2018年3月2日金曜日

仕立屋・琥珀と着物の迷宮

仕立屋・琥珀と着物の迷宮 花を追え 春坂咲月
 仙台の夏の夕暮れ。篠笛教室に通う女子高生・八重は、着流し姿の美青年・宝紀琥珀(とものりこはく)と出会った。
 篠笛の袋を貰う。
 琥珀は着物の仕立屋だった。着物にまつわる様々な謎に挑む。
 着物を着ると泥棒になると言う三才の女児に七五三の着物を着るように仕向ける。姑と嫁のいざこざになっていた女児の着物。宮参りの一つ身で着物を作り、被布を作る。母親のワンピースも着物で作る。
 八重には着物にまつわる嫌な思い出があった。鎌倉に住んでいた小学一年生の時のことだった。父は知り合いから辻ケ花の古裂を盗み、無罪を主張したがロッカーから出てきたことで犯人にされた。父母は離婚した。父は八重に会いにきていた。花は八重に渡す。辻ケ花のことは誰かに聞かれたら自分のことだと言いなさい。名前が守ってくれると言った。父は亡くなった。八重が一人でいる時、数人の男が押し入り、布団やクッション、枕等を切り裂いた。七五三の赤い晴れ着も縫い目を解かれた。八重も裸にされた。晴れ着の布を身体に巻いていた。
 気がついた時、隣の青年が「大丈夫?」と声をかけてくれた。それが現在の父親・陸郎だった。
 琥珀に話して思い出した。裸のはずだったのに、陸郎に声をかけられた時、服を着ていた。睦郎より前に服を出してくれたお兄ちゃんがいた。鎖骨の下のほくろを琥珀は知っていた。琥珀は何も言わなかったが、琥珀は小学生の時から八重を見守っていた。
 辻ケ花の生地で作ったシュシュを貰う。
 昔、家に押し入ったのは怪石と言い、琥珀の知り合いだったことが判った。
 連絡がなかった琥珀から葉月八日に奈良の家で待っていて。という手紙を受け取った。
 奈良の家に配達された小包を奪われた。見張っていた琥珀が捕まえたのは仙台で篠笛を習っていたムッシューだった。ムッシューと琥珀と怪石と琥珀の友達で呉服屋の祭文と八重の五人。八重の父は俳号を深見と言った。辻ケ花とは昔、牡丹の花だった。父が手に入れたのは牡丹の花・八重のことだったのだ。琥珀は説明する。
 話しは十五年前になる。辻ケ花が縫い締め絞りでないと話しが出て古裂が暴落すると困るムッシューが深見の学会発表を止めるために盗難事件をでっちあげていたことを暴露した。ムッシューの小包盗みを調べる口実に車を調べると、余罪が出てきた。逮捕される。琥珀はこのために絵巻物の贋作まで用意していた。
 みんなが帰った後、本当の父からの贈り物が届く。最高の振り袖だった。牡丹柄の麻の赤い帷子の一部・本当の辻ケ花の裂を背にかけつぎをしたような琥珀が仕立てた振り袖だった。振り袖は名取屋の堅田に預かって貰う。
 八重は奈良の大学に合格した。奈良に行くと何も知らないはずの琥珀が奈良に来るはずだと店を出していた。
 琥珀は人魚姫は自分だったという。

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