花咲小路一丁目の刑事 小路幸也
花咲小路一丁目北の西角、〈和食処あかさか〉。この地域の所轄刑事になった赤坂淳27才は、中学卒業以来の生家に帰還した。店をやってる祖父母のところに居候することになった。
帰って来た早々、店舗前でストリートミュージシャン・ミケさんに会う。本名・三家あきら。 店の裏、北側の〈たちばな荘〉の住人。
淳は淳ちゃん刑事さんとみんなに知られていた。
一ヶ月が過ぎた非番の日、ばあちゃん・梅に頼まれて橋本さんの猫・マロンが、家で食事をしない。どこで食べているか調べることになった。
従妹の奈緒の彼氏・松宮電子堂の松宮北斗22才の所に行く。二丁目の店の裏はお年寄りの井戸端会議場所になっていた。
橋本家は二ヶ月前に祖母89才が亡くなり、一ヶ月前に飼っていたラブラドールレトリバー9才が死んでいたという情報と、猫好きの人と猫嫌いの人の名前のリストをメールで貰った。猫好きを二三回り、結局ミケさんに行く。みけさんが餌をやっていた。ミケは橋本さんが殺鼠剤を買ったこと、マロンが中毒になってきたこと。マロンの餌の皿を換えればいいこと。これで非番は終わり。
あかさかの店の常連・刑事課盗犯係権藤刑事、通称・ゴンドさんは、ミケは何者かと聞く。ガサ入れの現場、とか何回も彼女を見てると言う。
二ヶ月弱、非番の日、ばあちゃんから相談を受ける。〈ラーメン政〉の一年前に亡くなったおじいちゃんから手紙が来るようになったという話し。息子・政田勇人・小学五年生の野球仲間・ショーヤ君から話を聞く。手紙を見せてもらう。手書きで語りかけるように、孫に、息子に店のことやラーメンのことを書いてある。三通来ていた。筆跡や内容も親父の書いた物だと言う。
北斗が勇人に頼まれビデオをDVDに焼いていた。データーを見る。
淳ちゃん刑事は英彰さん夫婦に、誰が書いたか、推測しているが確かめるつもりはない。純粋に店を家族を心配しているだけだから。英彰さんの肩に力が入り無理しないで。ラーメンの味は落ちていない。一人で味を守るだけでなく、家族で店を守っていこう。と
淳はミケさんに筆跡の真似が出来るか尋ねた。携帯のメアドの交換を申しこむ。そっとそうとゆっくり近づく。
三ヶ月弱、連続放火犯と窃盗グループの張り込みとガサ入れの所為で家に帰れず昨日の終電でようやく帰って来れた翌日、非番の日、ばあちゃんに頼まれ四丁目の〈万屋洋装店〉でスーツを作りに行く。
祖父に育てられたあゆみ22才に相談される。一年に二度スーツを作る会社社長の三橋さんが、トラックの運転手だった。二三十万のスーツ代を二十年間受け取っていなかった。スーツの修理をお願いされた矢車さんの持ってきたのは三橋さんに作ったスーツだった。セイさんのスーツだということだった。どういうことでしょうか。
あゆみの父母は二十年前に交通事故で亡くなった。亜弥26才さんに会う。夫の白銀克己22才にも会った。セイさんは毎年二着スーツを万屋で作っていた。権藤さん調べで、三橋さんは二十年以上前、暴力団構成員だったことが分かった。三橋さんは元はご近所さんだった。あゆみの両親と同級生。
セイさん・矢車聖人と話す。あゆみの疑問と、自分の推測を。暴力団員だった同級生の赤ちゃんを引き取った夫婦が亡くなった。会いたいと思う実父に相談された人は、スーツを作ることを進める。祖父はスーツを作る時に会うことは許したがお金は受け取らなかった。相談された人はスーツを引き取り貯金している。いる時に渡せるように。セイさんは、私に任せてと言う。
一週間後、帳簿に記載があった。三橋さんとセイさんは知りあいだった。社長と名乗ったのは格好つけだった。とあゆみが言ってきた。
非番の日、お越しに来たのはミケさんだった。前日熱があり、同窓会に出かけたばあちゃんは淳が心配でミケにアルバイトを頼んでいた。熱が下がった淳は食事に誘うが、ミケさんはばあちゃんに、相談事を託されていた。
〈大学前書店〉の本の上に檸檬が置いてあったという。話しを聞きに行く。二週間前にレモンが置いてあり、二日後にミカン、それから三日後にバナナ、翌日にはキウィそしてレモン、リンゴ、ミカンと続く。
北斗に商店街の監視カメラを協同組合事務所で見ることを頼む。従妹の奈緒から書店の娘・美波の話を聞く。美波は不倫の果ての失恋を経験していた。その後引き篭りになっている。
北斗が置かれた日に出入りしている人を見付けた。北斗や美波や克己の同級生、相川康利だった。美波の元彼。北斗が彼に連絡することになった。淳は北斗が監視カメラを自分の家で見られることに気付いた。
淳とミケは食事に行く。商店街から十五分、中馬通り〈高木屋〉。(もしかして写真店に出てきたところか)
ミケの身の上話を聞く。天涯孤独。奨学金で大学まで行った。権藤はやっぱりミケを見たと言う。
半年たった非番の日、セイさんとあかさかへ帰って来た。権藤さんとあかさかの前で出会う。あかさかに入った途端、客の男がばあちゃんを羽交い締めにナイフを持って人質にした。逃走中の相原だった。じいちゃんは知っているようだ。相原は権藤を知っていた。ばあちゃんを人質にして二階に上がる。ショウガ焼き定食を注文する。
梅さんの代わりにバイトと奈緒と亜弥が手伝い、店を続ける。
北斗は、高性能集音マイクを隣の家から二階の窓へ向けている。受信機から二階の音や声が聞こえる。三星のムサシが、昇り龍の辰が抜ける時、借りがあったようだ。逃げるためにお金が必要でじいちゃん・辰にお金を融通してもらうために来たようだ。息子が刑事で常連客の刑事がいたという訳だ。
屋根から猫の声、屋根から下りられなくなった猫を助けにミケさんが、相原に見つかった。ミケさんは回転して踵で相原の後頭部を直撃。ミケさんは猫を連れて帰った。北斗も手を振り下りた。権藤は相原に手錠を掛けた。
ミケさんのたちばな荘の部屋へ行く。権藤さんの娘に絵を教えている。その娘さんに頼まれて見守ることをしているという。それが仕事だという。オブザーバー。権藤には、娘さんの気持ちを伝えたいので、姿が見えるようにしていたと言う。
ミケさんは、小さいころに、どんなところにも忍び込めて、どんなものでも運び出すことが出来、どんなものでも隠すことが出来、それでいて誰にも正体を摑まれることなく、誰よりも素早くて、誰よりも鮮やかに姿をくらますことの出来る人に出会った。仕事の現場を偶然目撃し、孤児だから連れて行ってほしいと頼んだ。弟子にしてあげようと言われ、人に知られず見守る、どんな場所でも忍び込んで誰にも気付かれず立ち去れることが出来るようになった。と告白する。
ミケさんはやっぱり猫だと思えばいい。
相原とじいちゃんはふたりだけで話した。相原の人質事件は無しになり、逃げ回って昔の知りあいのじいちゃんの所に来て、刑事の息子の連絡で出頭したことになった。
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