2018年5月30日水曜日

町奉行内与力奮闘記〈六〉

町奉行内与力奮闘記〈六〉 雌雄の決 上田秀人
 北町奉行・曲淵甲斐守影漸に対する吟味方筆頭与力・竹林一栄の態度があからさまになる。竹林に付いていないのは、年番方与力・左中居作吾だけだった。
 竹林は奉行を追い出すために、定町廻りの仕事をしないと決め、同心に何もするなと命じた。一人・石原参三郎は見廻りをした。同僚を説得しようとする。
 商人は何もしてくれない奉行所に合力金を出すことを止めた。
 竹林が闇の元締めだった陰蔵に頼んで播磨屋の姪・咲江を勾引かそうとして失敗したため、陰蔵は旗本屋敷の賭場に潜り込んでいた。曲淵は目付けに手を回し陰蔵が屋敷を出るようにする。江戸から出ようとした陰蔵を播磨屋の用心棒と内与力・城見亨は高輪で捕まえ、播磨屋の蔵に監禁する。曲淵が播磨屋にいる時を狙って竹林一党は播磨屋を襲う。同心を動かすために、何年にも渡り、陰蔵を使っていたことを伝える。何人かの同心は播磨屋襲撃に加わらなかった。播磨屋の蔵屋敷の門を破り、蔵の商品を飲み食いした者を盗人として斬捨てられた。一人、竹林は逃げた。
 曲淵は奉行所に帰り、左中居を筆頭与力に付け、欠員の補充を命じた。
 曲淵甲斐守は「これでようやく、思うように動ける」と言った。
 

2018年5月29日火曜日

八丁堀「鬼彦組」激闘篇③

八丁堀「鬼彦組」激闘篇③ 蟷螂の男 鳥羽亮
 凶器が判らない辻斬りが起こる。三年前にも商家の主が同じ凶器で殺されていた。北町奉行・榊原主計頭忠之の命で吟味方与力・彦坂新十郎・鬼彦組が探索をする。
 殺しを請け負う元締めがいることが判った。料理屋の隠居が元締めで料理屋が窓口、鎖の先に分銅が付いた鎖鎌を使う浪人・北島がいた。北島は敗れ絶命したが、他の者、殺人者も捕まり、依頼者のことも判った。

2018年5月28日月曜日

汝(きみ)よさらば〈一〉 浮世絵宗次

汝(きみ)よさらば〈一〉 浮世絵宗次日月抄 門田泰明
 小説NONの血闘の変題
 駿河国田賀藩中老・廣澤和之進、妻女・美雪を奪う宗次を討ち果たそうと伊豆から松坂へと苛烈な修行を重ねる。

2018年5月27日日曜日

料理人季蔵捕物控㉟ 牡丹ずし

料理人季蔵捕物控㉟ 牡丹ずし 和田はつ子
 上方の義賊・疾風小僧翔太が江戸に現れる。北町奉行・烏谷椋十郎の命を受け、季蔵や、先代の娘のき玖の夫・南町同心・井沢蔵之進、北町同心田端宗太郎、松次等は疾風小僧を捕まえるために探索する。
 疾風小僧は評判の悪医者・稲村広海宅に入り二千両と裏帳簿を盗む。裏帳簿を烏谷に送り、烏谷は稲村を自死に追い込む。疾風小僧の思うままに動いたことを気に病む。
 口入れ屋・遠田屋近兵衛宅に疾風小僧が現れるという情報で内部に入り張り込むが、近兵衛は殺され、大番頭・佐平がいなくなる。後日、佐平は殺されて見付かる。
 佐平と稲村は繋がり、佐平は遠田屋の儲けを稲村に渡し、阿芙蓉を買い込んでいた。稲村は阿芙蓉を鉄箱に入れ埋め、自死したと見せかけ火事の焼け跡に別人の遺体を置いていた。佐平は稲村から盗んだ鉄箱の鍵を隠し、稲村に殺された。季蔵は佐平の隠した鍵を見付け出し、稲村が生きていると考え、稲村の隠れ場所を見付ける。稲村が、佐平が疾風小僧が納屋に押込んでいた近兵衛を店を乗っ取るために殺したことを認めた。
 最高の牡丹ずしにするために頭を悩ましていた季蔵の前に「諸国美味いもの競べ」を出版している篠原裕一郎が現れる。牡丹ずしを取材し、肉醤を持ってくる。牡丹ずしはうりぼう肉をたれに漬け込み石窯で焼きすし飯に置いた物。肉醤は猪の肉を塩漬けにし、どろどろに溶けたはらわたの中に塩漬けの肉を漬け込んで作る。肉醤を使い、最高の牡丹ずしを作った。篠原は一時、疾風小僧と思われ牢に入れられたが、その間に疾風小僧が何度も現れたため、解き放たれる。
 篠原も疾風小僧の一味だった。
 疾風小僧というのは何人もの団体で、盗んだ金をばらまくのが仕事と言う。今回は遠田屋に成りすますもの、料理好きになる者が現れた。
 季蔵は瑠璃と楽しく話す、自分を見た。堀田季之助と名乗り、今は季蔵と言うのだよと瑠璃に話す侍。疾風小僧翔太だった。素顔で季蔵に似ているのだそうな。瑠璃の回復には楽しい思い出を振り返る必要があるのでわとの助言も。井沢蔵之進にも石工頭にもなって現れていた。人殺しをしないために"なりすまし"が得意なのだそうな。後日文が届く。
 肉醤は翔太が作ったものだった。
 疾風小僧たちは江戸を去った。
 三吉は、慈照寺の季之助だった時の主家の鷲尾影親の奥方・瑞千院に教えてもらいパンを焼いた。もともと石窯は瑞千院のものだった。
 き玖は懐妊した。

