2016年12月18日日曜日

京都骨董ふしぎ夜話

京都骨董ふしぎ夜話 獅子ししゃも
 鸚鵡の愛 お嬢さん・光が京都の大学に行く為に帰って来た。「ばか」と言われる。六年前に「帰る日は迎えに行く」と言ったことを忘れていた天草に対する言葉だった。光はすごい風の中待っていたと言う。
 観世流シテ方能楽師・柳浦辰寿が持ち込んだ物の中の紅白の千鳥と柘榴の絵柄に歌を掘り込んだ櫛に、光は目を止める。能舞台の下の隠し部屋にあった櫛だった。柳浦は誰か父以外の人を思う人が有る母の気持ちの櫛だと言う。柳浦が子供の頃いなくなったお母さんの辰寿を思う心だと光は言う。まつのはもひさしき鸚鵡の盃にうつる十六夜かいちうの月 柳浦は舞台の下に置いた。
 少年Aと少女Bが盗品を持ち込む。居合わせた刑事・礼田と安東が捕まえる。柿右衛門人形の狛犬を預かりたいと師父・桃枝骨董店の店主・桃枝未之助が言う。
 呪いの古銭 光の中高の学友・樺山樹里が訪れる。弟・昌磨のお守りの元豊通宝が呪いではないかと言う相談をした。八亀芽衣さんから貰ってから悪いことばかり起こっているという。光は昌磨君も少なからず彼女をお好きなんだわと言う。樹里は光の言うことは信頼している。光はポルターガイストを止めたと言って帰って行った。
 狛犬、家路を行く 盗品の狛犬を預かることになった。師父・未之助が骨折した。狛犬を取りに来たのは、十年前、近くで働き、光を預かったりしていた東さんだった。売りたいと言うが預かることにした。
 安東刑事は浜松の三ケ日の出身だった。十八年前、光の両親が事故に遭った所だ。土砂災害に巻き込まれ師父の一人息子・祥之助は即死、意識の無い母・かおるから生まれた二千グラムで生まれたのが光だった。希望の光だから光ちゃん。報道されインタビューに答えていた。小学生だった安東刑事は知っていた。
 狛犬は帰りたがっていると光は言う。片方の狛犬は子供の父親・芳樹が持って行ったという。一年以上音沙汰が無いらしい。不幸の獅子と言う阿の方が見付かった。福岡から出ていた。礼田刑事に福岡で持ち主について調べて欲しいとお願いする。芳樹は事故で亡くなっていた。阿吽を子供が小学校に入るまで預かることにした。一年前、芳樹は骨董屋と売る売らないでもめ、階段から転がり落ち自宅に帰って亡くなっていた。骨董屋は獅子を持ち帰り、悪いことが続いたので売っていた。
 光は柳浦の櫛も狛犬も古銭のお守りも人の声が聞こえたという。物から声が聞こえる為、古い物に囲まれているから聞こえるのだと思ってここを離れたが、どこへ行っても聞こえた。祥之助はそのためにここを離れていた。
 天草は桃枝と名乗る前から犬に化けて桃枝家と共にいた。十八年前から弟子としているようになった。両親を持たずに光が生まれた時、師父に何かあっても天草が桃枝を継ぎ、光が不自由なく暮らせるように。師父に天草と言う名を貰い、金星と言う名を光に貰った。光は天草が二十年変わらないことで狐だと判った。
 冬の日の1995年 未之助は昔の日記を読む。桃枝の先祖・安倍泰成が岩にした狐の玉藻が天草の母だった。泰成のおかげで一番愛した人を殺さずに済み、天草も逃がして貰えた玉藻の言いつけで子々孫々を見守って来た。

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