入船長屋のおみわ③ 春の炎 山本巧次
〜江戸美人捕物帳〜
付け火が続いている江戸の町で、美羽が仕切る長屋の塀でも小火が出た。住み始めて間もない仏師の弟子・仙之介の部屋の脇だった。火事場に長さを測るためのような紐が残されていた。
長屋の小火の後、呉服屋大倉屋が燃えた。大火事にはならなかったが、居住部屋が燃え、大名家に収める花嫁衣装が燃えた。仙之介の師匠・恒徳の彫った地蔵菩薩を家に置いておくと火除けに効き目があると評判だった。三浦屋の寮が燃えた。恒徳の地蔵菩薩があったにもかかわらず全焼し、誰もいないはずの寮で寝ていた老人が亡くなった。
大倉屋の付け火の跡にも紐が残され、若旦那に頼まれ美羽は付け火の真相を探る。
大倉屋と西島屋の呉服店争い、行人坂の大火の三十三回忌の法要の火除け地蔵菩薩の奉納の仏師の競い、恒徳か円劉の争いが関わっているのか。
仙之介が頭を殴られ命を狙われる。
長屋の壁と三浦屋の寮の付け火の犯人は、円劉だった。恒徳の地蔵菩薩の評判が許せなかった。法要の奉納が恒徳に決まることが許されなかった。
海辺大工町の納屋の付け火は蝋燭を使った時限装置の試しだった。そして大倉屋に犯人は長屋に火をつけた者と考えられるように紐を残して火を付けた。仙之介は紐のことを知っている数少ない者の中から犯人を推察したため犯人に命を狙われた。犯人は恒徳だった。二年前の火事で地蔵菩薩の御利益の評判があがったが、下がらないようにもう一度という考えから、大倉屋に火を付けた。だが、婚礼衣装が燃え、効能に疑いが挟まれた。
大火の法要は行われるが、地蔵菩薩の奉納は取りやめになった。
大倉屋に呼び出された美羽は、大倉屋の女将が、嫁に来たくば、長屋を出、行儀見習い躾けをし直して来い。と言う言葉を聞いた。美羽はこんなふざけた家への嫁入りはこっちから願い下げだと障子を壊して帰って来た。
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