2018年5月26日土曜日

おれは一万石③ 紫の夢

おれは一万石③ 紫の夢 千野隆司
 井上正紀18が世子の一万石高岡藩の国家老・園田頼母が切腹し妻子は実家・戸川屋に帰った。戸川屋は藩のために頼母に都合していた百二十七両と他の店の借金を買い取った四十両余りを請求してきた。
 一族の茶会で顔を合わせた播磨龍野藩五万一千石脇坂家の当主・安董から、大松屋が奪われた龍野藩から仕入れた七十石の淡口醤油を期限までに見付けられれば、追加に注文された七十石の醤油を高岡藩に廻すと言われた。始めて仕入れられた淡口醤油だった。
 大松屋の醤油を運んでいた水夫の遺体の事件を調べていた山野辺蔵之介と協力する。
 津久井屋が安く龍野醤油を売ろうとしている事を掴み、戸川屋と組んだ事を調べ出し、醤油を隠している納屋を突止める。運び出しを狙い、醤油を奪い返し、津久井屋と戸川屋を捕まえる。津久井屋の醤油が大松屋の醤油と証明され、津久井屋と戸川屋の共犯が証明され、津久井屋と戸川屋は闕所になった。高岡河岸の戸川屋の納屋と土地は高岡藩の物となった。四十両余りの借用証文は、高岡藩の植村の手にあった。正紀は戸川屋に身を寄せていた頼母の妻子を下妻藩の正広に頼んだ。
 手に入れた淡口醤油の売り方を桜井屋長兵衛と話し合う。
 尾張徳川家付家老・兄・竹腰睦群に会い、尾張藩の楽々園を借りる事にした。母・乃里の口添えがあった。叔父・宗睦・藩主に許可を貰う。醤油を売ろうとしている地域の大名、知行地を持つ旗本を茶会に招待し、淡口醤油を使った懐石料理を出す。料理は正紀の妻・京が何度も試作した。味わってもらい大名や旗本のお墨付きを貰った。
 高岡河岸に醤油が入る日、正紀と京は見に行った。
 京が懐妊した。
 

