2018年2月25日日曜日

紅雲町ものがたり

紅雲町ものがたり 吉永南央
 紅雲町のお草 杉浦草76才 「小蔵屋」という和食器とコーヒー豆を売っている店を久美と二人でやっている。離婚し連れて帰れなかった息子・良一は三才で亡くなっている。
 お客さんの噂話と散歩の時に見た光景から、介護暴力とか連想し、マンションの廻りをうろつき警官に老人徘徊と思われたりした。中学生の話から暴力を受けているのは中学生の息子と知った草は助け出すつもりでマンションに行く。たまたま出会ったこの頃立て続けに起こっている空き巣に入る泥棒に虐待されている子どもを連れ出すように頼む。空き巣は少年を布団に包んで玄関から出てきた。草は警察に、散歩している途中で、泥棒に呼び止められ泥棒に入ったら虐待されて怪我して逃げられない子がいたので連れ出した。警察に連絡してくれと頼まれたと話す。
 クワバラ、クワバラ 十万円近い未払いの相手は小学校の二年間を過ごした同級生だった。小蔵屋を建てる時に古民家風にするために古材を売ってくれた家・桑原家の娘・秀子だった。トミナガ電気の会長の奥様になっていた。
 桑原家は裕福な材木店だったが、秀子が生まれた年に没落した。秀子は良い時を知らない。親戚に預けられたりしていた。秀子の勝ち気な表情は寂しさの裏返しだったのかもと草は思う。草が桑原家から頂いた屏風の修理の途中に出てきた下張りをきれいに剥がし、秀子に見せる。銀スプーン・置時計・ピアノ・かんざし・櫛・らでん・蒔絵・祝い着・宮参り・七五三・雛人形 七段飾り・子供用ベット・がらがら・押し絵羽子板・オルゴール・絵本・市松人形 これを秀子に用意する 父庄之介 大正十五年四月六日 秀子は父の愛を感じたのだろうか。小蔵屋は十年前開店した。
 草は秀子が家出をしていることを知る。秀子の実家の後に建っているペンションに行く。秀子は恋愛相手の気持ちを確かめたくて家出していた。いい気味だと思っているでしょう。あいにく人の恋愛を笑うほど枯れてないのと話す二人。
 0と1の間 草は家庭教師を付けてパソコンを習い出した。教師の白石は高校生・美月にお金を貢いでいると思われたが、親が離婚して別れた兄妹だった。美月は母親の再婚相手と新しく出来た赤ちゃんとうまくやっているように見せて、兄の所でお金を使っていた。白石は誰にも相談せず妹に金を工面し下宿の家電も売り払った。風邪を引いて何も出来なくなった時、借りを作りたくないと言う白石に草は自分で持てない荷物をちょっと友達に持って貰い、自分にゆとりがある時に、誰かの荷物に手を貸せばいいと言う。主計を抜いて、少しは人に頼り、頼られたり、するといろんな道が見えてくる。と言われ友達水野に電話を掛けた。
 次の日、台風で医院がなくなり娘の家に住み、グズグズ言っていた白石の風邪を診てくれた老医者が医院のあった千葉に帰った。
 悪い男 小蔵屋でお弁当を食べる運送業者・寺田は二十五年前に貸したお金を同級生・大竹に返された。大竹は二十五年前、友達からお金を借りまくり姿を消していた。大竹が頻発する泥棒の容疑で捕まった。寺田は泥棒が入った時間に別の場所で大竹を見たと名乗り出るが、大竹が否認する。会っていた相手がピアニストになって帰ってきた清瀬小夜子だった。
 二十五年前、小夜子と大竹は同じ楽器店でアルバイトをしていた。小夜子の母親が楽器店から56万円盗んだとされ、小夜子の留学が白紙に戻されそうになった。大竹は友達から集めた金を盗まれたお金の穴埋めに使った。盗まれていなかったということになっていた。
 小夜子は大竹と会いお金を返していた。大竹は小夜子の昔の話が公になることを気にして会ったことを言わなかった。犯人が捕まっていて大竹は釈放された。
 犯人は紅雲町の独居老人の名簿を持っていて草には×が草の友達・由紀乃にはが付いていたことを教えてくれた。二人とも家の廻りで不審者を見たと届けていた。由紀乃は脳梗塞の後、半身が動きづらい。由紀乃の息子が宮崎から由紀乃をこちらに連れてきたいので説得する協力をして欲しいと電話をかけてきた。
 萩を揺らす雨 由紀乃は宮崎に行った。
77才の草は、大谷清治の頼みで京都へ大谷の愛人だった鈴子の葬式に行く。大谷の息子に東京に来ないかと声を掛けるという使命を受けた。大谷は与党の国会議員だった。一度引退したが無所属で立候補した。
 鈴子は大谷と付き合うことを許さなかった父母の言いつけのままに京都の染矢に嫁いだ。鈴子のお腹には大谷の子どもがいた。大谷は止めたいが連絡が付かず、草に止めてくれと託した。知っているのは二人の他に鈴子の妹・芙貴子と草だけ。鈴子の夫・染矢が亡くなったあと、息子・青史に話したようだ。
 青史は東京には行かないという。草は携帯電話を拾ったことで青史の大人の事情にまきこまれてしまった。青史を追いかけていた目つきの悪い男たちが携帯の着信音がする草のバックを引ったくった。改めて袂に入れていた拾った携帯と草のバックを交換する。草が立ち去って警察の逮捕劇が始まった。
 携帯はドラッグの顧客リストだった。青史の友達の物だった。友達を止めさせたくて鴨川に捨てるつもりがチャンスがなくて高瀬川になり、それが草の手に入ってしまった。友達のグループと手に入れようとしているグループと警察が追いかけていた。最後には青史は警察に話し、草の協力を得た。刑事は青史に友人を売ったなんて自分を責めるな。あいつを救ったと思えと言った。
 草は大谷に会い、肝腎なことは役立たずだと言った。鈴子の骨片を渡した。大谷は骨片をかみ砕き呑み込んだ。これでずっと一緒だ。
 草が密かに想う人だ。
 

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