2017年4月11日火曜日

京の縁結び 縁見屋の娘

京の縁結び 縁見屋の娘 三好昌子
 「縁見屋の娘は祟付き。男を産まず二十六歳で死ぬ。」と噂される。母も祖母も二十六歳で突然亡くなっている。縁見屋の娘・輪は行く末を案じていた。修行者・帰燕が現れる。「火伏堂」の堂守になった。輪には幼友達・徳次がいた。徳次が堂の修理をしていて、天狗の秘図と千賀女の遺髪を見付ける。
 五代前、縁見屋は材木商「岩倉屋」だった。当主・庄右衛門が愛宕山で道に迷ったとき、天狗に貰った秘図のおかげで家に辿り着いた。お礼に息子・長松を要求され、一緒に住んでいた千賀の子を天狗の所に連れていった。千賀は子供を失った悲しみで、何も食べられなくなり亡くなった。二十六才だった。長松も直ぐに亡くなり、娘も二十六才で死ぬ。この後、岩倉屋は店を閉め、火伏堂を建て、口入れ屋「縁見屋」をはじめた。輪の祖父・孫平が口伝えを覚書に残していた。千賀の呪縛か祟か。縁見屋には男も子が産まれず、娘は二十六才で亡くなっていた。
 火伏堂の地下には岩倉屋の財産が隠してあった。地下道は愛宕社の古井戸に繋がっていることを輪は知る。天狗は人の身体を借りないと現れられない。死の近い長松ならという天狗の思いがあった。帰燕は千賀の息子・清太郎だった。が、旅の途中で会ったこのままでは死ねないという男の身体に移った。男は葛原騏一郎だった。騏一郎は刺客を待っていた。公金不正流用の罪に問われた騏一郎は逃げ、追っ手は妻の弟・島村冬吾だった。島村冬吾は縁見屋の客だった。帰燕は冬吾に仕事が終われば必ず相手をすると言い、その前に、葛原は逃げようとしていなかった。何かを調べていた。一本明かりの祠に何かを隠しているようです。それを調べて下さいという。
 輪は帰燕から来年正月大火事がおこることを聞く。輪も夢を見る。火事は堀川を超えていた。火事のエネルギーで千賀に清太郎を返し、千賀の呪縛も解く事が出来る。という。
 輪は徳次と祝言を挙げ、徳次に秘密の通路の話をする。火事になれば助けて貰わねばならない。家の体切な物を暮れの大掃除に見せかけ火伏堂に移す。正月半ば島村が来る。三人で出来るだけ多くの人を逃す相談。いつ起こるか判らない。火付けと言われても困る。
 火伏堂が真っ赤になった日、知り合い近所の者に火事が起ると帰燕が言っていると触れ回り、どこへ逃げよと指示する。帰燕を知っている者は家財道具を持って逃げる。
 正月三十日の朝から、二月二日まで燃え続けた。輪は帰燕に助けられたが、気がついた時帰燕では無く葛原になっていた。島村は一本明かりの祠からとり出した帳簿で先代・直好公の側近・用人頭・北畠玄尚の蔵米流用が発覚し切腹、葛原の名誉は回復し、家督も安泰した。と話した。
 縁見屋は岩倉屋の隠し財産を、縁見屋んの再建と町内のために使った。輪は覚えて待っていれば、どのような姿になっても、必ず戻ると言った帰燕の言葉を信じている。次の夏の終わり、燕が庭に来た。翌朝、死んでいる燕を見付けた。翌朝、輪は男の子を産んだ。

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