2018年5月25日金曜日

紅雲町紅緋屋こよみ⑥

紅雲町紅緋屋こよみ⑥ 花ひいらぎの街角 吉永南央
 花野 杉浦草のもとに旧友・初之輔から「絵巻・香良須川〈上〉」が送られてくる。小説家志望の田中初之輔の短い小説「香良須川」に寄せられた若き絵描き数人による作品だった。初之輔は草が一時期連れ添った夫・村岡透善が中心になって計画していた高透芸術村、芸術家集団の一人だった。バクサンには下巻が送られていた。バクサンは運送屋・寺田の父親・草の珈琲の師匠・戦後小説家志望の芸術家集団の一人・レストラン「ポンヌフアン」のオーナーシェフ・寺田博三。
 草とバクサンは五十年振りにあう初之輔を招待し、初之輔が好きだと思っていた容子の墓参りに行く。容子は死んではいないことが判った。三人で高透芸術村の建設予定地だったところに行く。公園になっている。
 化粧品会社の営業の女性客の持っていた活版印刷の栞を見て、「香良須川」を印刷して本にすることを考える。地元大手のアルファ印刷工業に自費出版の相談に行き、個人情報?万単位、流出とかの話しを聞いてしまった。本は先代からつき合いがあった萬來印刷で、活版印刷で小林晴秋にしてもらう事にした。
 初之輔からの写真の礼の電話の後、初之輔の孫からの電話があった。米沢に嫁いだ人をご存知ですか。祖父が本当に好きな人には恋人がいて米沢に嫁がれてしまった・・・見合いで新しい出会いを見付けたぞ・・・と孫娘は言った。草はそんな人は知らないと答え、この電話のことは内緒にしようと言って電話を切った。米沢に嫁いだのは草だった。昔、容子に鈍いのねと言われた事があったのを思い出した。
 インクのにおい 萬來印刷の社長・萬田豪がゲラ刷りを届けてくれる。アルファー印刷の個人情報流出を下請けの萬來印刷の責任にされている。草の証言で、晴秋の社長、御社内で調査された方がと言う言葉で萬來印刷は助かったようだ。
 小蔵屋の従業員・森野久美が萬田豪に映画に誘われた。久美は萬田に断れなかった。どう断っていいのか考えている。
 お客さんに言われる。昨日の彼女、草さんのことを「案外鈍いのね」と言って笑ったのよ。容子さんだと草は思った。
 染まった指先 草は久美の代わりに映画に行く、晴秋さんはササワキが個人情報を売買して流出させたことを知っていたが言わなかった。何故と切りだした。反応を見て萬田もしっていたこに気付く。何故。アルファ印刷の社長の姉が晴秋の妻だった。反対されて結婚し、三年前に自殺した。おまえが殺したとなじられた。何を言っても拗れるばかりだと思ったのだった。
 草とバクサンは印刷を見に行く。萬田が風邪を引き晴秋の家で寝ていることを知り、食事を作りに行く。家はニューヨークの感じだった。晴秋の妻の趣味だと聞き、萬田の思い出話を聞く。聞けば聞くほど自殺が不思議で、草は自殺現場に行く。
 青い真珠 金婚式の引き出物を買った客のカードにメッセージを印刷した。美濃手漉き和紙に窪みを付けた活版印刷だった。化粧品会社の女性は晴秋の娘・咲紀子だった。咲紀子は死ぬ少し前に母が青い真珠を見付けたと言った。青い真珠は高いのだろうかと。見付けたら売って新しい仕事の資金にしようかな。
 本の見本が届けられる。
 久美は草の友達・由紀乃の紹介で平塚と見合いをする。話しが合い、とんとん拍子で話が進むが、久美は評価される点が自分から失われたらどうなるのかと考える。萬田の楽で、日向ぼっこしているような感じと思い始めたころ、咲紀子が萬田に結婚しようよ。と言うのを聞く。でも、久美は平塚に断りを入れる。
 草は晴秋の妻の最後に歩いた道を辿る。花屋に話しかける。事故だったと言う。カードを貰う。
 花ひいらぎの街角 ウエストパークマンションの非常階段の手すりを掴みゆっくり上がる。五階まで上がる。丘陵の上流から下流まで一望できる。彼女はここに来る理由があった。非常階段が見える所の家の人に話しかける。小蔵屋に来て話す。事故は見ていないが、大きなつばの帽子を被り、踵の高いサンダルだった。一声かけていたらという悔恨が伺える。警察に何も聞かれなかったと言う。草は判った。彼女が五階に上がった理由、自殺ではなく事故だったことが、でも家族には言えなかった。
 草は活版印刷の広告のようなメッセージを書いたリクエストをラジオに送る。
 十一月の末日、晴秋が出来上がった本を持ってきた。そして花屋が妻が変わった球根を買ったこと、花屋があそかからだと見えると教えた事を誤りに来たと言った。ラジオを聞いたから話すつもりになった。家族は自殺で折り合いをつけていた。草が動いたために事故だったことが判った。変わった球根はブルーパールだった。アルファ印刷の社長・晴秋の妻の弟が来た。晴秋をなじった事を反省した。家の中、生活を知らない事も反省。咲紀子は私と父を捨てて行っちゃてを訂正した。あの人は生きるつもりだった。彼女が見ようとしたのは高透芸術村の建設予定地後の公園・花野だった。公園のボランティアをするつもりだった。
 初之輔に本を送る。戸惑いと、喜びと親しみが混じった電話があった。孫娘がサインをねだったらしい。二週間後、三人で会った。年の瀬に初之輔から、数人の手を経て村岡透善から草に宛てた古い手紙の束が届いた。私家版の「香良須川」が初之輔から昔の仲間に送られその人から広がって呼び寄せたものだった。
 
いつも短く書きたいと思うが長くなってしまう。

 

2018年5月24日木曜日

バッタを倒しにアフリカへ

バッタを倒しにアフリカへ 前野ウルド浩太郎
 サバクトビバッタを愛し、昆虫学者になりたいが所属する研究所がなくなった。三十一歳。サハラ砂漠、モーリタニアの研究所にフィールドワークに行く。日本学術振興会海外特別研究員一年380万円の二年任期を手にして。
 出来ないフランス語とバッタが現れないことに苦労しながら、周りの人に支えられ、フィールドワークをこなす。
 研究論文が書けていないため生活と環境の話しが主なもの。
 平成25年度京都大学「白眉プロジェクト」に採用され五年の研究が保証された。三年目に国際農林水産研究センターに任期付きで移動。ジスカルではアフリカでバッタの研究が出来五年間で成果を出せば常勤の昆虫学者になれる。
 

2018年5月23日水曜日

九頭竜覚山 浮世綴〈一〉

九頭竜覚山 浮世綴〈一〉 門前仲町 荒崎一海
 雲州松江の松平治郷が学問一辺倒だった九頭竜覚山33を松江から連れ出し、門前中町に住まわせる。深川一の売れっ子芸者・米吉30が覚山に惚れ、覚山は所帯を持つ覚悟を決めた。料理屋万松亭の裏手の路地向いの二階建ての米吉の住まいに住む。万松亭の主・長兵衛に頼まれ、通りの用心棒になる。米吉は芸者を辞め、三味線等を教える。
 料理茶屋・青柳で芸者・房次が殺された。覚山は駆けつけ、本所深川の定町廻り・柴田喜平次36、御用聞き・弥助31を呼ぶ。
 気がついたこと、おかしな事、調べたい事等、覚山は柴田や弥助に話し、調べに協力する。船頭・松吉が覚山に情報を持ってくる。房次を呼んでいた山形屋五郎兵衛も殺されて見付かる。房次を殺したと思われる芸者・小糸と山形屋を乗せたと思われる船頭・蓑助が一緒に遺体で見付かる。覚山の助言で房次と山形屋の関係、小糸と蓑助の関係(潮来出身)、小糸と蓑助から羽州屋の関係(小糸の父親の時から世話になっている)。羽州屋から山形屋、長谷堂の兄弟店に繋がる、百年以上前の話しだ。五郎兵衛の娘・かよの本当の父親・藤巻十蔵が知れる。最上家当代の母親の里の五男。
羽州屋の出店だった山形屋が百年たち地所を持つ大店になっていた。昔、繋がりのあった、羽州屋と長谷堂が山形屋との関係を深め、山形屋の地所を手に入れようとした。何となく感ずいた五郎兵衛が遺書めいたものを房次に預けようとしたことで房次は殺された。
町方の調べが近付いたため、羽州屋と長谷堂は山形へ行こうとし、捕まった。
藤巻十蔵はお前さえいなければ上手くいったのだ、と覚山の前に現れ襲い、覚山に斬られ死んだ。

