2022年3月1日火曜日

蘭方医・宇津木新吾 ⑭ 間者

蘭方医・宇津木新吾 ⑭ 間者 小杉健治

 新吾が治療した松江藩年寄り付きの女中は背に拷問のような傷を負っていた。数日後その女中と中間の遺体が屋敷外で見付かる。状況から心中とされた。新吾は間宮林蔵から二人が林蔵の間者だったと打ち明けられる。二人の死に疑問を抱いた新吾は真相を探る。

 棒手振の清助が殺された。新吾が検死した。袈裟懸に斬られていた。清助は長持を見、遺体を見、長持をつけ、松江藩と知った。世羅紋三郎を強請り斬られた。世羅紋三郎も殺された。

 清助が助けたかった病気の夜鷹のせんの商家の下男をしている元夫に会いに行く。元夫は貯めた金でせんを自由にし、幻宗先生の元へ入院させる。商家は三室屋、松江藩に出入りを始めた店だった。その三室屋に老中板野美濃守の用人・岩田羽左衛門が人目を忍ぶように出入りしていた。
 新吾は襲われるようになった。三室屋の主人に、岩田羽左衛門に会わせるように頼む。新吾は判り得たことを岩田に話す。
 半年前の松江藩の抜け荷の強請りは美濃守が黒幕だったこと。
 新吾の命を狙っているのは、強請った時、戸川源太郎と名乗った男だということ。
 美濃守が三室屋に松江藩の抜け荷を再開するように言って来たことを二人の間者が知ったことが始まりだということ。
 偽の戸川は美濃守の家来だということ。世羅を殺した犯人だということ。
 新吾は岩田に間宮林蔵の知るところとなるだろうから、松江藩から手を引くように言う。

 新吾は偽戸川と浪人に襲われる。偽戸川の名は、鹿島銀次郎。助けてくれた人がいた。鹿島は逃げた。
 松江藩の家老・宇部治兵衛に合う。判ったことを話すと、松江藩は二度と抜け荷をしないと言った。新吾は助けてくれた人は治兵衛が付けてくれた人だと思った。

 せんの元夫は三室屋を辞め、せんを見守りながら幻宗の治療院の下働きを始めた。

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