑野伝八は久蔵と勘六の事件を仲間割れで処理した。政五郎の伝令役・夏川半四郎に情報を流していた。
官兵衛は千七が好きな女を取られて傷心で旅に出たことにしていた。官兵衛には何も判らなかった。
久蔵は幽鬼の政五郎の命令で動いていた。政五郎は盗賊むささびの万蔵の逃亡を助けていた。万蔵は逃亡の術を覚え、政五郎を関係を破棄し盗みを働いた。五千両の仕事だった。政五郎は久蔵に万蔵の手下・捨三を引き入れ金の在処を聞き出し始末するように命令していた。そんな時、久蔵が殺された。捨三も消えた。久蔵が在処を聞き出していると考えていた。ゆきが何かを知っていると考え探していた。
政五郎の情婦・久蔵の妹・辰が千七とゆきの居場所を突き止め向嶋の寮の土蔵に監禁された。
伝十郎に与力・松村十郎が近付く。むささびの万蔵の手下捨三の死体が見付かったこと、薬種問屋の盗みが万蔵の仕業と思われる事。逃げるのに政五郎の手を借りてない事、久蔵と勘六が殺された事、ゆきが見付かっていない事。を話し二人でむささびの奪った金を見付けようという話しになった。十郎は元松平定信の家中の者で、与力の養子に入っていた。
官兵衛は大名小堀和泉守政方に仕えていた。田沼の引きがあったため田沼意次が失脚すると粛正を断行する松平定信によって所領を没収され小堀家は改易となった。政方が家臣に分けた用心金で官兵衛は小梅村に百姓屋を借り住まいとし、小太刀の師範として出稽古を務め絵草紙屋を開いていた。千七を住み込みで雇い、心根が真面目で純真な千七の成長を見守ることは楽しみとなっていた。
金次が千七の話しを持ってきた。政五郎に連れて行かれたことを話す。二人で千七を助け出すために官兵衛は町方・伝八をつける。その時に与力・松村を目にする。昔の松平定信が送り込んだ隠密を思い出した。
千七とゆきは辰のいない時を見計らって手下を殺し逃げた。ゆきが助かったのはお守りのお陰だと取り出すと 瀬戸の弁財天 松崎 と書かれた紙が現れた。二人で行ってみる事にした。
続きが有るや無しや
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