2018年5月21日月曜日

辻占侍〈三〉 暗殺者

辻占侍〈三〉 暗殺者 藤堂房良
 巳之吉の闇 巳之吉がいなくなった。左京之介と鉄拐は探す。巳之吉はどこからか逃げてきた。拷問を受けていた。二年ほどの記憶が無かった。左京之介のことは判らない。巳之吉がいなくなった。自分で囮になったようだ。犯人は、南町奉行所隠密廻り同心・三枝佐源太と島帰りの角兵衛とその仲間だった。角兵衛は島で綱渡りの源蔵の病気の世話をしている時、若い岡っ引きに三千両の隠し場所を教えていると話した。若い岡っ引きは巳之吉だと思い、三千両の隠し場所を聞き出そうとしたのだった。巳之吉が殺されそうになった時左京之介が助けに来る。三枝を倒す。傷を治した巳之助が二年間のことを思い出したため、三人が捕まり三枝が黒幕だったことも判った。巳之吉はこの三日のことを忘れていた。
 三千両の在処を知っているのは仙太だった。仙太の母親と源蔵はいい仲だった。巳之吉は仙太にいい使い道が見付かるだろうから黙って眠らせておけという。
 暗殺者・葎 商家の旦那が殺され、御家人・鏑木左京之介が腹を切るまで、町人を殺す。と書かれていた。左京之介は七日の猶予を貰う。また一人殺された。殺しを頼まれた者を殺していた。何かしら人に悪さをした者だったが、左京之介へのあたりが強くなった。
 左京之介は神刀自在流の自分が学んだ種子田道場に匿って貰いながら、師範代・伊藤平介を怪しむ。葎と呼ばれる御頭は道場の風呂炊き、飯炊きをしている伴三だった。仲間は捕まえる。伴三は見ながら剣術を自分の物にしていた。伴三は左京之介の殺しを頼んだ者を知らないと言いながら死んだ。百姓屋は燃えた。地下蔵の抜け道を見付けた巳之吉と左京之介は古井戸から脱出した。またもや岡崎厳九郎のお手柄になった。

2018年5月20日日曜日

辻占侍〈二〉 呪術師

辻占侍〈二〉 呪術師 藤堂房良
 呪殺 師匠・白浪が呪いがかかっていると青浪に送り込まれた鳩六が熱を出し亡くなった。他にも同じような状態で亡くなった者がいた。鏑木左京之介、巳之吉は呪殺出来そうな呪術師を探す。巫女の神姜にたどり着く。神姜には伊賀の抜け忍・葛城がついていた。葛城は左京之介の命を狙い反対に殺されるが、死ぬ前に神姜が殺すわけではなく、自分が毒を耳に流し込むと言い、巫呪を人助けのために使って欲しいと遺言する。神姜は判ったようなふりをするが、葛城を殺した左京之介を憎み、術をかける。神姜を探している時に出会った呪術師の無峰に呪術を解いてもらう。神姜はいなくなった。
 左京之介には何者かが殺し屋を送り込んでいた。呪術をかけられた時に衛藤兄弟が現れるが、左京之介は何も判らないまま兄弟を倒していた。
 自鳴磐師(とけいし) 自鳴磐師・喜平次が亡くなり息子・喜助が上方から帰ってきた。喜助の命が狙われていることを知り、左京之介は喜助の用心棒になる。喜平次が持っているはずの図面が公儀から狙われていた。喜平次の隠し場所を左京之介は見付ける。図面は大名家から作るように頼まれた鉄砲だった。喜助は図面をみんなの前で燃やす。公儀も大名も手を引く。喜平次に鉄砲作りをさせたくなかった友達の常吉に殺されていた。
 有馬家けの用人に頼まれた是枝市十郎は、自分の妾の弟・忠弥が左京之介の弟分のようにしていたので、左京之介の所から有馬家の借用書を盗むように命じた。忠弥は左京之介に相談する。左京之介は是枝を倒す。これからも力を借りる前金だと言って左京之介は八千両の有馬家の借用書を鉄拐に渡す。

