鍼灸日和 未上夕二
西川道隆 永和陶器という陶磁器メーカーに勤めて二年目。量販店廻の営業二課。新入社員との連携が上手くいかず問題が起きる。膝が痛く歩けなくなって駅前の「祖問鍼治療院」に行く。「ストレス解消に脂っこいものバカみたいに食べて、ロクに運動しないから太って、重さに耐えきれなくて膝が悲鳴を上げた。」と言われる。言う事を聞かない新入社員をぶっとばしたいと言う道隆に、先生は「ちゃんと仕事していないでしょう。ちゃんとしていたら後輩は言う事を聞くものだ。」ともいう。帰って見積もりを出し、会社では後輩に言うべき事は言う。上手くいった。足も痛くない。
西川道瑠 道隆の姉。子どもも頃から身体の弱かった母に代わり家事を任されている。家族のための食事を作り、掃除と洗濯をする便利な存在。二年前から母はメニエール病と診断された。機嫌によって些細な事で爆発する。怒鳴り、叩き、逆上が終わるまで身をすくめて待つ。僅かに残る命が消えてしまいそうなほど体力を消耗し、部屋に閉じこもる。
短大時代の同級生に会う。道瑠これからどうするの。このままでいいの。
咳が止まらない。弟の紹介の鍼院に行く。「人生お先真っ暗って感じ。肺は、憂鬱とか悲しいとかの感情が積み重なると病む。咳が出て背中が痛む。」母の事、父の事、弟のこと仕事の事、将来の事話していた。「そんなに嫌なら、家を出ればいい。アルバイトをすればいい」と言われた。
西川大輔 家族のために二十五年前に家を買い、家族のために働いてきた。今は単身赴任中だ。家に帰った。一人で社宅で弁当を食べる方が疲れがとれるかも。同僚や部下と酒をのんでバカ話をしている方が有意義ではないかと思う。
妻・知子がストレス原因のメニエール病だという。専業主婦の知子にどんなストレスが有るのか。知子は母親から暴力を受けていた。知子を守るつもりで結婚した。
会社のごたごたで部下がごたごたしている。二人を誘い、話し合える場を作った。話しは付かず喧嘩別れのようになったが、あの時のお陰で腹を割って話しが出来るようになったと礼を言われる。
家に帰って、ぎっくり腰になる。鍼灸師が来た。「ぐじぐじ悩んでいると、脾が病む。それが進んで腎も病み腰にきた」家族に抱いている違和感のことを話す。「ぶちゃけちゃえばいい」
鍼灸を受けた知子はいびきをかいて寝ていた。知子は熟睡することが無かったのかもしれない。
長谷部愛理 西川家の次女。高校を出て社員寮のある自動車部品メーカーの事務員になった。翌年五才年上の一年先輩の弘樹と結婚した。弘樹が半月の出張中、子ども・郁美4才と二人でいるのが怖くてはじめて実家に帰る。母親て損よね。お父さんは甘やかすいい役で、お母さんは怒ってばかりの悪い役。知子と愛理は意見が合う。
耳鳴りがする愛理も鍼灸師の治療を受ける。「びびり過ぎると身体が病む。」子どもを叩くことを話す。「お母さんに相談すれば?根は同じだから」
西川家 テレビのしつけと虐待の話しを聞いているうちに、道隆はあんなのしつけじゃないよ。ただの暴力だと言ってしまった。道瑠姉さんもそう思っていただろう。愛理姉さんもだから高校卒業して直ぐ家を出た。ずっとやりたいようにやってきた母さんが嫌いだったからだろう?と言った。思い通りにしたかった。怒鳴って叩いて。道隆の頬を叩いたのは愛理だった。道隆は愛理に郁美を虐待しているのか?問う。道瑠が、愛理はお母さんに似ているから気を付けたほうが良いと言ったでしょう。結局はおかあさんと同じ事してるんだ。いいたい事を言い始める。言いたいことを言ってそれぞれに出て行く。
次の日、窓の割れたお通夜みたいな西川家に祖間が来る。「みんなすっきりした顔している」
父は解散すると言い、父と母は単身赴任先へ二人で行った。道隆と道瑠は家賃を入れてそのまま住む。道瑠は予備校の事務のパートをしながら公認会計士の勉強をしている。道隆は会社が休みの日は家事当番しながら一年過ぎた。
0 件のコメント:
コメントを投稿