2016年12月3日土曜日

燦 〈8〉

燦 〈8〉 鷹の刃 あさのあつこ
 吉倉伊月が篠音を訪ねている間に、圭寿が襲われた。燦が銃弾を受け、圭寿は助かる。梟が刺客を襲った。刺客は自死用の毒で死んだ。
 前藩主・継寿の側室・静門院・於ようと吉が田鶴に来ていた。吉は於ようからあらゆることを教え込まれた。氷室峠で覆面の賊に襲われる。吉は賊にぶつかり革袋に入った飛礫を抜きとる。飛来した鷹を見て、吉と賊が「燦」と呼びかけた。賊は輿次だった。輿次は二人について行く。静門院は吉倉家の客だった。
 吉倉伊左衛門が燦が江戸へ行った後兎十の隠れ家を襲ったのは吉倉の命令だったと言った。美加子が言った「神波の宝を田鶴の全ての子のためにつかえたらよろしゅうございますね。」神波の宝を探したのだった。ために輿次がひどい目に遭い篠音が売られた。燦は伊左衛門を殺したく思うだろうと考え、圭寿と伊月が伊左衛門を庇う。
 君主・圭寿を狙った戸上蔵之介と手を組んでいた常陸屋宗三郎は、身の危険を感じ遊女・桔梗どころではなくなった。吉倉家老の秘事をさぐる。
 桔梗の身請けが無くなり桔梗・篠音は燦のもとに来た。燦と篠音を母・八重に会わし篠音を預けるつもりで吉倉の家に連れて行く。
 吉倉の家で於ようと伊月、燦と篠音と輿次が出会う。於ようは伊月に吉を圭寿の側室に召し出して欲しいと願う。奥を取り仕切る主たる女がいて秩序は保たれる。田鶴の安定をもたらすからという。
 常陸屋が吉倉家に主君への反逆があったという文があると脅しに来る。吉が宗三郎から紙入れを擦る。伊左衛門が美加子が自死した翌日、伊月と圭寿を入れ替えたという内容の圭寿の乳母の遺書だった。伊左衛門は真だという。圭寿が美加子の子燦と共に生まれた子だと。伊月は圭寿に告げないまま圭寿の陰で仕えるつもりだ。
 戸上は屋敷に火を付け、刺客を吉倉家に放ち切腹した。於ようが殺される。燦の母の形見の刀の鞘が割れ、薬草の調合方法を書いた紙が現れる。神波の宝か。
 圭寿は二十年田鶴を治める。新田開発、日図羅川五箇村の復興、治水工事、薬草栽培、藩校、療養所名君として名を残す。吉との間に三男三女五人の子は健やかに育つ。
 伊月は圭寿逝去後、四年生きた。没年慶応三年。

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