2018年5月19日土曜日

江戸家老塩谷隼人〈三〉

江戸家老塩谷隼人〈三〉 恋敵は公方様 牧秀彦
 尼崎藩江戸家老・塩谷隼人は船宿「海ねこ」の琴と隠居後は余生を過ごすつもりだ。家斉がお忍びで出掛け、琴を見初め、小納戸頭取・中野播磨守清茂に養女にし大奥へ入れることを命じた。琴は大奥へ入れられる。
 琴は家斉から肘鉄で逃げるが、塩谷を人質にされ逃げることが出来ない。塩谷の味方・御庭番・多美が家斉に眠り薬を飲ませ日を稼ぐ。
 播磨守が後ろ盾になっている裏家業の権六が隼人を狙う。裏家業の日下丈之介に助けられる。隼人は根岸の大蔵永常の屋敷に誘き出そうとする。権六を倒そうとする蒼二郎等と隼人を助けようとする日比野左内等も集まる。権六等は根絶やしにされる。御咎めは播磨守にまでは届かなかった。
 塩谷は辞職願を出し、琴の取り替えしを狙う。播磨守を脅し家斉に琴を返すように言っても家斉は承知しない。隼人は松平信一郎を通じて柳生俊則に願う。俊則は忍びで招いた家斉の他流試合を認める。引き出物は琴。相手は隼人だった。家斉が打ち込め無いことに業を煮やし、鞭打と呼ばれる馬上での竹刀打ちとなった。小兎馬に乗った隼人に家斉の愛馬は後ずさりし、家斉は引き下がった。次の日、琴は大奥を去る。
 一年後 文化九年 1812年四月
条太郎は日比野左内に手伝ってもらって用人をこなしていた。尼崎藩の農村で隼人と琴が畑を耕している。隼人の家の離れに作左衛門と千代が住んでいた。
 

2018年5月18日金曜日

百万の手

百万の手 畠中恵
 音村夏貴は時々過呼吸の発作に見舞われる中学生。親友・日野正哉の家が火事になり両親を助けようと飛び込み三人が亡くなった。携帯電話から正哉の声がしてふたりで火事の真相を調べる。夏貴の父親は亡くなり、母親と二人家族だが、母親の婚約者・東が現れる。夏貴の家も燃え、正哉の携帯も燃える。
 夏貴と正哉が生まれたのは四神市の四神病院、産科が有名な病院だった。正哉は人口受精で生まれていた。正哉の親の凍結受精卵で生まれた女児・片岡和美がいた。正哉の父は和美とのDNA検査をしていた。それらの証拠品を燃やすために日野家に火を付けられた。片岡家は東京に引っ越した。誰かが知らなかった人に教えている。中学生・田崎が自殺した。父親は柴原医師を恨んでいた。
 夏貴は柴原の始めて成功したクローン人間だった。柴原は田崎に殺された。
東と夏貴は柴原のデーターを入れたDVDを手に入れた。柴原の成功の断片を知っている赤木は柴原のデーターを欲しがった。柴原の研究だと知っている夏貴たちを病院の地下研究室で殺そうとする。水をかけると燃える液体をまかれ火の海となる。赤木も死ぬ。
 赤木の暴走を見ていたのは院長、他産科の医者達だった。夏貴たち親子の死を願い、DVD
を狙っていた。夏貴たちは逃げ出した。
 正哉の墓の前でDVDを砕いた。
 
 
 

2018年5月15日火曜日

剣客旗本春秋譚

剣客旗本春秋譚 鳥羽亮
 青井市之介(二十後半)は、一年余り前に御徒目付の友人糸川俊太郎の妹・みつ20と一緒になった。非役のままだ。市之介の妹・佳乃は御小人目付から御徒目付になった佐々野彦次郎に半年前に嫁いだ。
 市之介は母・つるの兄・御目付・大草主計の頼みで、北町奉行所定廻り同心原島と岡っ引きが殺された事件の手助けを百両で受けた。
 原島は商家の主と手代が殺された事件を調べていた。殺しを請け負う元締めがいるようだ。屋敷の中間部屋で賭場を開いていた三百石の旗本・木梨が、殺し屋として雇われていた。料理屋・大黒屋が窓口で隠居・権兵衛が元締めだった。権兵衛の隠居所で権兵衛を捕まえ、大黒屋で殺し屋を捕まえる。逃げた木梨を屋敷側で市之介が対決し紙一重の勝負に勝った。
 話しを聞いた大草は市之介も非役であることを心配した。

