2015年11月25日水曜日

ふるさと銀河線

ふるさと銀河線 軌道春秋 高田郁
 お弁当ふたつ いつもと同じように出かける夫が二ヶ月前にリストラされていることが分かった。一日夫を付ける。夫は房総半島を一周していた。自分のお弁当を持ち同じ電車に乗り、お弁当の時間隣に座って一緒に食べる。
 車窓家族 古びた文化住宅の二階の部屋、電車の窓から見える一室に暮らす老夫婦。部屋に明かりをつけてもカーテンを引かず、電車からそれぞれが老夫婦を見ていた。電車はいつも信号待ちで停車する。点検のため停車が長くなった日も、前日も部屋に電気がつかなかった事を気にする乗客が、いつも温かく見ていた事を話す。新しい照明が付く。
 ムシヤシナイ 大阪の駅そばの店長の所へ、東京の孫・中三が来る。東京の大学へ行き、就職し結婚し、親の所に寄りつかなくなった息子の子供だ。小学校の頃に勉強に追いまくられていた。一緒にいると父親を殺したくなる。と言う孫。ネギの小口切りをいっぱいする。包丁はネギを切る物、使い方が解ったからもう親を殺そうとは思わないよというおじいちゃん。孫は帰って行った。
 ふるさと銀河線 両親を亡くし兄と二人きりの星子、兄はふるさと銀河線の運転士をしている。高校を選ぶにあたって陸別を離れる決心がつかない星子。羽ばたく勇気・・・。帯広の高校を受験した。
 返信 陸別に来ている。という、15年前の息子からのはがきを持って陸別に来た老夫婦。息子は三年前に亡くなっていた。陸別は息子が来た15年前とは全然違っていた。月のない夜に、無数の星を見た時、息子を感じた。徹へ 二人で陸別に来ています。ここはお前に会える町です。と返信を書いた。
 雨を聴く午後 就職して証券会社に勤める忠。バブルがはじけてやり切れない。気が付いたら八年前、大学生の時に住んでいたアパートがあった。合い鍵を持っている忠は不法侵入する。ダイジョウブというインコ、安らぎを得られた忠は何度も侵入する。文章を読んでしまう。断酒に失敗して傷つけた夫への贖罪、孤独に耐え、弱さを自覚して必死でいきようとしていた。忠は鍵を川に棄てる。
 あなたへの伝言 みゆきは結婚し夫しか頼る人の無い生活をしていた。夫が仕事が忙しく寂しさをお酒で紛らわせていた。バブルが崩壊して家に帰った夫が見たのはみゆきの泥酔する姿だった。別居した。夫の乗る電車に合わせて白いソックスを干す。酒に手を出せばインコの世話が出来なくなりインコは死ぬ。そうならないように夫から送られたインコ。ソックスは今日も大丈夫の合図だった。アルコール依存症から立ち直った先輩、その人が姪の結婚式でアルコールを飲み前と同じになる。ショックを受けたみゆきにインコはダイジョウブを繰り返す。白いソックスを洗い窓辺に干す。今日は飲まない。
 晩夏光 自分が認知症になって行くのが分かるなつ乃。まだ分かるうちにノートに書きためる。息子に伝えたい事、した事、そのノートが何なのか解らなくなる。恐ろしかった時を過ぎ、今は晩夏光の様だと言う老母。息子と分からない男に話しかける。
 幸福が遠すぎたら 二千一年に十六年前のはがきが届く。大学時代の友人から、梅と桜と桃と三人で会う。36才。桃は銀行の法務室勤務、肝臓ガンが見付かり手術する、同時にC型肝炎のキャリアである事が分かり妻とは別居。梅の結婚式以来だねという。奥さんは、六年前の震災で初産のため帰っていた実家で亡くなっていた。桜は母に電話して言い出せなかった造り酒屋の倒産のことを話す。でも立ち直って見せるからと。

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