着物始末暦(十)結び布 完 中島要
祝言前に桐屋の娘・玉を勾引かそうという企みを知った糸を勾引かした者と古着屋の主人・六助を刺そうとして千吉を刺したのが同じ者だと判った余一は後ろに井筒屋愁介がいることを、岡っ引きに知らそうとする。愁介が捕まり、桐屋が人別を偽っていることを公にしたくない綾太郎は井筒屋を庇う。後藤屋の大旦那に相談する。
井筒屋の大旦那を辞めさせ、江戸店をたたみ、京の本店の主人を愁介にして後藤屋の大旦那・利左衛門が愁介の後見をする、ということで話しを決めた。愁介を江戸から出したい余一はそれで納得する。綾太郎と余一は、愁介の説得に行く。六助も付いて行く。
愁介は、桐屋の先代の新造が井筒屋の先代の妹で、駆け落ち者で、人別を偽り商いを始めた桐屋が、金の無心を断ったのでお上に訴え出たら困るから来たのだろう、井筒屋が潰れるなら桐屋も道連れにするという。綾太郎が持って来た案も、立場が強いのは自分だと言う。
余一は、井筒屋の弱みを握っているのは自分だと言い始める。自分は愁介の腹違いの兄だ。桐屋の先代の話は何十年も前の話しで証拠も無い。京の井筒屋の主人が若い頃、女を手込めにして生まれたのが自分、母親が井筒屋から逃れるため身を寄せた尼寺に松雲尼がいた。今、松雲尼は上様の信任の厚い、書院番頭永井様の奥方に仕えている。余一が井筒屋の跡取りの腹違いの兄だということの証人だと言う。
江戸店をたたんで京へ引き上げるならお互い余計なことは言わないで手を打った。千吉が大旦那と京へ行くことになった。千吉はみつに万寿菊の着物を残した。
唐橋の打掛けを、西海屋の玉菊・二代目唐橋に送る、暖簾にした。
八月一日 糸は娘を産んだ。結布(ゆう)と名付けられた。
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