2018年5月14日月曜日

ベッキーさんシリーズ③ 鷺と雪

ベッキーさんシリーズ③ 鷺と雪 北村薫
 不在の父 花村英子の同級生・桐原道子は瓜生豹太と婚約していたが、瓜生寅之助氏が亡くなり瓜生家の力が無くなった。婚約は解消された。
 道子の親戚筋の華族の滝沢家の弟に子爵を賜りっていた。弟・吉広子爵が居なくなって五年、子爵は息子が継いでいた。道子は家を訪ねるが教えてもらえない。英子は似た人を見たという、浅草公園に行く。吉広氏と話す。欲しくなかった子爵を貰い、上流階級の人といると、自分の居場所じゃないと思い、妻とも考えが違うことが判り家を出たと言う。その後、人望あった馬さんというルンペンが幼児を助け車に轢かれ死亡と新聞記事が出た。滝沢さんだった。
 英子は銀座の教文館で陸軍少尉・若月と会う。二度目だった。探していた本が「聖三稜玻璃」だと教えてくれる。数日後詩集が届いた。
 獅子と地下鉄 道子さんの姉・麗子様は宮様に輿入れした。道子は子爵だが、一流の会社に身を置き、重役ではなく、働く人たちに眼を向けられる部署を希望する相羽を愛した。反対はされず、順調に話しは進んでいるようだ。
 室町の和菓子の老舗の小学生の息子・巧が、夜9時過ぎに上野で補導された。松子叔母が英子にどう思うと聞いてきた。英子はベッキーさんに車で走って貰い相談する。
 巧は三越のライオンに誰も見ていない時に跨がると入学試験に合格すると聞いてきた父親と二人で跨がりに行った。父は気がついていないが自分が跨がって居る時、人と眼が合ってしまった。だから別のライオン・博物館のライオンに跨がろうと思ったと判った。
 ベッキーさんが用意した獅子に乗った菩薩様の絵馬とお札を渡した。
 鷺と雪 修学旅行で一緒になった同級生・千枝子さんに写真のことで相談を受けた。カメラを買った時には台湾に行っていた婚約者が写真に写っていた。千枝子さんの友達・八重子のいたずらだった。八重子も同じカメラを前に買い、婚約者の写真を撮って、千枝子のカメラとすり替えていた。
 若月英明将校さんから本が送られてきた。処分しなければならなくなったのであなたに受け取って貰えたら嬉しいと手紙があった。お返しを考えて服部時計店に電話をすると、若月が出た。あなたの声が聞けてよかった。この世では何でも起こるものだ。武運長久を祈って下さいと電話が切れた。服部時計店と間違う電話は総理大臣官舎だった。
昭和十一年。二月二十六日

2018年5月12日土曜日

入り婿侍商い帖 大目付御用〈三〉

入り婿侍商い帖 大目付御用〈三〉 大目付御用 千野隆司
 大黒屋の角次郎は、大目付・中川忠英に呼ばれ、下総結城藩当主・水野勝愛を紹介される。千種屋が結城藩に手を延ばしてきたようだ。と言う話しだった。結城藩の結城紬の御用達は丸茂屋と豊後屋だが、丸茂屋に肩入れしている。豊後屋を潰す企みがあるようだ。豊後屋の跡取り・藤太郎が遊び人・次吉を刺した疑いで身柄を拘束された。真実を探って欲しいという頼みだった。
 十六年前、角次郎は大黒屋の婿になったばかりだった。大黒屋の土地を手に入れようと左柄木屋は大黒屋に嫌がらせをした。万季の命を狙うこともあった。左柄木屋は関宿藩の藩米を重臣と謀って横流しをしていることが明らかになって闕所になり、主人・利七左衛門と跡取り・利兵衛は死罪、次男・利之助は八丈島に送られた。横流しを暴いたのは角次郎だった。御赦免で利之助が江戸に帰った。大黒屋に憎しみだけを持っていた。
 大黒屋の善兵衛が襲われ亡くなった。
 利之助と一緒に島から帰った者を探し、利之助の居場所を探した。仲間三人と、江戸所払いになった房川屋猪三郎が会い、猪三郎と丸茂屋幣左衛門、吉田藩の能代半左衛門、千種屋与次右衛門が密会を見、いね、とうたろう、だいこく、ねこと聞こえた。
 大黒屋と家族のように付き合いのある羽前屋の娘・稲が勾引かされた。五百両を角次郎の体に付けてあちらこちらに運ばされる。疲れた角次郎に襲いかかった者を捕まえ、稲の居場所を利き出し、稲を助け出した。稲は千種屋の寮にいた。
 能代は切腹した。千種屋は闕所、利之助は崖から飛び降りた。
 藤太郎を犯人だと言った男が犯人だった。利之助の仲間だった。島にいる時から持っていたねこの根付けを次吉が握りしめていた。

2018年5月11日金曜日

表御番医師診療禄〈11〉 埋伏

表御番医師診療禄〈11〉 埋伏 上田秀人
 御広敷番医師・矢切良衛は、大奥で将軍の料理の調理に携わる御前所の仲居が腹痛を起こしたことから綱吉の食事、身体のことが気になり、お目通りし脈を見る。毒を心配し診察したのだが、綱吉は脈が多く、拍子に乱れがあった。食事に付いて調べると、味を濃くという申し送りがあった。大奥で伝の方を通じて綱吉に塩分を控えた食事をとってもらった。先代の台所人を探す。上様の異常を知っていたにも関わらず黙っていただけでなく、次の者に引き継がせた者を探そうとする。現在もその者が奥医師であったらと考えるとどうしていいか判らなくなる。
 異常を言わぬ奥医師を信用しなくなった綱吉は、奥医師に脈を見せなくなった。半井出雲守は用人・真鍋に矢切の話しをする。真田は深川の無頼の者を差配するようになった真野に敵対する仏の鬼作に矢切のことを頼んだ。鬼作は矢切の屋敷を襲撃するが、矢切の反撃と真野たちによって返り討ちにあう。真野は鬼作が誰に頼まれたかを聞き出した。

