2022年6月14日火曜日

花咲小路 一丁目の髪結いの亭主 

花咲小路 一丁目の髪結いの亭主 小路幸也

 古い昔ながらの理髪店で働きたかった谷岡せいら21才は、偶然知った花咲小路商店街一丁目の「バーバーひしおか」に飛び込みで雇って貰うことになった。

 「バーバーひしおか」の奥さんはミミさん、旦那さんは髪結い亭主ぽく、働いていないように見える。名前は朱雀凌次郎、元ルーブル美術館のキュレーターの肩書きを持つ鑑定士。実家、朱雀家の跡取りの長男は国立美術芸術館機構の企画局長をしている。

 せいらは、魚亭の奥さんが凌次郎に持ち込んだ、最後の怪盗紳士〈セイント〉に盗まれた来歴を持つヴィネグレットを首からかけて、シルバーのマッチケースを持って矢車聖人に会いに行った。マッチケースをプレゼントするために。せいらはセイさんと話をして帰って来る。ヴィネグレットは良くできた偽物に変わっていた。セイさんは見ても判らないような贋作を持っていたと言うこと。

 万屋洋装店の主人、万屋伸一が凌次郎のところに、刺繍作品サンプラーを持ち込み、娘の結婚に持たせたいが幾らぐらいの物だろうと相談に来る。凌次郎は刺繍された古英語の文章を読み解く。呪いの文章だった。せいらは頼まれセイさんのところに持って行く。セイさんはこの文章を二三時間で読み解いた凌次郎の学識に驚く。セイさんは万屋の娘の結婚に関わるから預かる。凌次郎はセイさんは悪のサンプラーに対する善のサンプラーを作ってくれるだろうと言った。

 バーバーひしおかの一人息子・朱雀桔平28才がフランスから帰ってくる。桔平は海外で革製品の職人をしている。

 凌次郎の兄・凌一郎が、イギリスの貴族の所持品だというポーセリン・プラークを凌次郎に届ける。一緒にある貴族の父親の日記帳には、セイさんの外国名・ドネタス・ウィリアム・スティヴンソンの名があり、怪盗セイントの名もあり、ポーセリン・プラークの永遠の淑女はセイさんのお母さんだという。美術品ハンターが貴族の所から持って来てしまったそれらをセイさんに渡してしまいたいらしい。
 凌次郎と桔平は、ミケさんにお願いして複製品を作り、日記の中身を書き換えて貴族に返すことにした。
 ミケさんには、桔平が貴族のところで見付けて持って帰って来てしまったが、貴族が気付いて返してくれと言ってきたので複製品を作って欲しいとお願いした。紙やインクは桔平が用意した。日記の革表紙も桔平がし、製本をした。でき上がった時、ミケさんは楽しかったと喜んだ。貴族の許に複製が着いたのを確認してセイさんに本物を渡す。

 桔平は、スペインに旅立つ前にせいらに話す。本当に自分は美術品ハンターであること。今回の日記と永遠の淑女を日本に持ち込んだのは自分であること。セイさんが怪盗セイントであること。克己と北斗は日本でセイさんをお手伝いしていること。自分は海外でお手伝いしていること。ミケさんはセイさんの弟子だったこと。今回の大仕事をきっかけにセイントの弟子を終わらせて淳ちゃん刑事さんと結婚を決めたこと。桔平は全てを話し「鋼鉄のセーラでしょ」と念押しした。

 せいらは周りの人たちからひしおかの跡取りと見られている。

 

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