桜風堂夢ものがたり 村山早紀
秋の怪談 桜野町に住む小学六年生の三人組、楓太と透と音哉は、冒険をすることにした。ハロウィンの夜に森の幽霊屋敷に行こうということになった。大人たちには近寄るなと言われていた。
森の傍の洋館は千野玲也という作家が住んでいた。静養のため隠れ家に住むように暮らしたいという彼女の望みを叶えるよう、誰も洋館には近づかず見守るようにしていた。子供たちが近づかないように悪霊だとか、お化けの話を作った。
透は、洋館に忍び込み壊れかけた石塀が崩れ落ちた。助けられ洋館の中で黒いドレスのおばあさんと話した。ふるい建物も落ち着くし町から離れた静かな生活が好きなのよと話した。透はここにいるのが寂しいわけじゃないならよかったと言った。本棚の「空色の騎士」がとても好きな本だと伝えたら、いつでも読みにいらっしゃいと言ってくれた。
目を開けると二人が見つめていた。怪我をしていた。
黒い服のおばあさんに呼び止められた牧場の若者は、助けを呼ぶ子供たちを見つけた。
知野玲也の世話をしている沢本毬乃は入院中の千野のお見舞いに行き、先生の話を聞いた。先生は夢を見た。うちの庭に子供たちが遊びに来て塀から落ちそうになった子を助け、部屋で話しをした。私が昔書いた童話を好きだと言ってくれたのでいつでも遊びにおいでって話し、子供たちが帰れるようにヒッチハイクでトラックを止めたのと。
夏の迷子 銀河堂書店店長・柳田六郎太は桜野町の桜風堂書店の月原一整を訪ねた帰り、すぐ傍にあるはずのバス停に行くまでに遭難したようだ。
昔、隣の祖母と二人暮らしだった五才上の従姉・美保を思い出した。美保は四十手前で亡くなったと聞いた。猫を助けようとして川に落ちたという人もいた。田舎の町で貸本屋をやっていた猫田のさんを思い出す。猫田のおじさんの貸本屋が好きというと、じゃあ、ぼうずにいつかやるよと言ったおじさん。数年前に拾いすぐ死んでしまったキジ白の子猫。
朝、女の人に誘われたように散歩に出た。柳田にあった。
子狐の手紙 三神渚砂はドレッシーな白いダウンコートで大きなボストンバックを引きずるように下げながら山道を歩いていた。夏に柳田が遭難しかけた山道だった。徒歩三十分の山道を甘く見過ぎていた。後悔。桜風堂書店を見に行こうと浮かれていた。一整の職場の元同僚、ネット上では「星のカケス」という古くからの友人である。こちらは知られていない。荷物が重い。思い出す。四年生の渚砂と母を置いて愛人の元へ去った父。大好きだった、著名な編集者だった夏野耕陽。父が現れ、今話題の本屋を見ておこうと思って。歩き始めたら思ったより遠くて、年寄りだってことを忘れていたよと言う。一緒に行く。ボストンバックを置き、入院中だという痩せた父を背負う。
話しながら歩き、柳田遭遇した不思議な体験を思い出す。懐かしい死者と会い、亡くした子猫にやさしい言葉をかけられ、朝空を舞う美しいあやかしを見たという。
「七つの人形の恋物語」という本の話しになる。ある時期まではお気に入りの本だったが、たいそう「胸くそ悪い」物語だ。もう良いよと背から降り、お前に渡したい物があったんだ。また今度と言っていなくなった。桜風堂で話しをすると、始めから一人だったよと言われる。あの山道は、会いたいけれど会えないはずの誰かに会えたりする。会いたかったお父さんに会えて良かったね。と言われる。
母からの連絡で父が亡くなったことを聞いた。通夜、葬儀を済ます。ななつの人形の恋物語と同じ許すんだ。部屋にあった包みは、昔大事にしていた外国で無くした赤い子狐の縫ぐるみだった。特に親しかった二人、俳優と新聞記者は、外国から来ていた子狐の手紙は俺たちが書いていたんだと言った。父から頼まれたとバラした。
灯台守 桜野町この町には、猫のマリアだけが知っていることがある。山あいの別荘地の一軒に異星人がすんでいる。峠でしばしば起こる不思議は、彼が隠している船の影響かしらと思う。桜風書店に一整には見えていないお客さんがある。男の人と女の人が一整を見まもている。
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