2018年5月10日木曜日

あしたも、こはるびより。

あしたも、こはるびより。 つばた栄子 しゅういち

2018年5月9日水曜日

生きていてもいいかしら日記

生きていてもいいかしら日記 北大路公子

2018年5月8日火曜日

うずら大名

うずら大名 畠中恵
 吉也は、江戸に近い東豊島村の名主の家に生まれたが、三男だった。居場所が無く剣術道場に通った。みんな次男三男だった。時が経ち、父が亡くなり、名主だった長男が亡くなり、兄は養子に行っていたので吉也が名主・高田吉之助になった。
 うずら大名 吉之助は辻斬りに遭った。助けてくれたのは同じ道場にいた有月だった。有月は佐久夜と呼ぶうずらを巾着に入れて腰から吊るしていた。吉之助は馬の飼葉を納めていた大名家の契約を切られた。有月は多々良木藩の先代殿様で大名貸をし、中屋敷に出入するようになった。
 御吉兆聞こえず 有月の飼っているシャモを大きくするため、道場へ大きなシャモを求めに行く。
 江戸近郊の名主が何人も殺されていた。有月は誰かの命令で犯人探しをしていた。吉之助は囮にされ犯人が出てくるのを待つ。襲った相手を斬る。道場の師範代・榎本だった。後ろで操っているのが誰かは判らなかった。
 大根一万本 隣村・小牧村の名主・平十郎・吉之助の姪の奈々の嫁ぎ先が相談に来る。新宮城村の豪農・三津尾儀右衛門が病のため、田畑に使う肥が手に入らなくなったのでこちらから回してほしいという。大根を漬物にして江戸に売りに行く予定で注文を取っていた。吉之助が有月に相談に行くと、有月は老中に殺された三津尾儀右衛門を調べるように言われていた。調べてくれれば下肥のことはどこかの大名に口を利いてやるという。
 大名貸の兄・六之川の店が焼け家族が亡くなり、弟・三津尾が殺され、お金が残っていなかった。大根の話を聞いた有月は三津尾家の関係した村々を回る。両家で川北村にお金をつぎ込み養蚕を始めていた。織り機まで買い込みお金を使っていた。村の者は黙っていれば両家のつぎ込んだ資材が自分たちの物になると思った。つぎ込んだことを知っている番頭だった男は、六之川が焼ける前に江戸に出ていた。三津尾儀右衛門を殺し、村を牛耳るつもりだった。有月が暴き、阻止した。
 書き付けの数字 奈々の友達・喜多は旗本へ奉公に行き、数字の書き付けを見た。菊岡九兵衛に相談し逃げ、吉之助と出会った二人は、多々良木藩に匿われる。数字は武家も身分を売る金額だった。大名や家老まであった。
 佐久夜の初泳ぎ 豪農の金持ちの娘が大名や旗本に奉公に出ることが流行っていた。殿様のお手が付いて側室になり、娘の子どもを大名にする目的だった。書き付けの黒幕が誰かを暴くため、老中・加賀守の手を借り黒幕を引きずり出すため松平家を借り網を張るが失敗する。事が漏れている。
 江戸の合戦 有月は佐久夜を吉之助に貸す。吉之助は知らないうちに囮に使われ、黒幕たちに捕まる。佐久夜は黒幕を見た。みんなが揃った時、佐久夜に訪ねる。多津川だった。道場の面々が仲間だった。多津川は武士を捨て名主の養子になっていた。老中宅に行く。多津川たちは大名の簒奪を計画していた。
 有月は兄の藩主が若く病気で亡くなる前に藩主の座を譲った有月と、側室・清心院との関係が気になって、加賀守に二人の不義を訴える書状を出していた。加賀守が有月を隠居させ、幕府親藩の姫を母に持つ今の藩主を据えた。有月は隠居大名だった。

2018年5月7日月曜日

着物始末暦(十)結び布

着物始末暦(十)結び布  中島要
 祝言前に桐屋の娘・玉を勾引かそうという企みを知った糸を勾引かした者と古着屋の主人・六助を刺そうとして千吉を刺したのが同じ者だと判った余一は後ろに井筒屋愁介がいることを、岡っ引きに知らそうとする。愁介が捕まり、桐屋が人別を偽っていることを公にしたくない綾太郎は井筒屋を庇う。後藤屋の大旦那に相談する。
 井筒屋の大旦那を辞めさせ、江戸店をたたみ、京の本店の主人を愁介にして後藤屋の大旦那・利左衛門が愁介の後見をする、ということで話しを決めた。愁介を江戸から出したい余一はそれで納得する。綾太郎と余一は、愁介の説得に行く。六助も付いて行く。
 愁介は、桐屋の先代の新造が井筒屋の先代の妹で、駆け落ち者で、人別を偽り商いを始めた桐屋が、金の無心を断ったのでお上に訴え出たら困るから来たのだろう、井筒屋が潰れるなら桐屋も道連れにするという。綾太郎が持って来た案も、立場が強いのは自分だと言う。
 余一は、井筒屋の弱みを握っているのは自分だと言い始める。自分は愁介の腹違いの兄だ。桐屋の先代の話は何十年も前の話しで証拠も無い。京の井筒屋の主人が若い頃、女を手込めにして生まれたのが自分、母親が井筒屋から逃れるため身を寄せた尼寺に松雲尼がいた。今、松雲尼は上様の信任の厚い、書院番頭永井様の奥方に仕えている。余一が井筒屋の跡取りの腹違いの兄だということの証人だと言う。
 江戸店をたたんで京へ引き上げるならお互い余計なことは言わないで手を打った。千吉が大旦那と京へ行くことになった。千吉はみつに万寿菊の着物を残した。
 唐橋の打掛けを、西海屋の玉菊・二代目唐橋に送る、暖簾にした。
 八月一日 糸は娘を産んだ。結布(ゆう)と名付けられた。

