満鉄探偵 欧亜急行の殺人 山本巧次
昭和十一年、満州。南満州鉄道株式会社資料課の詫間耕一は、総裁・松岡洋右の命令を受け、密偵の辻村とともに社内で頻発する書類紛失事件を調査する。
調査対象だった塙に会いに刑事・矢崎と家に行くと塙は殺されていた。書類も無かった。
塙が通っていた倶楽部紗楼夢に行き、女給・春燕と話した。
憲兵隊・柴田に調べられる。途中で帰るように言われ、哈爾浜特務機関・帝国陸軍少佐・諸澄敏久に質問を受ける。どちらも塙を見張っていたようだ。
春燕から見つけたボリスコフをつけると、憲兵も特務も見張っていた。ボリスコフを追って哈爾浜に行く。欧亜急行に乗ると、諸澄も春燕も乗っていた。耕一と辻村と諸澄と同じ車室で行動を共にする。春燕は一等寝台車の外国人と話しをしている。
銃声がした。匪賊の襲撃があった。託間は炭水車を超え、機関車に行き、止めないように指示する。諸澄が用意していた一個小隊と機関銃で応戦し撃退した。怪我人はなかったが、ボリスコフが殺されていた。犯人探しを始める。
シマノフスキー、クラウザー、デュナン、が怪しい。春燕は諸澄に雇われていた。三人を追って満州里へ行くことになった。
耕一は夜中、五六人の線路工夫を見た。いるはずの無い線路工夫のことを諸澄に伝える。諸澄は列車を止める。襲撃に備え後ろの線路工夫に化けた連中を制圧する。前面を一個分隊が調べに行き、列車の機関銃も使われ制圧した。線路には爆薬が埋まっていた。
ボリスコフの書類はまだ手に入れていないようだ。この列車にあるということ。
耕一は書類を運ぶあらゆる手段を考える。手荷物にも荷物車にも無かった。捕らえた者は興安嶺トンネルを守る哨所の収容所に入れられた。
耕一はボリスコフの殺され方を考え、犯人を割り出した。窓から顔を出した所を隣の三号室から撃ったのだ。犯人はシマノフスキだ。諸澄はわかっていたようだ。
満州里でシマノフスキを尋問する。シマノフスキの二重底の鞄から、耕一の追っている書類は見付かった。耕一の知っている書類が改竄され極秘の判が押されていた。
シマノフスキはソ連から疑われ粛正されようとしていた。ボリスコフから書類を奪い日本に渡し外国に亡命しようと考え、列車襲撃を頼んだ。ボリスコフには憲兵の手荷物検査が行われると話し窓からの受け渡しを指示した。受け渡された後、撃った。ボリスコフが渡した書類は囮の書類だった。本物はまだある。
耕一は車掌の引き継ぎ書類の鞄を怪しんだ。車掌を問いただし、ボーイ・劉から車掌・于と情報運搬ルートがあることがわかった。耕一は満鉄の社員が手先だったことが口惜しかった。書類はソ連側に渡っていた。諸澄は全貌が摑めたことでいいと言った。書類は模擬計画の偽書類で実際の作戦計画書ではない、軍参謀部が作ったものではないということだった。
塙を殺したのは、ボリスコフではなかった。書類を持ち出しボリスコフに渡したのは誰か。書類を改竄したのは誰か。哈爾浜から大連に帰る列車内で考える。
星が浦で早朝海釣りしている庶務課の淵上に資料課の書類を盗み出し改竄して塙に渡したことを追求した。塙に馬鹿呼ばわりされ殺していた。耕一は塙の事件には憲兵隊が介入している。特務機関も関係している。他の情報機関の影も見える。何が飛び出すか判らない状態だと話した。次の日から淵上は会社に来なくなった。
辻村は耕一の父親の友人・耕一の恩人・西島昌平の息子だった。西島は満鉄がらみの詐欺事件に巻き込まれた被害者だが、結果的に他の人を巻き込んでしまったので責任を感じて自殺していた。託間の事は父親から聞いて知っていたと言った。
託間は総裁に報告する。欺瞞書類を作ったのは総裁だろうということも含め、模擬の輸送計画書を作成したのだろうということも。
今回の作戦は、欺瞞作戦だったが、諸澄は、満州国内のソ連スパイ網を摘発しようと考えていた。目的を果たした。
春燕は蒋介石の側近・張に関東軍の動きを報告していた。春燕は満州は満人のものだと思っている。満人の手に取り戻すために何でもやるつもりだった。
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