ビブリア古書堂の事件帖〈6〉 栞子さんと巡るさだめ 三上延
篠川栞子から太宰治の『晩年』を手に入れようと石段から突き落とした田中敏雄が保釈された。笠井菊哉と言う偽名を使って店に出入りしていたのをおびき寄せ、目の前でレプリカを燃やして見せた。五浦大輔は田中が行く祖父の墓に一緒に参る。「晩年」も祖父の物だった。田中が祖父の持っていた「晩年」は栞子が燃やした物ではなく、さらに貴重な一冊だったらしい。その本を探して欲しいという。栞子はその本を探し、持ち主に注意するために探そうとする。
『晩年』がどういう物かを知っていそうな人は、田中敏雄の祖父・田中嘉雄、虚貝堂の杉尾、小谷次郎、大学教授・富沢博の名が上があがるが、田中嘉雄と杉尾は亡くなっている。小谷の話で三人が大輔の祖母の店・ごうら食道に集まっていたことが話される。富沢博とは四十七年前に出入り禁止になっていた。
富沢家に行くと四十七年前に蔵から持ち出された本を篠川聖司が探し出して戻してくれた経緯を調べて欲しいと言われる。その時聖司・栞子の祖父は詳しい話をしていなかった。田中嘉雄は蔵書からいろんなことを調べていた。富沢家と取引のあった古書店・久我山の尚大に脅迫され田中嘉雄は綴じ本を一枚、一枚持ち出した。聖司は見抜き元の形にして戻した。脅迫のネタは田中嘉雄とごうら食道の絹子・大輔の祖母の不倫だった。聖司は絹子の秘密を守ったのだろう。仲が戻った富沢博と小谷から田中嘉雄の持っていたのは大宰の直筆で「自殺用」と書いてあった「晩年」だった。久我山尚大の娘・鶴代にも聞かれていたので全て話した。田中嘉雄がお金のために蔵書を売ったのは久我山だった。鶴代は何も知らなかった。
田中敏雄が栞子と付き合っていることを知った大輔を襲った。大輔が「晩年」を持っているとおもったから。大輔から取った晩年を欲しい『晩年』と交換しようと話を付けていた。しかし、相手も田中も二冊とも自分の物にしようとした。大輔は自分が従兄弟だと名乗り、田中の家族への深い感情と他人を傷つけることへの恐怖を利用し、もう一人の相手の所に一緒に行くことになった。
もう一人は久我山鶴子の娘・寛子だった。栞子が落ちた石段で会った。寛子が大輔から本を奪おうとしたため大輔と寛子は宙を舞った。大輔は本の入ったインナーバックと寛子を胸の中心にしっかり抱きかかえ下まで落ちた。大輔は痛みを堪え久我山家に行き、最後まで見届けることにした。もう一冊を欲しがったのは寛子の祖母・真里だった。持っている本はアンカットのはずだった。田中が売る時に切ってしまったのだろう。真里はアンカットを切り開きながら読みたかったのだ。明日には警察が入る。大輔は鎖骨と肋骨を折り、手術を受けた。
智恵子に病室で全ての経緯を話した後、大輔は気がついた。久我山は後継者にする子供に蔵書を見せたことがあった。子供は久我山の愛人の子供・智恵子なのではないか。だから自家用の「晩年」がアンカットではないことをしっていた。
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