2018年5月6日日曜日

ベッキーさんシリーズ② 

ベッキーさんシリーズ② 玻璃の天 北村薫
 幻の橋 花村英子のお友達・内堀百合江・内堀銀行の娘が付き合っているのは、電気製品を扱う内堀の洋二郎の孫・東一郎だった。二人の祖父が兄弟だったが、明治の時代に仲が悪くなった。洋一郎の名前で・弟・晃二郎が存命にも関わらず、晃二郎の死亡広告が新聞に掲載されたことが原因だった。百合江と東一郎のことから、洋二郎が折れ、仲直りの記しに浮世絵を送る。掲げた浮世絵が無くなったことで、栄子は昔の新聞を見に行く。洋二郎の名前と連ねて書かれている元女中の名前を見て、犯人が執事だと見抜く。
 想夫恋 同級生の公家から華族になった家柄の清浦綾乃。本を貸し借りするようになった。二人だけの秘密で学校の最も奥まった西の隅の築山の裏の比較的日当たりのいい場所に福寿草を植えた。一週間後綾乃は家を出た。暗号文の手紙を残して。英子はベッキーさんの力を借りて暗号文を読み解き綾乃の駆け落ち相手を見付けた。箏の若先生だった。英子は父親に口利きを頼み二人が結婚できるようにしようと思う。
 玻璃の天 2月 英子の家で晩餐会があり、経済界をリードする末黒野貴明と出会った。末黒野の家は友人の建築家・乾原剛造の設計で完成した。披露の会に出かける。段倉荒雄の講演会が終わり、弁士が徳川夢声の映画上映の最中、段倉が屋上のステンドグラスを突き破って落ち、ホールの大理石像に当たって死んだ。雪が積もったスロープの足跡を見た。ベッキーさんと話した。ベッキーさんと末黒野家へ行く。
 乾原の父親は大学の先生だった。同僚を家に招いて送りに出た時、暴漢に襲われた。父親も家に居た妊婦の妹も父親の同僚も殺された。暴漢は思想の違う段倉の取り巻きだった。父親の同僚はベッキーさんの父親だった。妊婦のお腹の子の父親は末黒野だった。段倉を殺すために建てた家だった。ベッキーさんは個人が自分の正義のために、立場の違うものを抹殺することなど許されない。
 英子は告知したのだろうか。

2018年5月4日金曜日

R.E.D警察庁特殊防犯対策官室

R.E.D警察庁特殊防犯対策官室 古野まほろ
 東京オリンピックの後、急激に治安が悪化したため総理直属・女性6名の特殊捜査班・「R.E.D」が設立された。
 新しい仲間・岡崎希海。

2018年5月2日水曜日

近松よろず始末処

近松よろず始末処 築山桂
 近松門左衛門に命を助けられ、竹本座の前で花売りの仕事を用意してもらった虎彦は、近松がやっている人助け万始末処を手伝っている。近松が飼っていた犬・鬼王丸と住んでいる。 近松を爺やと呼ぶ少将と呼ばれる侍と組んでいる。
 お犬さま 手代と丁稚を斬り百両を取る事件が起こった。犯人探しを打ち切った。手代の姉の夫が近松に頼んだ。事件を探索していた同心が犬を斬り打ち首になりそうだから助けてほしいと。虎彦が調べると同心が辻斬りをしていた。丁稚が逃げ、その丁稚をさがしていたのだった。同心・与力も打ち首になった。表向きは犬を殺したこと。本当の噂は広まった。
 仇討 祖父を殺し仇討に出た父を殺された医者の卵が仇討の浪人を探しに大坂にきた。仇討相手と思って探していた浪人は別人だった。医者が探していた仇討の相手は商家で真面目に働く手代の父親だった。一度目の仇討で同時に亡くなっていた。追っ手と間違い浪人を刺した。浪人は助けられ、医者は江戸に帰った。浪人は仇討を嫌がる赤穂の浪人だった。
 西鶴の幽霊 近松の元気のなさを憂いた商人が、西鶴の幽霊騒ぎを起こした。近松との脚本戦いに負け、商売も上手くいかなくなった嫉妬から。竹本座のからくり師の見習い・あさひは師匠が勝つと江戸に行ってしまうと聞き、師匠の江戸行きを阻止するために西行の幽霊で近松を誘い出し矢を射かけるからくり人形を作る人形師の手助けをする。虎彦と少将が暴く。
 曽根崎異聞 少将の身分が判る。近松が働いていた高貴な公家の嫡男だったが、父の後妻に生まれた弟に家督を譲り家を出ているが、義母は息子に取って変わられると思い、少将の命を狙っていた。少将が家から持ち出していたのは刀だけだったが、その刀をも変えし、家との関わりを断つ意思をはっきりさせる。