2018年2月1日木曜日

新聞売りコタツ 横浜特ダネ帖

新聞売りコタツ 横浜特ダネ帖 橘沙羅
 明治十六年 
 藤野辰吉23才 横浜で新聞売をしている。通称コタツ
 藤野絹19才    辰吉の妹 五年前に暴れ馬に蹴られ足が不自由。
 小見山祐   元旗本の次男、栗毛東海の名で戯作者をしている。
 植木屋をだった父親が旗本・小見山家に出入していたので辰吉は幼いころから祐を知っていた。
 按摩の亡霊騒ぎで辰吉は新聞記者・富田を知る。六年前に按摩が殺された場所で誰かが按摩笛で合図を送り会っていた。会っていたのは姉弟。弟は按摩を殺し、すぐ西南戦争に出兵した。戦争で亡くなったはずの弟が横浜に帰ってきた。弟が見付かると捕まると思いこっそり会っていた。
 絹の友達・咲が働いている家の主・ジェームズが殺された。咲が疑われていた。咲は聖書の一ページが破られている事に気付く。辰吉はカーター商会のカーターがジェームズを殺した事を暴いた。昔の香港での悪仲間だった。輸入した壊れたピアノの中に血の付いた聖書の一ページが入っていた。
 競馬場から一頭の暴れ馬が逃げ出した。暴れ馬にされ方が五年前と同じ方法だと気付いた辰吉は、今回の仕掛け人を探す。馬の世話係から麦酒屋の伊左次に行き着く。伊左次は八幡屋に務めていた。絹は八幡屋の主夫妻と一緒の所で暴れ馬の被害に遭っていた。伊左次をたき付けた者がいた。誰だか判らないが、瓦斯局事件に関わりが有る者だとわかった。八幡屋は民権側で訴えた側だった。この期八幡屋は黙ってしまった。伊左次は自分の裁量で世間がひっくり返るのが面白いと、敵にも味方にも変わる感じだったと話す。
 瓦斯局事件 豪商・高島嘉右衛門が経営難を理由に瓦斯事業を町会所へ譲った。大蔵省から借金しても経営は火の車。しかし、功労金ということで瓦斯局から高島嘉右衛門に一万三千五百円が流れた。官僚と瓦斯局と一商人の専断を、八幡屋は新聞社と一緒に糾弾しようとした。
 新聞配りの丑松が泥棒していることが分かる。丑松の家で妙な手紙を見付ける。輸入商・墨坂屋の若旦那が埋め立て土地大尽・粕谷に送った手紙だった。三井から取った水を横浜まで流し、毛野に貯める。という内容だ。県官水野から若旦那に渡り粕谷に渡った証拠だった。新聞記者・富田が、小見山が欲しがった。丑松が取り返そうとした若旦那に殺された。
 絹がいないため、粕谷に捕まったと思った辰吉は小見山と粕谷のところに行く。叩きのめされていた富田を助け出した。
 若旦那の丑松殺しは新聞に出たが、告発記事は出ていない。
 辰吉は絹に何故、小見山の世話をするのか尋ねた。五年前の事故の後、海で死のうとした絹を助けて、何も悪くない君が死ぬ必要は無い。いっぱい悪い事をしている自分こそ海にはいらなければならない。生きてもらわないと困る。辛くてまた海に入りたくなったら僕に言いなさい。悪者の僕が代わりに入るから。といいながら負ぶって家に運んでくれたのが小見山だった。絹にとって命の恩人だった。
 暴れ馬を嗾けたのは小見山だった。絹を絶望のどん底に突き落としたのが小見山なら、その淵から引き戻したのも小見山だった。小見山は姿を消した。辰吉は馬の事は絹には伝えていない。小見山がひどい過ちを犯した事、絹を救った事、辰吉に金平糖をくれた優しいお武家さまだったこと分かちがたい事実として層になって結びついている。
 小見山のいなくなった長屋に残された新聞に篤姫の葬儀の記事が出ていた。

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