2022年3月2日水曜日

風の市兵衛〈弐 〉㉚ 斬雪

風の市兵衛〈弐 〉㉚ 斬雪 辻堂魁

 跡継問題に決着をみた越後津坂藩は、新たな江戸家老・戸田浅右衛門のもと財政再建に心血を注いでいた。

 戸田浅右衛門は江戸に来て、半年も前に、幼馴染の勘定衆・田津民部が百五十両を着服し逐電したことになっていることを知り、唐木市兵衛に探索を依頼する。
 市兵衛は場末の娼婦から、民部が品川の廻漕業者・直乗船頭・笠屋柳太左衛門を訪ねると言ったことを聞いた。
 市兵衛の調べた結果、民部は何年も沢手米など出ていないにもかかわらず、勘定帖には毎年五分から一割近い沢手米が出、代米が出ていること。蔵米の二千俵ほどを若狭で降ろし、大津市場で売り手形で江戸に運ばれていることになっているが、江戸屋敷の勘定方にそんな入金はないことを知った。ようだ。
 それから民部は、本所蔵屋敷を訪れたようだがその後足取りが消えた。五月だった。

 定町廻りの渋井は、唐桟の財布から三ヶ月前・八月に扇橋で見付かった腐乱した斬殺された死体について調べていた。唐桟の財布は、津坂藩の蔵屋敷で殺された亡骸の始末を頼まれた時に死体の懐から抜かれたものだった。その遺体が扇橋の遺体と結び付き、市兵衛の話と結びつき田津民部と結びついた。北町奉行・榊原主計頭から大目付を通して津坂藩留守居役に問い合わされたが、そんな事件も災難も一切無いという返事だった。
 
 市兵衛は、調べたことを戸田に伝えた。民部が調べたこと。民部は五月に殺されたこと。
翌日早朝、戸田は御成書院に集まっている志方、加藤、羽崎他十三名を捕縛に行く。勘定所で何が行われていたか、田津はどうなったかを順に解き、十三人を納得させる。志方は悪あがきし、殺される。二人は捕縛される。
 市兵衛は、早朝、津坂屋五十右衛門に呼ばれ蔵屋敷に行った。市兵衛を殺しに四人の浪人が来る。市兵衛は倒す。五十右衛門も津坂藩に捕まる。津坂屋は五十右衛門の子供が親類の後見を得、米問屋を継ぎ津坂藩の蔵元を続ける。
 

 

 


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